映画『戦場でワルツを』の概要:アリ・フォルマン監督が自身の体験を基にレバノン内戦を描いた2009年公開のイスラエル映画。ドキュメンタリーをアニメーションで表現するという斬新さが話題となり、第66回ゴールデングローブ賞では外国語映画賞を受賞した。
映画『戦場でワルツを』 作品情報
- 製作年:2008年
- 上映時間:90分
- ジャンル:ドキュメンタリー、歴史、戦争、アニメ
- 監督:アリ・フォルマン
- キャスト:アリ・フォルマン etc
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映画『戦場でワルツを』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★☆☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★☆☆☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『戦場でワルツを』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『戦場でワルツを』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『戦場でワルツを』 あらすじ【起・承】
アリ・フォルマン(本人役)は、数年ぶりに再会した友人から悪夢に悩まされていると相談される。それは、20数年前の1982年に2人が出兵したレバノン内戦にまつわる悪夢だった。
20数年前の出来事が今頃になって悪夢として蘇ったことに疑問を抱いたフォルマンは、当時の自分の記憶が抜け落ちていることに気づく。
だがその帰り道、彼はフラッシュバックを体験する。内戦時に仲間と共にベイルートで海水浴をしていた映像が蘇った彼は、それが正しい記憶であるのかを確認するため、心理学者の友人ザハヴァを訪ねる。ザハヴァは彼に、記憶を呼び起こすために関係者に会いに行くことを提案する。
最初は渋ったフォルマンだったが、失った記憶を取り戻すために旧友や関係者を訪ねることを決める。
まず彼が向かったのは、フラッシュバックの中で共に海水浴をしていたイェヘズケルだった。だがイェヘズケルはフォルマンと行動を共にしたことは覚えていたものの、海水浴については記憶にないと語った。
イェヘズケルの自宅からの帰り道、フォルマンは再びフラッシュバックを体験する。それは、彼が戦車から銃を乱射し、死体を処理するという内容だった。
映画『戦場でワルツを』 結末・ラスト(ネタバレ)
一部の記憶が蘇ったものの、全容について未だ思い出せないフォルマンは、引き続き旧友や関係者を訪ねる。
帰還兵でもあるジャーナリストや当時の上官に話を聞いていくうちに、彼は徐々に記憶を取り戻していく。その記憶の中には、当時のレバノン大統領バシール・ジェマイエルのポスターの目の前で、ワルツを踊るように機関銃を乱射する兵士の姿もあった。
そしてフォルマンは、最初に見たフラッシュバックの続きを見る。海から上がった彼は、泣きわめく女たちとすれ違っていた。
医師からPTSD(心的外傷後ストレス障害)の可能性を示唆されたフォルマンは、再びザハヴァを訪ねる。そして、フラッシュバックで見た海は安らぎを求める深層心理が働いたのではないかと、ザハヴァからアドバイスを受ける。
その後も関係者を訪ねて回ったフォルマンは、穴が空いていた部分の記憶を少しずつ埋めていき、ついに全てを思い出す。
すれ違った女たちは、「サブラ・シャティーラの虐殺」によって家族を失ったパレスチナ難民だった。
虐殺によって命を落とした者の中には、幼い子供の姿もあった。凄惨な現場を目撃したフォルマンは、無意識のうちに自ら記憶に蓋をしていたのだった。
映画『戦場でワルツを』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『戦場でワルツを』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
アニメーションドキュメンタリー?
現実の世界を描くドキュメンタリーと、非現実の世界を描くアニメーション。
相反するこの2つを見事に融合させたのが、今作『戦場でワルツを』だ。
主人公でもある監督自身が抜け落ちた記憶を辿っていくという設定のもと、争うことの残酷さや、それに関わる人々の滑稽さを独特な色調で描き出している。
架空の人物が登場するため完全なドキュメンタリーとは言えないが、事実を事実として伝えるのではなく、当事者たちの視点や感性をアニメーションという技法を用いて表現し、観客に強い衝撃を与える。
フォルマンの回想シーンが黄色と黒の2色で描かれているのも、彼の記憶の曖昧さと写実的な確かさをうまく表していて、なおかつ映像として脳裏に焼きつく。
最後の最後で、当時の実際の映像を入れ込んでいたのも良かった。観客は一気に現実に引き戻される。なんて効果的なんだろう。
この映画で新たに確立されたアニメーションドキュメンタリー(?)というジャンル。今後誰がこの手法に挑戦するのか楽しみだ。
映画を観るうえで知識は必要か?
今作で題材になっているレバノン内戦は、近年の日本人にとっては「遠い国の小さな出来事」に過ぎないだろう。むしろ、知らない人の方が多いかもしれない。
元々、第一次世界大戦の余波によって生じた宗教間の齟齬から始まったレバノン内戦。その内情は複雑で、全てを把握している方が珍しいかもしれない。
ではこの出来事を知らないと楽しめないかと言うと、そうでもない。
主人公が記憶を失ったという設定が功を奏しているからだ。空白の状態からスタートし、関係者を訪ねるにつれて徐々にその全景が描かれていくため、知識がない観客も追体験できる。アニメーション映画としても、その統一された色調に魅了される。
だがやはり、この出来事について知らないと理解できない部分も多い。映画に娯楽性のみを求める人にとっては映画とは呼べないかもしれない。
映画は時に、観る者に知識不足を痛感させる。
監督アリ・フォルマンの実体験に基づいて作られた今作。インタビューのような雰囲気が続きますが、全てアニメーションで描かれているのでとても新しい感じがしました。
アニメーション作品と言うと、リアリティが無いように思われがちですが、実体験を元にしているだけあって物語の生々しさはしっかりと伝わってきました。重くて目を背けてしまいたくような出来事も、このアニメーションという技法によって少しでも多くの人に知って貰えたらいいなと感じる作品でした。(女性 30代)
映画『戦場でワルツを』 まとめ
物語の中で、戦場カメラマンの話が出てくる。どんな凄惨な場面に遭遇しても平気な顔をして写真を撮り続けたカメラマンが、カメラが壊れた途端に精神に異常をきたすという話。
カメラマンはファインダー越しに覗く戦場を、映画を観るような感覚で撮り続けた。そこに現実味を感じていなかった。だが、カメラが壊れて肉眼で直視したとき、初めて現実を目の当たりにする。
今作の構造はこの話そのものだ。アニメーションという非現実的な映像で観客を惹きつけ、最後の最後で現実を見せる。この落差に、真のメッセージが含まれている。
ファインダーどころかスマートフォンの画面越しに世の中の事象を確認することができるようになった現代。だが、事象は現実ではない。今こそ、カメラを壊して目の前の現実を直視するときだ。・・・そんなことを考えさせてくれる映画だ。
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