とある高校で「LGBT」についての授業が行われた。しかし、その授業が行われたのは、2年生の1クラスだけだった。授業を受けた生徒達は、「自分達のクラスにLGBTの人がいるのではないか?」という疑問を抱くようになる。
映画『カランコエの花』の作品情報
- タイトル
- カランコエの花
- 原題
- なし
- 製作年
- 2016年
- 日本公開日
- 2018年7月14日(土)
- 上映時間
- 39分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- 中川駿
- 脚本
- 中川駿
- 製作
- 山野淳
木佐優士
戸塚美早紀 - 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- 今田美桜
永瀬千裕
笠松将
須藤誠
有佐
堀春菜
手島実優
石本径代 - 製作国
- 日本
- 配給
- ニューシネマワークショップ
映画『カランコエの花』の作品概要
『尊く厳かな死』(15)で監督デューを果たした中川駿が、「LGBT」について、当事者ではなく周囲の視点から描いた作品。今作品は、2017年「第26回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)のコンペティション」グランプリなど、数々の賞を受賞している。上映時間・39分と短い時間ながらも、登場人物達の「LGBT」について抱いた様々な思いがギュッと込められている。見ている観客達も、この映画を通して「LGBT」について考えさせられる作品になっている。
映画『カランコエの花』の予告動画
映画『カランコエの花』の登場人物(キャスト)
- 新木裕也(笠松将)
- 生徒。「LGBT」について、からかう発言を行う。
- 小嶋花絵(山上綾加)
- 教師。「LGBT」についての授業を行う。
映画『カランコエの花』のあらすじ(ネタバレなし)
とある高校で「LGBT」についての授業が行われた。教師は生徒達に、恋に性別が関係ないことを訴えた。しかし、その授業が行われたのは、2年生の1クラスだけだった。授業を受けた生徒達は他のクラスで行われていないことを知り、「自分達のクラスにLGBTの人がいるのではないか?」という疑問を抱く。
思春期を生きる生徒達の心は、さざ波のように揺れ動いた。誰が「LGBT」の当事者なのかと探りを入れる生徒、お前がレズなんじゃないかとからかう生徒、またからかう同級生に不快感を示す生徒。生徒達はそれぞれ「LGBT」について考えながら、どんな行動を起こしていくのだろうか。そして、どんな思いを抱いていくのだろうか。「LGBT」を当事者ではなく、周囲の視点にスポットを当てて描いている。
映画『カランコエの花』の感想・評価
グランプリ5冠を含む計10冠受賞の話題作
2017年「第26回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)のコンペティション」グランプリを受賞し、「京都国際映画祭」や「新人監督映画祭・中編部門」などでもグランプリを受賞している。また、生徒の1人として出演している今田美桜は、「福岡インディペンデント映画祭2018」で俳優賞を受賞している。
「第26回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)のコンペティション」で映画を見た人達は、「6作品の中でも圧倒的だった」「頭ひとつ抜きん出ていた」と感想を漏らすほどである。見た人々の心を揺さぶるような熱意が、この映画には籠められている。上映時間39分の中に、「LGBT」の授業を通して感じた生徒達の心の動きがギュッと詰まっている作品である。
「LGBT」を周囲の視点から描いた作品
「LGBT」を当事者の視点から描いた作品は多いと思うが、これは周囲の視点から描いた作品である。普段「LGBT」について考えることはあまりないかもしれないが、この映画に登場する生徒達のようにある日疑問を投げかけられたとき、実際どのような行動を起こすのだろうかと考えさせられる作品になっている。
特に思春期特有の、揺れ動く気持ちが繊細に描かれている。大人とは違い、どこか危なげな雰囲気を漂わせる子供達の心の機微は、見ている人の心により深く刻まれるのではないだろうか。「LGBT」の当事者が、もしかしたらクラスメイトの中にいるかも知れない。そんな疑問が突然投げ込まれたら自分だったらどうするのか、ぜひ考えながら見て欲しいと思う。
愛情
映画を見たタレント・女優の西原さつきは、「誰かを好きになるという、最もピュアな感情を思い出させてくれる映画でした」というコメントを残している。この映画は、「LGBT」という問題を通して、純粋に人を好きになる・愛する気持ちを思い出させてくれる作品でもある。
この映画の予告シーンに、「ただ、あなたを守りたかった」と流れる場面がある。恋愛関係の好きだけではなく、この人を守りたいと思う深い愛情も映画を通して感じられるようになっている。きっと教師は生徒達に「LGBT」を受け入れて欲しいという思いから、授業を行ったのだろうと思う。根底には「ただ、あなたを守りたかった」という、深い愛情がある。人を思う気持ちを、呼び起こさせるような映画になっている。
映画『カランコエの花』の公開前に見ておきたい映画
尊く厳かな死
中川駿の監督デビュー作。「福岡インディペンデント映画祭2016・企画賞」、「第2回新人監督映画祭・中編部門」で準グランプリを受賞している。現実の社会でも問題になっている、「尊厳死」をテーマに描いている作品。中川駿は祖父を「尊厳死」で見送っており、実体験に基づいて映画を作成している。
突然の事故により植物状態になってしまった母。医師の診断の結果、意識が戻る可能性は限りなく低かった。そんな母は、「尊厳死の宣言書(リビングウィル)」を作成していた。残された家族は、母のためにどうすればいいのか苦悩した。尊厳死を受け入れるのか、延命措置を施すのか。これは、実話に基づく、ある家族の話である。あなたが母の家族なら、どんな決断をするのだろうか。
詳細 尊く厳かな死
チョコレートドーナツ
「1970年代のニューヨークのブルックリンで、ゲイの男性が育児放棄された障害児を育てた」という実話を元に作られた作品。ゲイの恋愛だけではなく、子供を引き取るために直面するであろう問題にもスポットが当てられている。「第24回GLAADメディアアワード・最優秀作品賞」を受賞するなど、アメリカの数々の賞を受賞している。魂を揺さぶるような感動作になっている。
1979年・カリフォルニア。シンガーを夢見るショーダンサーのルディは、ゲイであることを隠して生きてきた弁護士のポールと恋に落ちた。ある日、2人は母の愛情を受けずに育った少年のマルコに出会う。マルコはダウン症で、母は薬物依存症だった。マルコの母が逮捕されてしまったため、ルディ達はマルコを部屋に招き入れて育てることにした。ルディ達は3人で幸せに暮らしていたが、世間の差別と偏見が立ちはだかった。
詳細 チョコレートドーナツ
シングルマン
同性の恋人を失った大学教授の日々を描いている。「ヴェネツィア国際映画祭・男優賞」や「英国アカデミー賞・主演男優賞」など、数々の賞を受賞し、ノミネートされた作品である。クリストファー・イシャーウッドの小説を映画化した作品で、トム・フォードは今作品で監督デビューを果たした。
1962年ロサンゼルス。大学教授のジョージは、同性の恋人だったジムを8カ月前に事故で亡くしてしまう。ジョージは愛する人を失った悲しみを乗り越えられず、日々を生きることに苦しんでいた。そして、拳銃自殺を考えるようになる。実際に身辺整理を行い拳銃を購入したとき、教え子のケニーが接触してきた。ジョージは美しいケニーに心を動かされる。果たして、ジョージは自分の人生にどんな決断を下すのだろうか。
詳細 シングルマン
映画『カランコエの花』の評判・口コミ・レビュー
キラキラ恋してる子はみんな可愛い。あの女の子もあの男の子も、みーんな可愛い。
「可愛い」だけで済まされない現実。
胸がギュッとなる。
エンドロールでじわっとくる。
終わった後に映画のタイトル横の「ただ、あなたを守りたかった。」で、やるせない気持ちになる。#カランコエの花
— 勇果(ユカ) (@utoka_ka) 2018年8月2日
それぞれの人物の感情が違和感なくそうそうと自分の中に流れ込んで来た。この頼るものがない不安定で、浅い呼吸しかできないクラス全体の空気感、LGBT以外の問題でもあるものだよなあ。1人1人が自分であり他人であり、個々で心に留まる人物は違うと思う。私はあの男子生徒でした。#カランコエの花
— 日下部元美 MotomiKusakabe (@MoKusakabe) 2018年8月1日
『カランコエの花』を鑑賞。現代日本、ある高校の一教室で唐突にLGBTの授業が行われたことで起こる騒動を描くドラマ。現代の学校で起こりえる関係性がサスペンスを呼ぶ。39分の短編の足りなさが問題を浮き上がらせる。誰かに話したいという人間の欲求。この軋みは今世界のどこかで起こっている蕊作。
— ヒシヌマコースケ (@hisikosu) 2018年7月26日
『カランコエの花』中川監督が、「撮影にあたり、当事者への取材はしていない。異性の恋愛を描くのにわざわざ取材はしないのに、するのは差別では、と思った」とおっしゃったこと、ヘテロの人には珍しく思慮深くて驚いたし素敵だと思った。
— ゆき@本を読む (@yukie1349) 2018年7月26日
映画『カランコエの花』のまとめ
「LGBT」を周囲の視点から描いたことにより、見ている観客達も登場人物達と同じように「LGBT」について考えられるようになっている。「自分達のクラスにLGBTの人がいるのではないか?」という疑問を抱いたとき、自分だったらどんな行動を起こすのだろうか。考え過ぎて、まるで腫れ物を触るかのように行動してしまうのか。それとも、からかって友人達を傷つけてしまうのか。色んな思いを抱きながら見られる作品だと思う。
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