映画『世界にひとつのプレイブック』の概要:妻の浮気で心のバランスを崩したパット。夫の死によって誰とでも寝てしまうティファニー。でこぼこな2人は一緒にダンスコンテストに挑戦する。笑いあり涙ありの傷ついた男女が贈るハートフルコメディ。
映画『世界にひとつのプレイブック』の作品情報
上映時間:122分
ジャンル:コメディ、ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:デヴィッド・O・ラッセル
キャスト:ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィーヴァー etc
映画『世界にひとつのプレイブック』の登場人物(キャスト)
- パット(ブラッドリー・クーパー)
- 躁鬱病に苦しみ精神病院から退院したばかり。妻のニッキの浮気が原因で心のバランスを崩す。接近禁止令が出ているのに会いに行こうとしたり、ニッキをまだ愛していると言い張る。そこにティファニーが現れ、彼は変わっていく。
- ティファニー(ジェニファー・ローレンス)
- 旦那を事故で失い、そのショックから職場の人間全員と寝てしまう。気性が荒くクレージーだが、傷ついたパットに手を差し伸べる。
映画『世界にひとつのプレイブック』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『世界にひとつのプレイブック』のあらすじ【起】
精神病院を退院するパット(ブラッドリー・クーパー)。家に帰ると、何も知らされていなかった父親は動揺している。別れた妻ニッキの為に勉強し体を鍛えるという。
朝の4時、読んでいた本を投げガラスを割る。父と母を叩き起こし、演説をはじめる。セラピーでの待合室、パットが大嫌いな曲が流れていた。本棚をひっくり返し、曲を止めようとする。わざと曲を流していた精神科医。
仕事が終わり、早めに帰宅したパットは、妻と歴史の教師がシャワーを浴びながら体を重ねているのを見てしまった。妻の浮気が彼の心を粉々にした。そこでかけられていた結婚式の曲。パットは躁鬱病と診断され、休養中だ。
ランニングをしていると校長を見つけた。怯えながら逃げる校長を追いかける。家に帰ってニッキに電話をかけようとする。それを止める両親と揉み合いになっていると、家に警官が来た。パットには接近禁止令が出ている。薬を飲ませて大人しくさせたいが、聞く耳をもたない。
友人ロニーのパーティーで、妻の妹ティファニー(ジェニファー・ローレンス)を紹介された。最近彼女は仕事をクビになってしまったと言う。ティファニーの社会性の無さに同じものを感じ取ったパット。ティファニーは姉の制止を振り切ってパットを連れて帰ってしまう。
ティファニーに誘惑され、それを断ると泣きながら抱きつかれた。ビンタをして帰ってしまう。破天荒な彼女に衝撃をうける。それをきっかけに心のバランスを崩したパット。大声で叫ぶパットに近所中の人間が目を覚ます。そこに通報を受けた警察が現われた。
映画『世界にひとつのプレイブック』のあらすじ【承】
薬を飲むパット。自分の顔と父親の顔は傷だらけだ。ランニングをしているとティファニーが突然現われた。彼女が苦手なパットは逃げ回る。夫と死別したティファニーは友達が欲しかった。
医者のセラピーを受けるパット。医者はティファニーと友達になれば、社会性が回復した証明になると言われ、彼女を食事に誘う。すべてはニッキに会うためだと自分を納得させる。
そこでティファニーはニッキに手紙を渡すと約束した。気分がいいパットはなぜティファニーが会社をクビになったのか聞いた。ティファニーは同僚全員と寝たらしい。それがトラブルとなり、会社を追われた。その話を全部聞いたパットは、「俺は君よりマシ」だと言い放った。心を開いたティファニーを突き放すパット。
食事をすべてひっくり返し、店を飛び出したティファニー。怒りが収まらず人が多いところでパットをストーカーと罵る。そこに警察が現われた。最悪のタイミングで結婚式のBGMが流れパニックになるパット。それを見かねたティファニーは彼を介抱した。同じ痛みを持つ2人の距離が近づいて行く。
映画『世界にひとつのプレイブック』のあらすじ【転】
パットはティファニーの家を訪れるが、母親に追い返される。そこにティファニーと交際していると言い張る男性が現われた。ティファニーは未だに寂しいと男性を誘惑してしまう病気が治らない。変わりたいと言ったティファニーを信じたいパットは、うまい言葉で男性を追い返す。部屋の奥に隠れていたティファニーはパットの後を追った。
2人の会話は支離滅裂で感情のぶつかり合いだ。喧嘩の延長でダンス大会に出る事になってしまう。
家に帰ると兄がいた。パットと違って優秀な兄はパットに突っかかる。この病気はあまり人に理解してもらえない。いつもは暴力で解決して来たパットは冷静に兄の言葉を流した。
ティファニーとのダンスレッスンがはじまった。恋に傷ついた2人はお互いを支えながら癒されて行く。ある日ティファニーの着替えを見てしまったパット。ニッキ一筋だった心が動揺する。
精神病院で仲良くなった友人が退院して2人のダンスを見学に来た。2人には足りないものがあると言う。彼の持ち味の明るさで、固かった2人のダンスが変わっていく。
部屋で横になっていると父親が部屋に入って来た。泣きながら父親が訴える。昔からイーグルス狂いの父親が苦手だった。父親はただ息子と一緒に試合を見たかった、一緒に時間を共有したかっただけなんだと言った。イーグルスはただの口実だったのだ。兄とも和解してほしい父親は全財産を試合の賭けにつっこみ、望みを運に託す。
映画『世界にひとつのプレイブック』の結末・ラスト(ネタバレ)
2日間で大技を完成させる。ニッキの手紙をちらつかせるティファニー。どうしても手紙が読みたいパットに折れて、手紙を差し出した。その手紙には気持ちはうれしいけど会えない事が綴られていた。落胆して練習を切り上げて帰ってしまうパット。
ついにイーグルスの試合の日が来た。ある団体が兄につっかかって喧嘩になってしまう。喧嘩はしないと父親と約束したパットは我慢するが、兄を助ける為に相手に掴みかかる。
試合にも負けて、自分の息子は大げんか。怒鳴り散らす父親を遮って女性が突っ込んで来た。練習をすっぽかされて激怒したティファニーだ。ダンス大会と次のイーグルス戦は同じ日。気が立っている父親とティファニーは大金を賭けてしまう。外に飛び出したパットはニッキの手紙を読んでいると、あることに気づいてしまう。
ダンス大会当日。ティファニーは自分の姉夫婦とニッキが会場に来ているのを見てしまう。取り乱すティファニーはバーでお酒を頼んでしまう。イーグルスの勝利をテレビで確認した父親飛び上がって喜ぶ。もうあとには戻れない2人はステージに立った。
得点の発表で平均点は5だった。パットの父親の勝利だ。全員で抱き合う。喜びはつかの間、パットはニッキの元に行ってしまった。それを見てショックを受けたティファニーは会場を飛び出してしまう。
パットはティファニーを追いかけて手紙を渡した。そこにはティファニーを愛していると書かれていた。代筆に気づいたと同時に、自分の気持ちに気づいていた。
おれはみんなに支えられて、助けられた。幸せな男だ。
映画『世界にひとつのプレイブック』の感想・評価・レビュー
感情に向き合えず、人生を自分のもとに取り戻せない人が大勢いる。それをうまく表現した作品だと思います。だからこそ、世界で評価されたのでしょう。
パットもティファニーも、なりたい自分や本当の感情に気が付いたときに幸せを感じることができました。帰ってこないニッキや、寂しさを埋めるため他の男性に逃げていた時には分からなかったことです。自分を分かってこそ、幸せを理解できるんですね。
ティファニー役のジェニファー・ローレンスは可愛くて魅力的だなあと、女性から見ても思いました。(女性 20代)
この映画のジェニファー・ローレンス演じるティファニーのアンニュイな怒ってるような悲しんでいるような表情に心を奪われてしまった。
ただのロマンス映画だとは思ってほしくない。どちらかといえば、崩壊した男女が出合い、人生を再起するヒューマン映画だと思っている。これを観ると、たとえ人生つまずいたとしても、きっと立ち直れる、そんな前向きになるエッセンスが多く含まれている。
静かに心に浸透して、大丈夫と言いかけてくれる映画だ。(女性 20代)
ブラッドリー・クーパー主演のヒューマンドラマです。
大切な人を亡くした男女の心情を軸に構成されます。途中で笑ってしまうようなシーンもあるものの、扱っているテーマはズッシリ重みがある。決して暗いだけの映画では終わらせない。そのバランスが絶妙に取れている良作です。
ジャンルにコメディ、ラブストーリー、ヒューマンドラマとありますが、本当にいろいろな要素がうまくブレンドされており、鑑賞後に笑みが漏れました。
人生につまずいたとき、絶望したとき、そんな時でも前向きで生きていくことの意義を教えてくれる作品です。
イライラして他人に当たってしまうような時も、一旦落ち着いてこれを観ましょう。きっと人に優しくなれます。(女性 20代)
傷つき過去を引きずる男女が出会い、前に進むためにダンス大会に挑む。全く気が合わずチグハグで自分勝手な2人に少しイライラするところがあるが、そんな不器用すぎる2人が1つの目標に向かって回り道をしながらも頑張っているところを見ていると応援したくなってくる。それに何だかんだ優しい周りの人たち、心が温かくなる。ジェニファー・ローレンスとブラッドリー・クーパーが美男美女すぎて眩しい&そして久しぶりに見たクリス・タッカー。疲れた時にゆったりと見たい映画。(女性 30代)
このようなロマンチックコメディの作品がアカデミー賞にノミネートされるのは珍しいような気がする。総じてとても楽しめる作品だった。内容は深刻な部分が多いが、極端に深刻化させないで、クスっと笑えるユーモアを盛り込みとても観やすい。クールな役を演じるイメージがあるブラッドリー・クーパーにしては落ちこぼれた人間の役を演じていて新鮮さがあった。そんな彼をサポートするティファニー役のジェニファー・ローレンスのバイオレンスには目を見張った。ダンスはうまくいくのだろうか。賭けの結果はどうなるのだろうか。全ての結果が分かった時、自然と涙が溢れた。(男性 20代)
お互いに重い過去や、暗い背景を持つパットとティファニー。どことなく、暗い雰囲気から映画が始まる。精神的な病気と戦う二人はだんだん打ち解けていき、ダンスをきっかけに前向きに生きていけるようになっていることに気づく。少しずつ感情の変化にも気づき始め、そこからまた新しい生活が始まっていくのではと、とても明るい前向きな未来が予測される。暗い印象からだんだん生き生きとした表情を取り戻していく二人の変化を、応援したくなるような映画だ。(女性 30代)
前半かなり痛々しい。米英の映画で精神疾患のある人を描いたものにありがちな痛々しさというか、なにかにつけて暴力的になられるのがちょっと辛い。しかしそれはもしかしたらこちらが実際にそういった方に出会ったことがないからかもしれない。知らないから怖く感じるが、病気である以上自分を含め誰もがなる可能性があることは頭の片隅に置いておいた方が良いのかもしれない。
前半耐えると後半はむしろ美しいほどの恋愛ドラマになっていく。この解放感は辛い時期あってこそのもの。大団円を迎えるまでは頑張らないとね。(男性 40代)
一歩前に進む勇気と、明るい未来が待っているという希望を貰えるような素敵な作品でした。愛する人を失った2人と言うだけで十分な設定なのに、それぞれセックス依存症と躁鬱病という心の病を抱えているのでかなり重めのストーリーを覚悟しましたが、2人が少しずつ前を向き、自分らしさを取り戻していく姿は物凄いパワーと勇気をもらえました。
正直、2人にイライラするシーンが沢山あるし、2人もイライラしているのですが、それ以上に愛が深くて最終的には生きるって素晴らしいと感じさせてくれる作品でした。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
正直に言うと痛々しい部分もあったが、そんなことが気にならないくらい、パワフルで逆にエネルギーをもらえるような物語だった。傷を抱えたパットとティファニーが、ぶつかり合いながらも生きるために必死に前を向こうとする姿に胸を打たれた。人生のどん底に落ちたって、明るい未来が待っているかもしれないと思わせてくれる力が作品にあった。パットとティファニーの激しいやり取りに思わず笑ってしまうこともあり、楽しめた。ダンスシーンもとても素敵で、おすすめの作品。
①ボロボロの二人の姿に心打たれる
日常に過ごしている上で、誰もが時には辛い経験をして傷つき、ボロボロになってしまうことがある。この物語の二人もそんな経験の持ち主だ。一人は妻が浮気していたことから、浮気相手への暴力へ。もう一人は亡くなった夫へのショックから、職場の同僚全員と寝てしまうという始末。受けた傷も、それへの行動も全く違う二人だけれども、一つ共通するのは愛する誰かを失ったという事。この物語はそんな二人の傷が少しずつ癒えていく姿を描いた作品です。
といっても、登場する二人の姿はとってもパワフル。傷ついたことによるショックやダメージは周りから見たら訳が分からない奇行やコミュニケーションに発展しています。そんな二人の姿は見ている観客にとって「傷ついて可哀想」「辛いよね」という同情の気持ちではない共感を得ます。
②二人も、周りの人もみんなおかしい
主人公のパッドは心の傷から、双極性障害という病気に。ティファニーはsex依存症という病気になる。医者からは薬を処方され、運動することでバランスを保とうとし、時にハイテンションに、時に悲観的な状態を繰り返していったり、警察を呼ばれたり、そんな心の病からのおかしさだけを描くのがこの作品ではないし、心の病の暗さを描くような作品でもない。パッドの父親は友人とギャンブルばかりにはまっていて、病的なほど賭けている。パッドの男友達は妻の尻にひかれっぱなしで、家では全然自由に振る舞えない。パッドのカウンセリングを請け負う医師も、真面目で誠実な人と思っていると、思わぬ一面も。
心の病だからと言って、それを抱えている人だけがおかしいのではない、皆それぞれにおかしさを持っていて、それが人との関係の中で許され合っているのだ、そう思えます。
③主演の二人を演じきった俳優の思い
パッドを演じたのは、「ハングオーバー」シリーズや「アメリカンスナイパー」といった映画で有名なブラッドリー・クーパー。ティファニーを演じたジェニファー・ローレンスはこの映画がきっかけでアカデミー主演女優賞を受賞。
映画の中で描かれる奇行や珍妙な二人のやり取り、怒りや悲しみといった幅が広い感情のぶつけ合い、そして二人で行うダンスシーン。それらを演じきった二人の活躍無くして、この映画の面白さはなかっただろうと感じる。
二人の演技をぜひ、実際に映画を見て楽しんでください。
主人公が心の病を抱えている設定や、ダンスコンテストに参加するというストーリーを聞くと、暗い話やスポ根物のイメージを感じたのですが、ダンスはあくまでも二人の共同の成果として描き、映画の中では二人の心の状態を丁寧に描写していました。主人公の感情も、病によって起きる状態も、それらに振り回される周りの人々達の感情も、人の感情というものに対して正面から向き合い、描写した作品でした。二人が少しずつ前へ向かっていく姿を映画全体を通して描いてくれています。