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映画『さらば、愛の言葉よ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『さらば、愛の言葉よ』の概要:既婚女性と独身男性が言い争いながらも愛し合う様を描く一作。芸術的な表現に定評高いジャン=リュック・ゴダール監督が3Dを用いて挑んだ愛について問う物語である。

映画『さらば、愛の言葉よ』の作品情報

さらば、愛の言葉よ

製作年:2014年
上映時間:69分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:ジャン=リュック・ゴダール
キャスト:エロイーズ・ゴデ、カメル・アブデリ、リシャール・シュヴァリエ、ゾエ・ブリュノ etc

映画『さらば、愛の言葉よ』の登場人物(キャスト)

エロイーズ・ゴデ
物語の中心となる女性。夫がいる身であるが、とある男性との関係に深くはまっていく。物静かだが、自分の意見をきちんと持っていて、場に流されず男性との距離を取っている。
ロクシー・ミエヴィル
監督の愛犬。抽象的な存在として物語にエッセンスを加えていく。

映画『さらば、愛の言葉よ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『さらば、愛の言葉よ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『さらば、愛の言葉よ』のあらすじ【起】

激しい戦渦で突き進む男性と、何かを手に喜ぶ女性。そして、犬はどこかへと向かい歩き出す。
イベント会場にて本を選ぶ二人の女性。そこには一人の男性も一緒であり、手にした本の副題について問いかけていた。そして「親指(プッセ)は何をしている?」と女性に問いかけた。その時女性はスマートフォンを親指で押して(プッシュ)していた。

1933年に発明されたテレビ。その年、ヒトラーは言ったことを実現していた。例えば、革命や帝国の軍隊を制圧。共和制の概念を全欧州へと広げたのである。この史実を示した本を読む一人の女性。その頃、男性はスマートフォンを片手に様々な単語を呟いていたのである。

断片的に流れる戦禍の映像。反抗するということは統制経済への反発であり、全国民は自分と対立することも少なくないという。長い伝統から生まれた危機であり、決してヒトラーの草案物ではないと女性は語る。

イベント会場では若い男女が一緒に本を読み「戦い」について語り合っている。色鮮やかな花が咲く道に一台の車が止まった。車から降り立ったスーツ姿の男性は、一目散に女性の元へと向かい怒りをぶつけるのである。全く表情を変えず、うつむきがちな女性はおもむろに歩き出した。女性が去ったベンチに、一人の男性が歩み寄り何かを察するのである。

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映画『さらば、愛の言葉よ』のあらすじ【承】

「隠喩」それはメタファーとも呼ばれる。

港では一人の男性が画集を手に自分の価値観を言葉にしている。そこへ訪ねてきた若い男女。彼らは「お別れだ」とだけ告げた。若い男女の行く末を案じ、男性は見送る。その姿を見かけた一人の女性が2つの質問を男性へ問いかける。一つは「殺人を認めるのか」。もう一つは「観念と隠喩は何が違うのか」ということ。画集を見続けながら男性は「映像が現在を殺す」とだけ答えた。そこへ一人の強面な男性が女性を迎えに来た。銃を突き付けられながらも動じない女性の姿勢に、男性は連れて帰ることを断念した様子で車に戻るのであった。女性は一人海を見つめるのである。

ぎしぎしと階段をきしませながら、女性は全裸でキッチンへと降りてくる。その後ろをついてくるのは、先ほど銃を向けていた男性であった。二人は寄り添いながら映画をかけ流している。男性は何か危険に身をさらすつもりのようで、女性は身を案じていた。

別の日、穏やかな陽の光が差すキッチンでふたりはロダンの「考える人」について話していた。なんだか不機嫌な様子の女性であったが、トイレで用を足す男性の姿を見守るのである。真っ白なバスタブに、鮮明な赤い血が流れ落ちる。それは誰の血である分からない。

映画『さらば、愛の言葉よ』のあらすじ【転】

たくさんの人々がフェリーから降り立ってきた。その先には、若い男女が座り込んでいる。女性は手に血をにじませながら、「死なせてほしい」と呟くのであった。

男性は「動物の権利に関する世界宣言」について語る。そこには、自然の中で生きる鳥の親子と、大きな湖の中たくましく佇む一匹の犬がいる。犬はどこか一点を見つめ、微動だにしない。人間たちが生み出した便利な移動手段を見守る犬は、積もり積もった雪の上で毛づくろいをし、転がりながら背中をかくのである。男性は「動物は世界を見る」と言い、人間が見られないものを犬が見られるということを解説する。

男性とともに外出した女性。ガソリンスタンドに立ち寄った際、女性が車に犬を乗せてしまった。おろして欲しいという男性の要望は通らず、自宅に犬を連れ込んでしまった女性。その犬は、あたかも自分の家だと言わんばかりにソファでくつろぐのである。パラパラと有希が降る季節に、一人女性は部屋で身支度をする。しかし、おもむろに母親から聞いた残酷な話をし始め、表情を歪めるのである。男性は決して顔を合わせずに女性の話を否定するのである。

映画『さらば、愛の言葉よ』の結末・ラスト(ネタバレ)

相変わらず自由に歩き回る犬。しかしこの犬には首輪がついた。女性の自宅で飼われ始めたのである。彼女の考えを変えることができなかった男性は、行き先を告げず車を走らせる。遠のく自宅と見たことのない景色に不安がる女性。雨の夜道を走り抜けた二人は、とある家で共に過ごすのである。不意に男性は問う。「夫は何をしている人か」と。「イベント業」だとあっさり答える女性は表情を変えることはなかった。

水の流れに沿って川岸を歩く犬。自然豊かな環境で一匹、ただ何かを探すように彷徨うのである。

男性は鏡の前に立ちすくみ、女性に「子供を作ろう」と提案する。しかし女性は「まだ早い」と一蹴した。そして女性は自分が子供のころの話をし、「自信がない」と正直な気持ちを言うのであった。さらに「犬なら」と代案を出す。そうして二人はまた、同じベッドに横たわった。女性は内心「平穏を保つために、秘密があることは必要だ」と思うのである。

戦争という不幸な歴史があるなかで、日常は移り変わる。女性は子供を授かった。赤ん坊の泣き声と犬の遠吠えが交ざり合う日々が始まるのである。

映画『さらば、愛の言葉よ』の感想・評価・レビュー

巨匠と崇拝する人も多いジャン=リュック・ゴダール監督。2014年に製作された今作は映画技術への挑戦ということで3D技術を用いているため、通常の鑑賞環境ではなかなか見づらい部分も多かった。飛び交う言葉と断片的な映像のバランスが、容易には全体像をつかませてくれないため、好き嫌いがはっきりと分かれる一作であろう。審査員特別賞や全米映画批評家協会(NSFC)賞作品賞といったプロの視点で賞賛された一作を体感したいときには良い作品かもしれない。(MIHOシネマ編集部)


今作に登場する犬のように「意識」を持たずに、ただ純粋に世界を見ることが出来たら人間にはどんな物が見えるのだろうと感じた今作。非常に芸術的で抽象的な描写が多いので、ハマらないと置いてけぼりにされてしまう今作は好き嫌いが大きく分かれる作品でしょう。
セックスや排泄など人によっては不快に感じるであろう描写も、ゴダールの手にかかるとこうなるかと妙に納得してしまう作品でした。(女性 30代)

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