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映画『カセットテープ・ダイアリーズ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』の概要:イギリスの小さな町ルートンで暮らすパキスタン移民のジャベドは、日常的に起きる差別と保守的な父親の思想に不満を募らせていた。作家を目指す彼は、父親に反対されながらもブルース・スプリングスティーンの曲を聴き続け、詩を書くことを止めなかった。

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映画『カセットテープ・ダイアリーズ』の作品情報

カセットテープ・ダイアリーズ

製作年:2019年
上映時間:117分
ジャンル:ヒューマンドラマ、青春、音楽
監督:グリンダ・チャーダ
キャスト:ヴィヴェイク・カルラ、クルヴィンダー・ギール、ミーラ・ガナトラ、ネル・ウィリアムズ etc

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』の登場人物(キャスト)

ジャベド / ジェイ(ヴィヴェイク・カルラ)
ルートンに暮らすパキスタン移民。近所に住む幼馴染のマットとは親友であり、彼から贈られた日記帳に詩を綴っている。保守的な父親からアジア的教育や思想を押し付けられ、イギリスに暮らしながらイギリス的な生活・文化に馴染むことを許されない。町を出て自由になりたいと望みながら高校へ進学し、ループスからブルース・スプリングスティーンのカセットを借りたことで「自分のために生きる」ことに目覚める。
マリク(クルヴィンダー・ギール)
ジャベドの父親。豊かな生活を求めてパキスタンからイギリスへ移住して来た。しかし、不況の影響で仕事を失くしたことで絶対的な父親の権威が揺らいでしまうのを恐れ、自立しようとするジャベドに一層厳しく接する。
マット(ディーン=チャールズ・チャップマン)
ジャベドの家の向かいに住む白人。幼い頃から「パキ野郎」と差別されるジャベドの味方で、彼が恋人がほしいと願えば女の子を紹介するなど、親友としてジャベドを支えている。音楽好きの父親の影響もありバンド活動に熱心で、ジャベドに作詞を頼んでいる。
イライザ(ネル・ウィリアムズ)
ジャベドの高校の同級生。作家になりたいという夢にひたむきなジャベドと恋に落ちる。両親の影響で政治的活動に力を入れているが、両親は本音では「保守の中流白人以外は人と認めない」と強く思っており、無意識下でジャベドをはじめとする外国人への差別発言を繰り返す彼らを恥ずかしく思っている。
ループス(アーロン・ファグラ)
ジャベドの高校の同級生。周囲に馴染めずにいたジャベドへブルース・スプリングスティーンのカセットを貸したことが縁で親友になる。
クレイ先生(ヘイリー・アトウェル)
高校で文学を教える教員。ジャベドの文才に気付き、「父親に反対される」と尻込みする彼を熱心に後押しした。

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』のあらすじ【起】

1980年9月。“最低な町”ルートンでは、パキスタンからの移民であるジャベド少年が誕生日を迎えていた。彼は近所に住む親友のマットから日記帳をプレゼントされ、その日から欠かさず日記を書いた。ソ連がアフガンへ侵攻してから363日を迎えたその日、ジャベドとマットは永遠の友情を誓い合った。

7年後。16歳を迎えようとするジャベドは、未だに自分のことを「貴重な遺跡」のように扱う両親に不満を募らせ、保守的な父親の思想に辟易していた。彼の鬱憤はルートンという治安の悪い町に向けられ、若いジャベドは早く町から出たがった。しかし、バイトで貯めた金は全て父親に取り上げられ、可愛い恋人がいるマットを羨ましがろうものなら、頭の固い父親は「ユダヤ人とだけ付き合え」と偏った発言をした。

高校へ入学したジャベドは、生徒の多様性に安心しつつも自分が属するグループを見つけられずにいた。偶然出会ったムスリムのループスはかつての自分のように孤独を感じているジャベドへ、「世界が変わるから」と“ボス”と敬愛されているブルース・スプリングスティーンのカセットを貸した。

ルートンには移民を差別する白人が大勢いた。学校から帰る途中のジャベドは「パキは出て行け」と壁に落書きする青年と目が合ってしまい、彼は青年から必死で逃げマットの家に助けを求めた。ジャベドの様子から状況を察したマットは、彼をパーティへ誘った。初めてのパーティへの誘いに浮かれたジャベドだったが、マリクは絶対に行くなと反対。ジャベドはその夜、マットの家から漏れる賑やかな音や光を自分の部屋から眺めた。

文学を教えるクレイ先生は、「日記と詩を書き続けている」というジャベドの論文へC評価を下し、もっと自分の意見を主張して書くようにアドバイスした。

不景気の煽りを受け、マリクは16年務めた会社を解雇された。ジャベドは家計が一層厳しくなると確信し、今後を心配するシャジアへ、夢や自由を諦めるしかないと吐き捨てた。ジャベドはハリケーンが迫る中、これまで執筆したポエムや歌詞をゴミ捨て場へ持っていった。

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映画『カセットテープ・ダイアリーズ』のあらすじ【承】

部屋へ戻ったジャベドは、ようやくループスから借りたカセットの存在に気付いた。故郷の音楽だけを聴くよう規制をかけられていた彼は、初めて耳にするアメリカ人の音楽に強い衝撃を受けた。まるで自分の燻った気持ちを代弁するかのような歌詞に触れ、ジャベドは捨ててきた詩を拾い集めた。

その日から、ジャベドの中で何かが変わった。彼は拾い集めた詩を全てクレイ先生へ提出すると、ループスへ昨夜から続く感動を伝えた。さらに、これまでにない勇気に満ちたジャベドは、一度門前払いされた新聞部へ再び原稿を提出。以前と違い力強くアピールしてくるジャベドに気付いた部長は、渋々ながら原稿を受け取り、ジャベドの熱意を買って記者として採用した。

ジャベドの詩全てに目を通したクレイ先生は、彼が秘める才能を絶賛した。しかし、ジャベドはマリクへ「経済学を学んでいる」と嘘を吐いており、作家になることは許されないと打ち明けた。そこに偶然居合わせたイライザは、ルートンへの不満を綴った彼の詩に興味があると言ってジャベドを後押しした。クレイ先生もまた、「あなたにはこのか細い生の声を届ける義務がある。磨けば作家にもなれる」と熱く語った。

ハリケーンの強風でジャベドの詩の一節を拾った隣人のエバンズもまた、ジャベドの文才を評価した。詩の書かれた紙をジャベドに届けに来た彼は、マリクの前で「実に勇気ある詩だ。もっと書きなさい」とジャベドを褒めた。それでもマリクは、息子の生き甲斐である執筆を認めなかった。

ところがジャベドの予想通り、母親の内職だけでは家計を賄えなかった。マリクは、シャジアにも手伝わせて仕事を増やすよう妻に命令した。早朝から深夜まで働き通しの生活を強いられてきた妻は遂に不満を爆発させたが、彼女に断わる権利はなかった。さらにマリクは、ジャベドにも働きに出るよう言った。

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』のあらすじ【転】

ジャベドは仕事を探して町中を歩いたが状況は厳しく、最後の手段として古着屋を営むマットの父親を頼った。マットの父親はブルースのファンだというジャベドを益々気に入ったが、マットは自分を差し置いて父親に認められる彼が許せなかった。

クレイ先生にスプリングスティーンについての論文を提出したジャベドは、クレイから「原稿から叫びが聞こえた」と褒められ、さらに「ヘラルド紙の友人に職業体験が可能か掛け合ってみる」と告げられた。

よりポジティブになったジャベドはイライザと順調に交際を続け、ループスをはじめクラスのみんなと友人になった。そんなある日、モスクに豚の生首が晒される事件が発生した。

一方でカーン家の家計はさらに厳しくなっていった。マリクは妻に装飾品を売らせ、なんとか一日一日を凌ぐ有様だった。そんな中ジャベドは遂に父親へ、作家になるための一歩として新聞社での職業体験が決まったと報告したが、マリクは自分本位の夢を語るジャベドを認めなかった。

ブルースがライブに来ると知ったジャベドは、なんとしてでも行かなければと興奮し、チケットの発売日に家を抜け出すとシャジアへ告げた。そんなジャベドは、職業体験を始めた新聞社で記者に声をかけられ、ウルドゥー語ができるということからモスクの取材を任された。

一方でマリクは、妻と、近々結婚する長女・ヤズミンを失望させたと言って泣いていた。自分の稼ぎがないことで妻を一日中働かせ、娘の結婚準備すらできない悔しさを滲ませる夫を、妻は力強く励ました。

チケットの発売日はヤズミンの結婚式当日だった。シャジアと口裏を合わせていたジャベドはチケットを買いに走ったが、姉や親族を乗せ式場へ向かったマリクの車は、白人至上主義者達による迫害デモとそれを批判する人達の衝突で足止めをくらった。チケットを買ったマリクが通りへ戻った頃には、乱闘に巻き込まれたマリクが血を流して倒れていた。

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』の結末・ラスト(ネタバレ)

式を終え帰宅した家族の元へ、記者としてジャベドの名前が載った新聞記事を手にエバンズが訪れた。ジャベドを応援していたエバンズは「息子さん、やりましたな」と心から喜んだが、マリクは息子が書いたモスクについての記事を見て「姉の結婚式の日に内輪の恥を晒すとは」と怒りを露わにし、ジャベドの持っていたチケットを破り捨てた。

クレイ先生が出品したジャベドの論文は、何千という応募の中から見事入賞した。クレイは、入賞の副賞としてアメリカはニュージャージーにあるモンマス大学でのセミナーに参加できるとジャベドへ伝えた。イライザは、嬉しい報せに父親の反対がよぎりネガティブになるジャベドに呆れ別れを告げた。

マリクは、当然息子のアメリカ行きを反対した。自分の意見に難癖をつけ夢を断とうとするマリクに我慢の限界を迎えたジャベドは、「アメリカへ行くなら二度と戻るな」と言う父親と決別し、ループスと共にアメリカへ渡った。

モンマス大学はブルースの故郷の近くにあり、ジャベドとループスは聖地巡礼を楽しんでイギリスへ戻った。帰る場所のないジャベドはループスの家に厄介になったが、息子の帰りを待ち望むジャベドの母親はマリクへ「今手を打たなきゃ息子を失う」と悲痛に訴え、ジャベドに謝るよう願った。マリクは、その日からジャベドの部屋に残された彼の詩を読みふけり、ブルースの曲を聴くようになった。

イライザは、優秀な生徒を称える表彰式へジャベドの家族を密かに招いた。表彰式で一番に名前を呼ばれたジャベドは入賞した論文を朗読するはずだったが、会場に父親の姿を見つけためらった。彼は論文ではなく今の自分の言葉で「ブルース・スプリングスティーンの歌詞と、自らが受けたアジア的しつけとの共通点」を論じた。

初めて息子の言葉と向き合ったマリクは、誰よりも大きな拍手を送った。

晴れて父親に認められたジャベドは、自分の夢と同じように家族のことも一層思いやるようになった。一切のわだかまりなくマンチェスターの大学へ進学を決めた彼の心は、その日の空と同じように澄み渡っていた。

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』の感想・評価・レビュー

サルフラズ・マンズールの自叙伝『Greetings from Bury Park: Race,Religion and Rock N’Roll』を原作とした実話に基づく物語。自立心が芽生えたことにより父親の父権的な態度に疑問を抱きつつ、民族的・宗教的な呪縛から逃れられない青年の葛藤を描いたストーリー。

親に認められたいという欲求は誰しも抱くものである。「長男だから」「パキスタン人だから」「俺の息子だから」と肩書きやステレオタイプに縛られ、本当の自分を見てもらえない苦悩はよく理解できる。ジャベドの強さは、父親の束縛から逃れ町を出たいと望む自分の願望と、自身の夢破れ世間に怒ってばかりいる父親の本質が同じであると気付いた点である。賢い彼は「父親のようになる」のではなく、「父親を超える」ことを決意した。

世間体や肩書き、生まれた順番で人を決めつける保守的な両親と決別した私は、ジャベドの姿勢に深く心を抉られた。(MIHOシネマ編集部)

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