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映画『あいあい傘』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

倉科カナと市原隼人主演で送る、25年の時を超えた親子のハートフルストーリー。2007年に舞台上演されて以来、切なく愛しい親子愛に胸打たれるファンが続出。11年経つ2018年に再演が決まると、小説の原案・宅間孝行がメガホンを取り、劇場映画化も決定する。

映画『あいあい傘』の作品情報

あいあい傘

タイトル
あいあい傘
原題
なし
製作年
2018年
日本公開日
2018年10月26日(金)
上映時間
116分
ジャンル
ヒューマンドラマ
監督
宅間孝行
脚本
宅間孝行
製作
岩倉達哉
古郡真也
製作総指揮
不明
キャスト
倉科カナ
市原隼人
入山杏奈
高橋メアリージュン
やべきょうすけ
布川隼太
永井大
金田明夫
製作国
日本
配給
S・D・P

映画『あいあい傘』の作品概要

2007年、俳優・脚本家として活躍していた宅間孝行が、東京セレソンデラックス劇団で同名『あいあい傘』を上映。25年前に生き別れた親子の愛にフォーカスを当てたヒューマンドラマは、瞬く間にヒットとなる。2018年3月に宅間孝行原案で同名の小説が発売されると、同秋に舞台化と映画化が決定する。恋園神社に祭りの季節が訪れ、カメラを手にふらりと町へやって来る1人の女性。彼女は、25年前に生き別れた父を探していた。父が死んだと聞かされ育った女性、高橋さつきを倉科カナが演じ、父親役を立川談春が熱演する。

映画『あいあい傘』の予告動画

映画『あいあい傘』の登場人物(キャスト)

高橋さつき(倉科カナ)
カメラマンの旅の女性。幼い頃から不在の父親は既に他界していると聞いていたが、ふとしたことから父の生存を知り、現在の生活を確認するため父探しの旅に出る。
雨宮清太郎(市原隼人)
父親の後を継いでテキ屋になったチャラ男。ふらりと町へやって来た女性さつきに一目ぼれする。
東雲六郎(立川談春)
さつきの実の父親。現在は玉枝や麻衣子と一緒に生活し、学習塾を経営している。過去に自殺を図った際、玉枝に助けられたことがある。
松岡玉枝(原田知世)
麻衣子の母親で、六郎と一緒に3人で生活をするお茶屋「恋園庵」の女将。
松岡麻衣子(入山杏奈)
玉枝の一人娘。実の父親は既に他界しており、恋園神社で巫女として働いている。六郎のことが気に入らない。

映画『あいあい傘』のあらすじ(ネタバレなし)

しとしとと雨の降る恋園神社。その神社の隅でお茶屋「恋園庵」の女将である玉枝は、1人の男を見つめている。雨の降る中、男は境内にジッと座っていた。玉枝は思う、あの男は自殺するのだろうと。そして男にそっと傘を差し出し、お茶屋へ暖を取りに誘う。

25年後、あの時自殺を図ろうとしていた男・六郎は、早くに夫を亡くした玉枝と内縁の夫婦として一緒に生活をしていた。そこには玉枝の一人娘・麻衣子も生活しているが、苗字が違うため、幼い頃からからかわれてきた麻衣子は六郎のことを快く思ってはいなかった。

その頃、町の恋園神社には祭りの季節がやってきており、多くの人が町を訪れていた。テキ屋をしている青年・雨宮清太郎は、そこに取材だと言ってやってきた女性カメラマン・高橋さつきに一目惚れする。さつきは、積極的に話しかけてくる清太郎に街を案内させることにする。

だが、さつきの本当の目的は、町の取材などではなかった。さつきは幼い頃に父親を亡くしたと聞かされ育ってきたが、実は父親がどこかで生きていることを知り、町を訪れていたのである。自分と母親を捨てた父親が、新しい家族を得て生活している様を見つけたさつきは、抑えていたこれまでの怒りや苦しみが爆発してしまうのだった。

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映画『あいあい傘』のネタバレあらすじ結末と感想
映画『あいあい傘』のネタバレあらすじと感想。ストーリーを結末まで起承転結で分かりやすく簡単に解説しています。映画ライターや読者による映画感想も数多く掲載。

映画『あいあい傘』の感想・評価

なぜ蒸発し、なぜ別の町で生きるのか

あらすじの説明書きだけを見ると、東雲六郎と言う男は世間的には「クズ」と言われるような分類の父親である。愛を誓い、一生を共にすると結婚をした女性を置いて、別の女性と一緒に生活している六郎。

更に、置いていった女性には幼い子供がいた。小さな子供を抱えた女性が、働きに出て子供を養い学校へ行かせることは、並大抵な努力では実らない。その間、六郎はぶらぶらと歩き、自殺を図り、助けられた女性の家に転がり込んでいたのである。自分が蒔いた種でできた子供の面倒も見ずに。

この側面だけ見たら、なんと無責任で自分勝手でダメな父親だろうかと批判が来るのは必至。だが、きっと六郎にはそうしなければならない理由があったのだろう。その理由があったからと言って、許されるかどうかはまた別問題ではあるが。

他人の人生をめちゃくちゃにし、責任も取らず逃げ、たまに心のどこかでふと思い出すだけの存在となった子供と女性を持つ人生とは、どんな心境なのであろうか。どんな事情があって、どんな人生を歩んで来たらこんな薄情なことができるのだろうか。

六郎という男が取った不可解な行動は、そういう意味でとても興味深い。

母子家庭でありながら、フリーな職業の高橋さつき

一般的に母子家庭と言うのは、世間のヒエラルキーで言えば低所得者層に分類されることが多く、下流階級になりやすい世帯である。もちろん、実家の援助やそもそも母親がかなりの高給労働者などであれば、その考えは当てはまらない。

だが、今回の高橋さつきの家庭に至っては、そのような高給の母親であるようには見受けられず、恐らく苦労してさつきを育てたのだろうと推測される。そんな家庭だったにも関わらず、歩合制が多く薄給とも言われているカメラマンを職業に選んださつきは、単純に尊敬してしまう。

苦労した母親を見てきた子供は、大きくなったら自分が母を支えてあげたいと思うことが多い。その中で、「支え」とは「安定した職業」と捉える人が多いのもまた事実。だがさつきは、一眼レフを片手に持つれっきとしたカメラマン。

どのような雇用形態によるかはまた別だが、カメラマンは売れるまでが大変で、生活に困らないだけ稼げる職種ではないのが一般的な見解。そんなカメラマンを職業にしているさつきは、きっと母親がさつきの夢を応援してくれるとても素晴らしい人で、さつきものびのびと自分の夢を叶えられたのだろうと、その背景を考えるだけで胸打つものがある。

父親不在の中で苦労した中、夢を追い叶えたさつきは、働く女性としてこれからも頑張って欲しい存在である。

25年の溝は、出会った数日で埋まるのか

人の記憶とはとても曖昧で、割と適当なものである。そして人は、その大小はともかくとても「思い込む」生物である。この思い込みと言うのはとても厄介であり、時には便利な性質なのだが、思い込むことでいつも以上の力を発揮できたり、自身が持てたりと良いことがある反面、無意識に記憶を改ざんしていることもある。

幼い頃に自分を置いて死んでしまった、顔も知らない父親の存在。それだけならきっとさつきの記憶には、父親との(ありもしない)素晴らしい思い出が、記憶の中に刻み込まれていただろう。

ところが、大人になってさつきは父親が生きていることを知ってしまう。そして、自分たちの知らないところで知らない人たちと家庭を築いているところを目の当たりにする。これまで、自分が作り上げた記憶の中で優しく素晴らしい父親として存在していた六郎は、一瞬のうちに憎悪と嫌悪の対象と変わる。

元々ありもしないところから作り上げられた偶像の父親・六郎だが、現実を目にしたことで「優しい父」の記憶は鳴りを潜め、逆に記憶の奥底にしまい込んでいた「父親のいなかった寂しい自分」が呼び起こされてしまう。逆転してしまった父親への複雑な思いを抱えるさつきだが、果たして25年の溝は、出会った数日で和解し、理解し、許し合えるのだろうか。

映画『あいあい傘』の公開前に見ておきたい映画

映画『あいあい傘』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『あいあい傘』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

同窓会

宅間孝行がサタケミキオ名義で監督・脚本を担当し、更に主演を果たした映画。2018年8月に公開され、30代半ばの恋愛模様を熱演する。

宅間孝行が演じる主人公の映画プロデューサー・南克之の妻には、永作博美が抜擢され、不倫された妻・雪を演じる。

雪とは、初恋を実らせ結婚した相手ではあったが、それよりも克之の目には新進女優しか目に入っていなかった。不倫を続けるよりは、とせめてもの情け心だったのかもしれないが、雪に離婚を切り出すと、雪もあっさり承諾・成立してしまう。

ところが、その話を聞いたかつて雪に想いを寄せていた克之の親友・文太は激怒する。自分が付き合いたくて結婚したくて諦めた相手と結婚しておきながら、不倫をした挙句離婚をしてしまう克之に、怒りを抑えきれないでいた。

そんな折、離婚した雪はある異変に襲われるのだった。

詳細 同窓会

花子の日記

香川県の瀬戸内海に実在する島・小豊島は、人口よりも肉牛の方が圧倒的に多い島である。この島の肉牛を最高の名産品にしようと日々研究に没頭する男・吾郎がいる。吾郎は、家庭を顧みず、長年研究に明け暮れている。

そんな父親を持つ一人娘の花子は、吾郎のことが大嫌いだった。大嫌いすぎて、花子は島から離れて、東京で美大に通う。島のことも父親のことも忘れて、大都会東京で花の大学生として生活している花子を他所に、研究に精を出す吾郎はついに肉牛大会で肉牛部門と種牛部門のダブル受賞を果たす。

ところが、受賞したことによって、吾郎は種牛の精子を横取りしたがる韓国マフィアから目を付けられてしまうのだった。牛を中心に、父と娘の奇妙な親子関係をコミカルに描いた人間ドラマを、吾郎役・永島敏行と花子役・倉科カナが熱演する。本作で、倉科カナは映画初主演を果たす。

詳細 花子の日記

リリイ・シュシュのすべて

市原隼人主演で送る、2001年公開の青春ドラマ映画。当時話題となったインターネット小説に投稿され、その後角川文庫からも単行本が刊行される程の人気ぶりとなった。

中学生の蓮見雄一役を市原隼人が演じ、田園風景広がる田舎の中学校で、同級生に万引きや売春などの犯罪行為を強要され、鬱々した日々を過ごす。日常の鬱憤を晴らすために、若い世代にカリスマ的な人気を誇る女性歌手、リリィ・シュシュに熱狂的にのめり込む。

中学生独特の社会や学校に反発したい気持ちや、若気の至りと言われるような「悪いこと」に手を染めたがる思春期の若者を、市原隼人は見事に演じ切る。

いじめを始め、万引きや恐喝、売春、援助交際、レイプなどをモチーフに、殺人や自殺と言った死に関わるものまで盛り込まれているので、映画としてはかなり過激な内容である。

詳細 リリイ・シュシュのすべて

映画『あいあい傘』の評判・口コミ・レビュー

映画『あいあい傘』のまとめ

異性の親子は、普通の家庭であっても上手くいかないことが寡聞にして起こる。普段からコミュニケーションを図っていたとしても、ちょっとした認識のズレや、思春期特有の成長反応の一旦でこじれてしまうもの。それが、ずっと会えずに離れていた父と娘なら、なおさらお互いを理解するには時間がかかってしまう。主人公さつきを演じた倉科カナも、さつきの心にはどこかに穴が存在しているのではと、その心中を語る。心に空いた穴を埋めるための父を見つける旅が、幸せに終わってくれたらと願う。

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