デンゼル・ワシントン主演の伝記映画。黒人差別と関わりの深い冤罪事件を元にしている、社会性のあるストーリーが見どころ。デンゼル・ワシントンはアカデミー賞で主演男優賞にノミネートされた。監督は『夜の大捜査線』『ジーザス・クライスト・スーパースター』などのノーマン・ジュイソン。
映画『ザ・ハリケーン』 作品情報
- 製作年:1999年
- 上映時間:145分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:ノーマン・ジュイソン
- キャスト:デンゼル・ワシントン、ジョン・ハナー、デボラ・カーラ・アンガー、ロッド・スタイガー、ビセラス・レオン・シャノン etc…
映画『ザ・ハリケーン』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『ザ・ハリケーン』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『ザ・ハリケーン(1999)』のあらすじを紹介します。
主人公はルービン・”ハリケーン”・カーター(デンゼル・ワシントン)。彼は13歳の時、人種差別がきっかけで少年院に収容されます。少年院でボクシングの技術を身につけ、釈放後はプロボクサーとして活躍。世界ミドル級王者になりましたが、またも人種差別で無実の罪を着せられ、終身刑になってしまいます。彼は自らの伝記を出版した後、完全心を閉ざしてしまいました。
一方、古本市で彼の伝記を購入した黒人少年レズラ(ヴィセラス・レオン・シャノン)は、本を読むうちにハリケーンに共感し、彼に手紙を出しました。これがきっかけで二人の間に友情が生まれ、ハリケーンは生きる歓びを復活させていきました。レズラは彼を支援してくれているカナダ人たちとハリケーンの事件の闇を調査し、人種差別と冤罪に立ち向かうのでした……。
映画『ザ・ハリケーン』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ザ・ハリケーン』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
なぜ前半が現代パートとクロスしているのか?
物語は常にレズラが中心にいました。前半はハリケーンの伝記を読んだ彼の想像だと考えられますし、前半と後半の繋ぎを果たしたのは彼とハリケーンの友情を育む過程です。
なぜ前半部分に現代パートがある理由は何だったのでしょうか。もちろん、物語を円滑に進めるため、カナダ軍団がハリケーンと接触するまでの時間を短縮するためですが、更にもう一つの理由を見つけることができます。それはこのような黒人差別、冤罪は現在も続いているから、昔の話だと思われないようにするためです。今もアメリカ南部では黒人差別が根強く残っており、この映画のように、黒人が被告人の裁判で陪審員が全員白人ということもあるのです。
このようなアプローチは観客にハリケーンやカナダ軍団に感情移入させ、かつ客観的に物語を見守らせることができます。実に素晴らしい手法ですね。
フィクションな部分はどこ?
この映画は史実に基いていますが、フィクションも含まれています。ハリケーンを陥れた差別警官は映画オリジナルですし、ハリケーンを支持し、アメリカに移住して事件を調べたカナダ人は全員で9人でした。その他は基本的にノンフィクションです。
ハリケーンは1994年に改めてチャンピオンとして認められました。名誉を挽回し、冤罪者を支援する団体の責任者になったところまでは映画で描かれていましたが、彼は今年の4月に亡くなりました。
多様な社会、差別のない世界と言葉では言われていますが、実際は無くならないのが人種差別の問題でしょう。日本で生まれ、日本人としてこの土地で生きている私は人種差別を身近に感じたことはありません。しかし、アメリカでの白人と黒人の無くなることの無い溝や悲惨なニュースを見ると、たまたま自分がラッキーなだけで、いつ差別を受け、不当な裁きを受ける立場になってもおかしくないと感じました。
差別のない世界にしようと叫ぶよりも、まずはその根底にあるものを知り、知識や理解を深めることが第一歩かなと、様々なことを考えさせられる作品でした。(女性 30代)
映画『ザ・ハリケーン』 まとめ
実によく出来た映画です。先述の手法を始めとして、ハリケーンとカナダ軍団に友情が芽生え始め、ともに戦うまでの過程が実に感動的で、素晴らしい。ガウン一つであそこまでの感動を生み出せる映画はそう無いでしょう。
前半はハリケーンの伝記に沿った彼の話、後半はハリケーンとカナダ軍団の戦いを描いており、それぞれの繋ぎが友情を育むシーンですが、これ以上の繋ぎはないですね。前半はやや退屈な場面がありましたが、後半はサスペンスとしても楽しめる出来栄えで、好評化されているのも頷けます。欠点があるとすれば、カナダ軍団が事件の真相に迫ろうとする動機が弱いこと。ここに疑問を持ちすぎると物語に乗れないまま終わってしまいそうです。
これまで差別なんて考えたこともないような人にも是非身てほしいものです。
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