映画『僕らの先にある道』の概要:大都市に夢を抱く男女が出会ってから、つかず離れず過ごした10年間。再会した際に振り返った思い出話に乗って展開する物語。台北金馬影展では新人監督賞など5部門にノミネートされている。
映画『僕らの先にある道』の作品情報
上映時間:119分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、青春
監督:レネ・リウ
キャスト:ジン・ボーラン、チョウ・ドンユイ、ティエン・チュアンチュアン etc
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映画『僕らの先にある道』の登場人物(キャスト)
- ジエンチン(ジン・ボーラン)
- ゲーム制作の夢を抱き、北京の大学に通っていた青年。実家に一人父親を残し、シャオシャオと出会ったことを機に北京に残り続けている。
- シャオシャオ(チョウ・ドンユイ)
- ジエンチンと同郷で、大都会に憧れを抱き一人暮らしている。経済的に余裕のある暮らしや大きな家を持つことを目標にしているが、ジエンチンと出会い変わり始める。
- ジエンチンの父親(ティエン・チュアンチュアン)
- 田舎町で小さな飲食店を営んでいる。年越しだけ帰ってくる一人息子を心待ちにしている。
映画『僕らの先にある道』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『僕らの先にある道』のあらすじ【起】
2007年の大みそか。混みあった列車で乗車券を失くしたというシャオシャオに、「これ君の?」とジエンチンが助け船を出した。出身地が同じだった二人はすぐに意気投合した。しかし電車は悪天候により運転再開が見込めない状況。シャオシャオは突如、電車を降りて歩こうと提案した。一本のマフラーで繋がりながら、白銀の世界を二人は歩いた。
そして2018年の旧正月前、二人は飛行機で再会する。この時も悪天候でフライトは欠航。出会いから10年、お互いの時間を振り返り始めた。
父親を亡くし、母親が海外に住んでいるため一人で年越しする予定だったシャオシャオ。ジエンチンは実家に招待するのだった。親戚総出で食卓を囲み年越しをするジエンチン家。大人数で過ごす時間を満喫したシャオシャオ。北京に住むという夢を抱え、怖いものなしに働き詰めるシャオシャオと、大学を出たら北京に残り仕事をすることが目標のジエンチン。二人は明るい未来を語り合うのだった。
大学卒業後、ジエンチンは北京の家電量販店に勤めていた。シャオシャオも同じ職場ではあったが、ネットで知り合った公務員の恋人がいた。シャオシャオとは釣り合わない恋人の存在に複雑な思いを抱いているジエンチン。ある日、シャオシャオは大卒ではないという理由から恋人の母親に交際を反対され、家を追い出されてしまった。行く当てがないシャオシャオは、ジエンチンの家に居候させてもらうことにする。決していい環境ではない住まいで、夜になると隣の部屋からは激しい声が漏れてくるのである。職場では仲間が次々と堅実な仕事を掴み離れていった。そんな中、ジエンチンは路上で違法のDVDを売りながら小遣い稼ぎをしていた。
映画『僕らの先にある道』のあらすじ【承】
シャオシャオに新しい恋人ができた。家を出るというシャオシャオを心配するジエンチン。年越しだというのに、一人過ごすシャオシャオを見兼ねて一緒に街に出ると、家族と過ごす恋人の姿を見つけてしまった。この年の年越しも一緒に過ごすことになった二人。我慢していたタバコも解禁し、きっと成功すると信じた未来を誓い合った。そして新年を迎えたタイミングで初めてキスをしたのである。しかし、シャオシャオが突然家を出た。恋人になれたと思っていたジエンチンは、シャオシャオの気持ちが読み取れず困惑する。
しばらく経って、「好きな人ができた」と何事もなかったようにジエンチンの家を訪ねたシャオシャオ。しかし、ジエンチンの姿はそこにはなかった。隣人から、海外版の違法DVDの取り締まりにあい、逮捕されたことを聞かされたシャオシャオはすぐに刑務所へ向かうも面会はできなった。その年の大晦日、シャオシャオは逮捕され帰省できないジエンチンの代わりに、一人でジエンチンの実家へ出向いた。「希望通りにゲームの仕事をしていて忙しく、帰省できない」と嘘をついて。ジエンチンの出所の日。実家でもらったきびだんごを持って、シャオシャオは迎えに行った。「私みたいな特別な子、逃がしたら他に居ない」と遠回しに告白したシャオシャオ。再び二人は付き合い始めたのだった。
ホテルで思い出話をしながら過ごす二人。ジエンチンの携帯に息子からテレビ電話で連絡があった。気を利かして外に出たシャオシャオは、白銀の世界で手を大の字に広げていた。その様子を見たジエンチンは、お金持ちになると誓った日を思い返していた。
映画『僕らの先にある道』のあらすじ【転】
時間の融通が利くコールセンターで働き始めたジエンチンと、ジエンチンがゲーム制作に力を入れられるよう安定した営業職に就いたシャオシャオ。翌年の年明け、学生時代の友人たちと集まりがあった。安定した仕事と家庭を築いている友人たちの前で、必死に見栄を張るジエンチン。酔いつぶれたジエンチンをシャオシャオは実家へ連れて帰った。労わってくれる父親に対して、素っ気ない態度で帰省したことを悔やむジエンチン。
帰りの車はシャオシャオが運転をした。シャオシャオは自分のためにお金や名誉、家を手に入れようと必死なジエンチンに対して、無理をしないでほしいと実は思っていることを正直に打ち明けた。期待されていないのではないかと逆上したジエンチン。翌日も仕事中に電話口で暴言を吐いてしまい、酒に酔い明かすのである。シャオシャオも何のために仕事をしているかわからなくなってきていた。
家賃を滞納してしまい、引っ越すことになった二人。思い出のソファーも手放すことになった。その年の年越し、実家には帰らなかった。大勢の親戚で過ごしていた父親は、友人と二人で過ごしていた。
何も話してくれなくなってしまったジエンチン。変わり果てた恋人の姿にしびれを切らし、シャオシャオは別れを決意した。気付いたジエンチンは必死に追いかけたが、電車に乗ったシャオシャオを引き留めることができなかった。10年経った二人は、この時のことを「もしもお互いが違う選択をしていたら」と振り返る。ジエンチンを手放したことを後悔しているシャオシャオ。散々シャオシャオを傷つけてきた自覚があるジエンチンは、「後悔する資格もない」と自分を責めた。それはシャオシャオを失った時から変わらなかった。
映画『僕らの先にある道』の結末・ラスト(ネタバレ)
別れを悔やむより、今できることを選んだジエンチン。シャオシャオのおかげで溜め込めたゲームのアイディアを形にするために、ジエンチンは必死になった。楽しかった日々と後悔をゲームのフレーズに生かしながら。そのゲームは見事にヒットし、大きなゲーム会社と契約を結んだ。
念願の家を買うために物件を見ていたジエンチン。営業の女性の姿にシャオシャオを重ねていた矢先、思い出のソファーが運ばれていくところを見かけた。ジエンチンは父親にシャオシャオのことを聞かれていると理由を付けて、その年の年越しはシャオシャオと一緒に実家へ戻った。北京で一緒に暮らそうと父親に提案したジエンチンだったが、田舎暮らししか知らない父親は不器用に断った。その様子を見ていたシャオシャオは、「理想の暮らし」は過去に描いていたものとは違うと、ジエンチンに助言し別れた。2015年になり、ジエンチンは妻を連れて初めて帰省した。目が悪くなった父親は、妻をシャオシャオと呼び手料理を振る舞った。
レンタカーを借りて、ホテルから北京を目指した二人。一緒に過ごした時間の中で別れたときは、いつも慌ただしかったというシャオシャオ。きちんとお別れをしようと提案した。面と向かって「さようなら」と言い合った二人。ジエンチンは「幸せになろう」とずっと言えなかったことをついに伝えられたのだった。
後日、シャオシャオに一通の手紙が届いた。ジエンチンの父親の遺品から出てきたシャオシャオに宛てた手紙である。ジエンチンの妻の手を握った時、父親はシャオシャオではないことに気付いていた。別れていても、息子を大人にしてくれたシャオシャオを「家族」だと呼び、いつでも帰っておいでというその手紙に背中を押され、シャオシャオは新たな一歩を踏み出すのである。そしてジエンチンも遺品の中のレシピを大切にし、年越しにはきびだんごを家族に振る舞うのである。
映画『僕らの先にある道』の感想・評価・レビュー
「ごめん」の一言は大切な人を失う前に、「愛してる」の一言はまだ間に合ううちに。わかり切っていることがすごく難しい。急速に変化する大都会の北京に身を寄せた二人の若者が、時代に翻弄されながらも生き抜く二人の姿は、どこか自分に重ねてしまう部分があった。「家族」という替えのきかない存在も、もちろん時代の変化に伴い変わっていく。取り残されたように孤独になっていく父親の姿には耐え切れず涙が止まらなかった。すごくシンプルな構成だが、恋愛と家族の愛情について考え直したくなる物語である。(MIHOシネマ編集部)
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