映画『トイレのピエタ』の概要:手塚治虫が日記に残したアイデアをもとに作られた作品。余命3ヶ月を宣告された元画家志望の青年と、窮屈な日々を生きる女子高生との奇妙な関係を描いた。主演はバンドRADWIMPSのボーカル、野田洋次郎。
映画『トイレのピエタ』の作品情報
上映時間:120分
ジャンル:ラブストーリー、青春、ヒューマンドラマ
監督:松永大司
キャスト:野田洋次郎、杉咲花、リリー・フランキー、市川紗椰 etc
映画『トイレのピエタ』の登場人物(キャスト)
- 園田宏(野田洋次郎)
- 冷めた雰囲気の青年。画家を目指していたが諦め、窓拭きのバイトをしながら生活していた。胃がんが見つかり、入院することになる。検査結果を聞くため、ロビーでもめていた真衣に妹のふりを頼んだ。
- 真衣(杉咲花)
- 感情の起伏が激しい女子高生。制服を破かれ、サラリーマンに1万円払えと騒いでいたところ、千円で宏に妹のふりを頼まれる。認知症の祖母の世話と家事をしながら学校に通っている。
- 横田(リリー・フランキー)
- 食道がんで入院している中年男性。宏の隣のベッド。飄々としていて、カメラを手放さない。
映画『トイレのピエタ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『トイレのピエタ』のあらすじ【起】
絵描きになる夢を諦め、窓拭きのバイトをして生活している園田宏。
バイト中に、元カノ尾崎さつきと再会する。
同じ美術学校に通っていたさつきは、賞を受賞したり個展を開くなど、有名な画家になっていた。
倒れて病院で検査を受けた宏は、家族と一緒に検査結果を聞きに来るようにと言われる。
そして、さつきに姉のふりをしてほしいと頼む。
絵の話になると、自分には絵を描き続ける才能だけはあったと吐き捨て、さつきは帰ってしまう。
ロビーで、制服が破けたからお金を払えとサラリーマンに絡む少女を見かける。
お金を払うから妹のふりをしてくれと頼み、検査結果を聞く。
胃に悪性の腫瘍があり、余命3ヶ月だと言われる宏。
少女は宏に、今から死んでしまおうと持ち掛ける。
少しバイクを走らせると、宏は少女を降ろして去っていった。
その後、朝まで飲んで倒れた宏は病院に運ばれる。
地元に戻ってくるように言う両親をあしらい、宏の入院生活が始まる。
隣のベッドの横田は、食道がんで入院しているらしい。
映画『トイレのピエタ』のあらすじ【承】
抗がん剤の副作用に苦しむ宏は、病院から抜け出した。
バイトに戻るが、抗がん剤の副作用ですぐに調子が悪くなる。
やがて町中で騒ぎを起こした宏は、病院に連れ戻される。
再び入院生活が始まり、横田に連れられて院内学級を見に行く。
院内学級にいた拓人から、ケーキと塗り絵の紙をもらうが、宏は捨ててしまった。
間違えて渡したと拓人が戻ってくるが、ケーキのついた塗り絵を見てショックを受ける。
それでも「お兄ちゃん」と慕ってくる拓人。
宏は偽の妹・真衣に連絡して、ノートと戦隊ものの本を買ってきてもらう。
それを見てノートに絵を書き、拓人にプレゼントした。
母から家事と、認知症の祖母の世話を任されている真衣。
彼女は気まぐれに宏の元を訪れ、外出に付き合わせるようになった。
真衣に付き合って外出していた宏は、さつきと偶然会う。
個展で世話になったという男性を紹介されるが、絵を止めた宏は嫌味を言われる。
言い返せない宏に代わり、真衣が嫌味を返した。
映画『トイレのピエタ』のあらすじ【転】
横田の退院が決まる。
宏が横田に生きている意味を聞くと、死にたくないからだという。
拓人に頼まれ、拓人の母と3人で教会に行った宏。
拓人は余命半年と言われたが、治療の甲斐あって、手術がうまくいけば退院できると言われていた。
ピエタという、死んだ我が子を穏やかな顔で抱えた母の像の前で、それを聞いた宏。
拓人の母は、自分たちにとって必要な時間なのだと語った。
帰り道、自転車で逃げる真衣と水着姿で真衣を追う男子生徒を見かけた宏。
それを見て、拓人に自分も手術することを打ち明け、頑張ろうと励ましあった。
しかし拓人は死んでしまった。
拓人の母から、拓人の絵を描いてほしいと頼まれる宏だったが、それを断ってしまう。
病院に来た真衣と、外で何か食べようという話になり、喧嘩する宏。
病気はずるい、自分だけがつらいと思うなと言う真衣に、苦しいものは苦しいと答える宏。
喧嘩の末に、お互いに死ねと言って別れる。
そして宏はガンの転移が見つかる。
死ぬまでの時間をどう過ごすか、選択を迫られる宏。
映画『トイレのピエタ』の結末・ラスト(ネタバレ)
宏は実家に戻り、地元の病院に転院しようと考えていた。
東京に戻り、真衣を呼び出した宏は、田舎の病院に移ると言って別れを告げる。
暇かと尋ねられ、死ぬほど暇だった宏は、真衣と一緒に夜の学校のプールで泳ぐ。
ひたすらに苛立ちをぶつける真衣に、自分の辛い気持ちを伝える宏。
真衣は宏にキスをして、ファーストキスだから責任を取れと言う。
東京のアパートで最後の時を生きることにした宏。
横田は再入院していた。
横田を連れてアパートに戻り、準備をした宏は、トイレに絵を描き始める。
なぜトイレに描くのかと聞かれた宏は、浄化と昇天がテーマだからと答える。
手伝いに来る横田はいつもふざけていたが、一度だけ弱音を吐いた。
そして絵は完成し、トイレの中に描かれた真衣の腕の中で目を閉じた宏。
その後、病院の受付で、宏の転院先を教えろと騒ぐ真衣の姿があった。
それを見かけた横田は、宏の死を教えて絵を見せる。
横田に死ぬ方法を尋ねる真衣だったが、わからないと言われるだけだった。
映画『トイレのピエタ』の感想・評価・レビュー
野田洋次郎も杉咲花もリリー・フランキーもとても良かった。
杉咲花の感情をイライラとぶつける姿は見ていて苦しくなる。
トイレに絵を描いていく洋次郎のまっすぐな瞳がまた悲しい。
美しくて悲しくて素敵な作品。
「僕、今、生きていますよ」死がリアルに近づいてきて初めて生について真摯に向き合えるのかな。単純に日々生きている自分が恥ずかしくなる。
エンディングに流れる「ピクニック」がとても胸にしみる。(女性 40代)
死にたい女子高生と病気の青年というよくありそうな設定だったが主演の野田洋二郎さんの演技が素晴らしかった。
正直、歌手である野田洋二郎さんが主演という事であまり期待せずに見ていましたが、独特の世界観が上手に出ていて逆にとても良い作品になっていたと思う。
テーマとしても生と死という重いものになっているが他の役者さんの雰囲気などもあり変に重苦しく見えなくてよかったなと思う。
生きるという事について考えていきたい時にこの作品を見るとより考えさせられるのでおすすめの作品。(女性 20代)
主演の野田洋次郎はとても良かったと思う。彼は普段歌手として活動しているが、彼の作る歌は彼の世界観を表現している。つまり普段から表現者であるが故に、俳優としての活動も苦ではないのだと思う。
ストーリーもそこまで複雑ではなくわかりやすかった。野田洋次郎の歌のように感情が複雑に絡み合ったストーリーも見てみたかったが、今作はこれで良かったのかもしれない。次回の彼の作品に期待したい。
ついでに語る程度ではもったいないくらいにリリー・フランキーも良かった。病人なのに主演を食うほどの存在感は彼ならではである。(男性 20代)
感情をむき出しにしてぶつかり合う宏と真衣の姿に、心が引っ張られるような作品だった。余命宣告を受ける辛さだけではなく、生きることへの苦しさや辛さについても考えさせられる物語だった。
苦しい現状から脱却できず感情を爆発させる真衣の姿が、痛々しくもあったが理解できる気持ちもあった。宏も真衣も種類は違えど、同じようにどうにもならない苦しい気持ちを抱えていたからこそ、通じ合うことができたのかなと思った。(女性 30代)
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