映画『アデルの恋の物語』の概要:フランスの文豪として知られるヴィクトル・ユゴーの次女アデル・ユゴーが激しい恋をし、狂気の世界へ落ちていく様を描く。実話と実在の人物に基づく物語。1975年公開のフランス映画。
映画『アデルの恋の物語』 作品情報
- 製作年:1975年
- 上映時間:97分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、伝記
- 監督:フランソワ・トリュフォー
- キャスト:イザベル・アジャーニ、ブルース・ロビンソン、ジョゼフ・ブラッチリー、シルヴィア・マリオット etc
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映画『アデルの恋の物語』 評価
- 点数:75点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『アデルの恋の物語』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『アデルの恋の物語』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『アデルの恋の物語』 あらすじ【起・承】
1863年、カナダのハリファクスの港にアデル・ユゴー(イザベル・アジャーニ)は一人で降り立つ。アデルは高名な詩人ヴィクトル・ユゴーの次女で、フランスのカーンジー島から、英国軍騎兵連隊に所属するピンソン中尉(ブルース・ロビンソン)を追ってきたのだ。
ピンソンは多額の借金を背負った女たらしで、金目当てでアデルに求婚したが彼女を愛してはいなかった。しかしアデルは両親が反対したから結婚できなかったと思い込み、家出をしてきていた。実家からの送金頼みで下宿暮らしをし、アデルはピンソンに熱烈なラブレターを書き続けるが、ピンソンからは何の返事もなかった。
ようやくピンソンが下宿先を訪ねてくれ、アデルは必死で彼にすがりつくが冷たく突き放される。それでも彼女は両親に“結婚する”と嘘の手紙を書く。それを信じたユゴーは結婚の同意書を送り、新聞に2人の結婚の告知を出す。
ピンソンはアデルの嘘がそのまま掲載された新聞を見た上官に厳しく詰問され、これ以上軽率なことをしたら軍法会議にかけると叱責される。ピンソンはユゴーに手紙を送り、両親にもアデルの嘘がバレてしまう。帰国の旅費とともに“帰ってこい”という手紙が届くが、アデルは全く聞く耳を持たない。
映画『アデルの恋の物語』 結末・ラスト(ネタバレ)
アデルは偉大すぎる父親の名と、19歳で溺死した姉の存在に悩まされてきた。毎晩悪夢にうなされ、さらにピンソンへの狂気的な執着を捨てられず、徐々に心のバランスを失っていく。不安定な精神状態の中で体調を崩し、視力も低下してメガネをかけるようになる。
ピンソンが判事の娘と結婚すると聞いたアデルは、判事の家へ乗り込み、彼の子供を妊娠していると嘘をつく。そのせいでピンソンの結婚は破談となってしまい、彼はますますアデルを拒絶するようになる。
アデルはお金もなくなり、下宿先を出て無料の宿泊施設で寝泊まりするようになる。荒んだ生活の中でアデルは正気を失っていき、どんどんみすぼらしくなっていく。
1864年、ピンソンの連隊はバルバドス島へ移動となり、ピンソンはようやくアデルから逃げられたと安心していた。しかしアデルはここまでピンソンを追いかけてきて、黒人地区を徘徊していた。しかし完全に病んでしまったアデルはピンソンが誰かもわからなくなっていた。
親切な黒人のおばさんが行き倒れていたアデルを助け、フランスまで連れ帰ってくれる。しかしアデルの心が戻ることはなく、彼女は40年間精神病院で過ごした後、75歳で他界する。彼女は生涯暗号による手紙を書き続けていた。
映画『アデルの恋の物語』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『アデルの恋の物語』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
恋の物語なんて生易しいものではない
「アデルの恋の物語」というタイトルから美しい男女の恋物語を勝手に想像していたのだが、とんでもなかった。アデルを演じたイザベル・アジャーニは確かに美しい。しかし最初はとても美しかったイザベル・アジャーニが話を追うごとに見る影もなくなっていく。それはもう鬼気迫るものがある。はっきり言って恐ろしい。
海を渡ってピンソン中尉を追ってきたアデルは両親の反対で愛しい彼と結婚できなかったと思い込んでいるが、現実は違う。ピンソンというのは相当な遊び人で、おそらくアデルにも軽い気持ちで声をかけ、財産目当てで彼女に求婚したのだろう。それをアデルの両親は見抜いて反対したのだろうし、ピンソンもいろいろと面倒になって逃げ出したようだ。
しかしアデルは諦めない。彼と結婚するため、ありとあらゆる手段を使い彼の気を引こうとする。結婚してくれるなら金も女も与えると訴え、大嘘をついて彼の結婚を阻止し、やがて正気を失っていく。しかし正気を失いながらもバルバドス島までピンソンを追っていくとは…なんという執念だろう。
つまり「八百屋お七」や「安珍清姫」で描かれるすさまじい女の情念の話がこの「アデルの恋の物語」であり、可愛い恋の要素など全くないのでそこは要注意だ。
実はアデルは三十路超えだった!
最初に“実話と実在の人物に基づく物語”という注釈があり、最後にアデルのお墓が映される。その墓石には“1830〜1915”と刻まれている。何気にその映像を見てびっくりした。何とこの作品で描かれているアデルの実年齢は33〜35歳だったのだ。
アデルの恋に対する熱狂ぶりとイザベル・アジャーニのルックスから、勝手に彼女は20歳前後なのだろうと思い込んでいたのだが、実は彼女は34歳だった。それまでまともな恋愛経験はなくピンソンが初めての男だったはずだ。ずっとこんなに若くて可愛いのだから他にいい男がいるだろうと思っていたが、そうではなかった。この事実を知ると少々引く。イザベル・アジャーニが若くて美しいのでこの壮絶な女の狂気もどこか儚く映るが、現実を想像すると怖い。何にしても痛ましいことに変わりはないのだが。
愛情が強すぎるあまり、ストーカーと化してしまう人の気持ちは理解できなくもありませんが、自分の身が滅びるまで誰かを愛する気持ちは私には理解できませんでした。
心に抱えた闇を全て愛にぶつけてしまったため、相手にされない異性へも熱く強い愛情をぶつけ続け、拒絶されてしまう。そんな彼女を見ていると可哀想で仕方ありませんでしたが、家族が救いの手を差し伸べようとしても聞く耳を持たないので、それほど彼女の愛は強く、一途だったのだと感じます。
彼女の生涯を知ると別の形で良い人に出会えていたら良かったのにと思ってしまいました。(女性 30代)
映画『アデルの恋の物語』 まとめ
映像や音楽は秀悦であり見せ方が上手いので話のわりに嫌な印象は受けない。しかし、後から考えると色々と闇が深い。あまり事情のわからないうちはピンソン中尉の冷たさに腹が立つが、事情がわかってくるとだんだん彼が気の毒にもなる。見境なくここまで追いかけられたらもはやホラーの世界だ。アデルが生霊のようで怖い。
この女の情念を見事に表現したイザベル・アジャーニの熱演は素晴らしく、それだけでも見る価値はあるかもしれない。話は暗すぎて嫌いだが女の狂気はよく描けていた。
みんなの感想・レビュー
>話は暗すぎて嫌いだが女の狂気はよく描けていた
わたしはそんなふうには受け止めませんでした。
確かにアデルの行動は尋常ではありません。
だんだんとストーカー化し、正気を失い、著名な親に嘘の手紙を書いて送金してもらい…
その嘘がバレ、帰国するよう促され、最後にはピンソン中尉を判別することもできなくなる。
でも、ダメな男に、そんなにも恋に溺れ、壊れていく彼女の姿はフィクションではありません。
実話なのです。
共感できないところは多々あるけれど、年齢なんかは関係なく(34歳だから何?年齢どうこういうのは日本人らしい豊かさに欠ける発想ですね。彼女はフランス人ですから、恋に年齢は関係ないという考え方ですよ)現在において、これほどまでに狂おしく恋に堕ちていくことはもうないように思います。
純粋さゆえ、一途さゆえの狂気。
この恋がダメなら次の人、というような、わたしたち現在人の持つドライさがアデルにはないのです。
ただ怖いなどいうだけで、表面的なことしか観ていない、読めていない、推し測れていない、そのありのままの姿を物語る本作の美しく儚く愚かな世界を理解できていないこちらの感想は大変残念に思いました。
アデルは、もしかしたら誰の潜在意識の中にもいるかもしれません。
ただし、それほどの理性を失う恋に身を焦がし堕ちてゆき、心身共にボロボロになることを自分自身が拒否しているのでしょうけれど。
わたしもその一人です。
名作ですよ。