映画『友だちのパパが好き』の概要:自分の父親に好意を寄せる友人に振り回される女子大学生。両親の離婚も重なり、感情が乱れる中で恋人との関係を拠り所にして過ごす。父親の愛人も加わりとある家族の関係性が変わる様を描く。
映画『友だちのパパが好き』の作品情報
上映時間:105分
ジャンル:コメディ、ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:山内ケンジ
キャスト:吹越満、岸井ゆきの、安藤輪子、石橋けい etc
映画『友だちのパパが好き』の登場人物(キャスト)
- 霜崎恭介(吹越満)
- 愛人がいることがバレてしまい、離婚することが決まった妙子の父。女性関係にだらしなく、押しに弱い。
- 霜崎妙子(岸井ゆきの)
- 恭介の娘。友人のマヤから父親が好きだとカミングアウトを受け戸惑いながらも、友人関係を続けている。大学生になり一人暮らしを始めたが、心の拠り所の恋人と住もうと考え始める。
- 吉川マヤ(安藤輪子)
- 妙子の友人。妙子と同じ大学を受験したが落ちてしまい、フリーターである。母子家庭で育ったことから、父親と近い年代の男性と好んで付き合っている。
- 霜崎ミドリ(石橋けい)
- 恭介の妻。夫の浮気と自分の乳がんが同時に降りかかり、怒りを覚えられないまま離婚に至った。表情豊かなタイプではなく、常にクールである。
- 生島ハヅキ(平岩紙)
- 恭介の愛人。妊娠が発覚し、恭介には言い出せずにいる中でマヤに振り回され葛藤する。
- 村井コウジ(前原瑞樹)
- 妙子の恋人。冷静な妙子を陰ながら支えている存在。マヤと絶妙な距離を取る妙子を微笑ましいと思っている。
映画『友だちのパパが好き』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『友だちのパパが好き』のあらすじ【起】
妙子が羨ましいというマヤ。なぜなら妙子の父・恭介がタイプだというのだ。冗談だと思いながらも、しつこく父を褒めたたえるマヤを「変態」だと妙子は言い放つ。そんなことを言いながらも妙子とマヤは一緒に出掛けていく。
後日、マヤは駅でそわそわとしていた。恭介を待ち伏せしていたのだ。偶然を装って恭介に話しかけたマヤ。実はバイト先でよく恭介を見かけていた話すきっかけを作った。一緒に帰りながら妙子を褒めるマヤ。同じ大学を受けていた二人だったが、マヤは不合格、妙子は受かったのだ。話ながら不意に2ショット写真を撮ったマヤは、連絡先の交換まで済ませたのである。
その頃、妙子は恋人のコウジと一緒に居た。愚痴交じりにマヤが変だと話す妙子だったが、コウジはいつもマヤのことを話す妙子を微笑ましく思っていた。そんな妙子は、大学進学を機に一人暮らしを始めようとしている。自宅では、恭介とミドリが神妙な面持ちで話し合っていた。ミドリは恭介に聞く「家は見つかった?」と。まだ妙子は知らないが、二人は離婚するつもりなのだ。重い空気を変えようと恭介は、マヤと偶然会ったことを話し出した。ミドリは思い出したように「あなたのことが好きなんだって」とマヤのことを切り出した。まんざらでもない恭介の表情に、ミドリは呆れかえり鼻で笑うのだった。実は恭介は愛人がいることがバレてしまい離婚を切り出されていた。
産婦人科で一人の女性が「妊娠7週目」の診断を受けていた。その女性はハヅキ。恭介の愛人である。
映画『友だちのパパが好き』のあらすじ【承】
とある日、マヤは高校時代の教師・田所と話し合っていた。こっそりと付き合っていた二人。その様子を木陰で見守る妙子はタイミングを見計らって助けに出る役目だった。未練を隠し切れない田所はしつこく食い下がる。キリがないと感じたマヤは「好きな人ができた」と言い切りその場を去るのだった。その場に残された田所は、一人泣き崩れた。
帰り道、喫茶店に寄った二人。「好きな人」は恭介だと言うマヤに対して、母子家庭の影響による「ファザコン」ではないかと妙子はなだめた。しかし、マヤの姿勢は変わらない。自分の気持ちは「純愛」だと言い切るマヤ。呆れかえり「父か私か」と冗談で選ばせようとしたが、マヤは間髪入れずに「恭介さんに決まってる」と答えるのだった。苛立ちを隠せなくなってきた妙子は、投げやりに「いつでもくれてやるよ、あんなオヤジ」と言い放つが、マヤはポジティブに受け取ってしまう。空気が固まった矢先に、コウジが現れる。先に帰ろうとしたマヤは「ありがとう」と言って店を後にするのだった。残された妙子はコウジの家へ一緒に向かった。
コウジの家に着いてからもマヤの話をしてしまう妙子。常識外だと怒る妙子に対して、「マヤは自由だ」と肯定的になだめた。自分とは違い惚れっぽいマヤに嫉妬するように、妙子は何度も不満を口にするのだった。
恭介とミドリが離婚について妙子にカミングアウトする日がやって来た。両親の関係性の異変に気づいていなかった妙子。陽気に話をしようとする恭介はお互いの旅立ちに乾杯しようと提案する。妙子が離婚の理由を尋ねると、恭介は誤魔化そうとするがミドリは愛人がいた事実を口にする。不意にマヤのことが頭に浮かんだ妙子は、真に受けないように恭介に注意し、自分の部屋に戻ってしまった。妙子は両親の離婚をマヤに電話で報告した。ちょうどその時、恭介とのツーショット写真を見て思いに更けていたマヤは、理由も聞かずに喜ぶ。翌朝マヤは早速、恭介にLINEで離婚することを聞いたと報告するのだった。
恭介はハヅキに離婚が決まった報告をしていた。子供を産むべきか悩んでいたハヅキは、恭介が再婚してくれると思い込み喜ぶ。その様子を見て戸惑う恭介。空気を察したハヅキは、産むかどうかは自分で決めると言い切るのだった。ハヅキがトイレに立った隙を見て、恭介に話しかけるマヤ。実は恭介の後をつけて、盗み聞きしていたのだった。そんなマヤの様子を見て妙子の助言は正しかったと笑う恭介。マヤはいたって真剣に、「真に受けて欲しい」と伝えるのだった。ハヅキがトイレから戻ると、マヤは妙子のフリをして「父の財布を届けに来た」と会話を続けた。加えて、母は離婚が原因で寝込んでしまったと余計な嘘をついて去っていったのである。
映画『友だちのパパが好き』のあらすじ【転】
ミドリは職場で離婚について話していた。一緒に居る川端はミドリに好意を寄せている同僚の一人である。ミドリは恭介の浮気に気づいたとき、怒りが湧かなかったと言う。それは東日本大震災の頃に発覚したというのもあるが、同時にミドリの乳がんが発覚したからであった。不幸中の幸いで、ミドリの乳がんは発見が早く乳房を残したまま病状は落ち着いている。離婚を決断した後になって、恭介に対しての怒りは大きくなっていた。そんな悲壮感溢れるミドリの話を聞き、チャンスだと思った川端はミドリを口説き始める。断るミドリをよそに、川端は気持ちを抑えきれずに襲い掛かってしまうが、同僚に見られてしまうのだった。
喫茶店を出て別れた恭介とハヅキ。恭介を待ち伏せていたマヤは、ビルの隙間に連れ込みキスをするのだった。マヤの強引さに押し切られた恭介はあっさりと一線を越えてしまう。そんな状況とは知らず妙子は、マヤへ嫌味なLINEを送った。しかし、マヤからの返信はあっさりしたもので、妙子は腑に落ちないままであった。
ハヅキは帰り道に踏切で揉める2人の男性を見かけた。自殺を試みた男性を止めようと揉めていたという。踏切に飛び込もうとした男性は田所であった。通りかかりの生徒にも目撃されていた田所は、虫の居所が悪くなりその場から逃げるのであった。帰宅したハヅキは、夕食を準備しながら恭介を待っていた。しかし恭介から「仕事で忙しくて行けない」とだけ連絡があった。
マヤの素っ気ない反応が面白くなかった妙子は、気分を変えるためにコウジに同棲を提案する。その頃、ミドリも気分転換に川端と一晩を過ごしていた。病気のことを気に掛けるミドリに対して、ポジティブな返答をする川端だったがミドリはきっぱりと再婚する気はないと告げるのだった。
田所は母の介護を強いられる中で、失恋の傷から立ち直れずにマヤの周りをうろついていた。追い込まれた田所は包丁を持って外出する。その頃、恭介はマヤと落ち合う前に自宅へ立ち寄っていた。ミドリから離婚届を出したと報告を受け、来週には引っ越すと言い自宅を去るのであった。ミドリはハヅキの自宅へ身を寄せると勘違いし、恭介に呆れた様子で妙子に近況を聞くのであった。
映画『友だちのパパが好き』の結末・ラスト(ネタバレ)
ミドリは落ち込んでいると勘違いした妙子は、食事を作ろうとスーパーへ買い出しに誘う。偶然同じスーパーで鉢合わせたミドリとハヅキ。マヤの嘘を信じていたハヅキは、ミドリの体調を気遣って声をかけるが、話がかみ合わない。“娘”だという「妙子」にあった話をしたミドリの前には、本物の妙子がいた。自分があった「妙子」は偽物だと気付いたハヅキ。そして妙子もすぐにマヤの仕業だと勘づくのであった。
その頃、マヤは恭介と公園で待ち合わせをしていた。その背後には田所がいる。二人の様子を見守る田所。感情が高ぶっているマヤは、恭介に逃避行したいとわがままを言う。押し倒して何度も繰り返すマヤのわがままに、恭介は頷き「今すぐ行こう」と煽るのだった。同じ頃、妻と愛人に小さな嘘がバレていることを知らずに。
マヤの身勝手な発言にしびれを切らした妙子は、電話して呼び出した。 “逃避行”について報告すると意気込んで、恭介を公園に残し妙子に会いに行くマヤ。妙子は早々にマヤを問い詰めた。マヤは何のためらいもなく「ハヅキに身を引いて欲しいから」と理由を述べ、恭介との関係を話し始めた。友人の行動力と父親の不義理さに呆れかえる妙子。さらにマヤは、逃避行後に少しだけ妙子のアパートを借りたいと願い出るのだった。
その頃、恭介はハヅキにようやく連絡をしていた。冷静に問い詰めるハヅキだったが、電話口の恭介の様子が変わる。田所が持参した包丁で恭介を襲ったのだ。状況が読めないハヅキはミドリに助けを求めた。ミドリは妙子に連絡し、恭介の行方を予想する。ミドリからの連絡で勘づいた妙子は、マヤに恭介の居場所を聞き出す。恭介の異変を知らせた矢先、マヤは元居た公園へ走り出した。
公園では恭介が血を流して倒れこんでいた。その奥では田所がうずくまり嘆いている。妙子が救急車を呼ぶ間、マヤは恭介に刺さった包丁を取り自分を何度も刺すのだった。狂気的な現場を目の当たりにした妙子。何とか恭介は一命を取り留めたものの、許すことはできなかった。恭介に目を覚ませようとマヤが死んだことにする妙子。しかし恭介は、自分のためにマヤが自殺を図ったと知り、より気持ちを高めるのだった。タイミング悪く、マヤが隣の病室からヨタヨタとやって来る。マヤが生きていることに安堵する恭介を見て、妙子とミドリは病室を去った。マヤの支えとなる松葉つえを蹴り倒して。その様子を見たハヅキも、マヤの傷口を押さえつけてから病室を出た。
病院の受付にはコウジが来ていた。妙子の家庭事情を知り心配したのである。ミドリと初めて会うコウジ。妙子は“一応”付き合っている人と紹介し、ミドリの誘いで3人は食事に向かう。その横を何とも言えない表情で、追い越すハヅキ。病室では、恭介とマヤが見つめ合うのであった。
映画『友だちのパパが好き』の感想・評価・レビュー
「信じる者は救われる」この作品を見た後、一番に思い浮かんだ言葉である。妙子の視点で受ければ、マヤは圧倒的に気持ちが悪い。いや、ミドリとハヅキの視点からでもだ。家族の物語である中で、マヤの母親は一切見えてこない。母子家庭である情報のみで人物像が分からないが、唯一「父親を求めている」ということなのだろう。唯一普遍的なコウジの存在。いやしかし、状況が彼を「普通」に見せているが、決して男前ではない彼の発言も時たま気持ちが悪い。至って普通なのは誰なのか。普通とはなんだ?そんな余韻に追い込まれた一作であった。(MIHOシネマ編集部)
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