映画『愛人 ラマン』の概要:『愛人 ラマン』は、フランス人作家マルグリット・デュラスの自伝的小説の映画化作。フランス植民地時代のベトナムで出会った15歳のフランス人少女と中国人青年の恋愛を描く。
映画『愛人 ラマン』 作品情報
- 製作年:1992年
- 上映時間:116分
- ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、伝記
- 監督:ジャン=ジャック・アノー
- キャスト:ジェーン・マーチ、レオン・カーフェイ、メルヴィル・プポー、リサ・フォークナー etc
映画『愛人 ラマン』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『愛人 ラマン』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『愛人 ラマン』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『愛人 ラマン』 あらすじ【起・承】
ベトナムがフランス植民地インドシナだった1929年。
少女はフランス人だが、母と兄二人と一緒にベトナムに住んでいた。母は教師をしていたが、騙されてほとんどが海水につかってしまう土地を買わされる。三人は貧しく暮らしていた。
母は長男ばかりをかわいがり、長男は母の金でアヘンを買い、次男と少女にはいつも暴力を振るった。
田舎の自宅から学校の寄宿舎に帰る途中の少女は、中国の資産家の青年と出会う。男は32歳。
黒塗りの高級車に乗ったその男に呼び止められ、好奇心から少女はその車に乗り込む。少女はそれから毎日男に車で送り迎えをしてもらうようになる。
やがて少女は街中にある薄暗い部屋に連れていかれ、快楽のままに男と愛人関係になる。
二人の関係は秘密だが、その後何度もその部屋で体を交わした。
少女の母は、男に食事に招待されたとき娘との関係にうすうす気づいているが、お金のために黙認する。相手の方が裕福で地位もあるのにもかかわらず、母と長兄は青年を「中国人」だと差別し無視を貫いた。
映画『愛人 ラマン』 結末・ラスト(ネタバレ)
男はやがて本気で少女を愛するようになっていた。しかし、父親によって中国の大富豪の娘との結婚が決まっていた。
男は父親に結婚したい人がいると懇願するが、聞き入れてもらえない。
そして少女の方でもフランスへ帰ることが決まった。
少女と別れることを決めた男は、未練を断ち切るために「金のために抱かれたと言ってくれ」と頼む。少女は無表情で、「お金の為にあなたに抱かれた」と答えた。この時、少女はまだ男と会っている理由が何なのかはっきりわからないでいた。
男の結婚式で、男は少女がそこにいることに気付く。二人はしばらく見つめ合う。
それから、少女は男と会っていた部屋で男を待つが、何時間待っても男は現れなかった。
フランスへ発つ日が来た。
少女は船の上から黒塗りの車を見た。フランスへ向かう船の中で、男と会っているときによく聴いていたショパンのワルツが流れた。
少女はこれを聴きながら涙を流した。この涙が男を愛していたから流れたのではない。でも、自分は男を愛していたのかもしれない、と思う。
それから何十年か過ぎたある日。有名作家となった少女の元に一本の電話がかかってくる。電話口の男の話す声は、聞き覚えのある中国訛りだった。男は、「声が聞きたかった。あなたを忘れられず、死ぬまで愛している」と告げた。
映画『愛人 ラマン』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『愛人 ラマン』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
ただの官能映画ではない
この映画は官能的なベッドシーンが多くて、確か日本での公開当時はR15指定で、セックスシーンの過激さばかりが話題になり、今でもそういうことから敬遠してしまうとか、それ目当てでしか観ないということも多いのではないかと思う。
確かにそういう要素はかなり目立つが、そのせいで作品の良さまでかすんでいるように思う。
この映画の大事なところは別にある。年が離れた男女が、最初は快楽目当てで愛人関係になるけれど、それが本当の愛に変わっていく過程もいいし、男と少女の愛に気付くタイミングのすれ違いもいい。
あとは家族の事も。デュラスの自伝では家族の事に触れているエピソードがかなり多いので、そのあたりの要素も増やしてくれたらまだ良かったのかな、と思う。
確かに過激シーンがなければもっとたくさんの人に評価されたのかもしれないが、一度先入観はとっぱらって観てみれば作品の良さに気付くはず。
ベトナムの雰囲気と音楽がいい
舞台のベトナムは熱帯の国。映画の中でも暑そうなのが分かるし、ものすごく気怠い雰囲気がある。ストーリーの展開や主役二人のしぐさはやけにゆっくりだし、言葉少なで表情だけで演技している方が多くて、そういうのがベトナムの雰囲気によく合っていると思った。『サヨナライツカ』のタイもそうだが、東南アジアの雰囲気はいやに禁断の恋愛物に合っている気がする。
音楽は映画の大事な要素でもある。二人が一緒に過ごしているときに聞いていたショパンのワルツがラストで少女に涙を流させる。感動的な演出がうまい。
映画『愛人 ラマン』 まとめ
原作者であるマルグリット・デュラスは、この映画の内容にかなり難色を示したらしい。まあこれだけ官能さを押し出した内容だとそれも仕方ないかと思う。他にもヒロインが原作は家族の話がメインの印象。『ラマン』が有名なおかげでデュラスのイメージがエロ小説家として誤解されたのは事実なので、それは同情する。
ただデュラスが内容に不満を持とうが、世間的にはエロ映画と思われていようが、この映画が名作であることには違いない。
みんなの感想・レビュー
私は公開当時見たのですが、若かったため不快な映画に感じました。お金のためにこんなことするなんてー、本当に愛人って感じと。大抵絶賛するのは大人たちで、やっぱり官能シーンがいいのかなぁとか。でも、私も当時の大人たちと同じ年齢になり、最近ホーチミンに行く前に鑑賞。
色々と刺さるシーンや胸が痛くなるシーン満載です。二人が肉体から結ばれたせいでお互いの将来について話し合えないとか、少女を女にしたのは彼なのにあなたとは結婚できないと無神経に言い放ち中国人は嫌いだからよかったなどと、お互い傷つけ合ってしまうシーンやら、お金があるために愛する人がいても結婚相手が選べない男の苦悩やら、結婚式後部屋で待っても男が来ない少女の痛み、その背景のサイゴンの雑踏や景色。俳優さんの演技も所々ハッとするものがあり、本当にいい映画です。成熟してこそ理解できる映画ですね。多くの人がハマるのもわかります。官能シーンに関してはちょっと品がないと思うところも。原作がベストセラーになってしまったので、映画製作もヒットさせるために話題を呼ぼうとそうせざるを得なかったのかも。
あの苦さと切なさ、何度も見ました。
風土もお話に厚みを持たせ、人種に差があるものの、それを超えるものがあり、色々考えました。素敵な映画ですね。
10何年か前に観た時より、今回の方が心に沁みる映画だった。レオン・カーフェイがいい。初めて少女に話しかける時のドギマギした様子、最初無視されたのに、帽子を褒めたら少女の方から話しかけられた時の嬉しそうな顔、寮に着いて別れる時の、もうすっかり恋に落ちてしまったような表情。32才のおじさんが15才の少女に。彼は女性経験は多くても、本当の恋は恐らく初めてだったのだろう。二人のキレイな身体がセックスシーンも美しく見せる。音楽もいい。大人になってから観る方が、良さが解る映画ですね。
今に生まれてよかった!と思いました
一度でも肌を合わせると情が移る。切なさの残る話ですな。
映画はまだ見ていません。
ふとしたことで、四半世紀も前の古い原作本を手に取りました。
表紙の少女のなんとも言えない不思議な魅力的。寂しそうで、生意気そうで、幸せではないのに生き生きとした、見たことのない美しい顔。
そして、一気に読みました。非常に高尚な文学小説でしたが、最後は涙がとまりません。
人を好きになるって制限できないですよね。青年が父親に好きな人がいて結婚したいと懇願するシーンが真剣んな純愛を感じます。キュンキュンきました。愛のない結婚をした彼が気の毒です。ってそれは嫁にもいえるかな…。最後の電話も心にしみました。
私はもう高齢者ですが、しかしそれでもこの映画は忘れられないですね。
最後のシーンも史上に残る場面だと思っています。
10代後半に、似たような経験をした。
それは、何となく頭の中から無くなっていたように思っていたけれど、この映画を観てから、フラッシュバックして、どうして頭の中から追いやっていたか分かった。
当時は まだ若く未熟だった為、その関係自体が悪いことであるということに意識し過ぎていたが、今から思えば、それが最初の愛が込もった関係だった。
これを思い出してからは、どの関係も
これ以上には感じられず。
映画を観た後も、何度かDVD で観る度に
自分の当時を思い出し、また少女の気持ちと重ねて胸の奥に鈍い痛みを感じる。
この作品は、女性の方が その繊細な感情をより感じ取れるのではないかと思う。
特に私は、男と少女の皮膚の感触が心に残っている。肌が合う感じを、サウンドと共に巧みに表現していた。
そして、男が少女を大切に扱うところが、
その愛情の深さを物語っているように感じた。 誰もが知る名作とはまた違った、知る人ぞ知る名作だと思う。少女を演じたジェーン マーチは、これで有名になり、その後はパッとしないが、独特の雰囲気を持つ魅力溢れる女優だと思う。この映画の後に撮った ブルース ウィリス共演の映画も、性描写が話題になったが、変わった雰囲気の映画で、こちらは特に良い評価でもなかったが、私には なぜか心に残る映画である。それは、派手な性描写でありながら、いやらしさがサラっとしているから。
ダメ。人前では泣かない私がこの映画では涙腺崩壊します。
何度見返してもその度に新たな感想が生まれ切なく苦しくなります。
私もこの映画で流れてくる音楽をきくと、今でも胸が締め付けられます。
私は20代前半の時、17歳も上の既婚者の男性と不倫をしていました。その当時は相手の男性の方が自分を好きでいてくれていたので無邪気に甘えていて、気持ちもどこかうつろ気でしたが、別れてからなぜだか無性に切なくなって、涙がでてきて身体が震えていたのを覚えています。
この映画を観ると、その時の事が思い出されます。
私も大好きな作品です。ラストシーンを思い出しただけで、切なくて泣けてきます。
まったく同感です。
こんなにすばらしい映画はなかなかないとずっと思っていました。