カゲという女性が川のほとりに座り、日常にあった出来事を原稿にしたためていた。川のほとりは彼女にとって、思い出の場所だった。ある日、カゲは自分が書いた原稿を、一人の老人に手渡した。その様子を、写真屋の男が目撃していた。
映画『静謐と夕暮』の作品情報
- タイトル
- 静謐と夕暮
- 原題
- なし
- 製作年
- 2020年
- 日本公開日
- 2022年1月8日(土)
- 上映時間
- 136分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- 梅村和史
- 脚本
- 梅村和史
- 製作
- 唯野浩平
- 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- 山本真莉
延岡圭悟
入江崇史
石田武久
長谷川千紗
梶原一真
仲街よみ
野間清史 - 製作国
- 日本
- 配給
- 不明
映画『静謐と夕暮』の作品概要
2019年度京都造形芸術大学映画学科卒業制作作品。梅村和史長編映画監督デビュー作で、「第44回サンパウロ国際映画祭 新人監督コンペティション」にノミネートされた。梅村和史監督を含め、3名のスタッフが制作に携わった。日常の出来事を原稿に綴る女性を主人公にした物語。新人女優の山本真莉が主演を務め、ベテラン俳優の入江崇史、若手俳優&監督の延岡圭悟、俳優&写真家の石田武久らが脇を固めた。2022年1月8日(土)~1月14日(金)までの期間、レイトショーで上映される。場所は東京・池袋シネマ・ロサ。
映画『静謐と夕暮』の予告動画
映画『静謐と夕暮』の登場人物(キャスト)
- カゲ(山本真莉)
- 川のほとりが思い出の場所。日常にあった出来事を原稿にしたためている。
- 川辺の老人(入江崇史)
- 高架線下の川のほとりに滞在している。衰弱している。カゲから原稿を手渡される。
映画『静謐と夕暮』のあらすじ(ネタバレなし)
高架線の下を川が流れていた。老人は雑草が生い茂る川のほとりに座り、瓶に生けたヒマワリを眺めていた。老人は疲れ果て、酷く衰弱している様子だった。
カゲという女性が、川のほとりに座り原稿にペンを走らせていた。川のほとりは、カゲにとって思い出の場所だった。そこで日常にあった出来事を書くことが、いつしか日課となっていた。ある日、カゲは老人に近づき、自分が書いた原稿を手渡した。その光景を、写真屋の男が目撃していた。
黄色い自転車に乗る男が、カゲの隣の部屋に引っ越して来た。彼もまた、川のほとりに足を運んだ。その姿を、カゲは目にしていた。
カゲは黄色い自転車に乗る男のことが気になるようになった。密かに様子を伺っていたのだが、ある日男の行方が分からなくなってしまう。
映画『静謐と夕暮』の感想・評価
「第44回サンパウロ国際映画祭」上映作品
本作は「第44回サンパウロ国際映画祭」で上映され、「新人監督コンペティション」にノミネートされている。国際映画祭と言えばフランスの「カンヌ国際映画祭」やドイツの「ベルリン国際映画祭」などが有名だが、「サンパウロ国際映画祭」も重要な地位を占めている。
「サンパウロ国際映画祭」はブラジルの南東部にある都市・サンパウロで毎年開催されている映画祭である。南米最大級の映画祭で、国内外の約400作品が集められて上映されている。
日本の映画も大きな注目を集めており、河瀨直美監督の映画『あん』(15)が「第39回サンパウロ国際映画祭・観客賞」を受賞、是枝裕和監督の映画『海よりもまだ深く』(16)が「第40回サンパウロ国際映画祭 外国映画批評家賞」を受賞している。
梅村和史、長編映画監督デビュー
本作は「2019年度京都造形芸術大学映画学科」の卒業制作として手掛けられた作品で、梅村和史の長編映画監督デビュー作でもある。また、梅村和史は監督の他に、脚本、撮影、照明、カラーリスト、編集、音楽と、本作での仕事は多岐に渡る。
梅村和史は短編映画『つたにこいする』(18)で監督デビューを果たした。そして、「第72回カンヌ国際映画祭・ショートフィルム部門」で上映された短編映画『忘れてくけど』(17)、未知のウイルスが流行した世界を描いた映画『赤い惑星』(20)など、村瀬大智が監督を務めた作品の音楽を手掛けている。
本作は梅村和史監督の他に2名のスタッフしかおらず、少数精鋭で生み出された作品である。唯野浩平がプロデューサー、照明、録音技師、整音、ダビング、編集を、主演の山本真莉が美術監督、メイク、衣装管理、小道具、ロケーション管理をそれぞれ担当している。
新人女優×ベテラン俳優の共演
山本真莉は本作で映画主演デビューを果たした。不思議な空気感を持つカゲという女性を見事に演じている。益山貴司演出の舞台『三文オペラ』に出演した他、マルコメ株式会社のアニメCM「料亭の味 フリーズドライ 顆粒みそ 気をつけてね篇」で主人公の声の吹き替えを担当した。活躍の場を広げており、これから注目すべき女優の一人である。
物語の鍵を握る川辺の老人役を務めたのは、俳優&声優として活躍する入江崇史。声優としては、アメリカの俳優エリック・デーンやアメリカの俳優マット・ディロンの吹き替えなどを担当している。俳優としては、NHK大河ドラマ『八重の桜』(13)、映画『星に語りて Starry Sky』(19)などに出演している。さらに、短編映画『公衆電話』(18)で主人公の父親を演じ、アジア最大級の国際短編映画祭「SHORT SHORTS FILM FESTIVAL&ASIA2018 ジャパン部門」でベストアクター賞に輝いている。
映画『静謐と夕暮』の公開前に見ておきたい映画
博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
梅村和史監督が映画業界の道に進むきっかけとなった作品。1964年に制作されたブラックコメディ映画。「第37回アカデミー賞 作品賞&監督賞&脚色賞&男優賞」にノミネートされている。ピーター・ジョージ原作の小説『破滅への二時間』を元に制作された作品で、スタンリー・キューブリックが監督を務めた。アメリカのYahoo!編集スタッフが選出した「2009年死ぬまでに見たい映画100」にランクインしており、公開から50年以上経った現在も多くの人に愛され続けている作品である。
アメリカ・バープルソン空軍基地の司令官リッパー准将は、ソ連への核攻撃を指示した。これにより、アメリカとソ連の全面戦争が開始されようとしていた。アメリカのマフリー大統領はリッパー准将の行動を知り、核攻撃を止めるためにソ連の首相に協力を仰いだ。その時、予想外の事実が判明する。
詳細 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
星に語りて Starry Sky
入江崇史が出演しており、全国障害者ネットワーク・連盟専務理事の瀬川功を演じた。実話を元に制作された作品で、東日本大震災で被災した障害者と支援を行う人々の姿が描かれている。「JAPAN CONNECTS HOLLYWOOD 2020 長編部門 最優秀作品賞」を受賞している。松本動は本作で商業映画監督デビューを果たした。そして、漫画家・山本おさむが脚本を手掛けている。
岩手県陸前高田市、共同作業所「あおぎり」。大きな地震が起こり、建物が激しく揺れた。食器が割れる音が響く中、職員達は障害者達に必死に声を掛けた。一方、全国障害者ネットワークは支援の準備に取り掛かっていたが、障害者の足取りを掴むことができずにいた。彼らの前に立ちはだかったのは、個人情報保護法という法律だった。
詳細 星に語りて Starry Sky
パターソン
ジャンル:ヒューマンドラマ。日常の出来事を詩で書き残しているバス運転手の姿が描かれている。「第69回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門」出品作品。映画『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984)で一躍有名になったジム・ジャームッシュが、監督&脚本を担当した。アダム・ドライバー、ゴルシフテ・ファラハニの他、永瀬正敏が詩人役で出演している。
ニュージャージー州パターソン。街と同じ名前を持つパターソンは、バスの運転手として働いていた。妻のローラ、愛犬のマーヴィンとの生活は穏やかで、満ち足りたものだった。パターソンの趣味は詩を書くことで、日常であった出来事を密かにノートにしたためていた。ある日、ローラが素敵な夢を見る。
詳細 パターソン
映画『静謐と夕暮』の評判・口コミ・レビュー
#静謐と夕暮 鑑賞
追いかけてくる映画と追いかける映画があるとしたら、間違いなく後者な映画。
押し付けないし、与えようとしないし、ただそこにあって、観た人の数だけ感じる景色が違くて、気付いたら次のページを追いかけているような時間だった。優しくて穏やかだけど凄く挑戦的な作品。若き才能。 pic.twitter.com/BiNHwmf4D2— 小原徳子 Noriko Kohara (@norikokohara) January 8, 2022
『静謐と夕暮』鑑賞
夏の規則性と不規則性、不意に漂う死の影と生への模索
川、海、湖、人間はなぜ水辺に吸い寄せられるんだろう、なんてことをふと考えてしまう程の構図の魔力と余白時系列をバラしながら緻密に計算され紡がれる記憶と日常
後半で気づく、これは2回目で味が変わるタイプの作品だ pic.twitter.com/AL0xKr0NAe— . ☕︎ (@taithi3657) January 8, 2022
初日鑑賞。台詞も極端に少ない上に、多層化された記憶の時間軸を入れ替えられてる。なんのガイドもなしに一回見ただけでストーリーを把握することはおそらく誰もできないのでは。ただこれは作り手の思うツボでもある。もう一度観た上で細かい所まで誰かと語りたくなる作品。#静謐と夕暮 pic.twitter.com/XAuvco0xkn
— ライアン@vvunありがとう (@ryan_4649) January 8, 2022
映画『静謐と夕暮』のまとめ
梅村和史が監督&脚本を担当した作品。「第44回サンパウロ国際映画祭 新人監督コンペティション」にノミネートされており、業界内でも大きな注目を集めている。カゲという女性が原稿に綴った出来事を中心に、物語が進んでいく。草木の色や日常に馴染んでいる音が色濃く映し出されており、まるでその場所に立っているかのような気持ちにさせられる。東京・池袋シネマ・ロサのレイトショーにて1週間限定で上映されるため、忘れずにチェックして欲しい。
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