映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』の概要:1887年、在位50周年を迎えたヴィクトリア女王は記念式典でインドからやってきた青年・アブドゥルと出会う。英国女王とインド人従者の心温まる交流を描いたヒューマンドラマ。
映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』の作品情報
上映時間:112分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、歴史
監督:スティーヴン・フリアーズ
キャスト:ジュディ・デンチ、アリ・ファザール、エディ・イザード、アディール・アクタル etc
映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』の登場人物(キャスト)
- ヴィクトリア女王(ジュディ・デンチ)
- インド皇帝でもある英国の女王。最愛の夫をはじめ、信頼を寄せていた従僕たちにも先立たれてしまい、宮殿の中で孤独感に苛まれていた。記念式典で出会ったインド人青年のアブドゥルとの交流を通して、次第に心を開いてゆく。
- アブドゥル・カリム(アリ・ファザル)
- ヴィクトリア女王の在位50周年式典で記念硬貨を献上するため、インドからやってきたイスラム教徒の青年。インド皇帝でありながらインドに行ったことのない女王にインドの文化や言葉を教えるうち、女王の心の支えとなる。
- ヘンリー・ポンソンビー(ティム・ピゴット=スミス)
- ヴィクトリア女王に仕える王室職員。アブドゥルを受け入れる女王の姿を見て、彼をインドへ送り返そうとするが、女王は聞く耳を持たない。
- ウェールズ公エドワード / バーティー(エディー・イザード)
- ヴィクトリア女王の息子であり、皇太子。実の息子である自分よりもアブドゥルを尊重する女王の姿に嫌気がさし、様々な裏の手を使ってアブドゥルをインドへ送り返そうとする。
- モハメド(アディール・アクタル)
- アブドゥルと一緒にインドからやってきた青年。当初アブドゥルと一緒に行く予定だった“のっぽ”が怪我をしてしまい、急遽代理で英国へやってきた。慣れない気候としきたりに疲れてインドに帰りたい一心。
- ソールズベリー首相(マイケル・ガンボン)
- 英国首相。女王のアブドゥルへの寵愛ぶりを見て、アブドゥルを危険視。彼をインドへ帰すよう王室職員に言いつける。
映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』のあらすじ【起】
インドが英国領となって29年目。インドのアグラ市で刑務所の記録係として働いていたイスラム教徒のアブドゥルは、英国ヴィクトリア女王の即位50周年の記念金貨を献上する役目を任され、同じインド人のモハメドと共に英国へと渡る。
記念式典が行われるウィンザー城では王室職員が式典の準備に勤しんでいた。アブドゥルは王室職員から女王に謁見する際の作法を教えられ、「決して女王と目を合わしてはならない」と厳命を受ける。
ヴィクトリア女王がウィンザー城へ到着し、祝宴が始まる。祝いの席であるにも関わらず、女王は退屈な様子を見せていた。食事が運ばれると、女王は周りの人たちと会話をすることもなく目の前に出された料理を平らげていった。
宴も終盤に差し掛かり、アブドゥルが記念金貨を献上する時がやってくる。アブドゥルは教えられた通りトレーを持ち、女王へ記念金貨を献上する。退き際、「女王と目を合わせてはならない」と厳命されていたにも関わらず、アブドゥルは女王と視線を合わせて微笑みかけたのだった。
女王に気に入られたアブドゥルは、帰国の予定を切り上げ、モハメドと共に園遊会でも給仕をすることになった。園遊会で女王の元へゼリーを運んだアブドゥルは、女王の足元に跪いて彼女の足にキスをする。王室の礼儀作法を無視したアブドゥルの行いに、王室職員は激怒する。しかしその行いで更に女王に気に入られたアブドゥルは、今後もほかの王室職員と共に女王に仕えることになった。
映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』のあらすじ【承】
すっかりアブドゥルを気に入った女王は、彼からインドの言葉を教えてもらう。アブドゥルが教えた言葉は、一般的なヒンドゥー語ではなく、インドの皇帝が使う高貴な言葉のウルドゥー語だった。しかし、このウルドゥー語はイスラム教徒の言葉であり、それを知った王室職員は慌てふためく。
その後女王は、アブドゥルだけを引き連れて別荘へと向かう。この別荘は30年前に死別した夫、そして信頼していた従僕のジョン・ブラウンとの思い出の地でもある。彼らを失った今、女王は国王としての重圧と孤独感に打ちひしがれていた。その悲しげな様子を見たアブドゥルは、「己のためではなく大義のために生きるのです」と言って女王を励ます。さらにアブドゥルは父との思い出は語り、「父は私のムンシ(心の師)」だと話す。すると女王は「あなたは私のムンシね」と言って微笑む。
イタリア・フィレンツェへの旅行にも同行することになったアブドゥルとモハメド。一刻も早く帰国したいモハメドはアブドゥルに「媚び諂うのはやめてさっさと帰国しよう」と促す。しかしアブドゥルは「人生は冒険であり、もっと楽しむべき」と言って聞く耳を持たなかった。フィレンツェへの道中、女王はアブドゥルにムンシ就任の褒美だと言って、自分の写真が入ったロケットを渡す。
一行がフィレンツェに到着すると、音楽会が開かれた。周りの職員や皇太子はあまり楽しんでいなかったものの、女王は歌声を披露するなどして心から楽しんでいた。
バルコニーへ出たアブドゥルは、女王の手を取ってダンスをする。アブドゥルは「陛下は私にとって、妻よりも特別な存在だ」と言い、アブドゥルに妻がいることが発覚。女王は一瞬困惑して固まってしまう。しかし、すぐインドに戻って妻を連れてくるようアブドゥルに伝えたのだった。
映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』のあらすじ【転】
アブドゥルが妻を引き連れて英国に戻ってくる日。ワイト島のオズボーンハウスでは女王がアブドゥルとの再会を待ち望んでいた。そして、彼の妻との面会も楽しみにしており、王室職員もアブドゥルの妻がどんな人物なのか興味津々だった。アブドゥル達が到着すると、彼らは驚愕した。妻と義母は、イスラム教徒であるため、ブルカと言う衣装を身に纏っており、完全に顔が隠れていたのだった。顔が見えないことに困惑する職員たちだったが、女王は顔が見えなくても威厳があると言って彼女を気に入る。
女王はアブドゥル一家のためにコテージを用意していた。女王のおもてなしにアブドゥルは感激するも、アブドゥルに対する女王の懇意に、王室職員は難色を示していた。さらに、女王は以前アブドゥルから聞いていた「孔雀の玉座」を再現した王の間の完成お披露目会を開催。その会ではアブドゥルをインド皇帝役に据えた寸劇も披露された。
その様子を見た招待客のひとり、ソールズベリー首相は「インド人に王室を乗っ取られる」と激怒し、アブドゥルを帰国させるよう秘書のポンソンビーに命令。ポンソンビーは女王に、アブドゥルはイスラム教徒であり、彼は女王に悪い影響を与えてしまうと告げます。しかし女王は、イスラム教徒にはインド反乱でヒンドゥー教徒を抑えてくれた恩義があると言い放つ。しかし実際は、インド反乱を指導していたのはイスラム教徒だった。
アブドゥルから聞いたインド反乱の話が嘘だと知った女王は失望し、アブドゥルに帰国を命じた。しかしその晩、女王はアブドゥルに「あなたの優しさや愛情の深さは本物だった」と言って英国に留まることを許した。
アブドゥルが帰国しなかったことに激怒した皇太子バーディーは、アブドゥルの出自を調べる。アブドゥルと共に英国にやってきたモハメドに彼のことを聞くが、モハメドは「あなた達と同じように、ただ出世したかっただけだ」と言い、友人を売ることはしなかった。その後もインドに駐在している職員を使って調査を行なったバーディーは、アブドゥルが下層民であることを突き止める。バーディーは女王にそのことを告げ、私欲で動いているだけだと説得する。しかし、女王は聞く耳を持たず、バーディー達がアブドゥルを差別するのは爵位がないからだとして、彼に爵位を授けることを宣言。
そのことを知った王室職員は困惑し、女王にアブドゥルへ爵位を授けるのであれば総辞職すると訴えた。女王はアブドゥルへ、爵位を授ける代わりに、国家への献身的な行いを賞するヴィクトリア勲章のコマンダー章を与えることとした。
その後、慣れない土地で体調を崩していたモハメドが息を引き取ってしまう。悲しみに暮れるアブドゥルを見て、女王は国へ帰るよう伝えるも、アブドゥルは命ある限り女王に仕えることを約束した。
映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』の結末・ラスト(ネタバレ)
体調を崩し、日々衰弱していく女王。余命僅かとなった女王はアブドゥルを呼び寄せ、最期の別れをする。アブドゥルは涙を堪えながら女王の手を取った。そして、女王は「あなたは私の愛しい息子」と言い残し、息を引き取った。
女王が亡くなったことで王位を継承したバーディーは、アブドゥルのコテージを荒らし、アブドゥルと女王を繋げる証拠となる手紙や記録をすべて焼き払った。女王との思い出を抹消されたアブドゥルは悲嘆し泣き崩れるが、妻が職員に見つからないよう、女王からもらったロケットをアブドゥルに渡す。そして、アブドゥル一家はインドへ帰国した。
インドへ帰国したアブドゥルは、タージマハル近くに建てられたヴィクトリア女王の銅像の足にキスをして「ご機嫌いかがですか、陛下」と問いかける。インドへ帰国して8年後の1909年、アブドゥルも息を引き取った。
1947年、インドは独立を果たした。そして、2010年になってアブドゥルの日記が発見され、彼と女王の話が世間に知れ渡ったのだった。
映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』の感想・評価・レビュー
愛する人を失い、孤独と重圧に苦しめられ心を閉ざしていたヴィクトリア女王が、イスラム教徒のインド人・アブドゥルと出会い、宗教や文化を超え、深い絆で結ばれていく。2人の関係性は、ひとりの人間同士の心温まる交流であり、私たちにとっても重要なことを教えてくれる。本物の愛や友情とは何か。人間本来の美しさと優しさ、そして強さを感じられた作品である。また、出世欲の強い王室職員の様子も、非常に人間らしく、女王とアブドゥルの純粋な関係性とは対照的で物語の面白みを引き立ててくれている。(MIHOシネマ編集部)
イギリス映画の魅力は、歴史上起きた「隠したい」過去も包み隠さず作品にしてくれる所です。いい所だけではなく、本当は他国民には知られたくないだろう「悪い」物語や事件も真実に沿って教えてくれる。この作品はまさにそんな物語です。
夫や従僕を亡くし、心を閉ざしてしまったヴィクトリア女王。彼女の心を開いて、支えとなってくれたのは「普通」のインド人の青年でした。絆を深めていく女王と青年。「普通」の青年に対して危機感や嫌悪感を抱く側近たち。まだ格差や差別が大きかった時代の人間模様がとてもリアルに描かれていました。
実話をベースにしたこの作品。ラストの展開はなんとも言えない気持ちになります。(女性 30代)
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