『ナルニアの国物語』のタムナスさんなんてもう古い。30歳を超えてからは、役者として円熟味を増し、硬軟様々な役をこなすようになったジェームズ・マカヴォイ。母国スコットランドだけでなくハリウッドでの活躍も目覚ましい彼のおすすめ映画を見ていきましょう。
ジェームズ・マカヴォイが出演するおすすめ映画5選
ジェームス・マカヴォイは、’79年スコットランド・グラスゴー生まれ。
7歳で両親が離婚後は、祖父母に育てられた事もあり、あまり私生活を公にしない俳優としても知られている。
ハリウッドで『消されたヘッドライン』としてリメイクされたBBCテレビドラマ『ステート・オブ・プレイ~陰謀の構図~』で注目を浴びた後、ロンドンに移住。
『ナルニア国物語』で国際的に名前が知られる様になり、『ラスト・キング・オブ・スコットランド』の強烈な名演で英国アカデミー助演賞を受賞した。
アンジェリーナ・ジョリーと共演した『ウォンテッド』で、ハリウッド大作に出演し、その後『X-MEN:ファーストジェネレーション』で一気に大人の役が回ってくるようになる。
その後、過去の出演作が再評価される事となり、テレビ映画『ダンシング・インサイド/明日を生きる』などが改めてCS放送で放映されるようになった。
実は『X-MEN』で演じたかったのはエクゼビアではなくガンビットという話や、大のサッカーファンという面もある事から、真面目でありながらお茶目という一面も持つ俳優である。
演じる役柄も、女性の目からみると傲慢であったり身勝手な男性の役や長いものにまかれる優柔不断な人間像が多いが、それを憎めない人間にしてしまうのも、彼の魅力の一つである。
X-MEN フューチャー&パスト
注目ポイント&見所
時は近未来。バイオメカニカルロボ・センチネルにより、ミュータントとミュータントに味方する人類が滅亡に追いやられ、地球滅亡の危機が迫ったその時。
残り少ない精鋭でセンチネル軍団と戦い続けていたミュータントを率いる、プロフェッサーXは、キティ・ブライドの転送能力を利用し、ウルヴァリンをセンチネルが開発された’70年代に送り込み歴史を変えようと試みる。
しかしそれは、ウルヴァリンが生きる希望を失った若きプロフェッサーXことエクゼビアの心を立ち直らせる苦難の日々でもあった…。
時代設定は前作『X-MEN:ファーストジェネレーション』から数年後、ヴェトナム戦争に突入した米国が舞台。
エクゼビアは、先の戦いでエリック/マグニートの中にある闇の心をよみがえらせてしまったばかりか、妹の様に可愛がっていたレイヴン/ミスティークを戦場に追いやってしまい自暴自棄になっていた。
エクゼビア学園に僅かに残ったミュータントも、マッコイ/ビーストが、エクゼビアの身を案じて残っているだけ。
自責の念に駆られつつも自暴自棄になっているエクゼビアが、いかにして自分の使命に向き直るか、マカヴォイ演じるエクゼビアが、未来のエクゼビア/プロフェッサーXからメッセージを受け取るシーンも見所。
エリックと、エクゼビアがセンチネルを倒す方法として思いつく方法が全く異なる所も、注目ポイントである。
ラストで、ミスティークがどの様な運命を辿ったかという点で、ウルヴァリンの今後の運命が左右されるのかと思うと、興味深い作品なので最後まで見逃せない。
声をかくす人
注目ポイント&見所
南北戦争終結後、リンカーン大統領暗殺の共犯として米国初の女性死刑囚となったメアリー・サラット。
南軍の残党で、彼女の息子を含む暗殺犯一味に下宿を提供したというだけで罪に問われた彼女は、裁判で無罪を主張する。
彼女の弁護を上官の命令で引き受けたのは、北軍の英雄で、駆け出しの弁護士だったフレデリック。
裁判は、リンカーンの棺をかついだ北軍将校が判事となる軍法裁判となった上、サラット一家は、フレデリックに非協力的で口を閉ざしたまま。
メアリーの息子ジョンは逃亡中だが、いずれ捕まる身という裁判どころではない事態。
四面楚歌の中で、メアリーが息子を守る為に、あえて罪をかぶった事実を引き出す、実在した苦悩の弁護士フレデリックをジェームス・マカヴォイが演じる。
ラストシーンで、フレデリックはジョンに面会に行くが、その時にジョンがフレデリックにかけた言葉は、何にも代えがたいねぎらいの言葉という点が注目ポイントだ。
撮影技術にこだわりのある映画で、当時の建物が残る場所で撮影されているだけでなく、ガス燈やランプなど当時の薄暗く柔らかい照明が再現されている所は注目すべき所である。
歴史はマジョリティに塗り替えられ正当化されてしまいがちだという、監督ロバート・レッドッフォードの意欲が垣間見える一作。
詳細 声をかくす人
ラブストーリーズ コナーの涙
注目ポイント&見所
レストラン業界の大物である父に反抗しNYの片隅で小さなダイナーを営むコナーの生活が一変したのは、妻エリナーが、ある日突然出て行ってから。
幼い息子コディを亡くして以来、2人で傷つきながらも心の隙間を埋めようと努力してきたはずだったが、気が付けばコナーだけが空回りしていた日々。
コナーは、エリナーが出て行った後に、はじめて彼女の背中を追う事にするがエリナーは、そんなコナーから逃げる様に去っていく…。
同じ話を描いているが『コナーの涙』では夫であるコナーの視点、『エリナーの愛情』では妻エリナーの視点で描かれている。
これにより恋愛は2人でしても、主観的なものである事が判る、新しい試みの作品作りだ。
『コナーの涙』では、コナーは2人が一番楽しかった恋人同士の思い出から始まるが、妻の回想は、2人で住んでいたアパートを飛び出し橋の上から身投げをするシーンから始まる。
これにより、男性は現実が辛くても心の中では簡単に、一番楽しかった思い出に戻っている事が判る、そして、思い出の中の彼女がもう二度と戻ってこない事が判ると、ようやく現実を受け止める準備をしだす。
女性はその逆だ。そんな2人のすれ違いを、マカヴォイ演じるコナーの視点から描いている。
ラストは、父のレストランを継ぐコナーの姿で終わるので、彼がようやく現実を見る事が出来た、というとらえ方をすればいいのだろう。
夢を見る男と、現実を見据える男を演じ分けているマカヴォイの姿が見どころ。
詳細 ラブストーリーズ コナー
ラストキング・オブ・スコットランド
注目ポイント&見所
実在したウガンダの独裁者の話をマカヴォイ演じる架空の白人青年医師の目線を通す事で、客観的視点を映画の中に置いた作品。
バックパッカー同然でウガンダにやってきた青年医師ニコラスは、クーデターで大統領になったという元ボクシングチャンピオン・アミンの捻挫を治した事から、お抱え医師となる。
ニコラス自身、大統領という要職なのに豪放磊落な人間と思っていたアミンだったが、彼が影でやっている残虐行為を目の当りにするようになり、国外脱出しようとした所パスポートを取り上げられてしまう。
人間として優柔不断で、長いものにまかれる性格だった為に、強烈な個性を持つ独裁者から逃げられなくなる青年医師の哀れさを、マカヴォイが狂気の熱演で答えている。
劇中では、目を背けたくなるような拷問シーンがあるのだが、実際に彼がスタントなしで行い、失神したという逸話が残っている。
映画のラストでは、ニコラスは、黒人の元お抱え医師のおかげで、ウガンダを襲撃に来たハイジャックに紛れて逃げる事が出来るのだが、その時に黒人医師がニコラスに言った言葉は、今生きる私たちの世の中にある人種差別問題の根底にあるものだと痛感させられる。
ダンシング・インサイド 明日を生きる
注目ポイント&見所
小児麻痺で首から下が動かない車椅子のマイケルは、施設から出たことがない。そんな彼のルームメイトとして、あちこちの施設から追い出されたというローリーが来た。
ローリーは金髪に鼻ピアス、車椅子で破天荒だが、はつらつとしてマイケルにない部分全てを持ち合わせていた。
何よりも、言葉が上手く喋れないマイケルの言う事を無理なく理解してくれたのはローリーだけだった。
そんな2人は、ローリーの提案で、施設を出て共同生活をしようとする…。
破天荒でありながら、生き急いでいるローリーをマカヴォイが熱演。もう余命いくばくもない身だと知り、思い切り生きようとしたローリーは、最後に自分の命と引き換えにマイケルを守り死んでいく。
小粒な作品ながら、キラリと光る思いのある一作である。
まとめ
ジェームス・マカヴォイが選ぶ役というのは、どれも個性的である。
設定はともかく、人物像も一つとして同じ所がないのが、見どころだ。
ここには挙げられず次点となった作品では、自分の妄想からドツボにはまってしまう危なすぎる警官の一日を描いた『フィルス』や、平々凡々なリーマン実は暗殺者という『ウォンテッド』。
大物犯罪者に逃げられた刑事を演じた『ビトレイヤー』、ギャンブル依存症で借金まみれのオークション競売人という役柄の『トランス』。
どれとして同じ役はない上、これらを演じ分けられる彼の演技力にも感服する。
それはマカヴォイのこれからの出演作が、主演であれ脇役であれ楽しみだという事だ。
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