この記事では、映画『ピアニスト(2001)』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ピアニスト(2001)』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『ピアニスト』 作品情報
- 製作年:2001年
- 上映時間:132分
- ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、音楽
- 監督:ミヒャエル・ハネケ
- キャスト:イザベル・ユペール、ブノワ・マジメル、アニー・ジラルド、アンナ・シガレヴィッチ etc
映画『ピアニスト』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★★
[miho21]
映画『ピアニスト』 あらすじネタバレ(起承転結)
映画『ピアニスト(2001)』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『ピアニスト』 あらすじ【起・承】
ウィーンの名門音楽院でピアノの講師として働くエリカは、39歳にして母に逆らうことができず、帰宅時間からファッション、恋愛に至るまですべて母の言う通りに生きて来た。
抑圧された人生を送ってきたエリカは、母親に隠れてポルノショップに出入りし、夜の駐車場で他人の情事を覗くなどの性癖を持っていた。
少し異常な性癖を持っているという事以外はすべてに於いて真面目で、感情を表に出すこともなく鉄仮面のよう。
そんなエリカだったが、ある演奏会で出会った工学部学生の青年・ワルターと接するうちに変化を見せる。
生まれてこのかた異性と付き合ったことのないエリカは、若い魅力的なワルターに求愛されて動揺する。母親の抑圧のせいで異性と付き合うことが「よくない事」と思ったのか、慣れないためか、エリカは拒む。
しかしワルターはエリカを諦めず、彼女が働く音楽院を受験して合格した。元々ピアノの才能があったワルターは、エリカに会うためだけに音楽院に入ったのだ。
音楽院の学生の演奏会を控え、その日はリハーサルが行われていた。エリカの生徒もピアノを弾くことになっていたが、その女子生徒は極度に緊張していた。ワルターは緊張をほぐすために彼女に優しく接する。
それを見ていたエリカは、嫉妬のあまり彼女のコートのポケットに割れたグラスの欠片を入れ、怪我を負わせてしまう。
騒ぎの中エリカは女子トイレに駆け込むが、ワルターが追ってきてエリカを抱きしめる。エリカはついに拒むことはせず、キスを受け入れて口と手で性行為を行う。だが、ワルターが自分に触れることを許さず、微妙な空気になって失敗する。
しかし、エリカがすっかり自分の想いを受け入れてくれたと思ったワルターは「次はうまくいく」と前向きにとらえる。

映画『ピアニスト』 結末・ラスト(ネタバレ)
個人レッスンの場で、ワルターは今後の二人について嬉しそうに提案するが、エリカはただ手紙を渡す。これを読んでどうするか決めてほしいという。
しかしその夜、手紙を読まないままワルターはエリカの自宅に押し掛ける。
自室に閉じこもって母親を遠ざけ、そこでワルターに手紙を読むように言う。「顔を殴れ」「紐で縛れ」「尻を舐めろ」「全裸で顔の上に座れ」などという、マゾヒスティックな「ルール」の数々に、ワルターは幻滅してしまう。そのままエリカに蔑みの言葉を放ち、出ていく。
エリカはワルターの許しを請うため、アイスホッケーをするワルターを訪ねる。ここでも自ら口での奉仕をするが、嘔吐してしまいさらに幻滅される。
消沈していたエリカの元に、突然ワルターが訪ねてくる。ワルターはエリカの希望通りに母親を閉じ込め、顔を殴り罵りながらエリカを犯した。
想像していたものとは全く違う現実にエリカはただ恐怖し、泣くばかりだった。
演奏会当日。目元に赤いあざが残ったまま、エリカは出かける支度をする。鞄の中にナイフを忍ばせた。
家族や生徒との挨拶を済ませ、会場に入る観客の中からワルターを探して待つが、現れたワルターは何事もなかったかのように明るく挨拶して他の生徒と会場に入って行った。
黙って見送ったエリカは、鞄に忍ばせたナイフを取り出して左胸に一突きし、そのまま外に出ていくのだった。
映画『ピアニスト』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ピアニスト(2001)』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
超問題作
タイトルとパッケージだけでは、こんな映画だとは思いもつかない。ラブロマンスだと思って観たらとんでもなく難解で苦痛なものだった。
全編通して観ていて居心地が悪く、苦痛でしかない。ワルターの明るさがせめてもの救い。
今でいえば、エリカの母親は娘に依存する毒親でしかなく、どれほどつらい人生だったかはよくわかる。仕事中に何度も電話をかけてきたり、娘が買った服を「こんなもの着るべきじゃない」と破ったり、ワルターと自室に閉じこもった後は「ここで娼館でも開けばいい」とあからさまにため息をついたり、観ていて殴りたくなるくらいひどい。
生活もピアノも全部母親の言う通りこなしてきたエリカがああいった性癖に走るのも理解できないことはない。
ラストシーンで、自ら左胸をナイフで突くところは印象的である。常に無表情のエリかが、突然鬼の様な形相になり胸を突くのである。その間、映像は無音で、その後に続くエンドロールも無音。最近では『アメリカン・スナイパー』のエンドロールが無音だったことが異例として取り上げられていたが、それよりもこっちの方が印象的である。最後まで苦痛。解釈は観る人によるとは思うが、言い方は悪いが結局投げっぱなしである。
エリカが刺したところは心臓からは離れていて、肩に近く、あれで死ぬのかどうかは疑問だが、自ら刺すことには意味があったと思う。そのまま演奏会も何もかも放り出して出ていく。全てを放棄したエリカはやっと母親から解き放たれて自由になり、ワルターとも別れを告げたのである。
イザベル・ユペールの演技があまりにリアルで、終始息が詰まりそうでした。母との共依存的な関係や性的倒錯、社会的地位とは裏腹な内面の脆さなど、エリカの人物像がとにかく痛々しくて目が離せませんでした。ラスト、自傷して終わるシーンは絶望的で、愛を知らなかった彼女の末路として納得できてしまうのが怖いです。(30代 女性)
異常な心理描写が徹底されていて、観ていて心がザラザラしました。エリカと母親との関係性、そしてワルターとの関係の崩壊…どれも一線を超えていて、ただの恋愛映画ではありません。性的倒錯というより、孤独と支配欲に苛まれた人間の崩壊劇のようでした。観終わったあと、しばらく誰とも話したくない気持ちになりました。(20代 男性)
ピアノの静かな音色と、登場人物たちの心の激しさとの対比が印象的でした。クラシックの厳格な世界の中で、抑圧された欲望があふれていく様がとてもリアル。エリカの抱えるトラウマや、他者との距離感の壊れ具合に共感はできないけれど、理解しようとしてしまう自分がいて、観ている間ずっと不安でした。(40代 女性)
性に対してここまで生々しく描いた映画を初めて観ました。決してエロティックではなく、むしろ人間の狂気と孤独を感じる恐ろしい作品。エリカが自分の欲望をコントロールできず、最終的に自己破壊に至る過程は、観る者に多くの問いを投げかけてきます。全く救いはありませんが、深く記憶に残る映画です。(50代 男性)
「芸術の裏にある病的な精神」というテーマが見事に描かれていました。母親との関係を見ていて、自分も毒親の影響で苦しんだ過去を思い出しました。ワルターのような人間にすら自分の心を委ねられなかったエリカは、可哀想というより、もう取り返しのつかないところにいたんだと感じました。痛々しくも見事な作品です。(30代 女性)
純愛のつもりで見始めたら、全く違いました。最初は孤独な女性の話かと思いきや、エリカの異常な行動にどんどん引き込まれていきました。SM的な欲望、暴力的な愛情のやり取り、それらがクラシック音楽の静寂と交差して、まるで悪夢のような映画体験でした。イザベル・ユペールの表情の演技がすごすぎて鳥肌モノです。(20代 男性)
ラストでエリカが自分を刺すシーン、正直衝撃でした。あれほどの知性と技術を持ちながら、自分を愛せない人間の末路として、あまりにも象徴的でした。フランス映画らしい静かな狂気が漂っていて、観たあと重い空気が残る。でもその重さがこの映画の価値だと思います。静かに、でも確実に心を揺さぶる傑作。(40代 男性)
人間の心の奥にある「誰にも見せたくない部分」をあえて見せつけてくるような作品でした。観ていて不快だったし、理解できない部分も多かったけれど、それでも目をそらせませんでした。芸術と狂気は紙一重というテーマが全編に流れていて、観るたびに新しい発見がありそうです。怖いのに、また観たいと思ってしまう作品。(50代 女性)
女性の視点から見ると、エリカの悲しさがとても伝わってきました。母の支配、自分の欲望との葛藤、そして最後にはそれすら受け入れてくれると思った相手にも拒絶される。自分が自分でいられない苦しさって、女性には特にわかる気がします。美しくも地獄のような映画。静かな演出が、かえって痛々しさを際立たせていました。(20代 女性)
映画全体がまるで一曲の不協和音のようでした。クラシック音楽の背景に流れる、不器用で破滅的な人間の感情が痛々しくも美しい。ワルターとの関係は恋愛とは呼べないし、エリカは常に孤独で、自分を壊すことしかできなかった。その極限を描き切ったハネケ監督の冷徹さには脱帽です。芸術として、深く胸に残る作品でした。(30代 男性)
映画『ピアニスト』を見た人におすすめの映画5選
『ある女流作家の罪と罰』(2018)
この映画を一言で表すと?
「追いつめられた女性が、文学と嘘で生き延びる」
どんな話?
落ち目の作家が生活のために著名人の手紙を偽造し、次第に嘘の世界へとのめり込んでいく。実話をもとに描かれた、孤独とプライドが交差する心理ドラマ。
ここがおすすめ!
『ピアニスト』のように、知性と抑圧がもたらす破滅的な衝動を丁寧に描いた作品。抑えられた演技の中に燃える感情が滲み出る、濃密な人間ドラマです。
『エル ELLE』(2016)
この映画を一言で表すと?
「暴力と欲望を支配する、“強い女”のミステリアスな逆襲劇」
どんな話?
ゲーム会社の女性経営者が自宅で暴漢に襲われたことをきっかけに、加害者を突き止めるべく冷静かつ大胆な行動に出る。心理的サスペンスが張り詰めた一本。
ここがおすすめ!
『ピアニスト』同様、痛みや欲望をコントロールしようとする女性の姿が強烈な印象を残します。複雑な内面と倒錯的な関係性に興味がある方に必見の作品です。
『アンチクライスト』(2009)
この映画を一言で表すと?
「愛と罪が絡み合う、魂をえぐるダークな愛の形」
どんな話?
子供を亡くした喪失感から逃れるため、森の中の小屋に滞在する夫婦。癒やしのはずが、次第に彼らの関係は狂気と暴力へと傾いていく――ラース・フォン・トリアーによる衝撃作。
ここがおすすめ!
『ピアニスト』と同じく、性的な抑圧と精神的崩壊がテーマ。美しくも不穏な映像と極限までの人間描写が、観る者の心を試すような体験を提供します。
『聖なる鹿殺し』(2017)
この映画を一言で表すと?
「完璧な家庭に忍び寄る、神話的で不可解な“裁き”」
どんな話?
完璧な生活を送っていた外科医のもとに現れた一人の少年。その存在が徐々に家族の運命を狂わせていく。ヨルゴス・ランティモス監督による不条理スリラー。
ここがおすすめ!
道徳や正義が歪められる中で、人間の本質があぶり出されていく異質な空気感。『ピアニスト』の不穏な心理劇を好む方に、じわじわと心を締めつける一作です。
『危険なメソッド』(2011)
この映画を一言で表すと?
「精神分析と欲望が交錯する、実在の三角関係」
どんな話?
フロイトとユング、そして彼らに関わる女性患者──精神分析の誕生と共に、欲望と知性が火花を散らす。歴史と心理が交錯する知的ドラマ。
ここがおすすめ!
『ピアニスト』と同じく、欲望と支配の境界が曖昧になる濃密な人間関係が描かれています。エロスと知性がせめぎ合う、静かで濃厚な一作です。
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