映画『山猫』の概要:舞台は、革命により動乱の時代を迎える19世紀後半のイタリア。統一戦争が新体制をよび、廃れゆく貴族階級と新興ブルジョワジーの台頭を、静観するサリーナ公爵の視点から描く。ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペトゥーザ原作の長編大作。
映画『山猫』の作品情報
上映時間:161分
ジャンル:歴史、戦争、ヒューマンドラマ
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
キャスト:バート・ランカスター、アラン・ドロン、クラウディア・カルディナーレ、リナ・モレリ etc
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映画『山猫』の登場人物(キャスト)
- サリーナ公爵 / ドン・ファブリツィオ(バート・ランカスター)
- シチリアに豪邸を構える、ファルコネリ家の当主。古き時代の栄光に固執しながらも、新時代の到来を静観する。無常な社会への幻想は持たず、永遠に変わらぬ死への憧れを持つ。
- タンクレーディ(アラン・ドロン)
- サリーナ公爵の甥。野心に燃え、革命軍に参加する。アンジェリカに一目惚れし、求婚する。後にイタリア国王軍の将校となる。時代の変化に柔軟に対応し、新体制に強い期待を寄せる。
- アンジェリカ・セダーラ(クラウディア・カルディナーレ)
- 新興ブルジョワジーであるセダーラ家の一人娘。絶世の美貌を持つが、気品に著しく欠ける。タンクレーディに見初められ、華々しい貴族社会への仲間入りを果たす。
- カロジェロ・セダーラ(パオロ・ストッパ)
- アンジェリカの父で、ドンナフガータの市長。家柄は低いが、ずる賢く相当の資産家だと言われる。公爵家一族から成金風情を馬鹿にされているが、本人は気がついていない。
- コンチェッタ(ルッチラ・モルラッキ)
- サリーナ公爵の娘。タンクレーディに強い恋心を寄せるも、引っ込み思案で大人しい。幼馴染のアンジェリカと結婚する彼を諦めきれずにいるが、最後は身を引く。
- ピローネ神父(ロモロ・ヴァリ)
- 公爵家に仕えながら、貴族の傲った思考に不満を持つ。愛を重んじ、貧しい人々に慈悲を向ける。サリーナ公爵の相談相手。
- マリア・ステッラ(リナ・モレリ)
- サリーナ公爵夫人。堅実で誇り高く、ヒステリックな気質で公爵を悩ませる。夫婦の営みは無く、公爵からは色気がないと嘆かれている。
- カヴリアーギ伯爵(マリオ・ジロッティ)
- タンクレーディの戦友で、彼と共に公爵邸に帰ってくる。コンチェッタに好意を寄せるも、相手にされず諦める。タンクレーディと同様、ガリバルディの革命軍が解散した後、イタリア王国軍の将校となる。
映画『山猫』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『山猫』のあらすじ【起】
ガリバルディ率いる革命軍が、シチリアに進軍した。シチリア島に豪邸を構えるサリーナ公爵家の庭では、兵士の遺体が見つかる。一族が混乱する中、さらに公爵の元に、国外への疎開を促す手紙が届く。公爵夫人ステッラは怯えて泣き散らすが、一方の公爵は手紙を無視して愛人の元へと通う。
翌日、公爵家を甥のタンクレーディが訪れる。若く情熱に燃えるタンクレーディは、革命を先導する義勇軍への参加を公爵に知らせる。当ファルコネリ家は王を守る立場であると、甥の選択を非難しながらも、革命を支援する意を表して送り出す公爵。タンクレーディは公爵の娘コンチェッタからの好意を背に、暴動の地パレルモへと発つ。
神父ピローネは、公爵に肉欲の罪を告解するよう迫る。だが公爵は断固として拒否し、また万物流転の世の中を嘆き、社会情勢への悲観的な見解を語る。貴族階級の危うい立場が浮き彫りになる。
パレルモの暴動が激しさを増す中、一族は近郊の町ドンナフガータへと、恒例の転居を開始する。タンクレーディの強引な指示により検問所を突破し、目的地へと急ぐ。途中の宿泊所にて、ピローネは一般市民に貴族への不満を話す。地位と名誉を重んじる貴族社会の風潮は、ピローネには理解し難いものだった。
ドンナフガータからの使者の手引きにより、一同は昼時の休息にピクニックをする。公爵は甥が帰還した数日前の出来事を思いだす。タンクレーディは壁画を鑑賞するという名目のもと、反乱軍の将軍を公爵邸に連れてきたのだ。片目を負傷したタンクレーディを、コンチェッタはひどく案じ、彼への強い恋心を覗かせた。
映画『山猫』のあらすじ【承】
サリーナ公爵率いる一行が、ドンナフガータに到着する。町全体が今度の来訪を祝い、盛大な歓迎が執り行われるが、砂埃のひどい町に一同は憔悴する。
公爵の入浴中、緊急の相談があると浴室を訪ねるピローネ。コンチェッタから、タンクレーディとの結婚を取り持ってほしいという公爵への伝言を受け取ったのだ。娘の恋愛を知り、自らの老いを憂える公爵。また野心家の甥と引っ込み思案の娘が、結びつかないことを悟る。
その晩、燕尾服で晩餐会にやってきたセダーラを、一族は馬鹿にして笑う。だが彼の娘のアンジェリカが到着すると、その美貌に男たちは息を飲む。コンチェッタが見ているにも関わらず、タンクレーディは娘に恍惚の目を向ける。晩餐会にて、タンクレーディはアンジェリカに促され、戦地での下品なエピソードを赤裸々に語る。舌なめずりをしながら聞き入り、下卑た笑い声をあげるアンジェリカに、食卓は凍りつく。コンチェッタは憤ったが、タンクレーディは後日アンジェリカの元に通う。
甥の恋を応援することに決めた公爵は、後日の住民投票にて、セダーラからもてなしの杯を受ける。イタリア統一に賛成票を投じる公爵。その夜、投票結果が開示され、セダーラ市長から反対票はゼロであったと発表される。だが翌日、公爵は狩り仲間のチッチョに、どちらに投票したかと問い詰める。実は反対票に投じていた彼は、ねじ曲げられた真実に憤慨するが、公爵は時代の要請なのだと慰める。
そして公爵の元に、タンクレーディから手紙が届く。アンジェリカとの婚約の仲介をしてほしいとの文面に、母ステッラはコンチェッタへの裏切りだと泣いて憤る。だが甥への深い理解を示す公爵は、土地の譲渡や祝い金を条件に、若き二人の婚約を取りつける。
映画『山猫』のあらすじ【転】
冬のある嵐の日、公爵家にタンクレーディが戻り、邸内は活気付く。彼はカヴリアーギ伯爵らを連れ、イタリア国王軍の将校となったことを公爵に報告する。また彼の来訪を知り、駆けつけたアンジェリカに婚約指輪を贈る。一方のコンチェッタは伯爵に好意を寄せられるも、タンクレーディを忘れられずにいた。
中央政府からシュヴァレーが来訪する。公爵を王国貴族院議員に指名しようと同意を求めるが、公爵は旧体制にいたことを理由に拒否し、虚栄心にこだわる元来の生き方を貫く。同時に、不変的な死への強い憧れを仄めかす。公爵は代わりにセダーラが適任であると推薦するが、シュヴァレーの返事は苦いものだった。翌朝、貧困の町を目の当たりにしたシュヴァレーは、改めて変革の必要性を説く。それに対し、公爵は「山猫が支配する時代は去った」という趣旨の呟きを残す。公爵家の家紋には、山猫が起用されているのだ。
アンジェリカのデビューを控えた舞踏会が、ポンテレオーネ家で開かれる。タンクレーディは妻とその父への招待に喜ぶが、彼があまりにも格の低い勲章を付けていたので、少しの苛立ちを見せてはぎ取る。アンジェリカの美貌が注目を集める一方、公爵は人目をはばからず騒ぎ立てる若い女たちの醜態に、貴族の品位の低下を見る。彼は別室に篭ると、壁に掛けられたある絵画に釘付けになる。『罰せられた息子』という題を持つこの絵画は、老人の臨終の時を描いたものだ。公爵を探しにきた甥夫婦に、死を強く意識した発言をする公爵。タンクレーディは不安げな顔を見せる。
アンジェリカは、渋る公爵をダンスの相手として連れ出す。美しき若き彼女との艶やかな時間は、かつて踊りの名手と称えられた時代を蘇らせ、公爵は優雅な気分に浸る。社交界の羨望と嫉妬の眼差しを束の間独占するも、やはり馴染めない様子の公爵。戦地での武勇伝をやかましく語る大佐に席を勧められるも、気分を害してすぐに去ってしまう。
映画『山猫』の結末・ラスト(ネタバレ)
コンチェッタは度重なる舞踏会に嫌気が差していた。対照的に、アンジェリカは周囲からの丁重な扱いに満足した様子を見せる。妻を探してタンクレーディがやってくる。「反政府の脱走兵は銃殺だ」と残酷な発言を繰り返すタンクレーディを、コンチェッタは嘆いて去ってゆく。舞踏会はさらに盛り上がり、男女たちは手を繋いで一列になり、楽しそうに会場を横切る。
その頃、公爵は部屋で一人涙を流す。参加者が続々と帰路につく中、タンクレーディは公爵を探し回る。途中、夫人の隣でだらしない格好のまま眠りこけるセダーラを起こす。ようやく公爵を見つけるが、彼は一人で帰ると言い張る。タンクレーディは選挙に立候補することを嬉々として報告するが、目を離した隙に公爵は行ってしまう。
夜更けの空に向かって、主に語りかける公爵。永遠の世界を望む彼の前を、神父が横切る。一方、馬車の中で寄り添いあい、銃声を聞くタンクレーディ夫婦とセダーラ。新時代が確かにひらけてゆく中、公爵は暗い夜道を一人歩いて消えてゆく。
映画『山猫』の感想・評価・レビュー
自然光のみを用いた執念の撮影は、本来以上の鮮やかさを以って、シチリアの絶景や舞踏会の絢爛の様子を映す。全体的な色彩を捉えた引きのカットが多く、そのためクローズアップされたキャラクターの表情は非常に印象深い。アラン・ドロンの美しい顔立ちや、実際のシチリア貴族の末裔を起用したエキストラ、当時を忠実に再現した調度品やセットが、貴族社会の上品な魅力を現代に甦らせる。ニーノ・ロータの優美な音楽には、思わずため息が出た。(MIHOシネマ編集部)
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