映画『つぐない』の概要:『つぐない』は、第二次世界大戦前後、幼く無知な妹の誤解によって引き裂かれた男女の運命を描いた作品。映画『プライドと偏見』のスタッフ・キャストが集結して制作された。
映画『つぐない』 作品情報
- 製作年:2007年
- 上映時間:123分
- ジャンル:ラブストーリー、戦争、ヒューマンドラマ
- 監督:ジョー・ライト
- キャスト:キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカヴォイ、シアーシャ・ローナン、ロモーラ・ガライ etc
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映画『つぐない』 評価
- 点数:85点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『つぐない』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『つぐない』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『つぐない』 あらすじ【起・承】
第二次世界大戦前の1935年。イングランド。
官僚の娘・セシーリアと、その使用人の息子ロビーは、幼馴染でケンブリッジ大学の同窓生でもある。しかしセシーリアは必要以上にロビーと関わろうとしなかった。
だが、セシーリアの兄が帰ってくる日、手伝いを申し出たロビーと少し言い合いになり、花瓶が割れて池に落ちてしまう。セシーリアは服を脱いで欠片を取りに行くが、ずぶぬれになった下着姿をロビーに見られてしまう。
丁度その場面を、セシーリアの13歳妹・ブライオニーが目撃していた。
ロビーはお詫びの手紙を書こうとするが、長年ひそかに想っていたセシーリアへの思いが高まり、卑猥な文章になってしまう。改めて真面目に書き直した物も用意し、気まずさからそれをブライオニーに託すが、渡したものが先に書いた卑猥な手紙であることに気付く。
偶然見た姉とロビーの姿に疑惑を感じていたブライオニーは、こっそり手紙を開けて読んでしまう。作家になることを夢見る想像力豊かなブライオニーは、その文面からロビーが色情魔であると思い至る。このことを、屋敷に滞在している従姉妹のローラにも話してしまう。
手紙を受け取ったセシーリアは、さっきの出来事から自分が実はロビーを愛していると気づく。二人の思いは通じ合うが、ブライオニーが二人の情事を目撃してしまう。ブライオニーのロビーに対する疑惑は確かなものになった。
兄リーオンは、友人ポールを連れて戻ってきた。ポールはチョコレート工場を経営する青年だった。
夕食の場に、ローラの二人の弟が出席しないので、探しに行くと家出したことが分かる。一同は総出で暗闇の中を探すが、ブライオニーはローラが男に襲われているのを見つける。
顔を見てはいないが、今日の出来事からロビーの仕業であると思い込んでしまい、警察にそう話す。
ブライオニーの誤解と嘘によって二人は引き裂かれてしまうのだった。
映画『つぐない』 結末・ラスト(ネタバレ)
四年後、ロビーは減刑の条件として、軍隊に入っていた。「私の元に戻ってきて」という、最後にセシーリアと交わした約束を果たすため、何が何でも生きて帰るつもりだった。隊からはぐれ、二人の仲間とフランスの地をさまよっていたが、ようやく海辺で軍と合流を果たす。
一方、セシーリアはロンドンで看護婦をしながらロビーの帰りを待っていた。その頃、18歳になったブライオニーもようやく自分のしたことの意味が分かり、謝罪のためにセシーリアに手紙を出す。
セシーリアと同じく看護婦として働いていたブライオニーは、従兄弟のローラがポールと結婚することを知り、結婚式に参列する。その時、ブライオニーはあの日ローラを襲ったのがロビーではなく、ポールであったことを確信する。
急いで姉のアパートに行き事実を語り、謝罪する。しかし、ポールと結婚したローラから証言を得ることは不可能に近く、ロビーの無実は証明できない。セシーリアと話し合っていると、寝ていたロビーが割って入る。ブライオニーに人生をめちゃくちゃにされたロビーは怒りを露わにし、二度と来るなと言い、ブライオニーは追い出されてしまう。
数十年後、ブライオニーは作家人生の最後に『つぐない』を執筆し、その真実をテレビ番組で語っていた。
実際は勇気が出ずにセシーリアに謝罪できなかった。ロビーは船に乗ることなく病で息絶えた。そして、セシーリアもロンドンの空襲時地下鉄ホームに逃げ込むが、大量の水が流れ込んで同じ年に亡くなっていた。
小説に違う結末を描いたのは、せめて小説の中では二人に幸せな未来を、と願ったブライオニーの思いだった。
映画『つぐない』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『つぐない』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
切なく美しいラブストーリー
愛し合う二人が妹の誤解と嘘によって引き裂かれ、さらに戦争で離れ離れになる。これだけの設定で感動できないはずがない。
セシーリアの「物語」としては二人とも生きて再会し、今後幸せになるだろうと思わせるが、実際は引き裂かれたまま二人とも戦争で亡くなってしまう。フィクションのつまらない演出で単純なハッピーエンドにならなかったのは素晴らしい。
一番切ないのは、二人を引き裂いてロビーの人生を台無しにしてしまったブライオニー自身が、ロビーに恋していたことだろう。13歳、まだ幼いながらも、初恋を経験していた。それなのにロビーと姉のとんでもないシーンを目撃してしまい、そして幼い少女にはその背景にある純粋な愛情を読み取れない卑猥な文章を読んでしまい……
憧れていた男性のこんな一面を続けざまに目撃してしまっては、激しく動揺して幻滅してしまうのも無理はない。
愛する姉と、初恋の男性につぐなうこともできず生き残ったブライオニー。ラストシーンの告白はまさに数十年越しの「つぐない」である。
ブライオニーを演じた女優
ブライオニーは、時代別に三人が演じ分けている。特に印象に残ったのは13歳のブライオニーを演じたシアーシャ・ローナン。幼さゆえの過ち、それを正義と疑わない確固たる信念と、受けたショックの大きさを良く表現していた。
ただ、三人が演じ分けることで、「ブライオニー」であることを強調するためか、髪型が全員同じなのは気になった。同じ人間とはいえ、少女期から老年期までボブスタイルで、前髪をピンで留めるところまで同じなんてちょっとあり得ない。
ちょっとした誤解や些細な間違いが誰かの人生を狂わせてしまうことになるのだとものすごく切なくて悲しい気持ちになりました。
最初はブライオニーの行動に本当に腹が立ち、少女のやったことだとしても絶対に許せないと思っていましたが彼女がロビーに恋していたことや、自分がやってしまったことの重大さに気づいた時の絶望を知ると、徐々に彼女の行動に悪気があった訳では無いのだと責める気持ちが消えていきました。
ラストはとにかく切なすぎて胸が苦しくなりました。(女性 30代)
映画『つぐない』 まとめ
第二次世界大戦中が舞台ではあるが、原作はイアン・マキューアンの『贖罪』で、フィクションである。実はこの小説には盗作疑惑があり、それを知ると感傷に浸っているところへ水をさされたような気になる。
他作品からの流用をマキューアン自身認めているところもあるので事実だろうが、ここまでの作品になったのはマキューアンの力だと思う。
第一部、戦争前の一日の情景は、イングランドの自然の美しさ、夏の陽気、第二部以降は一転して戦争の暗さを描く。ストーリーのすばらしさはもちろんだが、情景描写も特に優れていたと思う。
みんなの感想・レビュー
この映画の主人公は、よくいる人物だし、よく見る人物だと思います。
大脳新皮質がよく働き、学校の丸暗記勉強や、文章だけが突出して書けるような、いわゆる現代的な「頭のいい人」ほど、頭がいい故に自分の外界の事はよく解るが、自分の内面の分析については、自分の中から出てくる物が恐ろしくてできないものだ。
そして誤ったり反省したりもしにくい。
いつでも自分で自分の頭の中で、言い訳ワールドを展開できるからだ。
この主人公の最大の欺瞞は、自分が死に追いやった姉とその恋人の恋愛が成就するような小説を書いてしまう事そのものにある。
そういった意味で大変よく書けている小説だと思う。
彼女がそんなものを書いても、何一つ誰も報われはしないし、彼女は誰一人にも、現実の自分自身にも永久には向き合っておらず、更にこの小説で儲けてたりしたら、ただ二重に他者を食い物にしているに過ぎない。
こういった人はたくさんおり、こういった人物が頭の良さを使って先導者になると、本当に怖い…。
原作者は、多分物書き(特に女性の物書き)の業のような物をこの作品で表現しているのではないかと思えるが、本当によく書けていると思い、関心している。
映画も、画像が美しく、登場人物の俳優さんも配役にピッタリで、素晴らしい作品でした。
特に最後に主人公の欺瞞に満ちたセリフや態度が余談無く描かれているところが、最高です。