映画『鉄くず拾いの物語』の概要:身重の妻のセナダと二人の娘と共に暮らすムジカは、鉄くずを集めてそれを売り払うことで生計を立てていた。ある日、ムジカが仕事から帰ると妻が倒れていて、腹痛を訴えた。病院へ連れて行くと医師に妻が流産をしていると診断されるが……。
映画『鉄くず拾いの物語』の作品情報
上映時間:74分
ジャンル:ヒューマンドラマ、ドキュメンタリー
監督:ダニス・タノヴィッチ
キャスト:セナダ・アリマノヴィッチ、ナジフ・ムジチ etc
映画『鉄くず拾いの物語』の登場人物(キャスト)
- ナジフ(ナジフ・ムジチ)
- ロマの民族。兄と共に鉄くずを集めて生計を立てている。身重の妻と娘二人の四人で暮らしている。
- セナダ(セナダ・アリマノヴィッチ)
- ナジフの妻。三人目の子どもを身ごもっている。
映画『鉄くず拾いの物語』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『鉄くず拾いの物語』のあらすじ【起】
雪の積もるロマ族の村で暮らすナジフは、身重の妻のセナダと二人の娘を養うため、近所で暮らす兄と共に事故を起こしたまま放置された車や投棄されたガラクタから、鉄くずを集めて業者に売り払う仕事をしていた。
兄と二人で集めた鉄くずを町の回収業者に引き渡し、僅かにしかならない金を受け取った二人は、酒場に寄った。そこで煙草を吹かしながら家庭の愚痴をこぼしたり、冗談を言い合うのが二人の些細な楽しみだった。
村に戻って兄と別れたナジフは、夕食を作るセナダと子供たちの元に帰った。妻と抱擁し、子供たちとテレビを観る。そうして、家族との団欒を過ごしたナジフは、夜が明けると再び仕事に出かける。裕福でこそなかったものの、一家は幸せに暮らしていた。
ある日、いつもの様にナジフを見送った妻は、子守をしながら小麦で作った生地を練る。パイを焼き上げた後は、洗濯をこなす。その日も普段と同じように家事を終えるはずだった。しかし、物干しを済ませたところでセナダは腹痛に苦しみ、寝込んでしまう。
映画『鉄くず拾いの物語』のあらすじ【承】
仕事から帰ってきたナジフはセナダの様子を見て病院に行こうと提案するが、セナダは一日様子を見ると言って動かない。明くる日、ナジフがセナダを町の病院に連れて行くと、そこで彼女は流産していると診断される。早く治療をしないとセナダ自身も危ないと言われた一家は、失った命を悲しむまもなく紹介状を手に、産婦人科へと向かう。しかし、保険証を持たない彼らは高額な医療費を支払えず、ナジフは分割払いを提案するが病院はそれも受け入れない。
金を工面できず、渋々村に引き返したナジフはセナダの手術費を稼ぐため、これまで以上に懸命に鉄くずを集めた。しかし、稼ぎは微々たるもので、そうしている間にもセナダの病状は悪化していった。痛みを訴える妻を再び病院に連れて行き、医者に手術をしてくれと懇願するナジフだが、病院側は聞く耳を持たず、二人はまたしても村に引き返す。
自分の力だけでは妻を救えないと悟ったナジフは、ロマ民族女性協会を介して社会福祉事務所に助けを求める。しかし、社会福祉事務所にも見捨てられ、ナジフは慈善団体の職員に「戦争中の方がまだよかった」と嘆く。耐えられない光景だったが、それでもマシだと。
映画『鉄くず拾いの物語』のあらすじ【転】
「なぜ神様は貧しい者ばかりを苦しめる」兄にそう愚痴をこぼすナジフだが、彼は諦めず別の慈善団体にもかけ合った。その甲斐あってようやく手術を受けられる段取りが整ったというのに、セナダは家から出ようとしない。ソファーの上で寝込んだまま、どうせ今度も断られると呟く。慈善団体の職員も説得に加わるが彼女は応じない。病院に二度も拒まれたせいで、セナダは治療を諦めてしまっていた。ナジフが義母から保険証を借りると言っても、妻は無駄だと言って聞かない。
どうにかセナダを説得して、保険証も手に入れた一家は病院へと向かった。手術室へと運び込まれるセナダ。病院の廊下でナジフは子守りをしながら、妻の手術の成功を祈り続けた。
手術室から現れた医者は「危ないところだった」とナジフに言う。「もう少し遅かったら手遅れになっていた」ナジフは医者の言葉の続きを待つ。「手術は成功した」と医者は言った。ナジフは安堵し、子供たちと喜び合う。
映画『鉄くず拾いの物語』の結末・ラスト(ネタバレ)
一家はセナダの回復を待ってから帰路に着いた。これで、平穏な暮らしをようやく取り戻すことができる。そう思ったナジフたちだったが、彼らの苦難はまだ終わらなかった。一家が自宅に戻ると、なぜか部屋の電気が全くつかない。わけを確かめるため、兄に留守中に起こったことを尋ねるナジフ。兄は電気会社の社員の仕業だと答えた。電気代の支払いを催促にやってきた電機会社の社員に、彼は「弟は妻を病院に連れて行っているところだから、待ってやってほしい」と頼んだ。しかし、電気会社の社員は聞き入れてはくれず、結局、電気を止められてしまったと言うのだ。
電気が無ければ寒い村で暮らすことは困難だった。妻の手術代の支払いで金のないナジフは、自分の車を分解することに決める。部品を切り分け、兄の車に積んで、回収業者に引き渡す。そうして得た金で電気会社への支払いを済ませると、再び家のテレビに電気が灯った。根気強く問題に立ち向かい続けたナジフたちに、やっと日常が帰ってきた。
映画『鉄くず拾いの物語』の感想・評価・レビュー
なんとも暗いお話で一生懸命生きようとしている人を見捨てるような世の中に嫌気が差しました。
幸せの価値観は人それぞれで、彼らはお金持ちになることなんて望んでおらず、ただ毎日を平凡に幸せに暮らしていければ良いと思っていたのでしょう。
しかし、災難が重なるとギリギリの毎日を生きている彼らは明日をも見えない状況になってしまいます。困難に屈さずに懸命に立ち向かっていく様子に涙が出ました。
お金はなくても、大切な家族と毎日を暮らしていけることはどれほど幸せなことなのだろうと思い知らされます。(女性 30代)
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