梶木秀丸は死刑判決を受けるが死刑執行が成立せず、精神病院に入院することになった。そこで、幻聴に苦しむ青年・チュウさんと父親からのDVに苦しむ女子高生の島崎由紀と出会う。3人はお互い支え合うようになった。そんな中、梶木が殺人事件を犯す。
映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』の作品情報
- タイトル
- 閉鎖病棟 それぞれの朝
- 原題
- なし
- 製作年
- 2019年
- 日本公開日
- 2019年11月1日(金)
- 上映時間
- 117分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- 平山秀幸
- 脚本
- 平山秀幸
- 製作
- 村松秀信
間宮登良松
木下直哉
宮崎伸夫
中野伸二
吉村和文
丸橋哲彦
植田勝教
中林千賀子
菅谷英智
三宅はるえ - 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- 笑福亭鶴瓶
綾野剛
小松菜奈
坂東龍汰
平岩紙
綾田俊樹
森下能幸
水澤紳吾 - 製作国
- 日本
- 配給
- 東映
映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』の作品概要
帚木蓬生原作の小説『閉鎖病棟』を元に制作された作品。笑福亭鶴瓶が約10年ぶりに主演を務め、役のために7キロの減量を行っている。元死刑囚が精神病院で犯した殺人事件を中心に、居場所をなくした患者達の人間模様が描かれている。平山秀幸が監督と脚本を務め、11年の構想を経て映画化を実現させた。シンガーソングライターKが映画のために書き下ろした楽曲、『光るソラ蒼く』が主題歌に起用されている。
映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』の予告動画
映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』の登場人物(キャスト)
- 梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)
- 母親や妻を殺害した罪で、死刑判決を受ける。死刑執行が成立せず、精神病院に入院することになる。
- 塚本中弥(綾野剛)
- 通称チュウさん。元サラリーマン。幻聴に苦しんでおり、暴れることもある。妹夫婦に疎まれ、精神病院に入院することになる。
- 島崎由紀(小松菜奈)
- 女子高生。父親からのDVに苦しんでいる。DVが原因で不登校になり、病院に通院するようになる。
映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』のあらすじ(ネタバレなし)
梶木秀丸は母親や妻を殺害した罪で死刑判決を受けた。しかし、死刑執行が成立せず、精神病院をたらい回しされることになった。最終的に辿り着いたのは、長野県にあるとある精神病院。そこいたのは、居場所を失くした者達だった。
患者の1人である塚本中弥(通称チュウさん)は、元サラリーマンで幻聴に苦しんでいた。暴力を振るようになったことで妹夫婦から疎まれ、精神病院に入院することになった。患者の1人である島崎由紀は、父親からのDVに苦しんでいた。彼女にとって精神病院は、唯一の居場所だった。
梶木、チュウさん、島崎の3人は精神病院で出会い、交流を深めた。お互い支え合いながら、生きていた。そんなある日、梶木が院内で殺人事件を犯した。なぜ、梶木は事件を犯したのだろうか?法廷で真実が明かされようとしていた。
映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』の感想・評価
笑福亭鶴瓶が約10年ぶりに主演を務めた
笑福亭鶴瓶が2009年に主演を務めた『ディア・ドクター』以来、約10年ぶりに主演を務めることになった。笑福亭鶴瓶は3年前に平山秀幸監督からの熱烈なオファーを受け、本作に出演することを決めた。演じたのは、元死刑囚の梶木秀丸。元死刑囚を演じるに当たり、約10日間で7キロの減量を成功させている。
本作は精神科医であり作家でもある、帚木蓬生原作の小説『閉鎖病棟』を元に制作されている。原作の小説は累計発行部数85万部超えのベストセラー小説で、「第8回山本周五郎賞」に輝いている。感動のあまり泣いたという読者が続出しており、多くの人の心を揺さぶる作品となった。精神病棟で起きた殺人事件を中心に、患者達の思いや日々が描かれている。
実力派俳優・綾野剛×小松菜奈の存在感
物語の主要人物の1人、チュウさんを演じたのは俳優の綾野剛。特撮テレビドラマ『仮面ライダー555』で俳優デビューを果たして以降、様々な役柄を演じてきた綾野が今回挑戦したのは、幻聴に苦しみ暴れてしまう元サラリーマン。綾野と笑福亭鶴瓶は長年親交があり、バラエティ番組で何度も共演している。信頼関係がある2人だからこそ生まれた、チュウさんと梶木秀丸の関係性に注目して欲しい。
もう1人の主要人物である島崎由紀を演じたのは、映画『渇き。』(14)でたくさんの新人賞に輝いた女優の小松菜奈。父親からDVを受け、もがき苦しみながらも必死に生きている女子高生を演じた。感情がダイレクトに伝わってくる彼女の演技にも注目して欲しい。
平山秀幸監督が初めて脚本に挑戦
監督・脚本を担当したのは、平山秀幸。『学校の怪談シリーズ』が大ヒットをし、一躍有名になった。最近では、うだつのあがらない落語家を描いた『しゃべれども しゃべれども』(07)やエヴェレストを舞台にした『エヴェレスト 神々の山嶺』(16)などの話題作を手がけている。今回11年の構想を経て、『閉鎖病棟』の映画化に挑戦している。平山監督にとって、脚本を手がけたのは本作が初めてとなった。
主題歌に起用されたのは、ソウル出身のシンガーソングライターKの楽曲『光るソラ蒼く』。K自身が撮影現場を見学し、曲を書き下ろしている。Kの優しい歌声が心に沁み渡り、物語に温かさをそっと添えている。物語の雰囲気を損なうことなく、エンディングまで余韻に浸ることができる。
映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』の公開前に見ておきたい映画
ディア・ドクター
笑福亭鶴瓶が初めて主演を務めた作品。西川美和が監督・原作・脚本を務めている。西川監督は『ディア・ドクター』のアナザーストーリーとなる短編集『きのうの神さま』も執筆している。小さな村で医師として働きながらも、ある秘密を抱える主人公を描いた作品。笑福亭鶴瓶は主人公の伊野治を演じた。
伊野治は山あいの小さな村で、たった一人の医師として働いていた。伊野は明るく気さくな性格で、村の人から絶大な信頼を寄せられていた。ある日、独り暮らしの女性・かづ子が体調を崩したため、診察することになった。かづ子は娘に心配をかけたくないため、病気のことを言わず嘘を吐いて欲しいと伊野に頼んだ。伊野は承諾した。かづ子の病気についての「嘘」を抱えたまま、伊野が突然失踪する。
詳細 ディア・ドクター
そこのみにて光輝く
綾野剛が主演を務めた作品。「第2回三島由紀夫賞」候補にもなった佐藤泰志原作の小説を元に制作された。過去のある出来事に苦しんでいる男性と、家族のために過酷な状況で働いている女性とのひりつくような恋愛が描かれている。綾野は主人公の佐藤達夫を演じ、池脇千鶴がヒロインの大城千夏を演じた。綾野は「第29回高崎映画祭・最優秀主演男優賞」など様々な賞を受賞している。
佐藤達夫は鉱山で働いていた。ある日、爆破事故が起こり、同僚が亡くなってしまう。仕事を指揮する立場にいた佐藤は責任を取り、辞職した。その後、佐藤は働かず、自堕落な生活を送るようになった。そんな時、パチンコ屋で大城拓児という青年に出会う。拓児には寝たきりの父、介護に疲れ切った母、家族のために働く姉の千夏がいた。達夫と千夏は交流を深めるうちに、次第に惹かれ合っていった。
詳細 そこのみにて光輝く
エヴェレスト 神々の山嶺
平山秀幸監督作品。夢枕獏原作の小説『神々の山嶺』を元に制作された作品。谷口ジロー作画で漫画化されており、「第5回文化庁メディア芸術祭マンガ部門・優秀賞」を受賞している。ちなみに、谷口ジローは漫画『孤独のグルメ』の作画を担当したことで有名な人物である。アイドルグループV6に所属する岡田准一が主演を務めた。エヴェレストのベースキャンプ付近で撮影が行われている。
山岳カメラマンの深町誠は、エヴェレスト登山の遠征に参加した。だが、2人の死者を出し失敗に終わる。深町はもう一度チャレンジしたい気持ちがあったため、帰国せずにカトマンズに滞在した。偶然立ち寄った店で、ジョージ・マロリーの遺品のカメラを手にする。ジョージ・マロリーはイギリスの登山家で、エヴェレストの初登頂を成功させたかもしれない人物だった。深町はそのカメラをきっかけに、孤高の天才クライマー羽生丈二と出会う。
詳細 エヴェレスト 神々の山嶺
映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』の評判・口コミ・レビュー
『閉鎖病棟 それぞれの朝』映画館にて179本目。
タイトルほどの閉塞感は感じられなかったけど、主要キャスト笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈それぞれの演技力が光る良作。血縁関係がなくとも人の優しさに救われる者もいる。心打たれて涙したが演出面が惜しい。山中崇のクズっぷりも最高。 #EDDIE映画2019 pic.twitter.com/LuW6Eqj2lb— EDDIE@Kings1-5#foreverpurple (@eddie2yuji) 2019年11月2日
『#閉鎖病棟 それぞれの朝』
忘れがたい過去の記憶に追い打ちをかけるように襲いかかる同じような事件。かなり重たいものを背負った人たちの再生の物語だけど、不満はないものの大きく感情を動かされる事はなかったかな。こういったストーリーこそ軽妙さがほしい。#背骨映画 pic.twitter.com/WBqfHOpnSw— 背骨 (@sebone1126) 2019年11月2日
“閉鎖病棟-それぞれの朝-”
それぞれに事情を抱え、肩を寄せあい、閉鎖病棟で生きる人々。その中で、お互いに背中を押しながら、少しづつ前に進み、生きる希望へと繋がる物語が刺さる。後半の、物語の盛り上がりを思うと、前半部の、回想シーン等による、テンポの悪さが、勿体なく感じる作品。惜しい❗️ pic.twitter.com/7aTKYWvlBI— 常山の住職 (@CinemaCLAIRfan) 2019年11月1日
『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』感想。
キャッチー要素皆無な地味極まりない題材ながら、弱者や少数派の切り捨てを社会そのものが支持してしまうという末世日本の風潮に対して、静かに強く否と突きつけるこんな映画を投入してくる蛮勇と気概。攻めに攻めてる今年の東映を象徴する1本。観られるべき力作。— フリップ村上 (@fripp_murakami) 2019年11月1日
「閉鎖病棟-それぞれの朝-」88点。久しぶりに邦画で良い作品に出会った。心の闇を抱えた人々への温かい視線が作品に通底していて、鶴瓶・剛・菜奈が見事な演技でそれを表現。平山監督が原作に惚れ込んで脚本も初めて書いたというその熱意をありありと感じる。小林聡美、渋川清彦など脇役も光る。 pic.twitter.com/EfodkZsokX
— 涼 (@jazzbowler) 2019年11月1日
映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』のまとめ
本作は精神病院を舞台に、社会や家庭に居場所がなく苦しみを抱える患者達の様子が描かれている。元死刑囚の梶木秀丸は患者のチュウさんや島崎由紀と出会い、支え合いながら穏やかな日々を過ごしていた。にも関わらず、病院内で殺人事件を起こす。梶木はなぜ再び罪を犯すことになったのか、そこが物語のポイントになっている。元死刑囚や殺人事件などショッキングなキーワードが並べられているが、人の温かさや優しさが感じられる物語になっている。悩みや苦しさを抱えている人に、お勧めしたい作品である。
みんなの感想・レビュー