フランス・パリ19区。シモンはバイオリニストとして挫折し、鬱々とした日々を過ごしていた。ある日、子供達にバイオリンを教えることになるのだが、子供達は音楽に特に興味もなく、指示を無視して遊んでばかりいた。
映画『オーケストラ・クラス』の作品情報
- タイトル
- オーケストラ・クラス
- 原題
- La Melodie
- 製作年
- 2017年
- 日本公開日
- 2018年8月18日(土)
- 上映時間
- 102分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
音楽 - 監督
- ラシド・ハミ
- 脚本
- ラシド・ハミ
ギィ・ローラン - 製作
- ニコラ・モベルネ
- 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- カド・メラッド
サミール・ゲスミ
アルフレッド・ルネリー - 製作国
- フランス
- 配給
- ブロードメディア・スタジオ
映画『オーケストラ・クラス』の作品概要
フランスで「Demos(デモス)」と呼ばれる、音楽教育プロジェクトが存在する。本作品はこのデモスを元に構想が練られ、作られた作品である。本作品でプロデュースを担当したニコラ・モベルネは、『幸せはシャンソニア劇場から』(08)や『コーラス』(04)でプロデュースを担当した人物である。音楽×登場人物達の心情がリンクし、より深く物語に入り込めるようになっている。音楽に興味がなかった子供達が、必死に練習を重ね大舞台に立つ姿が描かれている。
映画『オーケストラ・クラス』の予告動画
映画『オーケストラ・クラス』の登場人物(キャスト)
- シモン・ダーウード(カド・メラッド)
- バイオリニストとして活躍していたが、挫折してしまう。「Demos(デモス)」と呼ばれる音楽教育プロジェクトにより、小学校の子供達にバイオリンを教えることになる。堅物で真面目な性格。
- アーノルド(アルフレッド・ルネリー)
- バイオリニストとしての才能を持った少年。
映画『オーケストラ・クラス』のあらすじ(ネタバレなし)
フランス・パリ19区。シモンはバイオリニストとして挫折し、鬱々とした日々を過ごしていた。ある日、子供達にバイオリンを教えることになり、小学校を訪れることになった。子供達は音楽に触れたこともなく、特に興味もない者ばかりだった。集中力は30秒も持たず、すぐにバイオリンを使ってふざけて遊んでいた。シモンは年度末に行われるコンサートまで指導して欲しいと学校側から頼まれるが、それまでに子供達が弾けるようになるとはとても思えなかった。
シモンは教えることが苦手ながらも、子供達の指導を必死に行った。その中で、1人の少年に、バイオリニストとしての才能があることに気づく。シモンはその少年・アーノルドと共に、生徒達の指導に当たった。そして、大事なことを忘れていたことに気づく。それは、音楽を楽しむことだった。シモンはスタンディングオベーションを得ることを目標に、コンサートに向けて生徒達の指導を続けた。
映画『オーケストラ・クラス』の感想・評価
実在するプログラム。
フランスで「Demos(デモス)」と呼ばれる、音楽教育プロジェクトが存在する。そのデモスとは、プロの演奏家達が無償で子供達に音楽を教えるもので、実際に2000人以上が体験している。本作品はこのプログラムを元に構想が練られ、映画化された作品である。
その後の調べによると、2000人以上の体験者の内、約半数以上が音楽を続けていることが分かった。フランスのマクロン大統領やドイツのメルケル首相は、実際に現場に訪問し授業風景を観覧している。それほどこのプログラムは、情操教育として非常に注目を集めているのだ。
本作品は、音楽に触れたこともない子供達がプロの演奏家の指導の下、何を思い何を感じるのか確認することができる。
ニコラ・モベルネ
本作品でプロデュースを担当したニコラ・モベルネは、『幸せはシャンソニア劇場から』(08)や『コーラス』(04)のプロデュースを担当した人物である。
『幸せはシャンソニア劇場から』は失業者となった男性が、愛する息子を取り戻すために劇場を再建しようと奮闘する姿が描かれている。『コーラス』は音楽教師マチューと問題児達が、歌を通じて交流を深めていく様子が描かれている。
『幸せはシャンソニア劇場から』も『コーラス』も、どちらも「音楽」が物語に深く関わっている作品である。美しい歌声や音楽は、時には言葉よりも感情をダイレクトに伝えてくれる効果があると思う。どちらの作品も「音楽」が上手く生かされており、登場人物達の心情が「音楽」を通して伝わってくる内容になっている。
『オーケストラ・クラス』でも堅物のシモンが子供達との「音楽」を通じてどんな風に変わっていくのか、注目すべきポイントだと言える。
フィルハーモニー・ド・パリ
子供達がコンサートを開くことになる場所は、実際にフランスのパリ19区の公園内に存在する「フィルハーモニー・ド・パリ」という名のコンサートホールである。そこは、パリ管弦楽団の新本拠地としても有名である。
パリ管弦楽団は1967年に、フランス文化省の大臣と音楽局長の要請により設立されたオーケストラである。サル・プレイエルコンサートホールで長年活動を行っていたが、諸事情により「フィルハーモニー・ド・パリ」に移ることになった。現在も定期的にコンサートが開かれており、観客達を楽しませている。
そんな由緒あるパリ管弦楽団が活動拠点として使用している場所で、子供達はコンサートを開くことになる。「フィルハーモニー・ド・パリ」が全面協力してくれたお蔭で、撮影は実際の場所で行われている。子供達の成長と共に、「フィルハーモニー・ド・パリ」の厳かな雰囲気を感じて欲しい。
映画『オーケストラ・クラス』の公開前に見ておきたい映画
幸せはシャンソニア劇場から
本作でプロデュースを担当したニコラ・モベルネがプロデュースを務め、カド・メラッドも劇団員の1人として出演している。フランク・トマとライン・ハルト・ワーグナーのシャンソンをモチーフに物語が作られており、音楽とストーリーが密接に関わっている作品になっている。
ピゴワルはシャンソニア劇場で客引きとして働いていた。だがある夜、妻が他の劇団員と浮気していることを知ってしまう。しかも、劇場が売りに出されることになり、劇団員達は解雇された。妻と職を失ったピゴワルは、失意の中にいた。そんな中、息子の親権が妻の手に渡りそうになってしまう。ピゴワルは職を得るため、劇場を再建しようと立ち上がった。果たして、ピゴワルは劇場を再建し、息子を取り戻すことができるのだろうか。
天使にラブ・ソングを…
殺人事件の目撃者であるクラブ歌手は、警察に保護されシスターとして姿を偽ることになった。そのクラブ歌手が、匿われた修道院で巻き起こす騒動が描かれている。女優ウーピー・ゴールドバーグの代表作。作品内で修道院の聖歌隊のシスター達が歌う場面は、誰もが一度は目や耳にしたことがあるほど有名である。2011年にはミュージカル化もされており、未だに根強いファンがいる。
デロリスはナイトクラブ「ムーンライトラウンジ」のステージに立つ歌手であり、マフィアのボスの愛人でもあった。だが、そのボスが裏切り者を始末している現場を目撃してしまう。デロリスは警察に保護され、修道院に匿われることになった。そこで、聖歌隊の指揮者を任されることになり、シスター達を鍛え上げることになった。
詳細 天使にラブ・ソングを…
スウィングガールズ
東北の田舎町に暮らす女子高生達が、バンドを組んでジャズを演奏しようと奮闘する姿が描かれている。オーディションによってキャストは決められていったが、主要キャストの内5名は楽器演奏未経験者だった。他のメンバー達も学生時代に部活でやったことはあっても、プロとして活動している者はいなかった。そのため、合宿などを行って演奏の練習に励み、撮影に挑んでいる。
高校生の鈴木友子や友人達は、夏休みの間数学の補習を受けることになった。だが、やる気がない友子達は、野球部の応援に行った吹奏楽部の部員達に、弁当を持って行く役を買って出ることにした。だが、弁当を食べた部員達は食中毒を起こしてしまう。友子が炎天下の中、遊びながら球場に向かったせいで、弁当が傷んでしまっていたのだ。友子達は補習をサボるため、倒れた吹奏楽部の部員の代わりに野球部の応援を行うことにした。
詳細 スウィングガールズ
映画『オーケストラ・クラス』の評判・口コミ・レビュー
「オーケストラ・クラス」は教師の方こそが変わる最たる例の一つといった物語だった。最適な者で構成されるプロミュージシャンの世界とはみ出し者のためにある、いや「あろうとすべき」子どもの教育現場とは真逆であり、前者から後者にほぼ突き落とされた形の主人公がそこに自身の道を見つける。
— yako (@yako802) 2018年8月19日
本日二本目「オーケストラ・クラス」を観終わりました。バイオリニストが小学6年の音楽クラスでバイオリンを教える、という「ミュージック・オブ・ハート」みたいなお話しで、バラバラな悪ガキ連中がだんだんその気になってくる感じが出ていて、面白かったですね。
— 水上 聡 (@lawn2bishop) 2018年8月19日
オーケストラ・クラス@テアトル梅田
好きな映画だわ✨ 王道の物語も淡々として良かった。僕が何度もじんとしたのは、音楽に接する人々の表情。例えばバッハのシャコンヌの演奏を聞く、ある家族。音楽を奏でるため、人は楽器を調律する。一方、音楽は人を調律するのね。だから人は音楽を求めるのかも。 pic.twitter.com/adRYD4RMwS— nissy (@ni_ssy) 2018年8月19日
「オーケストラ・クラス」観た。行き詰まったヴァイオリン奏者が子どもを教える喜びに目覚めて再生していく。子どもたちの超自然な演技が素晴らしい。ふざけ合ってまともに授業を受けない彼らが、主人公のヴァイオリン演奏の音を聴いたとたんに顔つきを変えるシーンには震えた。
— Hisashi Nishimura (@hisashinis) 2018年8月19日
『オーケストラ・クラス』は先生のキャラが掴みにくく展開も淡々としてて反省会か・・・と思ってたら話が動き始めてからの展開が好きになったのでセーフ!もっと子役達のキャラを掘り下げて欲しかった。特に太っちょアーノルドが好きなヤエルちゃん、あのコの眼差しがとても印象的だっただけに残念。 pic.twitter.com/oHodlkXA3Z
— alpha23d (@alpha23d) 2018年8月19日
共に音を奏でるためには、相手の音を聴くことが一番大事。
登場人物がだんだんと相手を受け入れ、尊重するにつれて音楽も一つになっていく。爽やかな後味の物語にほっとしました。#オーケストラクラス https://t.co/539Y7xo3JL— sunsoon (@sunsoon16) 2018年8月19日
映画『オーケストラ・クラス』のまとめ
プロの演奏家が学校を訪れることを、情操教育として実際に行っていると知ったときはとても驚いた。バイオリニストとして活躍しながらも挫折してしまった主人公と、音楽に全く興味がない子供達。普通に生活をしていれば、決して会うことがなかった2組である。けれども、音楽を通じて交流を深めていく姿は、感動させられる。特に、硬い表情だった主人公が、だんだん優しい顔つきになっていくのが印象的だった。実際に映画を見て、子供達は無事にスタンディングオベーションを得ることができたのか、確認して欲しい。
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