映画『ハートストーン』の概要:アイスランドの漁村で暮らす思春期の少年たち。幼なじみが大人びた美少女に抱いた恋心を応援しつつ、自身の感情にも気付き始めてしまう葛藤を追う。監督は長編を初めて手掛けたグズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン。
映画『ハートストーン』の作品情報
上映時間:129分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、青春
監督:グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン
キャスト:バルドゥル・エイナルソン、ブラーイル・ヒンリクソン、ディルヤゥ・ヴァルスドッティル、カトラ・ニャルスドッティル etc
映画『ハートストーン』の登場人物(キャスト)
- ソール(バルドル・エイナルソン)
- 母親と二人の姉と暮らす少年。思春期ならではの性の悩みを抱えているが、家族には言えずにいる。前々から気になっていたベータと距離を縮め、恋心を膨らませていく。
- クリスティアン(ブラーイル・ヒンリクソン)
- ソールの幼馴染であり親友。ベータに恋するソールの姿を見守りアシストするが、実はソールに友情以外の感情を抱いている。暴力に頼る父親に制圧された日々を送る少年。
- ベータ(ディルヤゥ・ワルスドッティル)
- ソールが恋する町の美少女。大人びた見た目ではあるが、親の目が厳しく監視されている。恋愛に関して積極的で、ソールをリードしていく。
映画『ハートストーン』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ハートストーン』のあらすじ【起】
静かな漁村で暮らすソール。友人たちと桟橋で遊ぶのがお決まりである。ある日、大きな魚を大量に釣り上げたソールだが、クリスティアンはその中に混じったカサゴを見つけ「醜い」と笑いながら踏みつぶしてしまう。いつも一緒に過ごしている二人だが、ソールは時折クリスティアンのことが分からなくなってしまうのだった。
ソールは母と二人の姉と暮らしている。思春期真っ盛りのソールだが、姉・ラケルが同じ部屋にいるため自慰行為もままならない。クリスティアンと馴染みの店に行ったソールは、偶然居合わせたベータに興味を持ち始めるのだった。
仲を取り持とうとするクリスティアンは、ベータたちをプールに誘った。断られてしまい落ち込むソールは、告白する勇気などなくただ悶々としていた。その夜、クリスティアンに誘われてソールは公園に出向いた。ゲームの最中、ソールの気持ちを知っているベータは友人たちに隠れてキスをした。一方でクリスティアンに好意を寄せていたベータの友人ハンナも行動に移し、4人は一緒にベータの家に向かうことにする。
ある一組の家族が、「息子がゲイであると噂され」引っ越しをするとベータは話題に出した。
気まずそうにするクリスティアン。キスゲームをすることになり、ベータはハンナと、ソールはクリスティアンとキスを交わすが、クリスティアンだけは笑って済ますことはできなかった。
映画『ハートストーン』のあらすじ【承】
明け方、ソールは一人で先に帰宅した。クリスティアンが目を覚ますと、隣に居たソールがおらずシーツが濡れていたのだ。家を訪ねてきたクリスティアンと喧嘩になってしまったソール。しかし、姉・ハフディスから絵のモデルになってほしいと頼まれクリスティアンにも協力してもらうことになった。
化粧をして、上半身裸のまま見つめ合うことになった二人。少しだけ友情に亀裂が入ったものの、二人はあっという間に元の関係に戻った。再び4人で遊ぶことになったある日、ソールは母親が親しくしているスヴェンの牧場にベータたちを案内した。スヴェンがくれたネックレスをベータにプレゼントするソール。クリスティアンはその様子を遠くから見守るのだった。
ベータたちにキャンプに誘われたソール。クリスティアンも連れ出し、スヴェンの馬を借りて遠くの草原を目指した。ソールに気を遣わせないようにハンナを誘おうかなと話を合わせるクリスティアン。この日を境に、距離を縮めたソールとベータの関係に困惑するばかりだった。
翌朝、スヴェンとクリスティアンの父・シグルドゥルが迎えに来てしまった。無断で馬を連れ出していたソールたちはひどく叱られ、クリスティアンはハンナの前で暴力を受ける。スヴェンの牧場に戻り、手伝いを始めた二人はふがいない父親の存在について共感し絆を深めるのだった。
映画『ハートストーン』のあらすじ【転】
ある日ベータの提案で、ソールの家で遊ぶことになった4人。母親が不在の隙を見て、姉二人が開いたホームパーティーに遭遇してしまう。タイミング悪く苦手な少年たちにハフディスが描いた絵を見つけられてしまい、ひどくからかわれたソールとクリスティアン。しまいには朝方、母親がスヴェンを連れ帰ったことで姉・ラケルが激怒し家庭内は最悪の雰囲気に陥るのだった。
ハフディスが描いた絵のことを聞きつけたシグルドゥル。野鳥の卵を取りに行くと、クリスティアンだけでなく、ソールも連れ出した。険しい岸壁を前にして勇気を出したソールだったが、命の危機にさらされてしまう。ソールをぎゅっと抱きしめてしまったことで、クリスティアンの秘めた思いは伝わってしまうのだった。
クリスティアンを避けるようになったソールは、ベータと初体験を済ませる。その頃、ソールを訪ねたクリスティアンは、ハフディスにマイノリティであることを認めてもいいのだと諭され、感情をぶつける先を見失うのだった。
映画『ハートストーン』の結末・ラスト(ネタバレ)
雪の降ったある朝、ベータを訪ねたソールは父親に追い返されてしまった。クリスティアンの家の前を通ると、クリスティアンの母親が悲し気な表情でソールを見つめている。帰宅すると家族がリビングに揃い、ソールを待っていた。クリスティアンが自殺未遂を図り、病院に運ばれたと知るのだった。
自分の部屋にこもるようになったソール。ベータが会いに来てもまともに向き合うことができずにいた。見兼ねたベータはハンナに「友達でいよう」と伝言を頼み、距離を置くことにするのだった。
回復したクリスティアンは母親と一緒に遠い町に引っ越すと噂で聞いたソール。一度はクリスティアンの母親に拒絶されてしまうが、ベータに協力してもらいクリスティアンの部屋に潜り込んだ。これまでの友情に対するお礼と、別れを伝えおでこにキスをして部屋を去るのだった。
家に帰る前に、クリスティアンとよく遊んだ桟橋に向かったソール。そこでは少年が釣りをしていた。カサゴを釣った少年は不満そうに海へ戻す。ソールはカサゴに対して同じく不満をぶつけた日を思い返すのだった。
映画『ハートストーン』の感想・評価・レビュー
小さな町の閉塞感をうまく活かした作品であった。性のマイノリティという繊細に扱われる題材を、自然に交えて浄化していく。淡い感情のぶつかり方が、徐々にハードになっていく展開は苦手な方もいるだろう。追い詰められた少年の葛藤や、決断はとても共感して寄り添えるものではない。理解できるとは言い難いからだ。しかし、親に匿われた年頃の焦燥感を目の当たりにするには実に贅沢な時間であった。(MIHOシネマ編集部)
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