映画『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』の概要:孤独な青年とヴァンパイアの少女が思いを通わせていく、イランを舞台にしたモノクロのヴァンパイア映画。アナ・リリー・アミールポアーの長編映画デビュー作で、サンダンス映画祭などで高い評価を得た。
映画『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』 作品情報
- 製作年:2014年
- 上映時間:101分
- ジャンル:ホラー、ヒューマンドラマ
- 監督:アナ・リリー・アミールポアー
- キャスト:シェイラ・ヴァンド、アラシュ・マランディ、モズハン・マーノ、マーシャル・マネシュ etc
映画『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』 あらすじ【起・承】
薬物中毒の父ホセインを持つアラシュは、父の借金のカタとして、ドラッグの売人サイードに買ったばかりの車を奪われてしまう。
そしてアラシュは、勤め先の家の娘シャエダフの部屋から、出来心でピアスを盗んでしまう。
ピアスと交換に車を返してもらおうとするアラシュだったが、サイードは町で見かけた不思議な女性を部屋に連れ込み、そしてヴァンパイアである彼女に殺されていた。
貴金属を盗んで逃げる彼女とすれ違いにサイードの遺体を発見したアラシュは、ドラッグと大金を盗む。
そしてサイードの遺体を処分し、ドラッグの売人になろうとしたアラシュ。
シャエダフの話を思い出し、仮装パーティーにドラキュラの衣装で向かいドラッグを売ろうとするが、思惑とは逆にドラッグを飲まされてしまう。
帰り道、朦朧としたままのアラシュはサイードを殺したヴァンパイアの女の子に介抱され、彼女と一夜をともにする。
翌朝帰宅し、彼女のことを何も知らないと落ち込むアラシュ。
そのヴァンパイアの女の子は、サイードと組んで体を売っていた女性アッティを尾行し続けていた。
映画『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』 結末・ラスト(ネタバレ)
アラシュはヴァンパイアの女の子を呼び出し、彼女のことを知りたいと伝える。
そしてシャエダフから盗んだピアスをプレゼントするが、彼女はピアスの穴を開けておらず、アラシュにピアスの穴を開けてもらう。
自分は罪深いと拒絶する彼女に対して、アラシュはまっすぐに思いを伝えるが、彼女は受け入れなかった。
ホセインはドラッグの禁断症状で暴れるようになり、我慢の限界だったアラシュはお金を渡すと、ホセインを家から追い出す。
追い出されたホセインは、以前から熱を上げていた女性に無理やりドラッグを打ち、自らもドラッグを打って気分よく過ごそうとする。
サイードと組んで、仕事をしていたアッティだった。
そこに現れたヴァンパイアの女の子はホセインの血を飲み、意識が戻ったアッティとともに遺体を捨てる。
やがてホセインの遺体が発見され、ショックを受けたアラシュは荷物をまとめ、父を殺した犯人とは知らずに愛する人と共に町を出ようとする。
しかし父と共に家から追い出した猫、サイードから盗んだ貴金属の一部を見つけ、すべてを悟ってしまう。
それでも2人は車に乗り、猫を連れて町を出て行った。
映画『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
モノクロ映画ならではの面白さ
全編モノクロで撮影され、イランの廃れた町を舞台に父親に振り回されるが悪になりきれない孤独な青年と、一人で生きるヴァンパイアの少女の姿を、独特な構図で描いた作品。
イスラム教の女性が身にまとう“チャドル”を利用し、独特なヴァンパイアの少女を演出した。
顔だけを出す形の黒いチャドルは、「千と千尋の神隠し」のカオナシを連想させるものがあるが、スケボーに乗ってチャドルをマントのように翻す姿は、まるでダークヒーローの象徴のようでとても印象的。
モノクロ映画なので、血を吸うなどの残酷描写も見やすくなっている。
とにかくセリフが少なく、独特の世界観に入り込めないと面白くない作品だが、音楽の使い方や選び方が素晴らしくセンスの良さを感じ取れる。
しかし「アルゴ」にも出演している、ヴァンパイアの少女役のシェイラ・ヴァンドは、30歳を超えている。
年齢的な見た目が、日本人の視点と海外とでは感覚がズレているとはいえ、少女というには無理やりな感じが否めない。
最小限の台詞だからこそ作れた世界観
ドラッグ中毒の父親に振り回されてばかりの青年とヴァンパイアの少女が出会い、それぞれの人生が本人たちも知らないところで交差していき、青年の父が少女に殺められたことをきっかけに2人は町を出る決意をする、というストーリー。
セリフは最小限しか使われておらず、表情や動きだけで展開を見ていく必要がある。
見る人それぞれの解釈ができるようにも作られているが、わかりやすい演技とキャラクターによって、悩む必要のない作品に仕上がっている。
美しくて芸術的な女性も見やすいヴァンパイア映画だったように思います。ヴァンパイアと言うと、人間の血を求め、殺し…なんてイメージがありますが今作のヴァンパイアの女の子は物凄く人間的なんです。
衝動に駆られてしまうことも無く、淡々と目的を達成していく様子を静かな雰囲気で描いているので、彼女の冷静で落ち着いた美しさが作品全体に漂っていたような気がします。
恋と言うには大袈裟かもしれませんが、青年とヴァンパイアの女の子の心が間違いながらも繋がれていく感じがすごく心地よかったです。(女性 30代)
映画『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』 まとめ
製作総指揮には「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのフロド役で有名なイライジャ・ウッドの名前もある本作。幻想的なモノクロ映画、さびれたイランの町のヴァンパイアの少女と孤独な青年、そして猫とうまくチョイスされた音楽が素晴らしい作品。近年増え続けているヴァンパイア映画とは一線を置き、ありそうでなかった作品を上手く演出している。イランに滞在していた経歴のあるアナ・リリー・アミールポアー監督だからこそ描けたイランの街並みや、女性監督ならではの演出に引き込まれるような作品。
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