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映画『精神0』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『精神0』の概要:2008年に世界の映画祭で称賛された映画「精神」から10年。映画作家の想田和弘が再びカメラを掲げ、82歳を迎えた精神科医・山本昌知の「引退」と妻の芳子を見届ける一作。

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映画『精神0』の作品情報

精神0

製作年:2020年
上映時間:128分
ジャンル:ヒューマンドラマ、ドキュメンタリー
監督:想田和弘
キャスト:山本昌知、山本芳子 etc

映画『精神0』の登場人物(キャスト)

山本昌知
精神科医として、岡山の田舎町で多くの患者を受け入れている。長年通う患者が多く、依存に近い状況になっている者も少なくない。しかし、往診も辛くなった82歳に突如引退を決めた。
山本芳子
山本医師の妻。前作「精神」の撮影時にはハツラツとした姿で夫を引っ張っていたが、軽い痴ほう症と自由の利かない身体に俯くことが増えていた。

映画『精神0』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『精神0』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『精神0』のあらすじ【起】

精神科医・山本昌知が与えた「0の魅力」という言葉を力に自分を変えようともがく一人の患者がいる。物欲を抑えきれないその患者は、山本医師とのカウンセリングの度に内容を撮りため、欲に負けそうになった時のおまじないのように繰り返し聞いているという。二人は、ゆっくりと言葉を交わしながら、時間を共にする。「今生きているだけで、ありがたい」と思える日が心の健康のために大事だと伝えるのだった。

山本医師は現役を退く決意をしていた。多くの患者と会話してきた山本医師は、患っている人の方が耐えている量は多いというのに自分を選んでくれたことに感謝しているという。

引退前、地元での最後の公演に登壇した山本医師。実は右肩を脱臼した時、不自由な体に嫌気がさし鬱々とした日々を過ごしたという。そんな時に周りから運動や気分転換を勧められ、できないことへの苛立ちを知った山本医師は患者の気持ちを理解したという体験談を冗談交じりに話すのだった。

中には山本医師の引退を受け止めきれない患者も多い。担当医である山本医師の体調を気遣った手紙を綴ってくる者もいれば、不安をぶつける者もいる。15年以上、山本医師を頼っている前田という男性もその一人だった。どんなに遠く離れても通いたいという前田さん。しかし山本医師の引退の決意は揺るぐことはない。患者たちを他の医師に繋ぐまでのサポートをどうすべきか頭を抱えるのだった。

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映画『精神0』のあらすじ【承】

生活保護指定医である「大和診療」には経済的に苦しい人が頼ることも多い。人生の半分以上、精神科に通っているある男性もその一人である。心の病気も経済的にも心配して話をじっくり聞いてくれる山本医師以外に診てもらうのが怖いと不安をぶつける。マニュアル通りの診断に不信感を持つこの男性は他の病院にかかることはできないという。山本医師の後任医師にまだ会えていないこの男性は、なんとかして一緒に挨拶して欲しいと涙を浮かべるのだった。

20年近く夫の付き添いで通っている一人の主婦。手土産にお好み焼きを持ち寄り、山本医師との出会いは「運命」だとこれまでの感謝を述べる。その話を聞いている夫は、横で涙を浮かべながらも笑顔を見せようとしていた。人に尽くした分、自分の妻に時間を使うよう諭し、夫婦は笑顔で診療所を出るのだった。

看護師のサポートの元、遅くまでカルテを整える山本医師。患者はもちろんのこと、妻の危うさからも目が離せない生活を送っている。

映画『精神0』のあらすじ【転】

撮影クルーを労おうと、自由が利かない身体に鞭を打ちながらお茶菓子を振る舞う山本夫婦。妻・芳子は犬の声がすると徐に玄関に向かうも、その姿はなかった。冗談を交えながら、客を気遣う芳子。

山本医師がどこかに連絡している間、芳子は馴れ初めを話してくれた。中学からの同級生であった二人。実はあまり勉強は得意でなかった山本医師と対照的に、芳子はいつも成績が一番だったと二人はにこやかに話すのだった。

10年以上この夫婦を追っている撮影クルーは、ハツラツと動き回る芳子の姿を思い返した。元々はせっかちなほどに人の世話をする人なのである。年齢と共に静かになった芳子は、丸まった背中でうつむきがちに日々を過ごしていた。

仕事をしながら家事を担う山本医師。往診に回るのが辛い体は、使った皿を洗うのも大きな負担となっている。そんな中でも山本医師は客人をもてなす気持ちを忘れない。そんな夫に寄り添う芳子は、指示を受けながら震えた手で懸命に手伝おうとするのだった。

映画『精神0』の結末・ラスト(ネタバレ)

山本医師の引退後、少し身の回りが落ち着いた頃に芳子の昔の茶道仲間を訪ねた。芳子との母親の話や、印象的であった出来事など、たくさん芳子に声をかけながら思い出話を繰り返す旧友。どんなに些細なことも覚えている旧友は、ハツラツとしていた頃に芳子から聞いた話を山本医師に伝えた。

患者を自宅に招き泊めることもあったという山本医師の方針に、文句を言わず寄り添っていた芳子。自分たちの2人の子供への影響を心配していた時期もあったという。義母のプレッシャーとも葛藤していた日々は、女性同士で話を聞き合い乗り越えてきたのである。この日は妻を支えてくれた存在に感謝を伝えに来たのであった。

山本夫婦のテーマは「共存」である。以前記録された映像には、不規則な夫の仕事に慣れてしまったと話す芳子の姿が残されていた。その頃を思い返すのが難しいほどに、芳子は衰弱している。山本医師は芳子の手を取り、息を切らしながら墓参りに向かった。座り込む芳子の横で、せかせかとお供え物の準備をする山本医師。二人は墓参りを終えると、再び手を取りゆっくり歩き出すのだった。

映画『精神0』の感想・評価・レビュー

「先生は中毒だ」と言う患者がいた。山本医師の患者に寄り添い穏やかに先を見据えさせる姿勢は、まさに「心の拠り所」である。心の病を中心に取り上げた「精神」から視点を変え、「人の老い」について恐怖心を取り除いてくれる作品となっている今作。産業に呑まれ、他者との比較に追われる日々には必ず良薬となるだろう。山本夫婦の後ろ姿は、「人生」というものを語るように遠くへ消えていく。この128分には映り切らない世界が無限に広がっていることを示唆されているようだった。(MIHOシネマ編集部)


引退を決意した精神科医とその奥さんの日常を描いた今作。老いることは誰にでも同じように訪れるものだし、彼らよりも短い人生しか生きていない私が何か意見するのはとても失礼なことだと思いますが、先生もその患者さんもとても充実した幸せな時間を送れたのでは無いかなと感じました。
先生、患者、夫と妻。誰かがいるから頼れるし、頼ってくれる人がいるから頑張る力が湧いてくる。そんな当たり前のことを命を削るように精一杯教えてくれた作品です。(女性 30代)

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