’90年代からの映画通の間では、ジョン・キューザックやクリスチャン・ベールなどと並び、ダークホースといわれていた演技派がエドワード・ノートン。そんな彼の人気の秘密とおすすめ映画ベスト5を紹介。
エドワード・ノートンが出演するおすすめ映画5選
エドワード・ノートンは、’69年8月、マサチューセッツ州ボストンで生まれ。
俳優としての拠点をNYに置きながら私生活を殆ど明かさない事で知られる人物としても知られている。
NYに住むまでの一年間は、祖父の仕事を手伝い、日本に滞在していたという逸話もある。
その演技力は2000人の候補者の中から主役に選ばれたという逸話がある映画デビュー作『真実の行方』で高く評価され、近年では『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で演じた野心ある劇団俳優の役は、ハリウッドデビュー前に劇団俳優をしていたノートン自身を彷彿とさせる事で、新境地を開いたと再評価されている。
自分自身のパーソナリティを保ちながら、役柄を論理的に研究、分析した末に、周囲を喰ってしまう程の存在感で演じるのが、ノートンの持ち味であり、強かさだ。
『ファイトクラブ』で演じた解離性人格障害の若者、『僕たちのアナ・バナナ』で演じたお人よし神父、『プライド&グローリー』では過去のトラウマに囚われながら職務と葛藤する警官、『ボーン・レガシー』ではジェレミー・レナー演じる暗殺者を追いつめる冷酷非常なCIA高官など多岐に渡る。
他にもネオナチに染まる青年など、1つの役柄で自分を決め付けられる事を嫌い、可能性を広げるかの様に、常に新しい役を模索し続け限界に挑戦しながら、常に共演者とのバランスを取っているのが手に取るように判る俳優である。
『僕たちのアナ・バナナ』からは監督業にも進出。今後も活躍が期待される俳優の1人である。
真実の行方
注目ポイント&見所
冬のシカゴで大司教が殺害され、教会のミサを手伝っていた青年アーロンに殺害疑惑がかかる。
一世一代の大スクープと思いゴシップ好きの弁護士マーティンは、アーロンの弁護を引き受けるものの、アーロンは事件供述を、ことある事に引っくり返し無実を主張する。
しかもアーロンは、事件当日はロイという別の人格が出た為に何をしていたのか全く記憶にないと言い、裁判の時も『別人格』が現れてしまう。
しかも事件担当検事は、マーティンの元恋人ジャネットという、裁判に不利な条件ばかりが続く事となる。
エドワード・ノートンのデビュー作であり、レオナルド・ディカプリオから主役を奪い取ったという逸話も残されている作品。
劇中のノートンがアーロンの変化を細やかに演じているのが見所。周囲はいかにも振り回されているのが判る。
映画のラストで、アーロンが、多重人格者のふりをして、マーティンを騙していた事が判明するシーンでの、ノートンの表情の豹変ぷりは見物。
詳細 真実の行方
ファイト・クラブ
注目ポイント&見所
映画全編が、自動車会社のクレーム係として平凡な日々を過ごす『僕』の視点で描かれている所が画期的であり、『僕』がノートンである。
『僕』は、人生における醜悪の権化の女性マーラに出逢った後、完璧な肉体を持つ行商人タイラーに出逢い気分が晴れる。
タイラーに誘われ秘密の殴り合いの場『ファイト・クラブ』に誘われた『僕』の生活は、めまぐるしく変わっていくはずだった…。
実は登場人物のマーラ、タイラー、僕は『同一人物』というオチが最後に判るという、上映当時は画期的作りの映画だった。
ただのクレーム係が、ブランドものの服を買いあさり、インテリアに拘り物欲を満たした不眠症という事は考えられない。
公開当初は制作費を回収できず、配給元のFOXの重役が解雇されるという『天国の門』にも似た事件が起きたが、今考えるとノートンの抑えた演技があったからこそ、ラストのどんでん返しが衝撃的ではなかったかと思える作品である。
詳細 ファイト・クラブ
アメリカン・ヒストリーX
注目ポイント&見所
敬愛していた消防士だった父を黒人の麻薬ディーラーに殺されたデレクは、父親と同じ年代男性キャメロンから白人至上主義のリーダーになるように煽られる。
ついに黒人の車泥棒を撃ち殺した罪で刑務所に服役する事となったが、3年ぶりに釈放されたデレクは穏やかは青年になっていた。
映画は白人至上主義に走ったエドワード・ノートン演じるデレクが刑務所の中で見た、ポリシーなき犯罪者の実態と報復が綴られている。
いかにも自信に満ち溢れているデレクが、傷ついた末に、忌み嫌っていた黒人に助けを求め更正していく姿が見物であり、ノートンもこの過程を体当たりで演じている。
人種差別という深い闇は、デレク1人の問題では片付けられないものだという事を暗喩するかの様な衝撃的なラストが待っている所も見逃せない。
詳細 アメリカン・ヒストリーX
僕たちのアナ・バナナ
注目ポイント&見所
ユダヤ教のラビのジェイク、カトリック教の神父のブレンダンは、NY育ちの幼馴染。そんな2人の元に、子供の頃親の転勤で遠くへ行ってしまったはずの憧れの女性アナ・バナナが帰ってきた。
美しく成長した彼女に心を奪われる2人だが、思いは複雑。
ジェイクは、ユダヤ教の女性しか結婚出来ず、ブレンダンは、そもそも結婚出来ない。
初恋のアナとの結婚の為ならカトリックを捨ててもいいというのに、最終的に、親友ジェイクの恋を応援してしまう神父ブレンダンをノートンが好演。
母親が脳卒中にでもならないと結婚相手すら決められない、モテ男のラビという珍しい役をベン・スティラーが演じている所も面白い。
ノートンもスティラーも、この映画でなければ観れない様な役に挑戦していると思える様な映画である。
エドワード・ノートンが友人の脚本を初監督した作品が、爽やかなラブストーリーというのも彼の今までのフィルモグラフィーと照らし合わせると異例である。
詳細 僕たちのアナ・バナナ
ボーン・レガシー
注目ポイント&見所
人気のうちに、三部作を終えたマット・ディモン主演の『ジェイソン・ボーンシリーズ』のスピン・オフ。
CIAの内部機密『トレッドストーン』他、暗殺者養成計画が外部に漏洩する事を防ぐ為、CIA直轄研究所のリック・バイヤーは、全ての計画の抹消を指示。
それは現在養成期間に入っているCIA管轄の『暗殺者全員抹殺命令』だった。
訓練中に暗殺命令が下され、間一髪で難を逃れた『アウトカム計画』の暗殺者アーロン・クロスは、何故自分が狙われたのか、自分の管理に必要な薬を手に入れる為に本部へ急ぐ。
知らないうちに、暗殺者計画の真髄に迫っていくジェレミー・レナー演じるクロスが動だとすれば、司令室に居て、クロス抹殺指令を下すノートン演じるバイヤーは静である。
彼らが交わるのは、何故クロスが暗殺者としてスカウトされたかという、クロスの蘇るはずのない『過去の記憶』である。
そこには、米国の抱えた闇が判る。
この時ノートン演じるバイヤーの髪が、銀髪なのは『若いのに要職についているという事はそれなりの苦労がある』という意味だからだそうだ。
役作りに一工夫加えるノートンの姿勢が垣間見える。
詳細 ボーン・レガシー
まとめ
ノートンの出演作は、どの役をとってみても、共通点はあまり見当たらない。
初期の映画のラストに『どんでん返し』があった程度である。
トム・クルーズの様に、フィルモグラフィーの大半が主演で、どの役を演じても同じ様に見える俳優もいる。
ノートンの場合は、作品や配役、作風により、演じ分けが出来る所が最大の魅力である。
一見目立たないにも関わらず、存在感があるという矛盾した感覚を、映画を観ている側に与えるのが、ノートンの不思議な魅力とも言える。
2010年以降は出演作が、減少しているが、これからは質を厳選し、いい作品に出演して貰いたいと思う俳優の1人である。
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