空前絶後のディスり合いが、まさかの映画化。原作の発表からおよそ30年の時を超えて、日本でもトップレベルの「何もない県」埼玉を徹底紹介!主演に二階堂ふみやGACKTなどのそうそうたるメンバーを揃え、魔夜峰央の未完漫画『翔んで埼玉』が暴れまくる。
映画『翔んで埼玉』の作品情報
- タイトル
- 翔んで埼玉
- 原題
- なし
- 製作年
- 2019年
- 日本公開日
- 2019年2月22日(金)
- 上映時間
- 106分
- ジャンル
- コメディ
- 監督
- 武内英樹
- 脚本
- 徳永友一
- 製作
- 石橋隆
村松秀信
遠藤圭介 - 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- 二階堂ふみ
GACKT
伊勢谷友介
ブラザートム
麻生久美子
島崎遥香
成田凌
間宮祥太朗 - 製作国
- 日本
- 配給
- 東映
映画『翔んで埼玉』の作品概要
『花とゆめ』で1982年から1983年に掲載された幻の漫画『翔んで埼玉』は、漫画家・魔夜峰央によるコメディ漫画である。当時連載は3話のみであったが、30年経った現在、テレビやSNSで紹介され、爆発的な復刊を遂げる。映画化に当たり、原作の設定の良さを最大限に生かせる、強烈なインパクトのある役者を選定したとのことで、新進気鋭の若手俳優二階堂ふみとアーティストのGACKTが選出される。監督は、『のだめカンタービレ』や『テルマエ・ロマエ』などの作品で知られる武内英樹が担当。
映画『翔んで埼玉』の予告動画
映画『翔んで埼玉』の登場人物(キャスト)
- 壇ノ浦百美(二階堂ふみ)
- 東京にある超名門高校・白鵬堂学院の生徒会長。埼玉県を激しく嫌悪する。帰国子女麻実麗に恋心を抱く。
- 麻実麗(GACKT)
- アメリカへ留学していた帰国子女で、百美の楽員に転入生としてやって来る。麗しい見た目に都会的な物腰、更に文武両道の秀才で、実家は東京有数の証券会社の御曹司。
映画『翔んで埼玉』のあらすじ(ネタバレなし)
アジアの片隅にある島国・日本では、出身地や居住地によって激しい地域格差や差別が行われていた。その中でも最たる県が、関東の中央内陸部に位置している「埼玉県」。埼玉県民は、隣の東京都へ行くにも通行手形がなければ入都できず、持たないものは強制送還される仕組み。
その東京にある、超名門高校の白鵬堂学院では、金髪のキリっとした目鼻立ちをした生徒会長・壇ノ浦百美が、生徒たちを日々まとめ上げていた。そこへある日、1人の転入生がやって来たことで物語は幕を上げる。
転入してきた彼の名前は麻実麗。容姿端麗・文武両道・都会的な物腰に加え、実家は都内でも有数の証券会社。家の都合でアメリカに留学しており、転入して早々学院の女生徒たちを魅了する。
そのあまりにも出来すぎた人間である麗に、百美は当初反発的な態度を示すが、出来すぎているがゆえに次第に麗に惹かれていく。しかし、麗の正体が明るみになったことで、2人は別れを選択することになるのだった。そしてその別れが、新たな戦いを生み出すとは、当時の百美は知る由もなかった。
映画『翔んで埼玉』の感想・評価
錯乱状態から生まれた30年越しの名作
『翔んで埼玉』の作者である魔夜峰央がこの漫画を執筆したのは、今からおよそ30年以上も前のこと。執筆当時住んでいた埼玉県をおちょくり、その面白さを狙って書かれた作品であったが、自身が神奈川県に引っ越したことで、僅か3話で連載終了となった。
連載当時、他に連載していた『パタリロ!』の忙しさから、魔夜は「一時の気の迷いで、錯乱気味に描いた」とコメントしている。漫画家としての野心に燃えながらも、当時住んでいた埼玉県所沢市はのんびりとしていて、のどかで牧歌的な雰囲気もあり、不満とも焦りとも取れる心境から、自虐的な作品に行き着いたとも話す。
漫画が多くの人に知られるようになったのは、2015年に日本テレビの『月曜から夜ふかし』という番組で紹介されたことがきっかけとなる。衝撃的な内容が視聴者に受け、急遽宝島社が復刊を決行、本屋のいたるところに同書が置かれ、それが本作のプロデューサー若松央樹氏の目に留まり、映画化までこぎつけた。
若手俳優・二階堂ふみと、大物アーティスト・GACKTの異色高校生コンビ
原作の『翔んで埼玉』に登場する主人公の白鵬堂百美は、名前もその容姿も女性の姿だが、れっきとした男性の設定である。しかし、映画化するにあたって、原作者魔夜を含めたキャスティング会議では、女性でもいいと言う意見も見られ、若手実力派女優の二階堂ふみの名が挙がる。
二階堂ふみは、24歳という若さながら『ヒミズ』(12)では第36回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞、『私の男』(14)で第38回日本アカデミー賞優秀主演女優賞受賞と、その実力を見せつける。バラエティー番組の『ぐるぐるナインティナイン』の人気コーナーである「ゴチになります」にも出演し、お茶の間を賑わせている勢いのある女優である。
また、近年人気を博しているお笑い芸人ダウンタウンの浜田が司会を務める「芸能人格付けチェック」で、個人成績で55問連続正解と驚異の記録を叩き出すGACKTが、魔夜の強い希望で二階堂ふみとのW主演に挑戦する。ここで言っておきたいのは、本人もコメントしているが、GACKTは既に40歳を超える年齢であること。起用する制作陣もさることながら、GACKT本人にとっても挑戦的な映画になることは間違いないだろう。
驚異の地域格差の対象・埼玉という県
埼玉県がなぜこんなにも格差社会の中で最下層と位置付けられているかだが、まずそもそも埼玉県がどこにあるのかと言うところだが、埼玉県は関東の中央内陸部にあり、海に囲まれた島国である日本の中でも、数少ない海なし県である。
また、国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』の野原家が住んでいる地域が、埼玉県の春日部市である。そのアニメでもわかる通り、埼玉県はのどかでどこか田舎的な雰囲気のある、東京のベッドタウンという位置づけにある。
他にも、昔からの古墳が多数残っている県でもあるため、どこか街並みも昔ながらの風情ある景色になっているところから、「古臭い」などの印象を持たせてしまう。だが、首都の隣に位置している利点は確かにあり、タレントの所ジョージを始め有名人を挙げ出したらキリがない。
映画の予告にも登場している千葉県と埼玉県が対決するシーンで、歌手の高見沢俊彦の旗が掲げられているが、彼もまた埼玉県が誇る知名人の1人である。漫画の発表時はもちろん、30年後の復刊時にもこれだけディスられた内容であるにも関わらず、埼玉県民からのクレームが1つもないのは埼玉の良さの1つであり、誇れる点ではないだろうか。
映画『翔んで埼玉』の公開前に見ておきたい映画
ヒミズ
『新宿スワン』や『リアル鬼ごっこ』シリーズで知られる園子温監督作品にして、二階堂ふみの演技を定評させるきっかけとなった映画でもある。主演は二階堂ふみと染谷将太のW主演で、2人は揃って第68回ヴェネツィア国際映画祭の新人賞を受賞している。
元々は、古谷実の漫画が原作ではあったが、内容が主人公の15歳少年が体験した虐待・蒸発・親の不貞・殺人などの過激な描写が多く、東日本大震災等の影響もありストーリーや年齢などの設定を変更する配慮がされている。
二階堂ふみが演じたのは、父親から虐待され衝動的に殺人を犯してしまった主人公・住田祐一(染谷将太)を支える茶沢景子。「普通の人のように普通に暮らすこと」を夢見ていた中学生の住田は、親に頼ることのできない境遇のために1人で貸しボート屋を営む。だが、蒸発していた父親が戻り、その父親から虐待される日々に耐え切れなくなり衝動的に殺人を犯す。
「普通」から遠のいてしまう現実との乖離の中で、精神的に不安定になり絶望する住田を、二階堂ふみが演じる少女・茶沢景子が懸命に支える。大人たちの不条理で手前勝手な都合のために苦しめられる少年を一途に思い続ける茶沢の姿はとても切なく、当時まだ駆け出しだった二階堂ふみの演技に魅了されてしまう。
詳細 ヒミズ
BUNRAKU
大物アーティストとして名を馳せているGACKTは、役者としての活躍も目覚ましい。GACKTと映画で連想するものと言えば、主題歌を歌っているガンダムや仮面ライダーが思い浮かべられるが、実はハリウッド映画出演と言う突飛な経歴も持つ。
公開されたのは2012年の1月。なんと、二階堂ふみが主演を務めた『ヒミズ』と同じ日に公開されているのである。この映画は、日本の伝統芸能の文楽にインスパイアされ、制作された。
戦争を繰り返した後の世界と言う設定で、GACKTはそこで生きる侍・ヨシを演じる。自身にも他人にも厳しいことで知られているGACKTだが、撮影のときはあまりにも激しいアクションを求められ、「ギブアップするかと思った」と述べている。スタントは一切使わず、文字通り体当たりで挑んだ作品であり、撮影時は頭を打って気を失い、救急車で運ばれたこともあるとの裏話まである。
今後も役者として活躍していくと期待されているGACKTの、ハリウッド初進出映画は、日本を愛するGACKTらしい役で、ファンならぜひ押さえておきたい作品である。
詳細 BUNRAKU
テルマエ・ロマエ
こちらも2012年に公開された武内英樹監督作品で、主演の阿部寛が第36回アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞している。原作は、第14回手塚治虫文化小短編賞受賞歴を持つヤマザキマリの同名コミック。
阿部寛が古代ローマ帝国の浴場設計士ルシウスの役を熱演するが、そのあまりの顔の濃さから、外国人エキストラからは本物のギリシャ人だと思われていたとのこと。興行収入59.8億円と言う大記録をマークし、2012年第2位のヒット作品となり、その後2014年には『テルマエ・ロマエⅡ』が公開される。
古代人が日本にタイムスリップする奇抜な展開や、日本人を「平たい顔族」と表現するユーモラスさも話題となり、劇場は終始笑いで包まれた。また、世界中でも類を見ない程の風呂好きな日本文化にスポットが当たり、多くの銭湯で映画の影響が表れたという社会現象も起こした。
『のだめカンタービレ』に続く武内英樹監督のヒット作品『テルマエ・ロマエ』を、『翔んで埼玉』の公開前に見ておくことをオススメする。
詳細 テルマエ・ロマエ
映画『翔んで埼玉』の評判・口コミ・レビュー
『翔んで埼玉』
終始ニヤニヤしっぱなしで頰が疲れた!笑 No1を競うのではなく、互いを認め合い、郷土を誇れ!“踏み草加せんべい”、埼玉vs千葉の有名人対決にクソ笑った。ディスるだけでなく、埼玉県民が埼玉を誇りに思えるような展開になってたのがGOOD!はなわの歌も秀逸。それより群馬県の扱いよ。笑 pic.twitter.com/6Jdxomu7V0— じょび (@moviejovi0116) 2019年2月23日
仕事終わりに「翔んで埼玉」を鑑賞。
何度も観に行きたい作品がまた一つ追加されました。設定が一々細かくてかなり笑った。なんというネオ絵踏。関東圏の御当地ネタを多く盛り込んだ数々のシーン、一度見たら忘れられないでしょう(笑) pic.twitter.com/KUjM8OMSCi
— winona∽ (@winona49552839) 2019年2月23日
『翔んで埼玉』
割と引きずる面白さ!関西の人間なので細かなニュアンス掴めるか心配やったけど全然いけるし京都は竹中直人でしょwにしても蔑みエグいし未知の病原体のくだり等のワードセンスの破壊力に唸るw真剣にふざけてるけど端的に関東圏を学べるし妙なカタルシスもある。ちょっとだけ感動したしw pic.twitter.com/R3FRifbBUw— コーディー (@_co_dy) 2019年2月24日
翔んで埼玉
埼玉県人なのでそこらへんの草、食って来ましたw
ちょっ…
ディスり過ぎじゃない!?🤣
面白すぎっ😆
埼玉、千葉、群馬にちょい栃、茨、神…入り乱れるディスり合戦
俳優陣が無駄に豪華✨
GACKT様、ありがとうございます!😂
空前絶後の茶番劇ww
はなわさん歌うエンドソングも最高でした🤣 pic.twitter.com/EMazlVBdvF— たえ (@IridecentLP0720) 2019年2月23日
いやぁ~、大爆笑の連続だった。満員の映画館で笑うのはイイもの。
「昔々、埼玉県民は東京都内に入るには通行手形が必要だった…」と埼玉ディスリ物語を過去の物語としたあたりが、不快にならず観られた要因だったと思う。
しかし、関東限定作品という気がした。#1日1本オススメ映画 pic.twitter.com/Npa7POw4hM
— Qちゃん (@zosoHajime09) 2019年2月23日
映画『翔んで埼玉』のまとめ
『翔んで埼玉』は、当時3話しか連載されていないため、今回の映画化に当たってはストーリーもオリジナリティが含まれている。その中の1つが、埼玉県と激しいバトルを繰り広げる千葉県の存在である。千葉県と言えば、東京ディズニーリゾートや幕張メッセがあるため、連日多くの人が訪れる県であるが、常に「東京」と比べられていることで劣等感を覚えている市民もいるとのこと。埼玉県・千葉県・東京都の仁義なき戦いは果たして決着がつくのか、付くとしたらどんな結末に落ち着くのか、行方が気になるばかりである。
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