この記事では、映画『トーク・トゥ・ハー』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『トーク・トゥ・ハー』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『トーク・トゥ・ハー』の作品情報
上映時間:113分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:ペドロ・アルモドバル
キャスト:ハビエル・カマラ、ダリオ・グランディネッティ、レオノール・ワトリング、ロサリオ・フローレス etc
映画『トーク・トゥ・ハー』の登場人物(キャスト)
- ベニグノ・マルティン(ハビエル・カマラ)
- 有能な看護師。植物状態のアリシアを献身的に世話している。母の介護のため独学で看護を学んだ。女性経験が無い。
- マルコ・ズルアガ(ダリオ・グランディネッティ)
- ジャーナリスト。昏睡状態のリディアにずっと付き添っている。旅行関係の書籍も執筆している。感情が昂ると泣く癖がある。
- アリシア(レオノール・ワトリング)
- ベニグノが思いを寄せるダンサー。ベニグノの自宅の斜め向かいのバレエ教室に通っている。交通事故により植物状態になる。
- リディア・ゴンザレス(ロサリオ・フローレス)
- 女闘牛士。マルコの恋人。試合中に牛に突かれて大怪我を負い昏睡状態になる。
- エル・ニーニョ(アドルフォ・フェルナンデス)
- 人気の闘牛士。以前は恋人でもあったリディアとチームを組んでいた。
- カタリナ・ビロヴァ(ジェラルディン・チャップリン)
- アリシアのダンスの師匠。母親のいないアリシアの成長をずっと見守っている。
- ロンセロ医師(エリオ・ペドリーガル)
- アリシアの父親の精神科医。ベニグノが性的目的でアリシアを看護しているのではないかと疑う。
- マティルデ(ロラ・ドゥエニャス)
- ベニグノの同僚の看護師。ベニグノと共にアリシアの看護を担当する。
映画『トーク・トゥ・ハー』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『トーク・トゥ・ハー』のあらすじ【起】
ある現代舞踊の公演を観ている看護師のベニグノは、隣席の男が感激して涙を流していることに気づく。隣の男はジャーナリストのマルコ。感情が昂ると泣く癖がある。
ベニグオは、入院中の植物状態のダンサー、アリシアを献身的に介護している。エステやマッサージの技術も持っているベニグオにより、アリシアは常に美しさを保っている。ベニグオは、何も答えないアリシアに向かって常に語りかけている。
マルコは、あるTV番組で知った女闘牛士リディアの記事を書くために、試合後のリディアに声をかける。マルコはリディアを車で自宅に送る道中、インタビューを開始する。始めは取材に好意的なリディアだったが、マルコが闘牛についてではなく、自分を絶望した女性として取材しようとしていると知り、腹を立ててインタビューを拒否する。
帰宅後、蛇に怯えたリディアは叫び声を上げながら自宅から飛び出し、マルコに助けを求める。マルコはリディアの自宅へ入り、蛇を退治する。マルコは、家に居たくないというリディアをホテルまで送り、マルコを信用したリディアは取材を受けることを承諾する。
6ヶ月後、リディアとマルコは恋人関係になっている。ある日、リディアはマルコに、闘牛試合後に伝えたいことがある、と告げる。その直後、リディアは試合中に全身を牛に突かれて大怪我を負い、昏睡状態に陥る。
3週間が経過しても、リディアの意識は戻らない。以前、公私ともにリディアのパートナーであったエル・ドラードが見舞いに訪れるが、マルコは追い返す。
リディアの主治医の部屋へ向かう際、マルコはアリシアの病室の前を通りがかる。扉の隙間から、マルコは生理現象で目を開けたリディアと偶然目が合い、急いで立ち去る。
マルコは主治医から、リディアはいつ回復するか全くわからないと告げられ消沈する。
マルコが再びアリシアの病室の前を通ると、ベニグオがアリシアの世話をしている。ベニグオは覗いているマルコを招き入れ、マルコが現代舞踊の公演を観て泣いていた男だと気付く。二人の交流が始まる。
アリシアの父ロンセロは、ベニグオが性的な目的でアリシアを介護しているのではないかと疑う。ベニグオは以前に患者としてロンセロの精神科クリニックを訪れており、二人には面識がある。

映画『トーク・トゥ・ハー』のあらすじ【承】
ベニグノはアリシアの病室を訪れたマルコに、自分とアリシアとの出会いを話す。
4年前、ベニグノは自宅の向かいのバレエ教室に通うアリシアに、眺めるだけの恋をしていた。ある日、いつものように窓からをアリシアを見つめていたベニグノは、アリシアが帰り際に財布を落としたことに気がつき、財布を拾って彼女を追いかける。アリシアはベニグノに礼を言い、二人はアリシアの自宅前まで歩きながら会話する。ベニグノはアリシアの自宅がロンセロ精神科だと確認する。
数日間、アリシアはバレエ教室に来ていない。気になったベニグノは、患者を装いロンセロのクリニックに入る。性的嗜好を尋ねるロンセロに対し、ベニグノは自分はゲイだと適当に応える。
診察後、ベニグノはアリシアの私室を覗く。ベニグノがアリシアの髪留めを持ち出し急いで去ろうとするところへ、シャワー後で半裸のアリシアが現れる。ベニグノは驚くアリシアに謝り、クリニックを後にする。
数日後、アリシアは交通事故に遭い、ベニグノが勤める病院へ運び込まれる、植物状態となったアリシアの看護を、有能なベニグノと同僚のマティルダが担当することになる。
最愛の女性の世話ができることに充実感を覚えているベニグオとは反対に、マルコはリディアに対する無力感に苛まれている。ある日、リディアの病室を訪れたベニグノは、マルコにもっとリディアに語りかけるべきだとアドバイスする。ベニグノとマルコは一層親交を深める。
映画『トーク・トゥ・ハー』のあらすじ【転】
リディアが大怪我を負う日、以前の恋人の結婚式に参列していたマルコは、リディアが同じく式場に来ていることに気付く。リディアは、清らかな結婚式に感動して涙を流す。リディアは、ある重要なことを伝えるためにマルコを追ってきたのだという。その後の試合中にリディアは事故に遭い、リディアが伝えたかったことは何かわからないままであった。
ある日、マルコはリディアの見舞いに訪れたエル・ドラードから、リディアとエル・ドラードが交際を再開していたことを知らされる。リディアがマルコに伝えようとしていたのはこのことだった。
傷心のマルコはしばらく旅に出ることにする。マルコはベニグオに別れの挨拶をし、餞別に自著の旅行本を贈る。別れ際、ベニグノはアリシアと結婚したいという本心を打ち明けるが、マルコは常軌を逸していると諌める。
数日後、アリシアの生理が来ないことから妊娠が発覚し、レイプ容疑をかけられたベニグノは投獄される。
ヨルダンに滞在していたマルコは、新聞でリディアの死亡を知る。詳細を聞くために病院に電話したマルコは、ベニグノの同僚からベニグノの逮捕を知る。
急遽帰国して刑務所へ面会に訪れたマルコに、ベニグノはアリシアが現在どうしているか教えて欲しいと頼む。
マルコはベニグノの自宅を借りて滞在する。窓から向かいを覗くと、動けるようになったアリシアがバレエ教室に来ている。植物状態のまま流産したアリシアは、その後意識を取り戻し、杖をつきながら一人で歩けるようになっている。アリシアは師匠カタリナのもとでリハビリを受け始める。
マルコはベニグノの弁護士から、アリシアの回復をベニグノに伝えることを禁じられる。マルコはベニグノに面会するが、アリシアはまだ植物状態であると嘘をついてしまう。ベニグノはアリシアが生きていることに安堵する。
映画『トーク・トゥ・ハー』の結末・ラスト(ネタバレ)
翌朝、マルコの携帯にベニグノから録音メッセージが届く。ベニグノの自殺を示唆する言葉を聞いたマルコは、タクシーで急いで刑務所に向かう。
刑務所に着いたマルコは、自分に宛てたベニグオの遺書を受け取る。アリシアに二度と会えないことに絶望したマルコは、睡眠薬を大量摂取して自ら命を絶っていた。
マルコはベニグノの墓を参り、ベニグノがアリシアに語りかけていたように、ベニグノの墓に向かって自分の心情を全て吐露する。
ある夜、有名アーティストの公演を訪れたマルコは、カタリナとともに来場しているアリシアを見つける。公演の幕間に、マルコとアリシアは偶然言葉を交わす。マルコは、アリシアとは面識のないフリをしている。
アリシアとマルコが離れた後、マルコとベニグノの交友関係を知っているカタリナは、アリシアと何を話したかマルコに詰め寄る。マルコがベニグノの死去を伝えると、カタリナはこの件について改めて話をしようとマルコに提案する。
話をすることは簡単だと言うマルコに、カタリナは、この世に簡単なものなどない、という一言を残して座席へ戻っていく。
映画『トーク・トゥ・ハー』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
本作は、事故で昏睡状態になった2人の女性を愛する2人の男性の友情や、それぞれの愛に関する孤独や苦悩、希望を描いたラブロマンス映画。
ベニグノの余りにも献身的すぎる看護の理由は衝撃的だった。
しかし、アリシアを見守るマルコとベニグノの深い友情、究極の愛の切なさ、奇跡や希望などといったドラマのある物語となっている。
また、淡々と静かに深い感動を味わえ、心に染み入る作品でもある。
ペドロ・アルモドバル監督は『私が、生きる肌』のような変態的な作品のイメージが強かったが、本作はそのイメージを覆した。(女性 20代)
事故後の昏睡状態の女性たちと、彼女たちを支える男性たちの心の機微が非常に美しく、また切なく描かれていました。ベニグノの行動に対しては複雑な思いを抱きましたが、彼なりの「愛」が描かれていて、単純に断罪できない気持ちになりました。終盤のマルコとアリシアの再会シーンには、胸が締めつけられました。(30代 女性)
この作品は、単なる恋愛映画ではありません。コミュニケーションの断絶と、その中で生まれる歪んだ愛情を描いていて、非常に考えさせられました。ベニグノの行為は決して許されるべきではないですが、彼の孤独を思うと胸が苦しくなりました。アルモドバルの描く「愛」の多面性に、ただただ圧倒されました。(40代 男性)
最初は静かで優しい話かと思って観ていたら、衝撃的な展開に言葉を失いました。ベニグノがアリシアにしたことは間違いなく許されないけれど、彼の純粋な愛情が一方通行だったこともまた哀しかったです。静かに泣かされる映画で、ラストには救いのようなものも感じられました。(20代 女性)
ペドロ・アルモドバル監督の美学が詰まった一本。昏睡状態の女性たちとの関係を描くという異様なテーマにも関わらず、決して下品にならないどころか、詩的でさえありました。マルコの流す涙、アリシアの目覚め――すべてが静かに胸を打ちます。映画とはこんなにも人間の深層をえぐることができるのかと、感動しました。(50代 男性)
アルモドバル作品特有の色彩美と細やかな感情描写が際立っていました。ベニグノというキャラクターは非常に危うい存在でしたが、彼の孤独な愛がどこか悲哀を誘います。現実では許されない行為を、映画というフィクションだからこそ昇華できたのだと思いました。観終わった後、しばらく呆然としました。(40代 女性)
感情移入が難しいテーマながら、なぜか登場人物たちの思いに心を寄せずにはいられませんでした。ベニグノとマルコ、二人の男性の「語りかける」という行為が、いかに孤独の中での希望だったのかが痛いほど伝わってきました。ラストのかすかな救いに涙しました。(30代 男性)
芸術作品のような映画でした。静寂の中に流れる緊張感、登場人物たちの微細な感情、すべてが美しく、また苦しかったです。ベニグノの行為の是非を超えて、人を思う気持ちの持つ力と危うさを考えさせられました。何度も反芻してしまうような余韻の深い一本です。(50代 女性)
正直、最初は抵抗感がありました。しかし観進めるうちに、これは単なる犯罪の話ではなく、孤独と愛情の物語なのだと気づかされました。ベニグノに対する嫌悪と同時に、彼の哀しみも理解してしまう自分がいて、複雑な後味が残りました。忘れがたい映画体験でした。(60代 男性)
美しい映像と静かな語り口が印象的でした。ベニグノの行為にはショックを受けましたが、彼が心の底から孤独で、誰かを愛したかったのだということも痛いほど伝わりました。アリシアが目を覚ますラストは、わずかな希望の光を感じられて救われた思いがしました。観る人を選ぶかもしれませんが、私はとても心に残る作品でした。(20代 女性)
映画『トーク・トゥ・ハー』を見た人におすすめの映画5選
オール・アバウト・マイ・マザー
この映画を一言で表すと?
母と子の絆と再生を描いた、痛みと希望に満ちたヒューマンドラマ。
どんな話?
息子を交通事故で亡くした母親が、かつての親友や恋人たちと再会しながら、過去と向き合い新たな人生を歩もうとする物語。スペイン・バルセロナを舞台に、多様な人間模様が鮮やかに描かれます。ペドロ・アルモドバル監督の代表作の一つです。
ここがおすすめ!
個性豊かな登場人物たちと、それぞれの人生を丁寧に描きながら、悲しみを超えた先の希望を見せてくれます。色彩豊かな映像美も魅力で、『トーク・トゥ・ハー』が好きな人には間違いなく刺さる、濃密な感情体験が待っています。
彼女について私が知っている二、三の事柄
この映画を一言で表すと?
日常と孤独を繊細に映し出す、詩のような映像作品。
どんな話?
パリ郊外に暮らす若い主婦を主人公に、消費社会に生きる女性たちの日常と孤独を静かに切り取る作品。ジャン=リュック・ゴダール監督による実験的なナレーションと斬新な映像表現が特徴で、人生の断片が美しく映し出されます。
ここがおすすめ!
ナレーションと映像のリズムに身を任せることで、言葉にできない感情に寄り添う体験ができます。『トーク・トゥ・ハー』のように、登場人物の内面を静かに見つめる作品が好きな方に強くおすすめできる一作です。
愛のむきだし
この映画を一言で表すと?
狂気と純粋が交錯する、型破りなラブストーリー。
どんな話?
厳格なカトリック家庭で育った少年が、愛と救いを求めて盗撮、変態、宗教、暴力といった極端な世界に飛び込みながらも、ただ一人の少女を一途に思い続ける物語。4時間にも及ぶ長尺ながら、一瞬も目が離せないドラマが展開されます。
ここがおすすめ!
純粋さと狂気が表裏一体となった登場人物たちの生き様が、観る者の心を強く揺さぶります。『トーク・トゥ・ハー』で感じた「愛の形の異常さ」に心を惹かれた人には、圧倒的なエネルギーを感じさせるこの作品がおすすめです。
別離
この映画を一言で表すと?
正しさと感情の間で揺れる、人間ドラマの極致。
どんな話?
イランを舞台に、離婚を望む妻と、父親と暮らしながら苦悩する夫、そして介護人との間に起きる誤解と衝突を描く重厚なヒューマンドラマ。アスガー・ファルハディ監督による、日常に潜む葛藤と嘘を丁寧に描いた傑作です。
ここがおすすめ!
誰もが間違っていないのに、誰もが傷ついていく――そんなリアルな感情の連鎖が、静かに心をえぐります。『トーク・トゥ・ハー』の繊細な人間ドラマに魅了された方には、必ず心に残る一本になるでしょう。
マグノリア
この映画を一言で表すと?
人生の偶然と必然を壮大に描いた群像劇。
どんな話?
ロサンゼルスを舞台に、無関係だった人々の人生が奇妙に交錯していく24時間を描いた群像劇。愛、許し、絶望、救済といったテーマが織り交ぜられ、緻密な脚本と圧巻の演出で人間のドラマを浮かび上がらせます。ポール・トーマス・アンダーソン監督作品。
ここがおすすめ!
予期せぬ出来事が重なり合う奇跡のようなドラマ展開に引き込まれます。感情の爆発や絶妙な静寂のシーンは、『トーク・トゥ・ハー』で感じた人間ドラマの深みをさらに広げてくれるはず。重厚な群像劇を味わいたい方におすすめです。
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