映画『ジョバンニの島』の概要:芸能プロダクション109を配す日本音楽事業者協会の創立50周年記念作品として作成された今作は、第二次世界大戦によって引き裂かれた北の島を舞台にした兄弟の物語です。監督は押井守とのタッグの多い西久保瑞穂です。
映画『ジョバンニの島』 作品情報
- 製作年:2014年
- 上映時間:102分
- ジャンル:ラブストーリー、歴史、戦争
- 監督:西久保瑞穂
- キャスト:市村正親、仲間由紀恵、柳原可奈子、ユースケ・サンタマリア etc
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映画『ジョバンニの島』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★☆☆☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『ジョバンニの島』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『ジョバンニの島』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『ジョバンニの島』 あらすじ【起・承】
1945年、終戦間近の色丹島。日本の北の端に位置するその島は、戦争の影を感じさせないほど明るく美しい季節にありました。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のジョバンニとカンパネルラから名付けられた兄弟、純平と寛太はその島で、日々をのびのびと生活しておりました。母を早く亡くし、島の防衛隊長を務める厳格な父に育てられる二人。そんな二人の生活に、終戦の日に大きな変化が訪れます。
8月15日、終戦を迎えた島に、ソ連の艦隊が上陸します。島に住む人々の財産を根こそぎ奪いとり、住む家も追いやられ家畜小屋に暮らすほかなくなり、島の主要産業である漁業も禁止するソ連軍に、大人たちは不満を募らせます。そうは言っても日本は敗戦国であり、従うほかなく、島民の生活はソ連軍に大きく左右されるようになります。
その生活の変化は、子どもたちも脅かします。学校にはソ連の子どもたちが訪れ、隣の教室では彼らが教育を受ける、という体制になります。当然、純平と寛太も不満を募らせます。
しかし終戦は、彼らにとって良い風も吹きこんでくれました。叔父が帰ってきたのです。父とは違い、明るく適当な叔父に、純平と寛太は喜びます。
映画『ジョバンニの島』 結末・ラスト(ネタバレ)
そんなある日、ふとしたきっかけでソ連軍人の娘ターニャと純平と寛太は仲良くなります。元は純平と寛太の家であった場所で暮らすターニャもまた、慣れぬ土地に不安を募らせているようでした。彼らは、お互いの国の歌を教え合って、言葉はわからないまでも仲良くなっていきます。
そうして、ターニャはふたりを家に招きます。食糧難に苦しむ島民には信じられないような豪勢な食事に、歓迎してくれるターニャの両親と出会い、純平と寛太は少しずつ心を溶かしていきます。
同じ年のターニャと純平は特に、淡い初恋に心をときめかせます。
しかし純平と寛太の知らない場所で、父をはじめとする島民は厳しい統制下にありました。ついには、ふたりの父親もソ連軍に捕えられ、ソ連本国の強制収容所に送られてしまうことになります。そうしてソ連本国送りになったのは父だけではなく、多くの島民とともに純平と寛太も、叔父とともにソ連本国での生活を余儀なくされてしまいます。
純平も寛太も、別の場所で労働させられている父に会いたいと叔父に頼みますが、慣れない船旅で体調を崩す寛太のことや、実は心を通わせていたソ連人女教師のことなど、叔父には難題が降りかかります。そして寛太は、体調をこじらせたまま、ソ連の地で亡くなってしまいます。
やっと色丹島へ帰れる日、死んだ人間は海に捨てられてしまうので、純平は体調の悪い弟だとおぶって船に乗ります。
そして数十年後、かつて色丹島で学んだ同級生たちが島の学校で同窓会を開きます。もはや壮年期に入った同級生たちに、懐かしむ純平。
その夜開かれたロシアの住民との交流パーティーで、彼はターニャに面差しの似た少女に出会います。聞くと、彼女はターニャの孫娘だそう。
おじいさんになった純平とターニャは、ロシアの音楽に乗せて踊るのでした。
映画『ジョバンニの島』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ジョバンニの島』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
北方領土問題
北方領土問題と言えば、いまだ解決しない戦後問題として、年に何回もニュースにあがるホットワードです。しかし、戦争を知らない世代が増え、教科書や新聞で知ってはいても、実際生活にどのような変化があり、現在までどのような歩みがあるかは、実はよく知りませんよね?
わたし自身、今作を鑑賞するまでは、正直よくわかりませんでした。
今作を作る意義のひとつとして、多くの優れた戦争映画がそうであるように、戦争経験者の体験を追体験させる、というものがあります。そして今作はアニメーションであり、より広い世代へ向けた作品であることがうかがえます。
しかも、北方領土問題と言えばかなりデリケート。政治的問題に関与する作品は、特にソ連絡みとなるとなかなか許可が下りないのが現実。それを押して、今作は、かなり内情に触れる作りになっているのです。
たとえば、ソ連軍が家を奪い、島民を家畜小屋で生活させたり、主要産業を奪い餓死者まで出したという事実は、あまり明るみに出したくないことのはず。そういった、日常の中で起こったショッキングな出来事を、純平と寛太という子供の目線で描くことで、より一層現実味を増す作りになっているのです。
可愛らしく明るい色調
今作のもう一つの特徴と言えば、まるで絵本を思わせる柔らかく淡い色調のアニメーション。上記の通り物語は「エグい」ので、このファンタジックなアニメーションが絶妙に中和してくれます。また、先述の通り子どもの目線なので、本当に「エグい」シーンや事実はオブラートに包まれているというのも見易い点です。
少し難しい内容かもしれませんが、ぜひ戦争教育などで取り入れてほしい映画です。
ニュースで取り上げられる「北方領土問題」。私はそのワード自体は知っていますが、具体的に何が起こったのか、何故長い間問題となっているのかなど何も知りませんでした。
この作品は、私のような過去の出来事にあまり関心のない人には本当にオススメです。アニメーションも優しい雰囲気で見やすいので、ネガティブな内容もそこまで暗くならずに見られると思います。
とは言え、この作品を見ただけでは分からないことも沢山あるので、過去の出来事に対してもっと知るべきだし、興味を持たなければいけないなと反省しました。(女性 30代)
映画『ジョバンニの島』 まとめ
まず、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の中でカンパネルラが死んでしまうことから、純平と寛太の名前の由来がネタバレじゃないですか…と、思ってしまうわけですが、そういう、物語のオチが想像できてしまう安心感も今作の魅力のひとつかもしれません。
今作のラストシーンは、かつて想いを伝えられなかった初恋の女性の縁者の少女とのダンスなのですが、これも、まるで黄金時代のハリウッド映画のような王道のシーンで、安心しつつほろりとしてしまいます。また、全編を渡り、この島民たちの謙虚な姿勢に胸がつまります。
政府の方々、そろそろ本気で北方領土問題の解決に乗り出してほしいものですね。
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