この記事では、映画『ウエスト・サイド物語』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ウエスト・サイド物語』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『ウエスト・サイド物語』の作品情報
上映時間:152分
ジャンル:ラブストーリー、ミュージカル
監督:ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス
キャスト:ナタリー・ウッド、リチャード・ベイマー、ジョージ・チャキリス、リタ・モレノ etc
映画『ウエスト・サイド物語』の登場人物(キャスト)
- トニー(リチャード・ベイマー)
- ポーランド系アメリカ人の青年で、元ジェット団のリーダー。今は悪ふざけから卒業し、ドクの店で働いている。弟分のリフに頼まれて行ったダンス場で、マリアと恋に落ちる。
- マリア(ナタリー・ウッド)
- プエルトリコ系アメリカ人で、シャーク団のリーダー・ベルナルドの妹。ダンス場でトニーと出会い、恋に落ちる。アメリカには移住してきたばかり。
- ベルナルド(ジョージ・チャキリス)
- プエルトリコ系アメリカ人の不良集団・シャーク団のリーダー。妹のマリアをとてもかわいがっている。
- アニタ(リタ・モレノ)
- ベルナルドの恋人。マリアにとってもお姉さん的存在で、マリアの恋を応援してくれている。
- リフ(ラス・タンブリン)
- ポーランド系アメリカ人の不良集団・ジェット団のリーダー。トニーを兄貴分として慕っており、家に居候させてもらっている。
- チノ(ホセ・デ・ヴェガ)
- プエルトリコ系移民で、マリアの許嫁。大人しい青年だったが、ベルナルドを殺したトニーを殺そうと、銃を手に探し回ることになる。
- ドク(ネッド・グラス)
- トニーが働くバー兼薬屋の老店主。争いを繰り返す青年達を憂いている。
- シュランク警部(サイモン・オークランド)
- 街の警部で、ジェット団とシャーク団の小競り合いを取り締まっている。プエルトリコ系移民を差別している。
映画『ウエスト・サイド物語』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『ウエスト・サイド物語』のあらすじ【起】
ニューヨークのウエスト・サイド。ここには2つの不良集団の派閥があった。リフ率いるポーランド系アメリカ人のジェット団と、ベルナルド率いるプエルトリコ系アメリカ人のシャーク団だ。彼らは日々小競り合いを繰り返していた。
双方の仲を取り持つねらいで、ポーランド系、プエルトリコ系両方が集まるダンスパーティーが企画される。リフはダンス場でシャーク団に挑戦状を突きつける計画を立てた。箔付けのために、元シャーク団のリーダーで兄貴分のトニーにも来てくれるよう頼む。トニーは悪ふざけを辞め、ドクの店でまじめに働いていた。
一方、ベルナルドの妹・マリアはアメリカに移住して初めてのダンスパーティーにわくわくしていた。許嫁のチノには心惹かれず、素敵な恋の予感に胸を膨らませる。
ダンスパーティーでは主催者の目的に反して、ジェット団とシャーク団がダンスで対抗し始める。そんな中、リフにダンス場へ呼ばれたトニーは、マリアと運命の出会いをする。一瞬で2人は恋に落ちた。その様子を見たベルナルドはトニーに激怒し、マリアを家に帰してしまう。ジェット団の元リーダーとシャーク団リーダーの妹。それは許されない恋だった。

映画『ウエスト・サイド物語』のあらすじ【承】
ジェット団とシャーク団は、決闘の打ち合わせをするため深夜ドクの店で落ち合うことになった。しかしトニーはマリアの事で頭がいっぱいだ。その日の晩、マリアの元へトニーがやってきた。2人は人目を忍んで愛を語り合い、明日マリアの働く婚礼衣裳店で会う約束をする。
ジェット団とシャーク団はドクの店で決闘の日時を決める。決闘は明日の夜だ。そこへトニーがやってきた。トニーは戦いがひどくならないよう、双方に武器を使わず素手で戦うよう約束させる。トニーがシャーク団の身内に恋をしたと知ったドクは、争いの種になるのではと心配する。
マリアは仕事中もうかれ通しだ。ベルナルドの恋人・アニタは、マリアの恋の相手がトニーだと知る。マリアにとってお姉さん的存在の彼女は、マリアを心配しながらも、ベルナルドには黙っていてくれることになった。婚礼衣裳店で落ち合ったトニーとマリアは結婚式のまねごとをする。兄を心配するマリアは、トニーに決闘をやめさせるよう頼む。
それぞれの思いが交錯する中、決闘の時間が刻一刻と迫っていた。
映画『ウエスト・サイド物語』のあらすじ【転】
ジェット団とシャーク団が決闘場所に集まった。お互い代表を決めて、素手で一騎打ちを始める。そこへケンカを止めるためトニーがやってきた。ベルナルドの挑発にのらず、トニーはケンカをしようとしない。しかし、ふとしたはずみでリフの手がベルナルドにあたってしまい、激昂した2人はナイフを取り出した。トニーはリフを止めようとするが、そのせいでリフがベルナルドに刺されてしまう。弟分を殺されたトニーは、かっとなってベルナルドをナイフで刺してしまった。
ひどい事態を迎えているとも知らないマリアは、1人アパートの屋上でトニーを待っていた。そこへチノがやってきて、トニーがベルナルドを刺し殺したことを伝える。兄の死、その犯人が愛するトニーであるということを信じられず嘆くマリア。そこへトニーがやってきた。2人は自分達の恐ろしい運命を嘆き、2人で逃げようと誓う。2人は改めて愛を誓い合う。
チノがトニーを殺すため、銃を持って街中を探し回っていた。
映画『ウエスト・サイド物語』の結末・ラスト(ネタバレ)
トニーとマリアがいる部屋にアニタが戻ってきた。トニーはドクの店で落ち合う約束をし、窓から逃げ出す。2人が一緒にいたことを知ったアニタは怒る。彼女にとってトニーは恋人の命を奪った敵だった。しかし、マリアが真にトニーを愛していると知ったアニタは、マリアの気持ちをわかってくれた。シュリンク警部に足止めされたマリアは、アニタに「少し行くのが遅れる」とトニーへの伝言を頼む。
ドクの店にはジェット団がいた。トニーは地下室に隠れており、ドクは外出していた。そこへアニタがマリアのメッセージを伝えにやってくる。しかしベルナルドを恨むジェット団は、アニタに乱暴を働こうとする。ドクがその場を止めたが、アニタはジェット団への憎しみを募らせ嘘の伝言をする。それは「マリアはチノに殺された」というものだった。
ドクからアニタの伝言を聞いたトニーは、マリアが死んだと思い込んでしまう。トニーは自分も殺せと叫びながらチノを探しに出る。その時、マリアがやってきた。2人は抱き合う。しかし時を同じくしてチノが現れ、トニーを撃った。銃弾を受け、トニーはその場に崩れ落ちる。ジェット団とシャーク団が見守る中、マリアの腕の中でトニーは亡くなった。マリアの剣幕に両団は戦いを収めるのだった。
映画『ウエスト・サイド物語』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
不良軍団のジェット団とシャーク団が対立し、元リーダーのトニーと敵のリーダーの妹マリアが恋に落ち、お互いの置かれている状況や抑えきれない恋心との葛藤が描かれており、とても分かりやすい内容であった。ミュージカルの素晴らしさが全面的に出ており、次々とストーリーが展開されていくため、目が離せなく釘付けになっていた。恋人を亡くしたアニタの気持ちや、目の前で愛する人が撃たれる姿を見ていたマリアの悲しさが、残酷であり悲しい気持ちになった。(女性 20代)
大好きなミュージカル映画の一つです。冒頭から、流れてくる有名な音楽とセリフもなく跳ねまくるダンスにテンションが上がります。マリアとトニーが出会うシーンでは、運命的な出会いを表現するためのボカシの使い方が衝撃的で、個人的に一番記憶に残っています。
音楽とダンスだけでなく、演技に演出、カメラワークや衣装など全てがこだわり抜かれており、やはりこの熱量と洗練さが本作を名作とたらしめる所以なのだなと思いました。最初から最後までエネルギーに満ち溢れている作品です。(女性 20代)
アカデミー賞10部門受賞のミュージカル作品。ミュージカル作品が苦手な私はかなり抵抗がありましたが、とても見やすく感情移入できるストーリーに苦手意識が少し覆されました。
『ロミオとジュリエット』を元にした悲しい恋愛のストーリーなので、キャラクターの設定は違えど、大まかなストーリーは想像が着きます。しかしその想像を超えてくるダンスと歌唱力。素晴らしすぎました。
純粋な気持ちが結ばれないと分かっている「悲恋」ですが、ストーリー以上に、観客をわくわくさせる魅力がたくさんありました。(女性 30代)
必ずどこかで聴いたことのある名曲の数々だけでも楽しめる。
「ロミオとジュリエット」を下敷きにしているので救いのないストーリー展開だが、それがかえって彼らをとりまく状況の過酷さと悲惨さを引き立たせている。そしていつの時代も差別や争いはなくならないのだなと人間の無力さを感じてしまう。当然ながら歌やダンスのレベルも高く、ミュージカル好きはもちろん万人にとって見応えある作品だと思う。(女性 20代)
1962年のアカデミー賞を総嘗めにしたミュージカル映画の代表作。
序盤から息の揃ったダンスシーンは迫力があり、時にはコミカルでロマンチックなところもいいエンターテイメントなのだが、インターミッション含む若干の長さと明るい雰囲気からは想像しにくい展開に少し疲れてしまった。
それでもアメリカならではの民族的なバックグラウンドを織り交ぜていたり、若者社会を考える上でとても重要な作品だと思う。スティーヴン・スピルバーグによるリメイク版も公開されるらしいのでそれも楽しみである。(女性 20代)
『ロミオとジュリエット』を現代アメリカ版にしたミュージカル映画で、対立する子どものグループ争いに影響された少年と少女の恋愛物語です。全体的に暗い映像ですが、「ダンスパーティー」や「America」のシーンはエネルギッシュで見ごたえがあります。個性的な役者のキレイのあるダンスは今見てもおしゃれだと感じ、作品中に何度も出てくるフィンガースナップが印象的です。
子どもたちのやり場のないエネルギーが無意味と思える争いに発展し、取り返しのつかない結果となりますが、ラストシーンで和解への一歩が期待できるのが救いでした。(女性 40代)
スピルバーグ版を鑑賞しましたが、まさに「時代を超えて語り継がれる悲恋劇」という言葉がぴったりの作品でした。トニーとマリアの恋が、移民問題と人種対立という背景の中で儚く散っていく様子に、現代にも通じるメッセージ性を感じました。特に終盤、トニーがマリアを誤解し、絶望の中で命を落とす展開は涙が止まりませんでした。アリアナ・デボーズ演じるアニータの存在感も圧巻で、彼女の激情には心を揺さぶられました。(20代 男性)
名作と呼ばれるだけあり、やはり素晴らしかった。スピルバーグが原作へのリスペクトを込めながらも、現代的なアプローチを加えて再構築したこのリメイクは、まさに「再発見」と言える内容でした。マリアとトニーの恋が引き裂かれる瞬間、まるで『ロミオとジュリエット』を思わせる展開に胸が痛くなります。美しい歌とダンスが、社会の分断と悲劇の対比を際立たせていて、非常に印象深いです。(40代 女性)
音楽、ダンス、演技、すべてが高水準で感動しました。とくに「America」のシーンのエネルギーは圧巻!マリアとトニーの恋が希望を感じさせるからこそ、最後の悲劇がより一層重たく響きました。二人がもう少し早く心を通わせていれば…と考えずにはいられません。社会の不寛容さが悲劇を招くというテーマは、今の世界にも通じると思います。(30代 女性)
学生時代に旧作を見て以来の鑑賞でしたが、新たな発見が多くありました。移民同士の対立、階級差、宗教的背景など、さまざまな要素が物語に重層的な深みを与えていました。トニーの死後、マリアが銃を向けるラストシーンには、怒りと絶望と哀しみが凝縮されており、彼女の感情が痛いほど伝わってきました。こうした古典を現代に再提示する意味を強く感じた作品です。(60代 男性)
映画『ウエスト・サイド物語』を見た人におすすめの映画5選
ラ・ラ・ランド
この映画を一言で表すと?
夢と恋の間で揺れる心を、美しい音楽と映像で描いた現代のミュージカル傑作。
どんな話?
女優を目指すミアと、ジャズピアニストのセブ。夢に向かう二人が出会い、恋に落ちるが、やがてそれぞれの道を歩む選択を迫られる。色彩豊かな映像と印象的な音楽で、現代人の夢と現実、愛の葛藤を描く感動作。
ここがおすすめ!
感情を引き出す音楽と、美しく設計されたダンスシーンが魅力。特にラストの“もしもの未来”を描いた幻想的なシークエンスは涙必至。『ウエスト・サイド物語』同様、音楽と恋愛が交錯する物語が心を打ちます。
ロミオ+ジュリエット
この映画を一言で表すと?
古典が現代に蘇る、スピード感あふれるラブトラジディ。
どんな話?
シェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』を現代風に大胆アレンジ。対立するマフィアの家に生まれた若き恋人たちが、運命に翻弄されながらも愛を貫こうとする。セリフは原文のまま、演出はスタイリッシュ。
ここがおすすめ!
レオナルド・ディカプリオとクレア・デインズが演じる切ない恋に胸を打たれます。現代的な演出と疾走感ある映像で、悲劇の愛がより鮮烈に。『ウエスト・サイド物語』と同じく、愛と対立のテーマが心に響きます。
RENT/レント
この映画を一言で表すと?
夢・友情・恋愛・死を描いた、90年代NYが舞台の社会派ミュージカル。
どんな話?
エイズや貧困と闘いながらも、自由に生きようとする若者たちの姿を描く。芸術家、パフォーマー、恋人たちが抱える苦悩や希望が、ロックナンバーとともに展開。現代の「愛と生きる意味」を問いかける感動作。
ここがおすすめ!
エネルギッシュな音楽と現実的なテーマが融合したミュージカル。キャラクターの多様性や人生観の違いが深く描かれ、共感必至。『ウエスト・サイド物語』同様、社会的背景と恋愛が絡む人間ドラマが魅力です。
シカゴ
この映画を一言で表すと?
欲望と虚構が踊る、罪と名声のジャズミュージカル。
どんな話?
1920年代シカゴ。殺人事件を起こしたショーガールのロキシーは、メディアを利用して一躍時の人となる。名声を得ようとする女たちの駆け引きと、表と裏の顔がステージの上で鮮烈に描かれる、異色の群像劇。
ここがおすすめ!
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、レネー・ゼルウィガーの華麗な歌とダンスが圧巻。皮肉と風刺を織り交ぜた脚本は大人向けの味わい。社会の裏側を描いた濃厚なミュージカルとして、『ウエスト・サイド物語』と好対照。
イン・ザ・ハイツ
この映画を一言で表すと?
夢と希望が詰まった、ラテンのリズム弾ける現代版“街の物語”。
どんな話?
ニューヨーク・ワシントンハイツを舞台に、移民として生きる若者たちが描く夢、恋、そしてアイデンティティの物語。音楽はヒップホップ、サルサなど多様なリズムが融合し、街全体がダンスするような躍動感に満ちている。
ここがおすすめ!
リズミカルな音楽とエネルギッシュな映像で、現代の移民問題を明るくも真剣に描く。『ウエスト・サイド物語』と同じく、文化とコミュニティの衝突を描いた作品で、観たあとに心が温かくなるパワーがあります。
みんなの感想・レビュー
若いエネルギーを持てあました街のチンピラたちの抗争を、名作「ロミオとジュリエット」に反映させたストーリー。ニューヨーク・ウエストサイドの下町に巣喰うプエルトリコ移民とポーランド系移民の確執を描いた、従来からあるようなミュージカルの華やかさとは縁遠い設定である。しかし出演者全員が怒りのやり場を失った若者という爆発寸前のキャラクターで、フレームからはみださんばかりのダイナミズムを演じ、若さという勢いがなければ演じられないナチュラルな美しさに満ちている。そしてこの映画がヒットした最大の理由は、従来のミュージカルにあった華やかなイメージを払拭し、映画のネタにしては陳腐過ぎる街のチンピラの抗争というところが相俟って、あり得ない設定のミュージカルという斬新さが功を奏したというところだろう。「理由なき反抗」のイメージと「ロミオとジュリエット」の物語性を合体させてミュージカルに仕立てたといった感じだろうが、時代背景から考えるとヒットする要因は大きかったのだろう。
音楽に関してもダイナミックなアクセントとメリハリの効いたリズムが特徴であり、若者の躍動感ある動きに大きな効果をもたらせている。元々舞台で本作の音楽を書いていたレナード・バーンスタインが担当しており、映画のために書き下ろした音楽ではないという理由でアカデミー賞の作曲家賞を取り逃がしたが、サウンドトラックは大ヒットした。
いつの時代も若さというものは無謀な反逆をしてしまうものだが、この映画には若さゆえの美しさと躍動感は比類のない魅力に満ちている。しかしながらこの映画には、従来あった「希望」というミュージカル映画のお約束が排除されている。音楽にしても1950年代後半からはエルビス・プレスリーやバディ・ホリー、ジーン・ビンセントなどのロックンロールが大流行し、暴走する若者の文化がムーブメントになりつつある時代背景があった。それからは若者の多くが興味の対象を音楽に向けて行き、夢を見させてくれる豪華絢爛なミュージカル映画は衰退していったのかも知れない。
この映画の後からも「サウンド・オブ・ミュージック」や「メリー・ポピンズ」「マイ・フェア・レディ」などのミュージカルはヒットしたものの、それらの映画にしても、従来のハリウッド映画の豪華さやダンスを強調する作品が撮られることもなく、ストーリー重視の大作指向へと移項して行き、長い低迷期を迎えてしまった。映画の内容とは全く関係ないのだが、この作品を観終えると「ニュー・シネマ・パラダイス」を観た後のような、言いようのない無常観に襲われてしまう部分もある。