映画『ウィッチ』の概要:2016年の『スプリット』公開後、映画の申し子とさえ呼ばれた若手女優アニャ・テイラー=ジョイ主演で送る、本格派ホラー魔女映画。ファンタジー・ダークネス・ホラー全ての要素が絡み合う、悪夢のような物語。監督は、新鋭ロバート・エガースがメガホンを取る。
映画『ウィッチ』の作品情報
上映時間:93分
ジャンル:ホラー、ファンタジー、ヒューマンドラマ
監督:ロバート・エガース
キャスト:アニャ・テイラー=ジョイ、ラルフ・アイネソン、ケイト・ディッキー、ハーヴィー・スクリムショウ etc
映画『ウィッチ』の登場人物(キャスト)
- トマシン(アニャ・テイラー=ジョイ)
- 家族の長女で、母親からは厳しくされ、小間使いのように扱われる。唯一の味方は、弟のケイレブだけであった。
- ケイレブ(ハーヴェイ・スクリムショウ)
- トマシンの弟で、トマシンを心配する心優しい少年。母のキャサリンからは誰よりも可愛がられ、父のウィリアムからも信頼されている。
- ウィリアム(ラルフ・アイネソン)
- トマシンやケイレブの父親。熱心なキリスト教徒で、度々教会の方針と合わず揉め事を起こしてしまう。自尊心が強く、子供たちにも祈ることを強要している。
- キャサリン(ケイト・ディッキー)
- トマシンやケイレブたちの母親。ウィリアムのすることが気に入らず、文句を言う日々を送る。
- マーシー(エリー・グレンジャー)
- トマシンとケイレブの妹。ジョナスとは双子にあたる。いつもジョナスと行動を共にしており、トマシンが魔女だと信じている。
- ジョナス(ルーカス・ドーソン)
- トマシンとケイレブの弟。マーシーと双子の関係にあり、マーシーと違って少し臆病。
映画『ウィッチ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ウィッチ』のあらすじ【起】
「私は罪を犯しました。」長女トマシンは、一人で一心に祈りを捧げる。
信仰心の強い父親ウィリアムが、教会と反発し続けた結果、ついに一家は町を追放されてしまうことになる。時は1630年のアメリカ、ニューイングランド。町を出た一家は、森の手前にある荒れ地にみすぼらしい小屋を見つけ、そこで静かに暮らし始める。
トマシンは両手を顔の前で組み、神に祈りを捧げ、「罰としてみじめで過酷な人生を送るべきですが、イエス様どうかお許しを」と呟いた。
トマシンは、生まれたばかりの弟サムを抱きかかえ、森の手前で「いないいないばあ!」とあやす。トマシンが笑いかけると、サムはキャッキャッと声を上げ喜ぶ。しかし、3度目の「いないいないばあ」で、トマシンが顔を覆っていた手を離すと、サムは忽然とどこかへ姿を消してしまっていた。
0歳児のサムが、突然姿を消したことに困惑するトマシンだが、何が何やら分からないまま森の中へ「サム!」と大声を上げて必死に捜した。
数日後、トマシンの弟ケイレブは母親の嗚咽で目を覚ます。家の外へ出ると父がおり、ケイレブにサムの捜索をやめると呟く。そして、森に罠を仕掛けたので手伝ってほしいと言う。畑ではトウモロコシが実っておらず、家族には冬を超えるための貯えが必要であった。
子供は森へ入ってはいけないと言われていたが、一家を支える助けになるようにと言われ、ケイレブは銃を持ち、父の後をついて森へ向かう。罠が仕掛けてある場所への道中、ケイレブはウィリアムから「お前が持っている罪は?」と問われ、聖書の暗唱をする。ウィリアムは満足そうにケイレブを褒めた。
森に仕掛けた罠には、獲物がかかっていなかった。罠を仕掛けなおそうとするウィリアムに、ケイレブは「サムも生まれながらに罪を持っていたの?」と問う。サムは地獄へ行ってしまったのかと、泣きそうな表情で訴える。ウィリアムはいい人間か悪い人間なのかは神のみぞ知っている、行けるように毎日祈りを捧げよう」とケイレブを励ました。
ケイレブは話しをそらすように、罠をどこで手に入れたのか父に聞いた。父親は力なく母親の銀カップをインディアンに渡して手に入れたと答えた。
映画『ウィッチ』のあらすじ【承】
その頃、家ではトマシンの弟ジョナスと妹マーシーがヤギをからかって遊んでいた。ウィリアムとケイレブが戻ってくると、キャサリンも家から出てきて、双子から目を離したトマシンを咎める。
キャサリンは、勝手に家を出ていったケイレブにも詰め寄り、ケイレブはとっさに谷にリンゴの木を見たからお母さんを喜ばそうと思ったと嘘をついた。
ウィリアムに水を汲んでくるよう頼まれたケイレブの後をついて、トマシンも川へやって来る。マーシーも川へ来ると、トマシンに自分は魔女だと言い2人を驚かせる。そんな妹にうんざりしたトマシンは、逆に自分が魔女だと言い、サムを消したのも自分だとマーシーを脅す。そして、ケイレブの制止も聞かずこのことは内緒だと、マーシーに言い聞かせた。
夜、食卓を囲んでいると母親はトマシンに、父親の形見の銀カップをどこにやったのか問い詰める。トマシンは知らないと答えるが、母親はトマシンを厳しく責めた。
子供たちが食卓から出て行くと、キャサリンはトマシンが月のものを迎えたから、奉公に行く年齢だと呟く。しかし、こんなところでは奉公先もないと嘆いた。ウィリアムはトマシンを町へ連れて行って奉公させようとキャサリンに誓った。
その話は子供たちに筒抜けで、トマシンは不安げな面持ちを浮かべ聞いていた。
明け方近く、ケイレブは森へ行く準備をしていた。ケイレブの様子に気付いたトマシンは、ケイレブを止める。だが、「姉さんを奉公になんて行かせない」と強く話すケイレブ。トマシンは1人で森へ行こうとするケイレブに無理やりついて行った。
罠のある場所へ向かうと、そこには小さな獣が繋がっていた。そのとき、一緒に連れてきていた犬が吠え、馬が暴れるとトマシンは放り出されて気を失った。
ケイレブは銃を構え、森の奥深くへ入ってしまった。
トマシンは遠くで父親の声を聞き、目を覚ます。森の中を駆け回り、ウィリアムと再会したトマシンは父親に縋りつく。だが、ケイレブの姿は何処にもなかった。
映画『ウィッチ』のあらすじ【転】
森の深くに入ってしまったケイレブは、獲物を追って森の奥深くへ入り、その後途方に暮れて木々の生い茂る森の中をさ迷い歩いている。すると、森の中で屋根の煙突から湯気を出している小屋を見つける。
小屋から赤いショールを被った豊満な女性が現れ、ケイレブは半泣きになりながら彼女に近づいていく。女は怯えているケイレブの頬に手を当て、ゆっくりとキスをした。
無事家に戻って来たトマシンだが、キャサリンはケイレブがいないことを叱責する。「私に厳しくしないで」とトマシンは訴えるが、母親は聞く耳もなかった。そのとき、ウィリアムが銀カップを自分が盗ったのだと告白する。
キャサリンは、ウィリアムが嘘をついていたことにも、息子に嘘をつかせたことにも怒りを覚え、ウィリアムを激しく罵った。
しばらくして、トマシンがヤギの様子を見に家の外に出ると、ケイレブが裸で外に立っていた。家族は懸命にトマシンを手当てする。そのとき、マーシーが「トマシンが呪ったの?」とキャサリンに話してしまう。
ウィリアムは次の日の朝には、町へ行ってトマシンの奉公先を見つけ、医者を呼んで戻ってくるとキャサリンに話す。だが、何もかもに疲れていたキャサリンは、ただ置いて行かないでと嘆いていた。
そのとき、ケイレブの悲鳴が家中に響き、家族がケイレブの元に駆け寄ると、ケイレブは「斧で彼女の首をはねろ」と苦しそうにもがき叫んでいる。ケイレブの口から小さなリンゴが飛び出し、双子が「魔女の呪いだ」と叫び声を上げた。
ウィリアムとキャサリンは、必死に神に祈りを捧げ、トマシンや双子にも祈るよう命じるが、双子は祈り方が分からず困惑していた。ケイレブは何かにうなされながらも、最後はわずかに微笑み絶命する。
映画『ウィッチ』の結末・ラスト(ネタバレ)
サムだけでなくケイレブも亡くしてしまったキャサリンは、トマシンに家から出て行くよう叫ぶ。ウィリアムがトマシンを外に出すと、トマシンは自分を信じて欲しいと父親に懇願した。だが、父が話しを聞かずにいると、父親は偽善者で自分の盗みを隠し、作物も育てられず狩りもできない無能だと罵った。
ようやくウィリアムが話を聞く耳を持つと、トマシンは双子が黒いヤギに話しかけ悪魔と契約したのだと話す。ウィリアムは、トマシンと双子をヤギ小屋の中に閉じ込めた。そして夜、平静を失っていたウィリアムも自身の愚かさを懺悔し、神に祈りを捧げた。
その頃、キャサリンの元にはケイレブとサムが姿を現し、キャサリンは涙を流して2人の戻りを喜んだ。母さんに会いたかったとケイレブは囁き、キャサリンはサムにお乳をあげなきゃと微笑む。キャサリンの胸をカラスがついばみ、胸からは血を流していたが、キャサリンは喜びの声を上げていた。ケイレブとサムの姿はどこにもなかった。
翌朝、ウィリアムが目を覚ますと、外の小屋は無残に壊されヤギも殺されていた。トマシンは、ウィリアムの悲鳴によって目を覚ます。双子の姿はなく、代わりに黒いヤギがウィリアムを襲っている場面に出くわす。慌てて駆け寄るが、ウィリアムは腹部を貫かれており、間もなく絶命する。
そこへ、キャサリンが「なんてことをした!」と叫び、トマシンに詰め寄る。弟を誘惑し、父親を誘惑し、自分から何もかも奪ったのだとトマシンを怒鳴り、首を絞めようとする。トマシンは思わず地面に落ちていた小刀を母に向け振るい落とす。
自分が殺してしまった母親の亡骸を抱きしめながら、トマシンは涙を流した。
夜、ヤギ小屋で休んでいたトマシンは何かに導かれるように外へ出る。トマシンの目の前に黒ヤギが立っていた。黒ヤギはトマシンの目の前に本を差し出し、服を脱いで署名するよう語り掛ける。
トマシンは、真っ暗な森の中を生まれたままの姿でゆっくりと進む。彼女の視線の先には、燃え盛る炎を囲って一心不乱に祈りを捧げる裸の女たちがいた。女たちは口々に祈りの言葉を叫び、やがて宙に浮かんでいく。
その姿を見て、トマシンは泣きそうな顔で笑い、自身も両腕を天に向ける。どこか苦しそうで、しかし、解放され自由を得たような光悦とした表情を浮かべながら、トマシンは高い木の頂上まで登っていった。
映画『ウィッチ』の感想・評価・レビュー
アメリカのニューイングランドでは、遥か昔に魔女裁判があった場所として知られている。今回の物語は、1962年頃にあった魔女裁判よりも前の、1630年頃の物語。強い信仰心によって父親を中心に団結していた家族は、赤ん坊がいなくなったことで疑心暗鬼に囚われ、身の破滅を呼んでしまう。ラストシーンは衝撃的で、エンディングを解読するのは最早不可能にも近い。誰もが予想もしていなかったシーンであることは間違いなく、シンプルなホラー映画でありながらも、恐怖心を残していく意味深な映画である。(MIHOシネマ編集部)
ものすごくイライラする作品です。主人公が家族に愛されず、ひどい扱いを受けるという作品は沢山ありますが、この作品に出てくる家族が最悪です。神に祈ることだけに執着して、作物も育てられない父親や娘を侮辱し続け、何に対しても文句を言う母親、そしてとにかく生意気な双子の妹弟。主人公のトマシンはそんな最低な家族のもとで、一生懸命に努力しているのに全く報われません。
ラストの展開はかなり衝撃的で、予想もしていなかった結末でした。「魔女」なのか、それとも神に祈ってきた「恩恵」なのか。ぜひ見て欲しい作品です。(女性 30代)
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