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映画『鉄道員』あらすじとネタバレ感想

映画『鉄道員』の概要:「鉄道員」(原題:Il Ferroviere)は、1956年のイタリア映画。監督は「越境者」、「街は自衛する」などのピエトロ・ジェルミ。主演のアンドレア役も同じくピエトロ・ジェルミ。アンドレアの末っ子サンドリーノ役にエドアルド・ネボラ。アンドレアの妻サーラ役にルイザ・デラ・ノーチェ。長女ジュリア役にシルヴァ・コシナ。長男マルチェロ役にレナート・スペツィアリ。

映画『鉄道員』 作品情報

鉄道員

  • 製作年:1956年
  • 上映時間:115分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:ピエトロ・ジェルミ
  • キャスト:ピエトロ・ジェルミ、エドアルド・ネヴォラ、ルイザ・デラ・ノーチェ、シルヴァ・コシナ etc

映画『鉄道員』 評価

  • 点数:90点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

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映画『鉄道員』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『鉄道員』のあらすじを紹介します。

イタリアの鉄道機関士アンドレア(ピエトロ・ジェルミ)はその日の仕事を終え、クリスマス・イブを末っ子のサンドリーノに迎えられ幸せそうに帰路についた。途中でアンドレアは仕事仲間と共に酒屋に寄り、サンドリーノは先に返されるが遅くなった父を再び酒場まで迎えに行く。しかしその中で、家族は体調を悪くした長女ジュリア(シルヴァ・コシナ)の家にいた。彼女は食料品店の息子レナートの子を宿していた。一時は猛反対したアンドレアだったが、その結婚を祝う席で家族皆が笑顔で祝福をした。しかし彼女の子供は死産であった。やがて春が訪れ、アンドレアの誕生祝いの席でも家族は不穏な空気に包まれていたが、献身的な母サーラ(ルイザ・デラ・ノーチェ)がいるおかげで平穏に暮らしていた。そんなある日、アンドレアが家族の事を気を病みながら列車を運転していたとき、彼の目前に一人の若者が線路上に立ちはだかった。慌てて急ブレーキをかけたが間に合わずにその青年を轢いてしまう。その後も信号を見落として、あわや列車どうしの正面衝突寸前という状況に見舞われる。アンドレアは組合の会合で過剰な勤務スケジュールに不服を訴えたが、その意見も受け入れられなかった。家族の不和と仕事のトラブルで板挟みに遭い、仕事の過失に温情を掛けてもらえることもなく、特急列車の機関士から駅構内の古い機関車の運転手へと格下げされ、給与も減少した。無職で仕事に就かない長男のマルチェロ(レナート・スペツィアリ)は、借金取りに追いかけられ、長女のジュリアは離婚同然の状態で、家族の絆は次第に悪化して行く。サンドリーノは家族の崩壊を目の当たりにし、幼い心を深く傷つけていた。ヤケを起こしたアンドレアは、ストライキ中に無断で特急列車の機関室に乗り込みミラノまでの運転を行う。組合員を裏切った形になった彼は、家に帰らなくなり次第に酒に溺れて行く。家族の不和を嘆きながらも懸命に勉強に勤しんだサンドリーノは無事進級を果たし、隠れていた父の許を訪ね、組合員の集まる酒場へと共に向かう。そこにはかつての仲間が集い、アンドレアを快く迎え入れてくれたが彼はその場で倒れてしまう。そしてそのクリスマス・イブの夜、アンドレアは病床から起き出し、サンドリーノと妻サーラと共に久しぶりの食卓を囲む。長男マルチェロも戻り、その後、続々と組合員のメンバーが訪れアンドレアの家は賑やかな夜を過ごした。皆が帰り、ベッドの上で妻のためにギターを奏でていたアンドレアの部屋から音色が途絶え、彼は眠ったように微笑みそのまま帰らぬ人となった。無き父の想い出を胸に抱きながら、サンドリーノは学校への道のりを急ぐのだった。

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映画『鉄道員』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『鉄道員』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

イタリアが生んだ家族ドラマの名作

30年も鉄道の機関士として生きてきた父の家族が抱える苦悩と葛藤を、その末っ子であるサンドリーノの視点から見つめた家族ドラマの名作。厳格な性格の父であるアンドレアは、サンドリーノの英雄的存在でありながら、幾分大人になった長男と長女は父を憎んでいるような存在であり、板挟みになった妻はその間に入りながらも献身的に家族を支えている。50歳になったアンドレアはベテランながらも、飛び込み自殺やハードな仕事で心身を疲労させながら、組合と鉄道公社の間で戦う日々を過ごしており、なかなか家庭を顧みる事が出来ない状況である。日本でもかつて国鉄時代にはストライキなどで国と労働組合がぶつかり、多くの闘争が頻発した事実があるが、イタリアも同じような状況の中で労働者の抱える葛藤は大きく、その中で近代化して行く社会に影響された、若者の迷走というのも並行するように起こっていたのだ。どこにでもこのような出来事は起こっていたのだろうが、それを幼い子供の純粋な視点で描き、社会問題と家族の在り方について考えさせられる人間ドラマである。

働く父の不器用さ

昔も今も働くという事は多くの問題を孕んでおり、仕事の問題というのは、それに依存して生きる家族の問題でもあるが、その長となる父親は仕事の問題を家庭に持ち込まないというのが美学みたいに思われていた。しかし本作の中でサンドリーノと母が二人きりのベッドで泣きながら話していたように、「一番良くないのは黙っていること」であり、誰が正しいか間違っているかは別にして、我慢して話さない事というのが家族にとっては最も辛い事であり、無視されていると思われる要因なのである。確かに話しても解決できない事もあるだろうが、父に依存して生きている家族にとっては、何も話してくれないのは不安を煽られる事でもあり、それを話すように導き心の不安を取り除くというのもまた家族というものだろう。しかし黙っていてもいつかは気づかれてしまうと言う事を不器用な父は気づかず、会話が生まれない家庭の中では、解っているはずの家族の事が解らない状態になってしまう。何でもいいから家族同士で話をするというのは重要な本作のテーマでもあるのだろう。


1956年に制作されたイタリアの映画ではあるが、家族の在り方や親子関係など深く考えさせられる物語だった。末っ子のサンドリーノ以外の子供達から煙たがられているアンドレアだが、悪い人ではないと思う。個人的には、真面目で不器用な人だなと感じた。
アンドレアの気持ちを汲まず、左遷した職場の対応にショックを受けた。その一方で、アンドレアを再び迎え入れた旧友や家族の心の温かさに感動した。最期に幸せな時間を過ごすことができて良かったと思う。(女性 30代)

映画『鉄道員』 まとめ

サンドリーノを演ずるエドアルド・ネボラが素晴らしい子役振りを発揮している。監督を兼ねた主役のピエトロ・ジェルミも頑固な父を見事に演じており、それを取り巻く助演陣も皆、見事な役どころを演じている。働く事の尊さと家族の在り方が入り交じり、複雑な展開ながらもストレートな表現力でまとめ上げたピエトロ・ジェルミの出世作である。忘れてならないのはそのテーマ曲であるが、カルロ・ルスティケッリのもの悲しいメロディが、幼いサンドリーノの繊細な心境を紡ぐように奏でられる。世界中にその名を知らしめたこのテーマ曲が、本作を名作に仕立てた大きな要因の一つでもあり、何度観ても飽きることのないイタリア映画史上に残る名作の一遍である。

みんなの感想・レビュー

  1. 桜塚ひさ より:

    酒場で主人公と共に大合唱するイタリアのおっさんたち。それぞれの人生を彷彿とさせるその居住まいが胸に迫る。さえない人生を送る男たちの連帯と、それでも明るい楽しいひと時を支える酒と酒場の主。どこの世界にもありそうで、もうひとりの主人公の少年の素晴らしい自然な演技とともに心に残る名作。この家庭の本当の大黒柱は母親というところは、日本に似ているとも思いました。