映画『ベスト・オブ・エネミーズ 価値ある闘い』の概要:1971年、南部の小学校で黒人と白人の人種統合を巡る討論会が行われた。共同議長に選ばれたのは、黒人公民権活動家とKKK支部長。敵対する2人に、やがて意外な心の変化が起きる。差別が根強い地域で実際にあった感動の物語。
映画『ベスト・オブ・エネミーズ 価値ある闘い』の作品情報
上映時間:133分
ジャンル:ヒューマンドラマ、歴史、伝記
監督:ロビン・ビセル
キャスト:タラジ・P・ヘンソン、サム・ロックウェル、ウェス・ベントリー、アン・ヘッシュ etc
映画『ベスト・オブ・エネミーズ 価値ある闘い』の登場人物(キャスト)
- アン・アトウォーター(タラジ・P・ヘンソン)
- 人種隔離に反対する公民権活動家。雄弁かつ勝ち気な性格で「暴れん坊のアニー」と呼ばれている。黒人と白人との人種統合を巡る市民討論会で、黒人代表として共同議長に選ばれる。
- C・P・エリス(サム・ロックウェル)
- 人種隔離に賛成する白人至上主義団体KKKの支部長。討論会で白人代表の共同議長に選ばれる。KKK活動は無報酬であり、経営するガススタンドは黒人を受け付けないため収入が少ない。ダウン症の息子がいる。
- ビル・リディック(バボー・シーセイ)
- 人種統合を巡る討論会“シャレット”を仕切る調停の専門家。黒人と白人の間に入り、お互いを理解させようとする。シャレットの最終日には投票が行われ、その決議は市議会で遂行される。
- フロイド・ケリー(ウェス・ベントリー)
- KKKのメンバーで、過激な黒人排斥活動を行っている。最終日の投票前に妨害工作を行う。
映画『ベスト・オブ・エネミーズ 価値ある闘い』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ベスト・オブ・エネミーズ 価値ある闘い』のあらすじ【起】
1971年、ノースカロライナ州ダーラム。公民権活動家のアン・アトウォーターは黒人の権利を守るため、日夜活動を行っていた。市議会で黒人向け住宅の家賃の不当性を訴えるが、白人ばかりの議会で黒人の陳述は見向きもされず、悔しい思いをする。
一方、白人至上主義団体KKKの支部長を務めるCP・エリスは集会場の壇上に上がり、白人の権利と自由を黒人から守るという団体の意義をスピーチした。暴力的な活動も行う彼だが、素顔はガススタンドの経営者で家族を愛する父親。息子のラリーはダウン症で入院中であった。
ある日、アンの娘が通う小学校が火事になり、白人の学校との人種統合が検討される。市議会では校舎は使用可能だと一方的に判断したため、全米黒人地位向上教会(NAACP)が市に訴訟を起こした。その結果、調停人のビル・リディックの仕切りで討論会“シャレット”が行われることが決定。それは意見の違うものを討論させ、最終日の結果は市議会で遂行されるというもの。互いの同席を嫌がる市民たちだったが、ビルは両者の間に入って説得した。
映画『ベスト・オブ・エネミーズ 価値ある闘い』のあらすじ【承】
黒人のアンと白人のCPは共同議長を依頼された。2人ともそれぞれ拒絶するが、敵を知るためだと説得され、議長を引き受ける。シャレットの開催期間は2週間。場所は中学校の体育館で、黒人と白人の席に分かれて行われることになった。
議題を決める過程で、黒人の授業が白人よりも一年遅れているという現状が判明する。黒人には1年遅れた教科書が与えられているという問題が背景にあった。討論会は度々紛糾する中、黒人の牧師は会の最後にゴスペルを演奏して終わろうと提案する。すると、白人代表のCPはゴスペルに対抗し、会場の入り口にKKKの白い衣装を飾りたいと提案した。調停人のビルは両方を認め、入り口には衣装が飾られ、会後にはゴスペルが歌われることになった。
黒人の若者がKKKの衣装や冊子を飾った台を壊そうとしたが、アンはそれを制止。壊すのではなく、KKKの本を読んで、彼らが一体何者なのかを理解するのだと説得する。ビルは黒人と白人を互いに理解させるため、食堂で隣同士に座らせることにした。アンとCPは対面で座り、苦々しい顔で食事をするのだった。
映画『ベスト・オブ・エネミーズ 価値ある闘い』のあらすじ【転】
ダウン症の息子ラリーが相部屋の子供に拒否反応を起こして激しく怯えたため、CPは病院に呼び出された。しかし、高額な個室料金は払うことができず、ラリーは相変わらず相部屋のままになる。アンは知り合いの看護師に交渉し、ラリーを相部屋から個室に変えてもらった。それを知ったCPは、アンに感謝しながらも素直に表現できず、俺を助ける真似をするなと言い放つ。アンは「私はお節介なんだよ」と言い返すのだった。
最終日で投票をする代表委員が選出され、工具店経営者の白人リーも選ばれた。彼は黒人に店長を任せており、CPはその理由を尋ねた。すると、店長の男はベトナム戦争の戦友であり、家族以外で信頼できる唯一の男だと言われ、CPは納得するのだった。
委員は火事となった黒人の小学校のその後を見学した。子供たちがまだ焦げ臭い校舎で授業を受けていることを知り、CPたちはショックを受ける。彼の妻メアリーはアンの家を訪問し、ラリーを個室に変えてくれたことに感謝の気持ちを伝えた。
映画『ベスト・オブ・エネミーズ 価値ある闘い』の結末・ラスト(ネタバレ)
投票前日、市議会議員は投票妨害を画策した。賛成票に投じそうなリーの店を営業停止にし、ある女性委員を脅迫する。その工作を知ったCPはKKKに失望。その夜、KKKの緊急集会が開催され、CPは脈絡もなく最優秀支部長に認定され、困惑気味になるのだった。
投票当日。あらゆる議題が通過し、最終議題である人種統合の投票が始まった。委員12人のうち8票の賛成で決議となる。アンもリーも賛成に投票、脅された女性委員は反対に投じ、最終投票者のCPに全てが委ねられた。当然、反対票に投じるだろうと思われる中、彼はKKKの会員証を取り出すと「もう信じていない」と破り捨て、賛成票を投じる。人種統合は賛成で決議され、場内は大いに沸いた。
CPは白人の怒りを買い、ガススタンドを放火された。火は消し止めたものの、白人の客がゼロとなり、店は廃業に追い込まれる。アンは黒人の客を集め、スタンド前には黒人の車の長蛇の列が並ぶ。アンは「私はお節介なんだ」と笑い、CPは忙しく対応した。
その後、アンとCPは共に全米で講演を行い、CPが死ぬまで2人は親友であり続けるのだった。
映画『ベスト・オブ・エネミーズ 価値ある闘い』の感想・評価・レビュー
黒人差別が横行する南部の州で、1971年に実際にあった友情物語。敵対する黒人公民権活動家と、KKKの支部リーダーの間でこんな素晴らしい出来事があったとは驚きだ。
タラジ・P・ヘンソンは本人になり切って演じたと思われ、貫禄たっぷり。ストーリーはサム・ロックウェル演じるCPの心の変化に重きが置かれており、最後の投票シーンは胸が熱くなるのを感じた。エンドロールでCP本人が登場し、「人生の大転換に代償は付き物だ」と言った言葉が実に深い。映画を通してまた一つ、知らない歴史を学ぶことができた。(MIHOシネマ編集部)
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