映画『ファンタジア』の概要:クラシックの名曲8曲を芸術家達の想像力でアニメ映像化した、ディズニーの画期的な名作アニメーション。ミッキーマウスの登場する「魔法使いの弟子」がとくに有名。演奏はフィラデルフィア管弦楽団、指揮はストコフスキー。
映画『ファンタジア』の作品情報
上映時間:122分
ジャンル:ファンタジー、ミュージカル、音楽、アニメ
監督:ベン・シャープスティーン
映画『ファンタジア』の登場人物(キャスト)
- ミッキーマウス
- ディズニーの代表的キャラクター。今作では『魔法使いの弟子』で、イェン・シッドに師事するいたずら好きな弟子を演じている。
- イェン・シッド
- 『魔法使いの弟子』に登場する偉大な魔法使い。ミッキーマウスの魔法の師匠。
- チェルナボーグ
- 『禿山の一夜』に登場する、巨大な悪魔。スラヴ神話の死神から名前をとっている。幽鬼や悪魔を手のひらで転がす恐ろしい存在。
映画『ファンタジア』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ファンタジア』のあらすじ【起】
トッカータとフーガ ニ短調
フィラデルフィア管弦楽団の演奏とレオポルド・ストコフスキーの指揮の元、オーケストラの演奏が始まりました。
曇り空の中、稲妻、雨、風を模したバイオリンの弓と弦が描き出されます。音楽に合わせ、それらは湖の波紋やオーロラ、砂漠などに変化していき、最後には太陽の光と波しぶきとなります。
くるみ割り人形
(「金平糖の踊り」)春の森の中。妖精たちが、花々に水滴の光を付けて遊んでいます。森の中は光に満ち溢れます。
(「中国の踊り」)中国人風のキノコ達がダンスを踊っています。その中でもひときわ小さいキノコも、周りのダンスに必死について踊っています。
(「葦笛の踊り」)川に花が落ちてきました。花はユラユラと落ちてきて、ドレスを着たバレリーナのような姿に変化しました。白い花を中心に、花々は水面をクルクルひらひらと回りながら流れてゆきます。花々は最後に滝に落ちてゆきました。
(「アラビアの踊り」)水の中。長い尾ひれの金魚たちが、なまめかしくダンスを踊ります。金色の尾ひれの金魚が踊ります。
(「トレパーク」)花達が激しくコサックダンスを踊ります。その姿はロシアの帽子をかぶった男性とロシアの民族衣装を着た女性のようです。
(「花のワルツ」)妖精たちが目覚めました。妖精たちは葉を金色に色づかせていきます。秋になり、落葉が始まりました。種の綿毛が風に舞ってゆきます。風が次第に強まり、冬の妖精たちが木々を凍らせてゆきます。妖精たちは池でスケートを始めました。雪が降ってきて冬が訪れます。
映画『ファンタジア』のあらすじ【承】
魔法使いの弟子
偉大な魔法使い・イェン・シッドのもとで、ミッキーマウス扮する魔法使いの弟子は修業をしていました。しかし毎日させられるのは水くみばかり。弟子は魔法使いの魔法に憧れていました。夜になり、魔法使いは魔法の帽子を置いて眠りについてしまいます。弟子は魔法使いの帽子をこっそりかぶって、ほうきに魔法をかけました。するとほうきが動き出したのです。
弟子はホウキに水くみをさせ、うまくいったとしたり顔です。魔法をかけながら、そのうち居眠りをしてしまいました。夢の中で弟子は魔法で嵐を起こす夢を見ます。波がせりあがり……。そこで目が覚めた弟子があたりをみまわすと、部屋のなかは洪水のような状態になっています。ホウキが水を汲み続けたせいでした。弟子は焦って蜂起を斧で粉々にしました。
これで一安心、と思ったのもつかの間、粉々になったホウキがそれぞれ1本のホウキに成長してしまいます。無数のホウキが水くみを始め、事態はさらに悪化しました。弟子は波に飲み込まれてしまいます。そこへ魔法使いが起きてきて、魔法で洪水を2つに割り、消し去ってしまいました。いたずらがばれた弟子は、こっそりと水くみに戻るのでした。
映画『ファンタジア』のあらすじ【転】
春の祭典
銀河の中。無数に浮かぶ惑星の1つで、生命が芽生えようとしていました。無数の火山が活動を始め、火をふいています。大噴火が起こり、溶岩が流れ出します。溶岩は地面を飲みこんでゆき、やがて海にたどり着きました。波は大荒れ、そのうち辺りは静寂に包まれます。
海の中。微生物が生まれ、分裂を始めました。生命の誕生です。微生物はやがて進化していき、魚へ、そして陸上生物へと進化をすすめました。恐竜時代の幕開けです。大小さまざまな恐竜たちが、地球上で生活していました。そこへ巨大なティラノサウルスが現れ、恐竜たちは急いで逃げ出します。ティラノサウルスは獲物を捕えました。
地球全体が砂漠化し、恐竜たちは次々と死んでゆきます。やがて大きな地割れが起こり、地球の地形は大きく変わりました。
交響曲第6番 田園
神話の世界。ユニコーンの赤ちゃんと子鬼たちが戯れ。ペガサスの親子は優雅に空を飛びまわっています。
女ケンタウロス達は化粧をして身支度の最中です。男ケンタウロス達がやってくるからです。ケンタウロス達はそれぞれ恋人となる相手を見つけます。しかし相手を見つけられない男ケンタウロスが1人。キューピッド達は、同じように1人でいる女ケンタウロスを見つけ、2人を引き合わせます。2人はめでたく恋人となりました。
酒神バッカスは、ワインの池で宴の最中。しかし、やがて黒雲がたちこめました。天空神ゼウスが現れたのです。雷雨の中、バッカスと神話の生き物たちは急いで逃げてゆきます。やがてゼウスは眠りにつき、空は晴れ渡りました。太陽神アポロンが皆に別れを告げ、日が沈んでゆきました。静かな夜が訪れます。
映画『ファンタジア』の結末・ラスト(ネタバレ)
ラ・ジョコンダより 時の踊り
ダチョウのバレリーナたちが踊ります。ブドウを皆が取り合い、池の中に落としてしまいました。ダチョウたちは逃げていき、池からカバのバレリーナが現れます。カバは踊り始めますが、やがて眠ってしまいました。次に現れたのはゾウのバレリーナたち。ゾウ達は泡で遊びながら踊ります。しかしカバは全く起きません。カバを狙ってきたのはワニの集団。カバはワニをほんろうしながら踊ります。他の動物達も加わって、ドタバタ劇が始まります。
禿山の一夜×アヴェ・マリア
火山から巨大な悪魔・チェルナボーグが現れた。チェルナボーグは墓から幽鬼たちを呼び出し、辺りは暗闇に包まれる。悪鬼達が炎の中で踊り、悪魔のハーピー達も狂喜乱舞を始めます。チェルナボーグはさらに力を示そうとします。しかしその時、鐘の音が響き渡りました。
チェルナボーグは鐘の音におそれおののき、幽鬼たちは元いた場所に戻って行きました。チェルナボーグは翼をたたみ、火山の中に身をひそめます。朝が来たのです。朝もやの中、松明を持った人々が歩いてゆきます。神々しい光が世界を包み、陽が昇ってきました。
映画『ファンタジア』の感想・評価・レビュー
クラシックの名曲の世界観を当時最新鋭のアニメーションによって表現するという挑戦的な作品であり、シリー・シンフォニーやミッキーの短編などから培った音と映像の融合の集大成ともいえる作品。
「魔法使いの弟子」において、当時ドナルドの人気に押されていたミッキーが主役を好演。
そして何より、「禿山の一夜」と「アヴェ・マリア」の奇跡的なコラボレーションは圧巻。映像の美しさと共に闇にはびこる悪を払う清らかな善の光との対比が見事に表現されている。(男性 20代)
関連作品
次作 ファンタジア 2000
みんなの感想・レビュー
ファンタジアは日本が日中戦争で地獄を見ていたときに製作された映画です。こんな映画を作る余裕のある国と戦争でして勝てるわけがなかった、ということがよく分かるクオリティですね。いま見ても本当に素晴らしい映像表現。特に好きなのは『魔法使いの弟子』ですね。ホウキが動き出すというだけでも面白いアイデアですが、大量のホウキが暴走する姿は楽曲の力を相まって非常に恐ろしい。
部によって物語性があったりなかったりしますが、『ファンタジア』の目的は新たなアニメーション方言の発見にありますので、観客も気にすす必要はないです。映像美に酔いしれるのが正しい楽しみ方。これほどの映画なのに、公開当時のアメリカではほとんど評価されず、大赤字を抱えてしまったというのが面白いですね。日本では1955年に公開され、大きな影響を与えました。カラーの長編映画なんて、日本では考えられませんでしたからね。日本初のカラー映画は『ファンタジア』公開から10年後のことです。アニメーション映画は『桃太郎 海の神兵』程度のクオリティです。日本での公開当時の衝撃と影響は計り知れないものがあります。当時のディズニーはどの作品もすごいですよ。
映像の素晴らしさがメインの映画なので、解説する場所はありませんね。とにかく素晴らしいアニメーションを見ることが出来ます。現代でもアニメーションの真似をすることは出来ますが、構成力は真似できません。ディズニーが人材と費用を惜しみなく注ぎ込んだ結果が『ファンタジア』なのですから、ジブリでもここまでの作品を作り上げられるかどうか……。末恐ろしいです。
ちなみに、製作段階では9部構成が予定されていましたが、都合により1曲削除されてしまったんです。削除された楽曲はドビュッシーの『月の光』。戦後、別の作品で公開されましたが、こちらも素晴らしいクオリティです。ファンタジアは著作権切れしていますので、ネットでも見ることが出来ます。ぜひ見てください。