映画『トラスト・ミー』の概要:妊娠して学業からリタイアした16歳の少女と、学業には長けているものの仕事が続かず社会からドロップアウトしてばかりいる青年。二人が偶然出会い、互いに惹かれあう様を紡いでいくハル・ハートリー監督・脚本の長編第2作。
映画『トラスト・ミー』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:ハル・ハートリー
キャスト:エイドリアン・シェリー、マーティン・ドノヴァン、メリット・ネルソン、ジョン・A・マッケイ etc
映画『トラスト・ミー』の登場人物(キャスト)
- マリア(エイドリアン・シェリー)
- 恋人・アンソニーとの間に子供ができてしまい、結婚するつもりで高校を中退した少女。激怒した父親が心臓発作を起こし目の前で絶命する。母親・ジーンを見守ることを使命だと思い、家庭に囚われ続けている。
- マシュー(マーティン・ドノヴァン)
- 父親・ジョンの酷い仕打ちに耐えながら、自宅と職場の往復を繰り返していた青年。学力は人よりも秀でているが、人とのコミュニケーションが苦手で仕事に活かせずにいる。
映画『トラスト・ミー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『トラスト・ミー』のあらすじ【起】
妊娠して高校を中退することとなったマリア。反省の見えない態度に、父親は思わず手をあげてしまう。アンソニーと結婚すると言い張るマリアだが、当のアンソニーはスポーツの実力を認められ、大学への進学が決まっていた。マリアが反抗して家を出た直後、ジョンは心臓発作を起こし、命を落とした。
コンピューター工場の製品チェック係として働くマシュー。学はあるが、常識に欠けているマシューは、チープなコンピューターを作ることに飽き飽きし、上司に反抗する。挙句の果てに、仕事を辞めてしまった。
マリアはアンソニーに妊娠のことを告げた。しかし、アンソニーは酷い暴言をマリアに浴びせ続ける。絶望したマリアは、アンソニーに何も言い返すこともできず、その場から逃げ去ったのだった。
帰宅したマシューを待ち構えていた父親。仕事を辞めてしまったことをひどく咎め、「ろくでなし」とぼやく。外面だけはいい父親はマシューに対して掃除するように命令する。父親から酷い仕打ちを受けていたマシューは、自宅でも孤独だった。
映画『トラスト・ミー』のあらすじ【承】
中絶を検討するマリア。婦人科を一人訪れたが、途方に暮れた様子にマリアを見て看護師はすぐに状況を察する。話を聞き、心をなだめてくれた。
マリアが帰宅すると親戚が集まっていた。ジョンの死を知らなかったマリアだが、母親・ジーンは怒りを示し、マリアを自宅から追い出した。再び途方に暮れるマリア。そっと近寄ってきた叔母は、5ドルを手渡す。
叔母は夫に出産を反対され、精神病棟にいたことを明かす。モヤモヤとしていたマリアは5ドルを手にビールを買いに行くが、店員に邪魔される。店員に執拗に迫られたマリアは煙草を店員の目に押し付け何とか逃げ出すのだった。
マリアは叔母が赤ん坊の誘拐をしたと気づいていた。誰に話すこともできないマリアは、ビールを飲み干し酔いつぶれる。その様子を見たマシューはマリアに声をかけ、寝床を提供するために自宅に連れ帰るのだった。
マシューが職探しに言っている間、マリアはシャワーを借りていた。タイミング悪く居合わせたジョンは帰宅したマシューを殴りつけ、マリアを追い出した。
ジョンの仕打ちに耐えかねたマシューは、家を飛び出しバーでマリアの姉・ペグと出会う。マシューを探していたマリアは、自宅に招き身を隠すように諭した。
マリアの自宅では怒りを抑えきれないジーンが待ち構えていた。「一生こき使う」と強く命令するジーンの態度に、マシューはマリアが同じ境遇に置かれていることを察した。
映画『トラスト・ミー』のあらすじ【転】
ジョンが朝鮮戦争から持ち帰った手りゅう弾をお守りのように持ち歩いているマシュー。マリアはそっと手りゅう弾を預かり、マシューの手を取った。
マリアの優しさに触れ、マシューは中絶をやめ結婚しようとマリアに提案する。結婚を受け入れたマリアは、たばこをやめ工場で働き始めた。マシューもまた、生活するために家電修理工場での仕事を開始する。
マリアに対するジーンの厳しい態度に違和感を覚えるマシュー。ジーンはマリアに「償い」をさせるために、家から出すつもりはないと言い切る。マシューはマリアに家を出ようと提案するが、「ママを看なきゃ」とマリアは責任感に追われていた。
マシューは過去の悪態を隠して働いていたが、職場に知られてしまった。それでも家庭を持つためには働かないとならないマシューは、興味のない仕事でも頭を下げて働かせてもらう決心をする。その頃、ジョンはマシューの行方を探し回っていた。
叔母の夫を探し続けていたマリアは、マシューの知恵を借りながらようやく見つけることができた。借りていた5ドルを返し、達成感に満ち足りたマリア。しかし、嫌な仕事を続けているマシューが日に日に仕事の文句を言うようになったことに不満を覚え始めていた。
映画『トラスト・ミー』の結末・ラスト(ネタバレ)
話し合おうとするマリアだが、マシューははぐらかしてしまう。マリアが気晴らしに買い物に出た間に、ジーンはマシューに「お酒で勝負しよう」と提案する。家族についての価値観を話し合いながら飲み続ける二人。マシューはジーンの策略通り酔いつぶれてしまった。
コンビ二で看護師と鉢合わせたマリア。「後悔は繰り返す」と看護師医に言われ胸に刻む。帰り道アンソニーに声をかけられたマリア。荷物を運んでもらうが復縁を迫られ、必死に断って帰宅した。
ジーンに命令され、ペグの部屋に向かったマリア。そこには裸でベッドに横たわるマシューとペグがいた。それは全てジーンの企みだった。
翌日、マリアはマシューに内緒で中絶手術を受けた。一方で、マシューは職場で上司にアドバイスしたことを機に言い合いになり、仕事をやめざるを得なくなってしまった。
マリアが帰宅すると、マシューとジョンが言い争っていた。ジョンが手を止めた隙に、マシューの元へ駆け寄り介抱するマリア。そして中絶したことと結婚をやめたいという本音を打ち明けた。
途方に暮れたマシューは家を出ていった。引き出しにしまっていたはずの手りゅう弾がないことに気付いたマリアは、マシューの職場へ駆けつける。
職場前には多くのパトカーが停まっていた。マシューが手りゅう弾を手に立てこもったのだ。人の波をかき分けて中に忍び込んだマリア。そこには手りゅう弾のピンを抜いたマシューが座り込んでいた。
「不発弾だった」というマシューの手から手りゅう弾を取り上げたマリアは、遠くへ投げ捨てる。しばらくした頃、手りゅう弾は爆発。かばおうとするマリアの優しさを受け取ったマシューは逮捕された。パトカーに乗せられたマシューを、マリアはいつまでも見送るのだった。
映画『トラスト・ミー』の感想・評価・レビュー
「若いということが恥ずかしい、愚かであることが恥ずかしい」とマリアがメモに書きなぐっていた言葉が実に印象深かった。1990年代インディペンデント映画界を代表する名匠、ハル・ハートリーらしい、不器用なラブストーリーである。サンダンス国際映画祭で脚本賞を受賞している今作。死や孤独、生命の誕生に関して向き合いながらも、くすっと笑えるリズミカルさはさすがである。公開から何年経ってもファンに愛され続けている今作は、クラウドファンディングによりディスク化もされている。(MIHOシネマ編集部)
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