映画『少年時代(1990)』の概要:東京から疎開してきた少年が、田舎の厳しい子供社会の中で成長する物語。子供たちのいじらしい生き様を、繊細に映しだす。原作は、柏原兵三の小説『長い道』を、藤子不二雄Aが同名漫画化したもの。
映画『少年時代』の作品情報
上映時間:117分
ジャンル:ヒューマンドラマ、青春、戦争
監督:篠田正浩
キャスト:藤田哲也、堀岡裕二、山崎勝久、小日向範威 etc
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映画『少年時代』の登場人物(キャスト)
- 風間進二(藤田哲也)
- 東京から富山の親戚の家に疎開する。大人しく、読書が趣味。クラスのガキ大将である武からいじめられるも、彼らなりの友情を築いていく。
- 大原武(堀岡裕二)
- 進二の転入先の級長。いつも子分を引き連れて拳を振るうが、進二の前では時折優しい一面を見せる。やがてクラスメイトから返り討ちに遭い、いじめの標的となる。
- 須藤健介(小日向範威)
- 進二の転入先の副級長。退院してから副級長を降ろされるが、進二を取り込んで武に仕返しを企む。
- 田辺太(山崎勝久)
- 進二の転入先のクラスメイト。クラスで一番図体が大きい。進二に親切にしたせいで、武たちから暴力を振るわれる。のちに武を下克上してから、調子に乗り始める。
- 佐伯美那子(小山篤子)
- 進二と同じ時期に、大阪から富山に疎開してくる。ませていて、進二をからかうようなことを言う。
- 風間修作(細川俊之)
- 進二の父。運輸通信省の公安局長で、戦艦陸奥の責任者。
- 風間静江(岩下志麻)
- 進二の母。東京から、本や手紙を進二に送る。戦争が終わると、真っ先に進二を迎えにくる。
- 昭子(仙道敦子)
- 太の姉。徴兵された恋人との別れを惜しんで、半狂乱になってしまう。
映画『少年時代』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『少年時代』のあらすじ【起】
家族と離れ、富山の親戚のもとへ疎開することになった進二。先に仕事へ向かう父から、かねてより欲しかった戦艦陸奥のバックルを譲り受け、母と共に汽車に乗る。
浜見の子供たちは、東京からの転入生を見ようと集まっていた。進二の上品な身なりを見て「東京者」だと呼びつけ、級長の座が入れ替わるのではないかと噂する。
進二が転入初日を無事に終え、母が東京へ戻る。その夜、五年男組の級長・武が進二の家を訪ねてくる。彼は進二の持っている本に興味を示し、戦艦陸奥のバックルを見て興奮した声を上げる。東京の学校で級長を務めていた進二は、同じような成績で趣味の合う武と仲良くなる。武は進二の家に通うようになる。
武率いる男組の生徒たちは、やがて進二を除け者にし始める。同じく疎開してきた美那子との交流をからかい、嫌がらせをして泣かせることもあった。そんな中、優等生である進二は入院している副級長の代理に任命される。
武は相変わらず進二をいじめたが、その態度は気まぐれだった。ある日、美しい夕暮れの海辺に進二を連れだすと、ボートに乗せてやる。
映画『少年時代』のあらすじ【承】
太というクラスメイトが、からかわれていた進二をかばって家に招く。本を読まない自分の代わりに、物語を聞かせてくれと言う。話し始めようとする進二の横をすり抜けて、太の姉・昭子が家を飛び出してゆく。夜遅くに男のところへ出かける昭子に、両親は怒鳴り声をあげる。
太は進二を助けたことで、武たちから暴力を受ける。武はまた進二の家へ行くと、太にしたように自分にも物語を聞かせるよう命じる。進二の語りは、やがて生徒の間で好評となる。冬になる頃には、進二は武の隣を闊歩するまでになっていた。
東京から集団疎開の子供たちが転入してくる。攻撃的な武たちは、「東京者」に刃を向ける。加担できなかった進二は、またしても仲間外れにされる。
母からの荷物が届いているという鳥舞の駅へ、進二はひとりで出かける。だがそこには、武に痛い目を見せられ浜身を恨んでいる少年たちがいた。襲われかけた進二を、武が駆けつけて助けだす。武は思い立ったように、進二を写真館に誘う。
仲睦まじく並んで写真を撮る二人。進二は、優しい武の一面を知っているからこそ、なぜ日頃攻撃するのかと問う。武は「わからない」と連呼し、進二の頭を床に押し付ける。
その頃、東京では空襲が始まる。家族から、無事に生き延びたという手紙を受けとり、涙を流す進二。
映画『少年時代』のあらすじ【転】
子供たちの戦いもまだまだ終わらない。地上戦の訓練や、日本の活躍を讃えるニュース映画を見る毎日の中で、相変わらず出身地の違いで争い合う。
少年たちは今日も軍歌を熱唱しながら登校する。その日、副級長であった須藤が退院して学校に戻ってくる。生徒たちは困惑するが、武は進二を副級長に任命する。
進二の家を訪れた美那子は、進二が武に取り入っていると言う。武たちにからかわれることを恐れていると指摘され、憤慨した進二は、翌日武に啖呵を切る。もう語って聞かせる物語もないうえ、副級長もやめると宣言したのだ。幾度目かの除け者になる進二に、須藤が声をかける。
進二が須藤の家に向かうと、そこには太を含めた数人の生徒もいた。彼らは、武への下克上を企んでいるという。進二は彼らの仲間に加わることになる。帰宅したところ、武が家を訪ねてくる。太といたところを見られたようで、忠告を受ける。
その頃、昭子は恋人と密会していた。翌日、汽車に乗って戦争に向かう恋人を見送り、悲しみのあまり半狂乱になってしまう。太は姉を家に運ぶ道中で、進二に出会う。いよいよ武に対するクーデターを起こすと進二に伝える。
映画『少年時代』の結末・ラスト(ネタバレ)
休み時間になり、武は様子がおかしいことに気づく。いつも校庭で遊んでいるはずのクラスメイトを探しに教室へ戻ると、血の気をまとった男児たちが待ち受けていた。須藤の指示により、武が身動きの取れない状態になると、太が殴りかかる。
武は川辺に連れだされ、味方からも拳を受ける。言われるがままに、進二も武の顔を二発殴る。そして武の味方はいなくなる。中庭で遊ぶ五年生の輪の中に、武の姿はない。武は級長を降りることになり、代わりに選ばれたのは進二であった。
武は日常的に暴力を振るわれ、いじめの標的となる。見かねた進二は武を家に誘うが、武は気丈に振る舞って取り合おうとしない。進二は須藤を訪ね、武への攻撃も潮時であると告げるが、聞きいれられない。
やがて空襲の火の手が富山にも及んだ直後、終戦を迎える。日本は負けたが、喜ぶ人は多かった。特に昭子は、恋人の帰宅を知って歓喜する。
母が進二を迎えにくる。進二は武との別れを心残りに思い、涙を見せる。武の家を訪ねるが姿は見当たらず、彼が羨ましがっていた戦艦陸奥のバックルを置いて、その場を去る。
親戚やクラスメイトに見送られ、進二を乗せた上野行きの汽車は出発する。進二は窓の向こうに、道を駆けてくる武の姿を見つける。名前を呼び合い、進二は帽子を振って応える。敬礼する彼の姿はどんどん遠ざかり、やがて見えなくなる。
映画『少年時代』の感想・評価・レビュー
進二と武のいじらしい友情に涙が出る。大人の世界を写したように争い合う、閉鎖的かつ排他的な子供たちの村社会で、無垢な魂のまじわりを見る。橙色に輝く海にボートを浮かべて、安堵しきった二人の表情が忘れられない。あの瞬間こそが彼らの真実だったろう。本作は戦争映画ではなく、青春映画だ。
井上陽水の『少年時代』が流れるラストシーンは想像に容易いものの、やはり胸を掴まれた。彼の甘やかでディープな歌声が、少年たちの物語を完成させている。(MIHOシネマ編集部)
作品のタイトルから井上陽水の「少年時代」をイメージしていたら、まさにその通りの作品で作中で曲が流れた時には物凄く感動してしまいました。
転校生が来た時に仲良くしたい気持ちと、自分とは違う「都会感」が羨ましくて距離を取ってしまう気持ちが今作でも感じられて、時代が変わっても子供ながらに思うもどかしい気持ちって変わらないのだなと感じました。
戦争に対するメッセージも強く込められていて、心に残る作品でした。(女性 30代)
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