映画『バレエボーイズ』の概要:ノルウェーでプロのバレエダンサーを目指す3人の少年の成長を追うドキュメンタリー。男性が少ない世界で切磋琢磨する姿と、人生の分岐点となる瞬間をくり抜いている。
映画『バレエボーイズ』の作品情報
上映時間:75分
ジャンル:ヒューマンドラマ、ドキュメンタリー、青春
監督:ケネス・エルヴェバック
キャスト:ルーカス・ビヨルンボー・ブレンツロド、シーヴェルト・ロレンツ・ガルシア、トルゲール・ルンド etc
映画『バレエボーイズ』の登場人物(キャスト)
- ルーカス・ビヨルンボー・ブレンツロド
- 3人の中で最も大人しい少年だが、「バレエ団」に入る夢を誰より強く抱いていた。ひたむきにレッスンに向かう姿勢が最もストイックであり、唯一イギリスのロイヤル・バレエ・アカデミーへと進んでいく。
- シーヴェルト・ロレンツ・ガルシア
- ルーカスと同時期にバレエレッスンに通い始めた少年。ルーカスと共に若手バレエダンサーの登竜門と呼ばれるコンクールのファイナリストに選ばれるも、現実と向かい合いながらバレエを続けている。
- トルゲール・ルンド
- 3人の中で最もがっしりとした体格の持ち主。審査員に自分の将来を委ねながら、バレエと向かい合っていた。
映画『バレエボーイズ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『バレエボーイズ』のあらすじ【起】
母親に見送られながら3人の少年たちはそれぞれに「バレエ」のレッスンへ向かう。
なぜ「男」がバレエなのか。その特異な世界に潜り込んだ少年たちは、あどけない表情を残しながら共に舞った。
とある日のレッスン。恥ずかしさを隠せずに、はにかみながら女性ダンサーを支えるトルゲール。女の子目当てではないとジョーク交じりに話すシーヴェルト。彼らは共に歯の矯正をしている。
中学生になった彼らは思春期を迎え、恋愛は友達も犠牲にしてバレエへと向かう。唯一気が緩められるのは更衣室で同性同士じゃれ合う時間である。無邪気に笑い合う彼らの表情は、レッスン中にはまるで見なかった一面であった。
唯一アジアの血を引いているシーヴェルトは、自身がノルウェー人かせめても白人だったら、と恋愛に対する話もオープンに話すタイプである。しかしそんな彼もレオタードを着ると途端に表情が変わる。バレエを続けるという覚悟がにじみ出ていた。
真面目で大人しいルーカスはバレエ団に入るのが夢だと真っ直ぐな目で語った。
映画『バレエボーイズ』のあらすじ【承】
ルーカスとシーヴェルトの二人が、フランスの国際バレエコンクールへ出場することになった。エントリーシートのために写真を撮ってきたというルーカスは大舞台に立つ前とは思えないほどシャイで、着替えシーンは撮影NGだとはにかんだ。
コンクールまでに厳しい指導の元練習を重ねた二人。しかし、現実は厳しく共に落選。
シーヴェルトはステージ上で振り付けを忘れるというこれまでにない大きなミスをしてしまったのである。
苦い経験をした彼らの本業は「学生」である。進路相談で「プロのバレエダンサーとしてやっていくのか、ほかの道を知るのか。」自分の考えを問われていた。目の前のバレエに没頭してきた彼らは「将来」という大きな壁を感じ始め、頭を抱えるのであった。中でもシーヴェルトは学業とバレエを並行して続けていくことに不自由を感じていた。彼が出した決断は、「バレエを辞めること」。誰にも言わず悩み続けたシーヴェルトの決断にルーカスはショックを隠せずにいた。
残されたトルゲールとルーカスは、「プロ」を目指すためには練習をするしかないと分かっている。ルーカスは北欧バレエコンクールに挑み、見事にファイナリストの座を勝ち取ったのである。それは15歳を迎えた冬であった。身長も180センチを超え、身体的にも精神的にも成長した少年たち。そんな時、バレエを離れていたシーヴェルトがバレエスクールに戻ってきた。かけがえのない仲間の復帰に喜ぶルーカスとトルゲール。いくつ年を重ねても、更衣室では変わらない表情でじゃれ合う風景が戻ってきたのである。
映画『バレエボーイズ』のあらすじ【転】
バレエを習い始めて5年が経った頃、ずっと夢見ていたKHiOと呼ばれるオスロ国立芸術アカデミーのオーディションを受けるチャンスを得た3人。
この入学オーディションでは技能テストのみならず、身体検査で健康状態の確認もあった。成長痛に伴うハンディを抱えたルーカスだが、身体検査では将来へのみこみを期待され胸躍らせていた。一方でシーヴェルトとトルゲールの二人は不安を隠せずにいる。しかし、読み上げられた合格者リストには全員の名前が入っていた。さらに、ルーカスはロンドンの名門バレエスクールの選考に招待されたのである。
しかし、ルーカスは招待に応えなかった。それは合格したのちの学費や仲間のことを考え、受けるだけ無駄だと感じていたのである素直に話すルーカスに対して、両親は「将来のことだから自分勝手に考えていい」と背中を押した。悩んだ結果、選考を受けることにしたルーカス。父に引率してもらいロンドンへ向かった。
より良い環境で、刺激的な仲間と学ぶことに惹かれるルーカスであるが、金銭的な問題や未来の自分に問い始めると悩みは尽きなかった。地元のバレエスクールへ戻ったルーカスを待っていた仲間たち。これまで通りの環境に気持ちを落ち着かせ、合否の連絡を待つのであった。
映画『バレエボーイズ』の結末・ラスト(ネタバレ)
ルーカスと家族の元に、メールで選考の結果が届いた。なんとルーカスは1200人の中から選ばれ、30人だけが許される入学の切符を手にしたのである。早速、トルゲールに電話するも残念ながら留守だった。次にシーヴェルトに連絡をしたところ、自分のことのように喜んでくれたが、実はシーヴェルトはバレエを始めた時からずっと一緒にいるルーカスと離れることに寂しさを隠せずにいたのである。
バレエスクールの卒業公演を控えた3人。ルーカスが掴んだチャンスを機に、少しずつ関係性は変化し始める。プロを目指すルーカスと、これからも“共に”バレエを続けるシーヴェルトとトルゲール。KHiOへ進学しても一緒に過ごすことになる二人は関係性を崩すわけにはいかないのである。男性が少ない世界で共に成長する仲間を労わるかのように、二人の距離感は以前よりも縮まっていた。
違和感を受け止めながらルーカスは故郷を離れ、一人ロンドンへ旅立つ。しかしシーヴェルトは「距離は関係性を変えない」と将来まで続く絆を信じ、仲間を見送るのだった。
映画『バレエボーイズ』の感想・評価・レビュー
男性バレエダンサーの活躍が注目され始めたのは最近のように感じるが、それは日本だからなのだろうか。環境は人を育み、12歳というただ毎日楽しく過ごせるはずの年代で敢えて厳しいレッスンを選び続ける少年たち。さらには、将来のビジョンを高校生になる前から決めろと迫られている。チャンスを掴むのも才能の一つ。運命の行く末まで描くドキュメンタリーであった。(MIHOシネマ編集部)
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