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映画『裏切りのサーカス』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『裏切りのサーカス』の概要:通称「サーカス」と呼ばれる英国諜報部の元幹部だったスマイリーは、サーカス内に潜むソ連のもぐら(二重スパイ)探しを依頼される。登場人物も多く、ストーリーも難解な手強い作品ではあるが、細部まで丁寧に作り込まれているので、何度鑑賞しても飽きない魅力がある。ゲイリー・オールドマン他、豪華キャストの共演も見もの。

映画『裏切りのサーカス』の作品情報

裏切りのサーカス

製作年:2011年
上映時間:128分
ジャンル:サスペンス、ミステリー
監督:トーマス・アルフレッドソン
キャスト:ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、トム・ハーディ、トビー・ジョーンズ etc

映画『裏切りのサーカス』の登場人物(キャスト)

ジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)
英国諜報部、通称サーカスの元ベテラン幹部。チーフであるコントロールの右腕だったが、彼と一緒にサーカスを辞職することになる。常に冷静沈着な隙のない男。唯一の泣き所は奔放な妻のアンで、何度裏切られても彼女を手放せない。KGB(ソ連の諜報組織)のトップであるカーラに一目置かれている。退職後、サーカス内部のもぐら(二重スパイ)探しを任される。
ビル・ヘイドン(コリン・ファース)
サーカスの幹部。オックスフォード大学出身のエリートで、大学時代はクリケットの選手だった。サーカス工作員のプリドーと、スマイリーの妻のアンの両方と関係を持つ両性愛者。
リッキー・ター(トム・ハーディ)
サーカスの工作員。ギラムの命令でイスタンブールに飛び、ソ連の工作員のイリーナから二重スパイに関する重要な情報を聞き出す。脚光を浴びたくて、軽率なことをしてしまい、追われる身となる。
ジム・プリドー(マーク・ストロング)
サーカスの工作員。コントロールの命令でブダペストに飛び、二重スパイの情報を探ろうとして、KGBに襲撃される。ヘイドンとは大学時代からの関係で、彼のことを一途に愛している。
ピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)
サーカス本部の幹部候補生。ターの上司。スマイリーに指名され、もぐら探しを手伝う。彼も同性愛者で、男性のパートナーと同棲している。
コントロール(ジョン・ハート)
サーカス本部の元チーフ。長年サーカスのトップとして働いてきた。口は悪いが信頼できる人物。幹部の中にもぐらがいるといち早く気づく。ブダペストでのプリドー襲撃事件の責任を取らされ、サーカスを辞職する。その後すぐに死亡。
パーシー・アレリン(トビー・ジョーンズ)
サーカスの幹部。極秘の情報提供者からソ連側の機密情報を入手するウィッチクラフト作戦を推し進める。コントロールが去ったあと、チーフの座につく。陛下と呼ばれている。
トビー・エスタへイス(デヴィッド・デンシック)
サーカスの幹部。お尋ね者のハンガリー人だったが、ウィーンでコントロールに拾われ、サーカスの幹部にまで押し上げてもらった。そのコントロールを裏切り、アレリンの側につく。
ロイ・ブランド(キーラン・ハインズ)
サーカスの幹部。詳しい経歴は不明だが、幹部の中では武闘派らしい。ギラムの動向に目を光らせている。
イリーナ(スヴェトラーナ・コドチェンコワ)
ソ連使節を装ったKGBの工作員ボリスの内縁の妻だった。ボリスに虐待されており、ターと恋に落ちる。西側での生活を条件に、二重スパイに関する機密情報をターに流すが、ターの失態でKGBに拉致され、消息不明となる。
レイコン次官(サイモン・マクバーニー)
英国政府の外務次官。サーカスの監視役で、諜報員と大臣の取り次ぎなどもする。あまり有能とは言えない人物。

映画『裏切りのサーカス』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『裏切りのサーカス』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『裏切りのサーカス』のあらすじ【起】

1973年のロンドン。英国諜報部、通称サーカスのチーフであるコントロールは、工作員のジム・プリドーを極秘で自宅に呼び、ブダペストへ行くよう指令を出す。プリドーの任務は、ソ連がサーカス内に送り込んだ「もぐら(二重スパイ)」に関する情報をハンガリーの将軍から聞き出し、その将軍を西側へ亡命させることだった。コントロールは、サーカスの幹部の中に、もぐらがいると睨んでいた。

ブダペストへ飛んだプリドーは、将軍への取次ぎ役の男とカフェにいる時、ウェイターを装った男に銃撃される。この銃撃により、プリドーは死亡したと伝えられる。

1973年11月14日、サーカス本部内5階の幹部会議室。コントロールと5人の幹部が集まっている。コントロールは、ブダペストでの一件の責任を取り、辞職届けにサインをする。長年コントロールの右腕を務めてきたジョージ・スマイリーも一緒に辞職することになり、職員たちは心細げに彼らを見送る。しかし、残されたパーシー・アレリン、ビル・ヘイドン、ロイ・ブランド、トビー・エスタへイスの4人の幹部は、2人の辞職をむしろ歓迎しているようだった。

サーカスを辞職してすぐ、コントロールは入院先の病院で死亡する。彼の死因が病死なのか他殺なのかはわからない。スマイリーは、妻のアンがいない自宅で、孤独な日々を送っていた。アンは恋多き奔放な女性で、どうやら家出中らしい。しかしスマイリーは、どんな仕打ちをされてもアンをあきらめることができず、彼女の帰りを待っていた。

コントロールに代わって、サーカスのチーフとなったアレリンは、レイコン外務次官に、「ウィッチクラフト作戦」と呼ばれる極秘作戦に必要な隠れ家の家賃を払うよう交渉していた。これは、ロンドンでソ連側の情報提供者を匿うための隠れ家で、その人物や隠れ家の住所は政府にも明かされていない。レイコン次官は、責任の所在が不透明だと渋っていたが、アレリンは、「カーラもKGBと費用でもめますかね?」と、嫌味を言う。KGBとはソ連の諜報活動を統括する組織のことで、カーラはそこのトップだった。レイコン次官は、大臣と相談して、家賃の費用を認めることを約束する。

同じ日、レイコン次官にリッキー・ターと名乗る人物から電話がある。ターは、自分の身元はサーカスのピーター・ギラムだけに聞くよう告げる。連絡を受けたギラムは、引退したスマイリーを連れて、レイコン次官を訪ねる。

レイコン次官は、「何年も前からサーカスの幹部の中にもぐらがいるらしい」と語り、そのもぐら探しをスマイリーに依頼する。コントロールは、死ぬ直前にレイコン次官を訪ね、もぐらの件を警告していたが、レイコン次官は相手にしていなかった。しかしターにも同じことを言われ、調べる必要があると考え直したらしい。この役は、引退して外部の人間となったスマイリーが適任だった。スマイリーは、ギラムと、警視庁保安部の元警部であるメンデルと組むことを条件に、この役を引き受ける。

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映画『裏切りのサーカス』のあらすじ【承】

3人は、小さなホテルの一室を事務所とし、この極秘調査を開始する。スマイリーの指示で、まずはコントロールの家の捜索が行われる。

コントロールの書斎には、大量の書類や本とともに、幹部の顔写真を貼り付けたチェスの駒があった。それぞれの駒にはティンカー(アレリン)、テイラー(ヘイドン)、ソルジャー(ブランド)、プアマン(エスタへイス)の暗号名が記してあった。その中には自分の駒もあり、スマイリーは複雑な心境になる。そして、過去の会議のことを思い出す。

ある日の幹部会議。アレリンは、どこからかソ連海軍の演習報告書を入手していた。これは、英国海軍が熱望している機密情報で、本物であればかなりの手柄だ。スマイリーは、あまりに都合の良すぎるこの情報は怪しいと考え、その情報元を聞く。しかしアレリンは、事前に情報提供者の身元を最高機密にする了承を大臣から得ており、情報元を明かそうとしない。コントロールは、アレリンのスタンドプレイに激怒し、会議を中止してしまう。

コントロールの家にあった書類や本はホテルに運び込まれ、詳細に精査される。スマイリーは、チェスの駒に、カーラの駒も加える。ギラムは、スマイリーの指示で、サーカス本部内から、最近の退職者の書類と、アレリンのもとで再編成された新しい組織図、そしてウィッチクラフト作戦の経費の一覧を持ち出す。もぐらの調査は機密事項のため、ギラムはサーカス内で怪しまれないよう、細心の注意を払う。

退職者の書類から、スマイリーたちが去った直後、コニー・サックスという女性職員とジェリー・ウェスタビーという男性職員が解雇されていたことがわかる。スマイリーは、コニーから話を聞くため、オックスフォードへ向かう。

コニーは、スマイリーとも馴染みの深い古参の諜報員で、ロンドンのソ連大使館に文化担当官として赴任してきたアレクセイ・ポリヤコフという男が怪しいと睨んでいた。コニーは独自で彼の調査を続け、ポリヤコフが元軍人であったことを突き止める。以前からサーカス内では、カーラが元軍人ばかりを集めた秘密組織を作ったという噂が流れていた。コニーは、ポリヤコフがカーラの手先で、サーカス内のもぐらを操っているのではないかと推測する。それをアレリンとエスタへイスに報告したが、ポリヤコフにかまうなと叱責され、コントロールが去った直後に、彼女も解雇された。ホテルへ戻ったスマイリーは、チェスの駒に、ポリヤコフの駒も加えておく。

徹夜でウィッチクラフト作戦の経費を調べたスマイリーは、プリドーの偽名であるエリス宛の支払い請求書を発見する。プリドーは、1年前(1973年)の10月21日に、ブダペストで死亡したはずだが、その2ヶ月後にサーカスから彼への送金があったのだ。スマイリーは、プリドーがどこかで生きているのではないかと推測する。

スマイリーの推測通り、プリドーは密かにイギリスへ戻り、とある私立学校の臨時教師として働いていた。彼は小さなキャンピングカーで寝泊まりし、偽名のエリスとして生きていた。

映画『裏切りのサーカス』のあらすじ【転】

久しぶりに自宅へ戻ったスマイリーは、玄関のドアに仕掛けてあった木片が落下しているのを見て、誰かが家に出入りしたことを知る。アンかと期待したが、侵入者はターだった。ターは、サーカスとKGBの双方から命を狙われているらしく、スマイリーに助けを求める。そして、イリーナという女性をカーラから救うという条件で、全てを話す。

去年の11月。ターはギラムの指示で、ソ連使節のボリスという男を西側に亡命させるため、イスタンブールに飛んだ。しかし、ターはすぐにボリスがプロの諜報員であることを見抜き、ギラムに「取引中止」の暗号を打電する。そして翌日、帰国する予定だった。ところが、ターはボリスの内縁の妻のイリーナのことが気にかかり、規則を破って彼女と接触する。もちろん身分は偽っていたが、彼女は全てを知っており、コントロールと話がしたいと言い出す。ボリスから虐待されていたイリーナは、重要な情報を提供する見返りとして、西側での生活を望んでいた。

ターとイリーナは恋に落ち、彼女は彼を信用して、サーカス内部にいる二重スパイに関する情報を話してくれる。ターは、重大な情報の入手に舞い上がってしまい、注目を浴びたくて、「二重スパイに関する情報を得た」と本部に打電する。本部からは、「状況は理解した」という時間稼ぎのような返信があった。もぐらから情報を得たKGBは、すぐにサーカスの現地工作員とボリスを惨殺し、イリーナを拉致する。ターは、自分の不注意さを悔いており、なんとかイリーナを救い出したいと考えていた。スマイリーは、カーラが血眼でターを探しているだろうと考え、彼を安全な場所へ移動させる。

スマイリーは、保管室にある去年の11月の当直日誌を入手するよう、ギラムに頼む。ギラムは、メンデルに協力してもらい、危険を冒して当直日誌を盗み出す。その直後、ギラムはアレリンに幹部会議室へ呼び出される。アレリンたちは、ギラムがターと接触しているのではないかと疑っていた。しかしスマイリーは、ギラムが捕まった時のことを考え、彼にもターが来たことを隠していた。アレリンは、大金が振り込まれたターの銀行口座を見せ、彼が金でソ連側に寝返ったのだと説明する。ギラムはそれを信じてしてしまう。

スマイリーは用心のため、別のホテルに事務所を移していた。新しい事務所へ行ったギラムは、そこにターがいるのを見て、いきなり彼に殴りかかる。しかしスマイリーに、ターが本部へ電報を打った11月20日の当直日誌だけ欠落していると指摘され、全てはターに疑惑を向けさせるための偽装工作だったと納得する。疲れた様子のギラムを、スマイリーは酒に誘う。

スマイリーは酒を飲みながら、「1度だけカーラに会ったことがある」と語り始める。1955年、第二次世界大戦終結後、東側の工作員が続々と西側へ亡命し始め、スマイリーは、彼らの勧誘に奔走していた。その時、自称ゲルストマンと名乗るソ連の工作員と出会う。彼はアメリカ人に拷問を受け、爪が1枚もなかった。スマイリーは、なんとか彼を西側へ亡命させようと、アンの話まで持ち出して、必死の説得を試みる。しかし彼は毅然とした態度を崩さず、過酷な運命が待ち受ける祖国へ帰っていく。彼は、差し出したタバコには手をつけなかったが、スマイリーがアンから贈られたライターを持ち帰る。

その男がカーラで、スマイリーは彼を「狂信者」と表現する。そしてギラムに、「今日から君も監視されていると思って、身辺を整理しておけ」と忠告する。実はギラムは同性愛者で、男性のパートナーと同棲していた。スマイリーの忠告を受け、ギラムは泣く泣く、そのパートナーと別れる。

スマイリーは、プリドーが襲撃された夜に、本部の当直をしていたジェリーに会いにいく。ジェリーは、コニーと同じく、コントロールの辞職直後、サーカスを解雇されていた。

あの夜、外務省からプリドーが撃たれたという情報が入ってすぐ、ジェリーはそれをコントロールに報告した。しかし、コントロールは指示を出せないほどショックを受けており、ジェリーは自己判断で緊急連絡網を回す。スマイリーの自宅にも電話したが、彼は出張中で、アンに伝言が伝えられた。しかしスマイリーは、その事実を今日初めて知った。その後、ヘイドンが本部に駆けつけ、対応に当たってくれた。ヘイドンは、「プリドーが死んだら報復する」とハンガリー大使館を脅し、すぐにジェリーとプリドーの自宅へ向かう。ヘイドンは、プリドーが工作員だった痕跡を消しつつ、2人の仲睦まじいツーショット写真を胸ポケットに隠す。実は、ヘイドンとプリドーは同性愛の関係にあった。

ヘイドンは、クラブの電信機でプリドーのことを知ったと話していたらしいが、その時間に電信機は動いていない。ギラムがその疑問をぶつけると、スマイリーは「あの夜、彼は私の家にいたのだ」と、驚きの事実を口にする。スマイリーは、アンとヘイドンが浮気していることに前々から気づいていた。ヘイドンはバイセクシャルで、プリドーとアンの両方と関係を持っていたのだ。

プリドーの居場所を突き止めたスマイリーは、彼に会いにいく。プリドーは、ブダペストへ行った経緯と、現地であったことを話す。襲撃事件のあと、KGBに身柄を拘束されたプリドーは、ひどい拷問を受けた。それでも彼は、現地の仲間が逃げられるよう時間稼ぎをしていたが、みんな捕まってしまったらしい。その後、司祭のような小男が現れ、拷問が本格化する。その小男こそカーラで、彼は、もぐらの情報をコントロールがどこまで把握しているのか聞きたがった。そして、プリドーの目の前で、イリーナを射殺する。プリドーは、カーラにスマイリーのことも聞かれていた。カーラはなぜかスマイリーに執着しており、スマイリーのライターを今も大事に持っていた。

その後、おそらくヘイドンの尽力により、プリドーだけはイギリスに戻された。エスタへイスは、プリドーに金と車を与え、2度とサーカスに戻らないよう告げる。その際、エスタへイスは、「ティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマンのことも、全て忘れろ」と口走っていた。スマイリーは、コントロールがプリドーだけに伝えた幹部の暗号名を、なぜエスタへイスが知っていたのか疑問に思う。そしてついに、カーラの仕組んだ罠に気づく。

スマイリーはまず、レイコン次官と大臣を極秘で呼び出し、ウィッチクラフト作戦の情報提供者とアレリンたちが会う家が、この街のどこかにあるはずだと詰め寄る。情報提供者の正体はソ連大使館のポリヤコフで、彼はソ連側の情報を提供すると見せかけて、もぐらからサーカス内部の情報を受け取っていた。しかしアレリンや大臣は、カーラがでっち上げた情報を信じて、すでに米国情報部との提携を決めていた。これこそカーラの狙いで、彼の本当の目的は、サーカスを通じて米国の情報を入手することにあった。その話を聞いて、大臣たちは青ざめ、スマイリーに助けを求める。スマイリーはすでに、もぐらをおびき出すための作戦も考えていた。

映画『裏切りのサーカス』の結末・ラスト(ネタバレ)

スマイリーは、イリーナを救う努力はする(スマイリーはすでに彼女が殺されたことを知っているので)とだけ約束し、ターをパリへ向かわせる。次にエスタへイスを拉致し、彼を自国へ送還すると脅して、ポリヤコフとの情報交換について詰問する。エスタへイスはただの使い走りで、これがカーラの罠であることも知らなかった。ただ、東側へ戻されることを恐れ、暗号名をヘイドンから聞いたことや、隠れ家の住所を白状する。

スマイリーたちは、すぐに隠れ家へ向かい、留守番の夫人から彼らが使う合図を聞き出す。彼らは、換気扇を開閉して、安全確認の合図を送っていた。スマイリーたちは、室内の隠しマイクやテープレコーダーの場所などを確認し、囮作戦の準備を進める。

パリへ到着したターは、現地の工作員を銃で脅し、サーカス本部へ「ターがサーカスの安全に関する重要な情報を持っている」と打電させる。サーカス本部の様子は、向かいの建物からメンデルが監視していた。メンデルは、アレリン、ヘイドン、ブランドが本部内に入ったことをスマイリーに報告する。

本部からパリのター宛に返信が届く。「要求に応じる前に詳しい説明を求める」という、明らかに時間稼ぎと思われる返信を見て、ターはイスタンブールの時と同じだと直感する。

スマイリーは隠れ家内の隠し部屋で待機し、電話でメンデルから本部の様子を聞いていた。彼は静かに靴を脱ぎ、銃を装備する。ギラムは隠れ家の外で見張り役をしていた。

メンデルから「ミーティング終了」の知らせが入る。本部を出たあと、最初にここへやってきて、ポリヤコフと接触する人物が、もぐらの正体だ。隠れ家の前に車が到着し、室内から2人の男の会話が聞こえ始める。2人は、他の幹部が入ってこないよう換気扇を閉め、ターをどうするべきか相談していた。スマイリーは、隠し部屋でその音声を確認し、2人がいる部屋に近づいていく。銃を構えたスマイリーが現れ、ポリヤコフはすぐに観念する。そして部屋の奥で呆然と椅子に座っていたのは、ヘイドンだった。

後日スマイリーは、逮捕されたヘイドンを訪ねる。ヘイドンは数日後に、モスクワへ移送されることになっていた。収容施設の入り口ですれ違ったアレリンは、憔悴しきった様子だった。彼らはヘイドンに利用され、全てを失っていた。

スマイリーはヘイドンに、プリドーのことから尋ねる。プリドーは、ブダペストへ発つ前にヘイドンを訪ね、自分の極秘任務について話していた。プリドーは、ヘイドンがもぐらであることに薄々気づき、彼の身を案じていたのかもしれない。そしてヘイドンも、プリドーだけは見殺しにすることができなかったのだろう。しかし本当のところは、2人にしかわからない。

スマイリーは、なぜヘイドンがカーラのもぐらになったのか知りたかった。ヘイドンは、自分はカーラに利用されたのではなく、西側が醜くなったと感じたので、自分の美学で東側を選んだのだと言い張る。それを聞いて、初めてスマイリーは声を荒げる。しかしすぐに冷静を装い、「アンに伝えて欲しいことはあるか?」と質問する。ヘイドンは、悪気はなかったとスマイリーに謝罪し、カーラの指示でアンに近づいたことを打ち明ける。カーラは、スマイリーを危険な存在だと感じており、「彼の唯一の弱点は妻のアンだ」とヘイドンに伝えていた。そのため、ヘイドンはアンの愛人となって、スマイリーの判断力を鈍らせる作戦に出た。その作戦は途中まで成功していたが、もぐら探しを始めてからのスマイリーには通用しなかった。

一方、全てを知ったプリドーは絶望していた。彼は自分を慕ってくれた生徒にまで罵声を浴びせ、涙にくれる。そして何かを決意したように、ライフルを持って出かけていく。

プリドーは、ヘイドンが収容されている施設に近づき、ライフルを構える。そして、外へ出てきたヘイドンに銃口を向ける。ヘイドンはプリドーの存在に気付き、じっと彼を見つめる。プリドーは涙を流しながら、彼の顔面に銃弾を撃ち込む。プリドーは、一途にヘイドンを愛していたからこそ、彼の裏切りが許せなかったのだろう。

スマイリーが自宅へ戻ると、アンが帰っていた。彼は突然冷静さを失い、愛する妻の帰宅に胸を踊らせる。その後スマイリーは復職し、サーカス本部のチーフとなる。ギラムは、自身に満ち溢れたスマイリーのチーフ姿を見て、嬉しそうに微笑む。

映画『裏切りのサーカス』の感想・評価・レビュー

派手なアクションは一切無く、情報戦のみなのが、現実味を帯びていて良い。
また、登場人物も人気の若手俳優ではなく、味のあるベテラン俳優を起用していて、物語に深みを出している。
切れ者達の話なだけに、雰囲気を壊すような丁寧な説明は無い。
静かに淡々と展開していく中で、各所に映されるヒントを見つけていくのが楽しい。
一度で理解するのは難しいが、時間のある時にじっくり楽しみたい映画だ。(女性 30代)


地道な諜報戦を実直に描いた作品で人によれば退屈だと感じるかもしれない。しかし表面上は淡々としながらも、ひとつひとつの事実が浮かび上がるにつれて事態が大きく揺れ動いていく事に気づくと、スリリングな展開と表面上の静けさのアンバランスが癖になる。これは007などの主流のスパイ映画の真逆をいく映画として計算であり、その正しさは多くの批評家にも観客にも受け入れられたことが証明している。(男性 30代)


ベネディクト・カンバーバッチが出演しているということで興味を抱き、視聴してみた。正直に言うと、物語が複雑で理解するのが大変だった。たくさんの人物が登場しているため、それぞれの思いや事情が交差していて少しずつ紐解かなければ分からないと思う。自分はネットで情報を集めなければ理解できなかった。でも、たまにはこんな大人向けの映画があっても良いと思う。アクション映画とはまた一味違う、頭脳戦ならではのスリリングさが楽しめた。(女性 30代)


もっとアクション的な映像が多いと思っていたが、とても静かで頭脳的な展開の作品だった。一度見ただけでは内容理解が少し難しかったが、政治的な本当のスパイの姿が忠実に描かれているように感じた。作品の中では、家庭や恋愛などの人間らしい描写も少しだけ含んでおり、それによって冷たすぎず、深みを持った作品に仕上がっていると感じた。
男性の出演者がほとんどだったが、個人的には、映画だからこそ女性スパイ等、女性の出演者がもう少しいるとよかったなと感じた。(女性 30代)


とりあえず一度観ただけでは何が起きていたのかさっぱりだった。
二度観て、この作品は繰り返し観て楽しむものなのだろうと思った。そう思って観ていると実に丁寧に色々な仕掛けが施されていることに気付く。
文字による説明がほとんどないので、映像に映った記号を読み解く必要がある。あるいはこの台詞の後にこれが映ったからこれはこれを指すに違いない、そんな風に自ら謎解きに参加するのが楽しい作品。
長くゆっくり味わいたい。(男性 40代)


淡々とした物静かな犯人捜し、ベテラン俳優が多く出演するため、非常に渋い映画です。隠密行動を徹底していて、これぞスパイだなと思いました。また、話も難しく登場人物も多いため、1回観て理解することは相当難しいと思います。なにせ、手掛かりも描写されるだけで説明されないことも多いですので、常に集中を切らさずに観続ける必要があります。

派手なアクションはなく、難解な頭脳戦が中心の今作品は、スパイ映画の新しい切り口を観たようで非常に良かったです。(男性 20代)


とにかく難解。でも理解出来た時の爽快感がたまらない作品。ゲイリー・オールドマンにコリン・ファース、トム・ハーディにベネディクト・カンバーバッチ。イギリスの豪華俳優が共演するこの作品。重く暗い雰囲気に専門用語、誰もが怪しく見える謎やトリック。二重スパイを探し出すことが目的ですが、関係してくる人間がものすごく多いので名前を忘れるとすぐに置いていかれてしまいます。
音楽や映像にもスパイ感がしっかりと描かれていて、観終わって理解すると賢くなった気分になりますね。(女性 30代)


まず言えることはただのスパイ映画と思って観ると確実に内容が入ってこない。
思ったよりも難しく繊細でストーリーが緻密に構成されている。二重スパイの話というのは分かっていたから一人一人の言動に注目して見ていたが誰一人として伏線を張らずドジをすることもない。初めはパーシーがスパイなんじゃないか。と疑っていたが、ヘイドンが座っていたときは度肝を抜かれた。
プリドーとヘイドンの男としての友情、そして一途な愛情、一瞬にして崩れた関係は儚いものだった。愛しているからこそ自分の手で済ませたいが思い悩むプリドーの涙に、ヘイドンはすべてを受け入れた男の生き様は裏切りがあったとはいえかっこよかった。(男性 20代)

みんなの感想・レビュー

  1. アリィ より:

    セリフや説明が少ない分、どのカットも重要な意味を持ちます。暗号や人名が多く出てきて混乱する可能性がありますから、メモしながら見ることをおすすめします。登場人物の人となりや、サーカス内の人間関係についても一つ一つのシーンから察していけるでしょう。俳優陣はスパイの経験があるのではないかと思う程、皆名演技でした。重厚で渋い英国俳優が勢揃いしており、贅沢だと感じます。かなりややこしく感じたので、相関図や解説を見ながら再度鑑賞したいです。

  2. surapi より:

    正直初見では何が何だかわからなかった。ただ、何が何だかわからぬまま、あの惹き込まれるような美しく衝撃的なラストシーンに心を奪われてしまった。
    “これは絶対にちゃんと理解すべきだ”と思い、すぐに二回目を観てみると、一回目よりも内容がスムーズに頭に入ってくるのはもちろん、あの結末を知っているからこその切なさや新たな発見があり、非常に面白かった。
    なので、この映画は最低でも二回観ることをおすすめする。観れば観るほど、知れば知るほど面白くなっていくタイプの映画だと思う。

  3. 匿名 より:

    仕事がパーフェクトに出来る人と出来ない人の映画。

  4. 匿名 より:

    ①もぐらは、誰だったのか?

    コントロールはスマイリーに『もぐら探し』を依頼する前、情報提供者のハンガリーの将軍に確認する為、実働部隊のジム(マーク・ストロング)を送り込む。しかし彼は消息不明になる。
    後に彼は、何者かの手により生き延び教師をしている事が判る。

    スマイリーは現地で狙撃された後、拷問されたというが、その男の手には『彫り物』のあるライターがあったという。その『彫り物のあるライター』からスマイリーは人物を特定する事が出来た。
    それはかつて壊滅寸前のモスクワでスマイリーが亡命と引き換えにスカウトしようとしたKGBの大物スパイ・カーラだったのだ。

    そこから容疑者となった4人は、大使館員を通じ、英国の機密をカーラに売り渡していた事が判明。その牽引役となっていたのが、ヘイドンだった。

    最終的に、諜報部(サーカス)は旧ソ連にヘイドンの身柄を送還するのと引き換えに、カーラを引き渡して貰おうとするが、その直前、ヘイドンは本国に戻ってきたビルに撃たれて死んでしまう。
    ビルはヘイドンと学生時代はスポーツを通して盟友だったにも関わらず、スパイ活動に利用された挙句命まで狙われたその恨みだった。ダブルスパイのあっけない最後であり、真相は闇に葬られた形で映画が終わる。

    ②原作の映画化は自由であるべき

    20世紀半ばに実際に英国諜報機関に在籍していたル・カレのこのシリーズは、アレック・ギネス主演のテレビドラマのイメージが強かった。
    この件に関してル・カレは『映画制作者は、必ずしも原作に忠実にする必要などない上、様々な解釈も必要だ』と述べている。

    その証拠にル・カレは原作にないシーンまで付け足した。例えば、ヘイドンとジムが、サーカスのポットラックパーティのシーンを回想する所がこれにあたる。
    ル・カレが演じたのは、老専ゲイの図書館員で役柄は本人が考え出したのだそう。

    ①豪華キャスト勢ぞろい

    公開2~3日でパンフレットが売り切れた映画館が出たという程、映画は豪華キャスト勢ぞろい状態だった。
    ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、ジョン・ハート、ベネディクト・カンバーバッチ、トム・ハーディ、マーク・ストロングなど、なかなかこれらの俳優が一度にお目にかかれる映画はないだろう。
    しかもストーリー構成は見ごたえがあり、ただの顔見世に終わらないところに映画の醍醐味がある。

  5. 匿名 より:

    スパイ映画といえば、派手なアクション、ガジェットが見物というイメージがあるだろう。
    この映画はそれらと一線を画し、実際に諜報活動を行った原作者の著作のイメージを損なうことなく、世界観を忠実に再現している。
    本物のスパイ活動は、静かに目立たず、今そこにある危機に波風立てず立ち向かっている事だという事を教えてくれる映画である。