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映画『陽暉楼』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『陽暉楼』の概要:赤ん坊の時に芸妓の母親を亡くした房子は、自身も芸妓として働き、店のNO.1にまで上り詰めていた。芸妓の房子とその父親・勝造、勝造の愛人・珠子を中心に物語が展開し、人生の儚さが美しくも切なく表現されている。映画は1983年に公開され、宮尾登美子の同名小説が原作となっている。

映画『陽暉楼』の作品情報

陽暉楼

製作年:1983年
上映時間:144分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:五社英雄
キャスト:緒形拳、池上季実子、浅野温子、二宮さよ子 etc

映画『陽暉楼』の登場人物(キャスト)

太田房子 / 桃若(池上季実子)
料亭・陽暉楼のNO.1を誇る美しい芸妓。芸名は桃若。産まれて間もない時に、芸妓の母親・豊竹呂鶴(お鶴)を亡くしており、父親・勝造とも疎遠となっている。男性から抱かれる日々を過ごしているが、心から誰かを愛する本当の恋を経験したことがない。
太田勝造(緒形拳)
房子の父親で、亡くなった妻・お鶴を想い続けている。貧困のあまり娘を苦界に売らざるを得ない家族と芸者置屋や遊郭との間を取り持ち、手数料を取る斡旋の仕事をしている。あまり表には出さないが、房子には申し訳ない気持ちを抱いている。
珠子(浅野温子)
勝造の愛人。若く可愛らしい容姿をしており、性格は猪突猛進で強気な面が目立つ。勝造の心を占有する亡きお鶴に嫉妬している。
お袖(倍賞美津子)
陽暉楼の元芸妓で、その後は女将として芸妓達の面倒を見ている。勝造のことが好きで、房子の母親・お鶴とは恋のライバルだった。お鶴の死後は彼女の代わりに房子を育て、芸妓として生きていけるように教育を施した。

映画『陽暉楼』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『陽暉楼』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『陽暉楼』のあらすじ【起】

吹雪が舞い、白雪が降り積もる夜。屋内の舞台では、芸妓が三味線を奏で、美しい音色が鳴り響いていた。

芸妓の豊竹呂鶴(お鶴)に惚れ込んだ太田勝造は、彼女と駆け落ちすることを決意する。しかし、芸妓が逃げることは容易いことではなく、お鶴は追っ手の男に刺され、絶命する。2人の間に産まれた赤ん坊は、母の死も知らずに泣き声をあげていた。

お鶴の死から20年経った昭和8年(1993年)の春。土佐・高知の陽暉楼では、桃若という美しい芸妓が人気を博していた。桃若は芸名で、本名は太田房子といい、彼女は勝造とお鶴の実の娘だった。

房子は母・お鶴に似て美しく、陽暉楼のNO.1の芸妓だったが、一生ものと言えるような情熱的な恋愛を経験したことがなく、客からは「実は冷たい娘なのでは?」と言われてしまうこともあった。

陽暉楼にはお袖という女将がおり、芸妓達からは「お母さん」と呼ばれ、慕われていた。房子の母・お鶴と現女将のお袖は、勝造を巡る恋敵同士だったが、お袖は房子の溢れんばかりの才能を見込み、自身の後継者として育てていた。

一方、勝造は娘・房子とは距離を置いており、大阪で愛人・珠子と暮らしていた。勝造の職業は女衒(ぜげん)という特殊なもので、お金に困った女性を風俗店に斡旋する仕事だった。

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映画『陽暉楼』のあらすじ【承】

勝造にはお峯という後妻がおり、彼女との間に忠という息子を授かっていた。忠は盲目の少年で、房子の腹違いの弟だった。房子は忠を可愛がり、時にはプレゼントを贈る時もあった。

勝造の愛人・珠子は、勝造のことを「お父ちゃん」と呼び、気が強く、時折少女のような面を見せる魅力的な女性だった。しかし、勝造が真に愛しているのはお鶴であり、珠子はそれをひしひしと感じていた。

勝造の心を支配するお鶴に嫉妬した珠子は、陽暉楼に入って芸妓になることで、お鶴より魅力的な女性になることを目指す。勝造を連れて陽暉楼へ向かった珠子だったが、女将のお袖から芸妓になることを拒否されてしまう。

陽暉楼の建物から出る際、珠子達は芸妓達と遭遇し、房子(桃若)の姿を目にする。お鶴の生き写しである美しい房子を見た珠子は、彼女に対抗心を燃やし、玉水という名の遊郭へ入り、女郎になることを決意する。

その後、房子達芸妓は、お得意先の客と共にダンスホールへ足を伸ばすが、そこで女郎となった珠子と彼女が引き連れる女郎達と出くわす。女郎になって間もない珠子だったが、豊富な金と強気な性格から、女郎達のリーダー格となっていた。

音楽が流れ、陽暉楼の客がダンスを踊り出すと、珠子がそこに乱入し、2人でリズミカルなダンスを披露する。自分達芸妓よりも身分の低い女郎に客を盗まれ、頭に血が上った房子は、2人のダンスを強制的に終了させる。

ダンスは終わったものの、芸妓と女郎の戦い、もとい房子と珠子の対決は終わってはいなかった。ダンスホールのトイレで遭遇した2人は、険悪なムードから取っ組み合いの喧嘩へ発展し、綺麗にセットした髪も着物も全て乱れ、女同士の激しい戦いは壮絶を極めた。

映画『陽暉楼』のあらすじ【転】

ダンスホールから飛び出した房子は、乱れた姿のままバーへ向かう。そこには、南海銀行の御曹司である佐賀野井守広がおり、彼は房子が来店するのをずっと待っていた。

房子はフラフラと歩き、佐賀野井の所まで行くと、「(こんな姿の私に)失望したでしょ?」と、半ば諦めたような声を出す。しかし、房子の予想とは裏腹に、佐賀野井は房子に愛を示し、2人は情熱的に抱き合うのだった。芸妓として生きてきた房子にとって、これは初めての恋だった。

大阪で活動している稲宗組の親分・稲村宗一は、大金を獲得するために、高知の陽暉楼を買い取ることを計画する。稲村は、お気に入りの女性・丸子を陽暉楼へ送り、芸妓として忍び込ませ、陽暉楼の主人・山岡をたぶらかし陥れる算段を企てる。

稲宗組が陽暉楼を欲していることを知った勝造は、陽暉楼が被害を受けないように、命懸けで稲宗組の者達と戦い、怪我を負わされ、病院の床に就く。そこに、陽暉楼の女将・お袖がお見舞いにやって来て、房子が妊娠していることを告げる。

房子の子供の父親は、陽暉楼のパトロンで、四国銀行協会会長の堀川かと思われたが、房子はそれを否定する。房子が身ごもった子は、彼女が愛する佐賀野井の子だったのだ。しかし、佐賀野井は房子を置いて、彼女の元から姿を消してしまう。

房子は、後日店を訪れた堀川と対面し、身ごもった子供は堀川との子ではないと正直に伝える。堀川は落胆し、房子につらく当たるが、堀川は何も知らないふりをしていただけで、本当のところは自分の子ではないことを理解していた。

陽暉楼でスパイ活動をする稲宗組の丸子は、道後温泉の貸し切り風呂にて、山岡を誘惑していたが、そこに山岡の妻・お袖がやって来る。お袖は浮気した夫に呆れたが、真の敵である丸子に照準を定めると、着物のままズブズブと温泉の中に入り、彼女を威圧した。強気なお袖は、丸子がその場から立ち退くように仕向け、そんな彼女に怯えた丸子は、渋々その場を立ち去るのだった。

稲宗組の丸子と浮気をした陽暉楼の主人・山岡は、浮気に止まらず、博打をした際に稲宗組から借金をした過去もあり、陽暉楼は危機に追い込まれたが、勝造の助けによって借金は全て返済され、稲宗組は陽暉楼を脅し略奪する手段が得られず、やむなく大阪へ戻っていくのだった。

映画『陽暉楼』の結末・ラスト(ネタバレ)

その後、勝造は珠子との愛人関係に終止符を打ち、珠子を想い続ける優しい男性・秀次との結婚を彼女に勧める。珠子と秀次は結婚後、高知へ住居を移し、その土地で小さな店を営み始める。そこへは、かつて珠子と激しい戦いを繰り広げた房子も訪れていた。房子と珠子は全力でぶつかり合ったことをきっかけに、奇妙な熱い友情が生まれ、親友同士となっていた。房子の腕には彼女の赤ん坊が抱かれており、性別は女の子で、弘子という名前だった。

子のために働く幸せを噛み締める房子だったが、芸の途中で倒れてしまい、結核を患っていたことが判明する。房子は弘子を育てられなくなり、お袖に頼んで、やむを得ず弘子を里子に出すことを決める。

病室のベッドに横たわる房子は、勝造が抱いて連れてきた娘・弘子を窓越しに見つめると、「死にたくない」と儚い声で訴え、そのまま命を散らせるのだった。

房子の死を伝えるために、勝造が珠子と秀次の店を訪れると、稲宗組の刺客の襲撃に遭い、秀次は命を失う。

房子と秀次の死後、勝造と珠子は船に乗って大阪へ向かう。大阪へ着いた勝造は、珠子と駅で別れ、稲宗組の親分・稲村がいる理髪屋へ赴く。勝造は、秀次を殺された仇を取るために稲村を射殺し、その場から逃げ出すが、稲宗組の者に刺殺され、命を落とす。

珠子は人のいない大阪駅のベンチに座り、勝造が無事に帰ってくることを祈っていたが、目からは止めどなく涙が溢れていた。

映画『陽暉楼』の感想・評価・レビュー

『陽暉楼』は144分と長い映画だが、展開から目が離せないため退屈せずに観賞することができた。気が強い女性達による修羅場(喧嘩)シーンが見どころだと思っていたが、実際には修羅場要素は少なく、人生の儚さと切なさを描いた作品であることが分かった。房子の母親は彼女が赤子の時に亡くなり、房子自身も母親になってすぐに亡くなってしまう。切なく悲しい連鎖が続き、運命とは残酷だと思わざるを得なかった。房子の親友・珠子も、終盤で夫・秀次と元愛人・勝造を亡くしており、残された彼女がどうなったのかは分からないが、幸せに暮らしてほしいと感じた。(MIHOシネマ編集部)

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