映画『無垢なる証人』の概要:「第5回ロッテシナリオ公募展」で大賞を受賞したシナリオを基に、「戦場のメロディ」などを手掛けたイ・ハン監督により実写化された一作。現実の壁に妥協し信念を折って仕事をする弁護士と、唯一の目撃者となった自閉症の少女の交流を追う。
映画『無垢なる証人』の作品情報
上映時間:129分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:イ・ハン
キャスト:チョン・ウソン、キム・ヒャンギ、イ・ギュヒョン、チャン・ヨンナム etc
映画『無垢なる証人』の登場人物(キャスト)
- スノ(チョン・ウソン)
- 熱血弁護士として有名だったが、父親が借金を抱え私生活も返上し稼ぐために働くようになった男。事件の目撃者であるジウと交流する中で、少しずつ自分の信念を取り戻していく。
- ジウ(キム・ヒャンギ)
- 自閉症を抱える少女。一般の人よりも優れた視覚や聴覚を持っている。両親の支えの元、健常者の学校に通っていたが、親友に酷い仕打ちを受けてしまう。
映画『無垢なる証人』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『無垢なる証人』のあらすじ【起】
有名弁護士事務所に身を置くが、利益重視の依頼ばかり受けているうちに情熱を失いかけているスノ。パーキンソン病を患う父親を抱え、同業の恋人に愛想もつかされてしまった。長年人権団体を保護するため活動してきた熱血弁護士だったスノは、事務所の代表から「エースになってほしい」と期待をかけられていた。そして事務所のイメージ回復も兼ねて、国選弁護人として1件の殺人事件を無料で請け負うのだった。
容疑者のオ・ミランと面会に向かったスノ。家政婦として勤めていた家主を殺害した罪を問われているミラン。しかし、ミランの証言では妻の死以降自殺願望のあった主人を止めようとしたが、間に合わなかったというものであった。
唯一の目撃者である少女・ジウの証言VTRを見て驚くスノ。ジウは自閉症であり、意思疎通も難しい少女の証言に信憑性は乏しかったのである。実際に事件現場に出向いたスノは、近隣住民からミランのいい評判を聞き出した。会計士として働く被害者の息子にも話を聞きだしたスノは、最後のジウとの対面を試みるが母親に拒絶されてしまうのだった。
専門家にジウの症状について尋ねると、自閉症の中でもとても知能が高いという。検察側は証拠としてジウの映像を提出していると知り、スノは自閉症について自分なりに調べ始めるのだった。
映画『無垢なる証人』のあらすじ【承】
検事・スジョンと初めて対面したスノは「フェアに戦いたい」とジウと対話するコツを教えてもらおうとした。スジョンの弟は自閉症を患っているという情報を得ていたからだ。ジウを証人として出廷させることになってしまい、不服なスジョンだったが「自分の世界から出られない自閉症の人と同じ世界に入ればいい」とヒントを与えるのだった。
早速、下校時を狙ってジウと対面を試みたスノ。登下校を一緒にするシネのおかげで、少しだけ会話することができたが事件については何も聞きだすことができない。しかし「好きなこと、パズルやクイズをしてみるといい」とヒントをもらうのだった。
第一回の公判で、スノは被害者の精神科の通院履歴を証拠として提出した。一方で検察も検死担当者を証人とし、ミランの証言を覆すよう必死だった。しかしスノの徹底した下調べは全てを否定し、陪審員に自殺という印象を深く残すのだった。
パズルをお土産に、再びジウに会いに行ったスノ。一緒に食事をして、自宅まで送るとスジョンも先に来ていた。和解はできないものの、ジウに接する真摯な姿勢は伝わり始めるのだった。
事務所の代表に呼ばれたスノは、被害者の息子・マンホが経営する会計事務所の顧問弁護士を受けて欲しいと提案を受ける。そして「遊びを知れ」という代表は若い女性たちを同室に引き入れたんまりと酒を飲ませるのだった。父親の借金を返すため嫌でも仕事を引き受けたスノだったが、虚無感に追われるのだった。
映画『無垢なる証人』のあらすじ【転】
忘れて寝ようとしたスノの携帯に一件の連絡が入った。相手はジウである。クイズを通じて交流するようになった二人。ジウの視覚や聴覚が人よりも優れていることにスノは気づき始めた。しかしある日、シネがジウをいじめている現場を見てしまう。「シネは友達じゃない」というスノの言葉にジウはパニックを起こしてしまい、病院に迎えに来た母親からこれまでの苦悩を聞くのだった。
ジウが弁護士を夢見ていると知ったスノ。事件について少しだけ聞こうとすると「えらく執念深いこった」とジウは繰り返す。そして人の心は難しいというジウは「おじさんも私を利用するの?」と問うのだった。
第二回公判。初めて証人として法廷に立ったジウは「おばさんは笑って攻撃をした」と証言をする。しかしスノの補佐として法廷に立った事務所の代表は、自閉症の学術書をジウに読ませ「他社の考えと感情を簡単に理解できない」と証言させた。さらに表情を読み取らせるテストを行ったスノは「精神病患者」とジウを表現してしまったことを後悔しつつ、ミランを無罪にすべく法廷に立ち続けた。ジウの母親には拒絶されてしまったが、第一審は無罪を勝ち取ったのである。
しかし、判決後、ミランがマンホと目を合わせ笑ったことをスノは見逃さなかった。さらに検察が控訴したと聞いたミランは「えらい執念深いこった」と呟いたのである。天涯孤独のはずのミランが「息子に会いにいく」といったことでスノの疑念は深まり、独自で調査を始めた。すると、近所の住民からミランは婚外子がいて養子に出した過去があると聞かされる。そして、マンホの会社の経営状況が酷いことや被害者は財産の寄付をすると証書を作った矢先に命を落としたことが発覚するのだった。
映画『無垢なる証人』の結末・ラスト(ネタバレ)
雨に戸惑い一人佇むジウにミランが接触してきた。「今度余計なことを言ったら口を切り裂く」と脅し去って行ったのだ。発作を起こしたジウだが、「証人になって真実を教えてあげたい」と母親に強く願い出た。一方で自分の信念に反していることに戸惑うスノ。「いいことをしたいという息子の気持ちが嬉しかった」と父親からの誕生日祝いの手紙に書かれた言葉に背中を押されるのだった。
第二審が始まり再びジウは出廷した。スノの事務所の思惑で検事を変えられたスジョンの悔しさを晴らすため、ジウに寄り添った尋問を始めたスノ。証人としての信憑性を立証し、当日ジウが聞いたミランの言葉を全て証言として残すのだった。
事務所の代表はスノの行為を弁護士の義務違反だと声を荒げ激怒した。しかしスノは動じず「私たちが自閉症に関して無知だった」と間違いを訂し、ミランの自白を促すのだった。マンホの指示だったと告白したミラン。スノはジウの目線に合わせ「立派な証人だったよ」と褒めるのだった。
ジウは独立支援学校に転校した。誕生日会に招かれたスノは、ジウとゆっくりと話す機会をもらう。「みんな変だけど、健常者のふりをしなくて済む」というジウの言葉を聞いて安心したスノは、プレゼントを渡した。そしてジウは最後のクイズの答えを伝える。「ヤン・スノさんは良い人です」と。別れ際自らスノに歩み寄ったジウは、ぎゅっと抱きしめるのだった。
映画『無垢なる証人』の感想・評価・レビュー
「いい人」「いい事」の概念を見せつけられた時間であった。日本でも大ヒットした『私の頭の中の消しゴム』を筆頭にラブストーリーのイメージが強いチョン・ウソンだが、今作の様な優しさを持ち合わせる男の葛藤を演じても秀逸であった。タイトル通り、「無垢」なジウの姿は実に胸を熱くさせる。見る者も、チョン・ウソン演じるスノと同じリズムでジウを理解していけるためとても共感度が高い。ジウを演じたキム・ヒャンギ。の熱演にも、実に注目して欲しい一作である。(MIHOシネマ編集部)
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