映画『居酒屋(1956)』の概要:19世紀半ばの貧しいパリで、男に翻弄されて生きたある女の悲劇を描く。エミール・ゾラ著の自然主義文学を原作とする本作は、『禁じられた遊び』『太陽がいっぱい』のルネ・クレマンにより、忠実に映画化された。
映画『居酒屋』の作品情報
上映時間:112分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ルネ・クレマン
キャスト:マリア・シェル、フランソワ・ペリエ、アルマン・メストラル、ジャック・アルダン etc
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映画『居酒屋』の登場人物(キャスト)
- ジェルヴェーズ(マリア・シェル)
- 三児の母。内縁の夫に家出され、再婚して夢だった洗濯屋を開くも、男に翻弄される人生を送る。
- クポー(フランソワ・ペリエ)
- 屋根職人であり、ジェルヴェーズの再婚相手。事故に遭ってから、ジェルヴェーズが工面した金を酒に注ぎ込むようになる。最後は酒のせいで命を落とす。
- グジェ(ジャック・アルダン)
- 鍛治職人であり、ジェルヴェーズとクポーの友人。夫婦の開店資金を援助し、ジェルヴェーズに恋をする。
- ランチエ(アルマン・メストラル)
- ジェルヴェーズの内縁の元夫。浮気性で、ジェルヴェーズの元を一度去るが、ヴィルジニーの手引きにより戻ってくる。ジェルヴェーズの店に居候するようになる。
- ヴィルジニー(シュジ・ドレール)
- ランチエの浮気相手の姉。大げんかをしたジェルヴェーズを恨んでおり、再会してから復讐を企てる。
- ボシュ夫人(マティルド・カサドシュ)
- ジェルヴェーズの家の管理人。噂好きで、ジェルヴェーズの事情などをヴィルジニーに告げ口する。
- クレマンス(ミシュリーヌ・リュシオニ)
- ジェルヴェーズの店で働く洗濯女。店が経営難になってからも、最後まで働き続ける。
- ポワソン(リュシアン・ユベール)
- ヴィルジニーの夫であり、巡査。妻の企みには気付かず、ジェルヴェーズたちとは友人として接する。
- エチエンヌ(クリスチャン・フェレ)
- ジェルヴェーズとランチエの間にできた息子。グジェの元で鍛治職人として学び、やがて家を出てゆく。
- ナナ(シャンタル・ゴッジ)
- ジェルヴェーズとクポーの間にできた娘。まだ幼いため、家庭状況の悲惨さに気づいていない。
映画『居酒屋』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『居酒屋』のあらすじ【起】
ある朝、パリの裏町に住むジェルヴェーズは、一晩家を空けた夫・ランチエの帰りを待っていた。二人の息子がいながら、向かいに住む姉妹の家に通うランチエは、悪びれる風もなく帰宅する。ジェルヴェーズは彼を責めるが、自分の足が悪いことに引け目を感じているうえ、彼に心酔しているため、すぐに許してしまう。
洗濯場にて、友人であるボシュ夫人と会ったジェルヴェーズは、パリに来る前まで洗濯女として働いていたことや、ランチエとは籍を入れていないことを聞かれるままに話す。その時、ジェルヴェーズのところへ息子たちがやってくる。ランチエが荷物を持って、女と家を出て行ったと言うのだ。ランチエの浮気相手の姉・ヴィルジニーは、面白がってジェルヴェーズの様子を見に来ていた。二人は取っ組み合いになり、洗濯場は大騒ぎになる。結局、返り討ちにしたジェルヴェーズは、子供たちを連れて誰もいない家へと帰る。
ジェルヴェーズに再婚の機会が巡ってくる。相手は屋根職人のクポーで、ランチエと違い、とても優しい人であった。彼の姉は用心深く、ジェルヴェーズの足が悪いことや、子持ちであることをねちねちと咎める。だが、二人は晴れて夫婦になり、贅沢ではないが仲睦まじい結婚生活を送る。二人の間には、ナナという女の子が生まれる。
映画『居酒屋』のあらすじ【承】
夫婦はよく働いた。ついにジェルヴェーズは、長年の夢であった夫婦の店を持つことにする。店を借りようという日、クポーは仕事中に、屋根から足を滑らせて転落してしまう。周囲は入院を勧めるが、ジェルヴェーズは自ら看病すると言って聞かず、夫を家に連れて帰る。
ジェルヴェーズは、開店資金を諦めて治療費に回したが、貯金は半年で尽きてしまう。働き詰めのうえ、寝たきりのクポーは不満を垂らし、夫婦仲はすっかり冷めきっていた。そんな二人を見兼ねて、見舞いに来た友人のグジェは、資金の援助を申し出る。
開店準備に追われるなか、ジェルヴェーズはヴィルジニーと再会する。巡査のポワソンと結婚し、別人のように気さくになった彼女は、ジェルヴェーズを家に上げると、かつての行いを謝罪する。そして、ランチエが妹と別れたことを告げる。
店の様子を見に来たヴィルジニーに、資金繰りや人間関係について赤裸々に話してしまうジェルヴェーズ。さらに噂好きのボシュは、彼女についてヴィルジニーに吹き込む。
洗濯店は繁盛し、従業員を数名雇うほどに成長する。ジェルヴェーズは仕事に精を出し、彼女の長男・エチエンヌは、鍛治職人のグジェの元で見習いとして学び始める。だが、働かなくなったクポーは、足が治ったにも関わらず酒浸りであった。彼はグジェに返すための金を使い込んでしまう。絶望したジェルヴェーズは、返済を遅らせてもらうため、グジェに謝りに行く。グジェはそんな彼女を優しく受け止めると、キスをしかけてやめる。
映画『居酒屋』のあらすじ【転】
ジェルヴェーズは誕生日を前に、立派な鶏肉を調達してはしゃいでいた。そこへヴィルジニーが訪ねてきて、近くでランチエを見たと話す。若くして一緒になったランチエを、ジェルヴェーズは忘れられずにいた。ヴィルジニーは道端でランチエと会い、親密そうに手を振り合う。
ジェルヴェーズの誕生会には、友人や親戚など十数名が駆けつけた。酒場に入り浸っていたクポーは、無理やり家に連れ戻される。料理と酒が振る舞われ、会が盛り上がりを見せるなか、ヴィルジニーが不審な動きを見せる。外にいるランチエに合図を送ると、彼の存在をジェルヴェーズに耳打ちする。動揺したジェルヴェーズは、歌を披露するも、窓から見えた彼の顔に声を詰まらせる。
また、クポーも奇妙な行動に出る。ランチエを友人として招き入れたのだ。そしてランチエを子供と再会させた挙句、一晩泊まるよう促す。のちにクポーは、家を探していると言う彼に、家の一室を明け渡してしまう。
グジェは誕生会の日、ジェルヴェーズと熱いキスをするが、ストライキに参加したことで懲役を食らってしまう。刑期を終えて店を訪れると、そこにはすっかり住み着いたランチエの姿がある。そしてヴィルジニーの口から、ジェルヴェーズがランチエと関係を持ったことを知る。
ジェルヴェーズは、グジェを頼って会いに行く。彼に想いを伝えるが、後ろめたさからキスを拒んでしまい、涙を流す。彼女の生活は、すっかり荒んでしまったのだった。
グジェの元に、エチエンヌを預けることになる。ジェルヴェーズが鞄を探していると、クポーが質屋へ持ち出したのだと、ナナが教える。彼が客のシーツまで持って行ったらしいと聞き、ジェルヴェーズは店を飛び出す。酒場にいたクポーは、反省するどころか彼女を挑発し、質札を飲み込んでしまう。
映画『居酒屋』の結末・ラスト(ネタバレ)
グジェとエチエンヌは去ってしまい、ジェルヴェーズの希望は断たれる。店の客足は途絶え、従業員はクレマンスだけになっていた。仕事と子育てに追われ、クポーとランチエの食事の世話まで背負うジェルヴェーズは、ついに怒りを爆発させる。食卓をひっくり返すと、店を売ってしまいたいと訴える。床に散らばった芋を、ナナは手で弄ぶ。
ランチエは相変わらず女に目がなく、ヴィルジニーの誘いにも簡単についていく。彼らの関係に気づいたジェルヴェーズは、ずっとヴィルジニーに騙されていたことを悟る。二人に店を売るよう勧められるが、口汚く罵って追い払う。
その頃、クポーはアルコールに蝕まれ、精神に異常をきたしていた。ある夜、暴れて店を半壊させると、病院に運ばれて命を落とす。
すっかり精気を失ったジェルヴェーズは、ついに店を奪われてしまう。そのあとに建ったヴィルジニーの店には、ポワソンの他に、ランチエの姿もあった。ナナは、ヴィルジニーにキャンディとリボンをもらい、酒場にいる母の元へと戻る。ジェルヴェーズは酒を前に、ナナの呼びかけにも答えない。ナナはリボンを首に結びつけると、街にたむろする少年たちのところへ駆けてゆく。
映画『居酒屋』の感想・評価・レビュー
第二のジェルヴェーズを予感させる、ナナの成長を以って本作は幕を閉じる。その時代のパリの歴史的風景を忠実に描きながら、悲劇を助長させたストーリーは、まさに自然主義らしい。女たちの醜さが生々しいほどに伝染し、太陽のようなジェルヴェーズの笑顔を奪ってゆく。その一方で、女たちの乱闘シーン然り、ジェルヴェーズとグジェのダンスシーン然り、喜劇のような軽快さを放つ場面も目立ち、印象としてはとても奇妙であった。ルネ・クレマンの意図するところを是非とも知りたいものだ。(MIHOシネマ編集部)
原題はジェルヴェーズ(Gervais)。主人公の女性の名前です。彼女が開いたのは「洗濯屋」なぜ邦題は「居酒屋」になったのでしょう。
ジェルヴェーズはとにかく男運のない女性。ダメな男を好きになるのか、付き合う男をダメにしてしまうのかわかりませんが、なかなか救いのない人生で可哀想になりました。
パリに住む「庶民」が主人公なので、思い描くパリのイメージとは違う「下町」のような雰囲気を感じました。強い女性とダメな男、酒に溺れる男やその男を好きになってしまう女。どうしようもないけど、これが「生きる」という事なのかもしれないと感じました。(女性 30代)
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