映画『かくも長き不在』のネタバレあらすじ結末と感想 | MIHOシネマ

「かくも長き不在」のネタバレあらすじ結末と感想

かくも長き不在の概要:1960年のパリでカフェを営む女主人は、ゲシュタポに不当逮捕され、その後消息不明となってしまった夫にそっくりの男と出会う。しかしその男は、記憶喪失になっていた。戦闘シーンなどの派手な演出は一切ないが、戦争で生き別れた男女の悲しみがひしひしと伝わってくる秀作。

かくも長き不在の作品情報

かくも長き不在

製作年:1960年
上映時間:98分
ジャンル:ヒューマンドラマ、戦争、ラブストーリー
監督:アンリ・コルピ
キャスト:アリダ・ヴァリ、ジョルジュ・ウィルソン、ジャック・アルダン、シャルル・ブラヴェット etc

かくも長き不在の登場人物(キャスト)

テレーズ(ジョルジュ・ヴァリ)
パリの下町でカフェを営む中年女性。16年前に夫のアルベールがゲシュタポに不当逮捕され、その後消息不明になってしまった。それ以来、ひとりでカフェを切り盛りし、夫の帰りを待ち続けている。
男(ジョルジュ・ウィルソン)
ホームレスの男性。セーヌ河岸の粗末な小屋で寝泊まりしている。テレーズの夫のアルベールにそっくりだが、記憶喪失になっているため何も思い出せない。後頭部に痛々しい拷問の傷跡がある。
ピエール(ジャック・アルダン)
テレーズの恋人。トラックの運転手をしている。テレーズが夫だと言い張る男の出現により、彼女から別れを告げられる。
マルティーヌ(ディアナ・レププリエ)
テレーズのカフェで働いている娘。店の近所で暮らしている。

かくも長き不在のネタバレあらすじ

映画『かくも長き不在』のあらすじを結末まで解説しています。この先、ネタバレ含んでいるためご注意ください。

かくも長き不在のあらすじ【起】

1960年7月14日のパリ祭りの日。テレーズが営む下町のカフェ「アルベール・ラングロワの店」は、今日も常連客で賑わっている。テレーズの店は近隣の人々の憩いの場になっており、客足は絶えない。テレーズは手伝いにマルティーヌという娘を雇い、女店主としてこの店を切り盛りしていた。

忙しい1日が終わり、テレーズは店の2階にある寝室で恋人のピエールと夜を過ごす。バカンスはどうするのかと聞かれ、テレーズは故郷のショーリュへ帰るつもりだと答える。ピエールは自分の町から近いので好都合だと喜ぶが、テレーズは浮かない顔をしていた。

翌日、ピエールは仕事へ行き、テレーズはいつものように店を開ける。近隣の人々はバカンスでパリを離れ、通りは閑散としていた。そこへ、薄汚れたホームレス風の男が通りかかる。彼は粗末な格好をして、歌を口ずさんでいた。その男の顔を見て、テレーズの顔色が変わる。

夜、仕事から戻ったピエールは、テレーズの様子がおかしいことに気づく。ピエールが理由を聞いても、テレーズは明確に答えない。そんなテレーズにピエールは苛立つ。

翌日、テレーズはマルティーヌに頼み、あの男を店に連れてきてもらう。マルティーヌはテレーズに指示された通り、男にビールを勧め、あれこれ質問する。しかしマルティーヌが何を聞いても、男は曖昧にしか答えない。そして申し訳なさそうに、記憶喪失なので自分のことがわからないのだと打ち明ける。

店の裏でその様子を見ていたテレーズは、ショックのあまり倒れてしまう。心配したマルティーヌがカウンターを離れた隙に、男は姿を消す。正気を取り戻したテレーズは、すぐに男のあとを追いかけていく。

かくも長き不在のあらすじ【承】

男の姿は見失ってしまうが、テレーズは1日中セーヌ河岸を歩き、男が住んでいる小屋を発見する。テレーズはその小屋の前で夜を明かし、翌朝起き出してきた男の様子を見守る。男はテレーズの存在に気づいても、黙々といつものペースで動いていた。そして大事そうに紐で縛った木箱を取り出し、丁寧に紐を解き始める。そこで初めてテレーズから男に声をかける。

男はテレーズの問いかけには答えず、拾ってきた雑誌から目ぼしい写真を選び、器用にハサミで切り抜いていく。テレーズは「手伝わせて」と頼んでみるが、男はその作業を邪魔されたくないようだった。しばらくすると、男は手提げカバンを持ち、どこかへ出かけていく。テレーズは少し距離を置いて、男の後ろをついていく。

男は歩きながら、また歌を口ずさみ始める。その歌は「セビリアの理髪師」というオペラの中の「陰口はそよ風のように」という歌だった。

ゴミ捨て場に着くと、男は古紙や古布をズタ袋に入れ、雑誌は手提げカバンにしまう。男は古紙や古布を売って生計を立て、拾った雑誌から切り抜いた写真や絵を集めるのを趣味にしていた。テレーズは1日中男のそばにいて、彼の行動を見守る。

翌日、テレーズは店のジュークボックスに「セビリアの理髪師」のレコードを入れてもらい、男が口ずさんでいた曲をかける。テレーズのもくろみ通り、店の前を通りかかった男は、音楽に誘われて店内に入ってくる。テレーズは男にビールを勧め、集めておいた雑誌を渡す。その後マルティーヌを帰らせ、店を閉めてしまう。店内には、テレーズが事前に呼んでおいた老婦人と青年がいて、男の顔をじっと見つめていた。

かくも長き不在のあらすじ【転】

男が雑誌の切り抜きを始めたのを見て、テレーズはその老婦人と青年を相手に、大きな声で話を始める。老婦人はテレーズの夫の叔母で、青年は夫の甥だった。2人はテレーズに呼ばれ、メーヌ県のショーリュから出てきていた。

今から16年前の1944年の6月、テレーズの夫のアルベールは、故郷のショーリュでゲシュタポに逮捕された。アルベールは拷問され、メーヌ県のアンジェへ連行されていく。その後投獄され、7月14日のパリ祭りの日に収容所へ送られた。アルド・カンビーニというテレーズのいとこと、2人のイギリス兵も一緒だった。アルベールとアルドは、このイギリス兵をブルターニュまで送ったことで、反ナチスの活動家ではないかと疑われたのだ。

終戦後の1946年11月24日、アルベールは英雄として勲章を授与されるが、受勲式に出たのは妻のテレーズだけだった。アルベールは、収容所に送られてから消息不明となり、生死も確認できないままだった。それから16年、テレーズはアルベールがいつか帰ってくると信じて、2人で始めたこの店を守り続けてきた。

テレーズたちは、わざと男に聞こえるようにこれらの話をして、男の反応を見る。男は妙な空気を察したのか、何も言わずに店を出ていく。

テレーズは、あの男こそ夫のアルベールだと確信していた。しかし叔母は、アルベールではないという見解を示す。男が持っていた証明書の名前も違っていたし、アルベールはオペラにも興味がなかった。テレーズは、収容所で一緒だったアルドがオペラ好きだったので、その影響を受けたのだろうと推測する。叔母は冷静になるよう諭すが、テレーズは「私の夫よ」と言い切る。テレーズは、あの男(アルベール)の記憶が、徐々に戻りつつあると感じていた。叔母は、厄介なことになったと困惑する。

テレーズは、雑誌を届けにきたという口実で小屋を訪ね、男を食事に誘う。「あなたがある人とそっくりだから、時々一緒に食事をして話をしたい」と言われ、男は戸惑いの表情を浮かべる。それでもあまりにテレーズが必死に頼むので、そのうち行くと約束する。

かくも長き不在のあらすじ【結】

テレーズはピエールともきっぱり別れ、男の来訪を待ちわびる。ずっと店を休業しているテレーズのことを、常連客たちも心配していた。

約束通り、男は夕食時に店へ来てくれる。男はテレーズへの贈り物に、綺麗な建物の切り抜きをプレゼントしてくれる。感激しているテレーズを見て、男も嬉しそうに笑う。

テレーズは奥の部屋に夕食を用意していたが、その狭い空間を見て、男は怖がって帰ろうとする。狭いところが怖いという男を気遣い、テレーズは店のテーブル席に夕食を運ぶ。すると男は落ち着き、席についてくれる。

食後のおつまみに、テレーズはメーヌ産のブルーチーズを用意していた。これはアルベールの好物で、男が何かを思い出してくれるのではないかと期待してのことだった。男はおいしそうにブルーチーズを食べ、「この味はよく覚えている」と言ってくれる。

テレーズは男に、最も昔の記憶は何か聞いてみる。男は、近くに茂みがある野原にいた時の話をする。テレーズは、その瞬間どんな気持ちだったのか、その後どうしたのか、詳しく聞きたがる。しかし男は、「立ち上がり歩いた、それだけだ」とそっけなく答える。どうやらその野原は、テレーズとアルベールが出会った場所のようだった。

テレーズはオペラのレコードをかける。2人は並んで音楽に聴き入り、一緒に歌を歌う。その後、シャンパンを飲みながら過去について話す。テレーズの感情は高ぶり、「幸せな過去を思い出して」と、すがるような気持ちで男に訴える。しかし男は、記憶が戻る可能性はないと医者に宣告されており、テレーズの期待に応えられない。

テレーズは気を取り直して音楽をかけ、男とダンスを踊る。男の頭に手を回したテレーズは、彼の後頭部に深い傷跡があることに気づく。その痛々しい傷跡は、男が受けた拷問の凄まじさを物語っていた。

男は「君は優しい女性だ」とテレーズに感謝する。テレーズは胸がいっぱいになり、「あなたには愛した女性がいたの、テレーズ・ラングロワよ、ショーリュで結婚したの」と言ってみる。しかし男は困惑するばかりだった。

「あなたは私の愛した人にそっくりなのよ」と言われ、男は他人事のように彼女に同情する。男の記憶を呼び戻すことができず、テレーズは思わず泣き出す。男は困ったような顔をして帰り支度を始め、彼女と握手をして店を出ていく。

店の外では、常連客やピエールが待っていた。彼らは男に「アルベール!」と声をかける。しかし男は返事をせず、足早に立ち去る。テレーズは我慢できなくなり、大声で「アルベール・ラングロワ!」と叫ぶ。すると男は反射的に立ち止まり、両手をあげる。きっと戦争時の恐ろしい記憶が蘇ったのだろう。その直後、男は全速力で走り出し、トラックの行き交う道路へ飛び出していく。その現場を見て、テレーズは気を失ってしまう。

テレーズは店で目を覚ます。彼女に付き添っていたピエールは、「彼は無事だ、何でもない」と告げる。男は小屋を捨て、どこかへ行ってしまったらしい。それでもテレーズは、愛する夫のことをあきらめきれない。テレーズは自分に言い聞かせるように、「冬を待ちましょう」と寂しげに呟く。冬になって行くあてがなくなれば、彼はきっと帰ってくる。テレーズはそう信じたかった。

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みんなの感想・レビュー

  1. 田野 より:

    男は結局夫ではなかった?
    名前をただ思い出しただけだった?
    自分の名前を思い出したら過去も思い出すのでは。
    思い出した瞬間に事故で死んでしまったと思っていた。あの自動車のキーッという急ブレーキの音でFinとなるほうがよかった気がする。