この記事では、映画『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』の作品情報
上映時間:128分
ジャンル:ヒューマンドラマ、歴史、戦争
監督:平山秀幸
キャスト:竹野内豊、ショーン・マッゴーワン、井上真央、山田孝之 etc
映画『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』の登場人物(キャスト)
- 大場栄 大尉(竹野内豊)
- 陸軍で歩兵連隊を指揮する大尉。すぐに終わると思われていた、米軍によるサイパン占領を、巧みな作戦で翻弄する。米軍からは「フォックス」と呼ばれていた。
- ハーマル・ルイス大尉(ショーン・マクゴーヴァン)
- 米軍大尉。戦争前、日本に2年間留学した経験があり、日本語が話せる。また、日本人の精神にも理解を示しており、上官に日本人について説明をする。
- 堀内今朝松 一等兵(唐沢寿明)
- ジャングルの中で大場大尉と会い、その後も行動を共にする。体に大きな刺青が入っており、関西弁を話す。
- 青野千恵子(井上真央)
- サイパン島で生き残っていた民間人のひとり。看護師であり、主に負傷者の手当てをする。堀内に射撃の指導を受けるなど、軍人のような考えを持つ女性。
- 木谷敏男(山田孝之)
- ジャングルの中で大場大尉と遭遇した曹長。日本軍兵士として、最後まで戦い、玉砕する強い意志を持つ。
映画『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』のあらすじ【起】
1944年6月15日、米軍がサイパン島に上陸。日本軍大本営は、サイパンの放棄を決定したが、サイパンにいた兵士にその命令は届かず、米軍が占領したあとも交戦を繰り返していた。
米軍のポラード大佐は、降伏しない日本軍に対し苛立ちを見せていた。そこで、日本で留学経験のあるルイス大尉を呼び、なぜ日本人が降伏しないのか、日本人について説明を求める。ルイスは日本の将棋を例に出し説明した。日本人にとって、捕虜になることは、天皇に対する裏切り行為となるため、決して降伏しないと語った。
1944年7月7日、日本陸軍が総攻撃を決行。日本軍は奇襲攻撃を行うも、米軍に打ち勝つことはできず、多くの日本兵が亡くなった。生き残っていた大場大尉は、同じ日本軍の堀内一等兵と出会った。
米軍基地では、未だ日本軍が抵抗を続けていることに対し、ポラード大佐が苛立っていた。ルイス大尉は、日本軍に対し降伏するよう呼び掛けることを提案し、その任務を任されることになった。
その頃、堀内一等兵と大場大尉は、焼け残った民家を発見する。そこでは、自決した民間人の中に、まだ生きている幼児がいた。大場大尉は米軍が幼児を見つければ、生き残れるかも知れないと考え、民家に目印をつけてその場を立ち去る。その後、ルイス大尉ら米軍が民家に到着し、幼児を発見した。
大場大尉は山中で、総攻撃の際にはぐれた部下と再会する。そしてほか連隊の木谷と出会い、彼の誘導で隠れ場所に移動した。彼らの後を追うように米軍も山中を捜索すると、日本軍からの攻撃を受けてしまう。日米両軍が攻撃していると、大場大尉が攻撃中止を命じ、日本軍は姿を消した。大場大尉は天候を読み、霧が濃くなることを察知して霧の中で逃げることにしたのだ。

映画『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』のあらすじ【承】
大場大尉たちは、道中で民間人と出会う。彼らは200人ほどで身を潜めて暮らしていた。しかし、その野営地が米軍によって攻撃されてしまう。大場大尉は、多くの人たちが負傷したのを目の当たりにし、1人でも多くの命を守ることが任務だと気付いた。大場大尉の部下がジャングルの中を偵察していると、米軍に遭遇。彼らは大場大尉にそのことを報告し、野営地が米軍に見つかるのも時間の問題だとした。大場大尉は3班に分けていた野営地の1つを手放し、撤退することを決意。
米軍が大場たちのいた野営地に到着すると、そこに人影はなかった。そして、米軍兵の1人が、水が流れているのを発見。彼は水を飲もうと近寄るが、それは大場大尉が仕掛けた爆弾だった。
天候を読み、爆弾を仕掛けるなど、巧みな戦術を繰り広げる大場大尉は、米軍に「賢い者」を意味する「フォックス」と呼ばれるようになった。日本軍から攻撃を受けたことを知ったポラード大佐は、総動員して日本軍を探しだすよう命令を出した。
ジャングルの中で、日本軍から攻撃を受けたことを知ったポラード大佐は、ルイス大尉に米軍兵がフォックスと呼ぶ人物が誰なのか、突き止めるよう指示。ルイス大尉は収容所に向かい、収監された日本人女性に尋ねる。彼女は、大場大尉であると伝えた。ルイス大尉はポラード大佐に大場のことを報告するが、彼はサイパンを離れることになっており、収容所を立ち去っていった。
クリスマスの時期を迎えると、米軍には、新しくウェシンガー大佐が赴任した。彼もまた、ルイス大尉に日本人の特性について尋ね、ポラード大佐の時と同じように、将棋を例に出して説明をする。
映画『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』のあらすじ【転】
ルイス大尉はビラを使って降伏をさせるため、収容されていた日本人に協力を求める。英語が堪能な元木は、ビラ作成に協力することになった。大場大尉たちは、米軍が撒いたチラシを見て驚愕する。そこには変わり果てた東京の写真が載っていたのだった。
野営地では、医薬品が不足し、助けられる人も命を落としていた。青野は、その状況を大場大尉に話す。大場大尉は、状況を把握していたものの、医薬品は収容所にしかなく、調達するまで待つように言った。納得のできなかった青野は、堀内に一緒に収容所に行くよう頼んだ。
収容所では、元木がルイス大尉らを連れて、大場大尉と落ち合う場所へ向かっていた。元木が大場大尉に食糧を渡し、ルイス大尉たちのことを話していると、銃声が鳴り響いた。同じ頃、医薬品を取りに来ていた青野と堀内が米軍に見つかり、交戦が始まったのだった。その際、堀内は攻撃を受けてなくなり、青野も被弾してしまう。
映画『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』の結末・ラスト(ネタバレ)
野営地へ戻った大場大尉は、皆を収容所へ行かせて生き残るべきではないかと考え始めていた。大場大尉が皆を集め、民間人は収容所へ行くように指示。民間人は荷物をまとめ、野営地を去っていった。
収容所では、ラジオ放送が流れ、日本軍の無条件降伏。つまり終戦が伝えられた。
早速、米軍は終戦したことを記したビラを撒くが、日本兵たちはその情報を信じようとしなかった。また、収容所で情報を集めた兵士によると、日本は原爆の攻撃に遭い、天皇が終戦を決めたのだった。それでも降伏しない日本兵たちは、次々と命を落としていった。
その状況を見かねた大場大尉は、ルイス大尉との面会を要求。元木の案内で面会を果たした大場大尉とルイス大尉だが、そこに木谷が現れ、元木を撃ち殺してしまう。その後、木谷は行方不明となった。
日本軍大将から無条件降伏の命令が下った一行は、亡くなった戦友、民間人のために弔砲をする。ジャングルの中でひとり離脱していた木谷は、弔砲の銃声を聞き、遠くから敬礼していた。日本兵は大場大尉が先導し、歌を歌いながら米軍が待つ場所へ行進していった。その姿は日本兵の誇りに満ちたもので、米軍も固唾を飲んで見守った。大場大尉がウェシンガー大佐に日本刀を渡し、降伏をした。1945年12月1日。彼らの戦争は、完全に終わりを迎えた。
映画『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
太平洋戦争での、日本兵と米兵の姿を描いた作品。日本兵のみならず、共に過ごした民間人の命を守ることを使命とし、最後まで玉砕命令を出さなかった大場大尉の心情は、現代の考え方を切り開いているように思える。また、大場大尉を有能な指揮官として尊重し、敬う米軍の姿は、日本と米国の新しい時代の象徴と言えるのではないだろうか。物語終盤、歌を歌いながら行進する日本兵、そして大場大尉の姿は、圧巻である。題名にもなっている「奇跡」は、日本兵が降伏したことだけでなく、大場大尉の存在そのものが「奇跡」なのではないかと感じる。(MIHOシネマ編集部)
戦時中を生きた人達にとって、命がどれほど尊くて脆いものだったのか、平和な今を生きている私たちには絶対に理解できないだろうと感じました。10~30代の死因の1位が自殺だと言われている今の日本を見たら、当時の人達が何よりも大切にしていた生きるための行動は何だったのだろうとがっかりするでしょう。
当時のことを何も知らない私にとって、この作品はなんで?という疑問の連続でした。しかし、一人一人が生きることに執着をしていて、自分の使命を全うしようとする姿にはとても感動させられました。(女性 30代)
実話をベースにしたこの作品は、戦争の狂気と人間の信念を描いた骨太な戦争ドラマでした。堯和中尉がたった47人でアメリカ軍を翻弄し続けた話は、まさに奇跡と呼ぶにふさわしい内容。降伏を拒み続ける姿勢には賛否あると思いますが、祖国を想う強い意志と仲間を守る責任感に胸を打たれました。最後にアメリカ軍の指揮官が敬意を表して彼を迎えるシーンには思わず涙が…。(20代 男性)
太平洋戦争の末期、命をかけて信念を貫く姿に心が震えました。実在した大場栄という人物の存在を、この映画で初めて知り、もっと早く知っておくべきだったと思いました。日本兵の姿を単なる軍国主義ではなく「人間」として丁寧に描いてくれたところが素晴らしいです。特に女性看護師たちの描写もリアルで、戦争の過酷さが伝わってきました。(30代 女性)
戦争映画は苦手ですが、この作品はとても感動的でした。アメリカ側の視点と日本側の視点をバランス良く描いているので、単なる「敵と味方」ではなく、互いの信念や葛藤が伝わってきます。堯和中尉のリーダーシップ、冷静な判断力、そして最後まで兵を見捨てない姿に胸を打たれました。降伏という選択がどれほど重いものだったのか、深く考えさせられます。(50代 男性)
戦争映画の中でも異色の作品だと思います。血や暴力で衝撃を与えるのではなく、人間の内面と信念に焦点を当てている点が印象的でした。中村獅童さんの演技がリアルで、静かなシーンほど感情が揺さぶられました。軍人という枠を超えて「生きることの意味」を描いているように感じました。鑑賞後は、しばらく言葉が出ませんでした。(40代 女性)
歴史の教科書では語られない、真の英雄の姿を見たように思います。堯和中尉は、戦争の勝ち負けを超えて、兵士たちの命を守るために戦い抜いた人物であり、その姿勢に尊敬しかありません。終戦から1年近く経っても山中に残り、米軍の情報戦を見抜いて行動する姿は、まさに「フォックス」と呼ばれるにふさわしいものでした。(30代 男性)
女子としては、戦争映画には少し抵抗がありましたが、この作品は観てよかったです。とにかく兵士たちの絆が熱くて、堯和中尉を信じて最後まで一緒に行動する部下たちの姿が泣けます。感情を表に出さない中尉の静かな強さもかっこよかったです。特に終盤、アメリカ兵との交流で「敵にも人間がいる」と実感するシーンが心に残りました。(20代 女性)
アクションや爆発よりも、心に残るセリフや視線が多く印象的な作品でした。日本兵がアメリカ軍と戦いながらも、最後には敵から尊敬を受けて終わるという展開が、まさに「奇跡」と感じました。戦争の中で人間性を失わなかった大場中尉の姿勢に、現代の私たちが学ぶべきことがあると思います。観終えた後は静かな感動が続きました。(60代 男性)
戦争映画というより、ひとりのリーダーの生き方に焦点を当てたヒューマンドラマとして観られました。中村獅童さんの無口ながらも存在感のある演技が、本当に説得力ありました。特に、部下たちが中尉を心から信頼し、彼の判断に従う姿には涙が出ました。実話だと思うと、なおさら胸が熱くなります。(40代 女性)
映画『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』を見た人におすすめの映画5選
硫黄島からの手紙
この映画を一言で表すと?
敵も味方も関係ない——戦場に生きた「人間」を描いた、魂に響く戦争映画。
どんな話?
太平洋戦争の激戦地・硫黄島を舞台に、栗林中将率いる日本兵たちが、圧倒的なアメリカ軍相手にいかに戦ったかを描く。西郷という若い兵士の視点を通じて、戦場の極限状態で見せる兵士たちの苦悩や誇りが描かれる。
ここがおすすめ!
『太平洋の奇跡』同様、実在の人物に基づいたリアルな戦争描写が特徴。クリント・イーストウッド監督による中立的かつ人間的な視点が新鮮で、日本人兵士を一方的に描くのではなく、その心情に深く踏み込んだ傑作です。
永遠の0
この映画を一言で表すと?
命を懸けた空の戦いと、知られざる家族の物語が交錯する感動作。
どんな話?
特攻隊として命を落とした祖父の足跡を辿る孫が、かつての戦友たちの証言から、祖父の本当の人柄と戦争における苦悩を知っていく。現代と過去が交錯する構成で、家族愛と戦争の現実を描く感動ドラマ。
ここがおすすめ!
戦争を「美談」で終わらせず、なぜ彼が命をかけたのかという「想い」を丁寧に描いています。戦争の是非ではなく、生き方と死に方を見つめ直す物語で、若い世代にもぜひ観てほしい一本です。涙腺が崩壊します。
ビルマの竪琴
この映画を一言で表すと?
戦地に響く竪琴の音色が、命と向き合う静かな問いかけを奏でる。
どんな話?
終戦を知らずに戦い続ける日本兵たちに、降伏を伝えようとする青年・水島。戦友との絆、死者への供養、そして仏門に入る決意…。戦争が残した深い傷と癒しを、竪琴の音と共に静かに描く、日本映画史に残る名作。
ここがおすすめ!
銃声よりも、沈黙と祈りが胸を打つ戦争映画。人を殺すことより、人の命を尊ぶ選択が美しく、静かに心を揺さぶります。戦争後の「生き残った者の責任」について考えさせられる、平和へのメッセージ性も強い作品です。
フューリー
この映画を一言で表すと?
戦車という鉄の棺で、極限状態の人間ドラマが爆発する。
どんな話?
第二次世界大戦末期、ドイツ戦線に配置されたアメリカ戦車部隊。新人兵士ノーマンは、ベテラン兵士ウォーダディらと共に「フューリー号」で過酷な戦いに身を投じていく。戦場で失われゆく人間性と、信頼の物語。
ここがおすすめ!
リアルな戦場描写とともに、兵士たちの絆と葛藤が生々しく描かれています。『太平洋の奇跡』のように、命令と人間らしさのはざまで揺れる姿が胸を打ちます。ブラッド・ピットの鬼気迫る演技も見どころ。
父親たちの星条旗
この映画を一言で表すと?
英雄とは誰か?戦場の写真が生んだ“偶像”の裏にある真実とは。
どんな話?
硫黄島での戦闘中に撮影された有名な星条旗掲揚の写真。その写真に写った兵士たちは、戦争の象徴として本国に呼び戻され、英雄として扱われるが、それぞれの心には深い傷が残っていた…。
ここがおすすめ!
『硫黄島からの手紙』と対になる作品で、同じ戦場をアメリカ側の視点から描いています。英雄視の裏にある現実、戦争プロパガンダの功罪を掘り下げた重厚なストーリーが秀逸。視点を変えることで見える真実があります。
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