生活に困っていた男の前に、悪魔が現れた。悪魔は「水車小屋の裏にあるもの」と引き換えに、黄金を渡すと取引を持ち掛けてきた。男は取引に応じて大金を得るが、水車小屋の裏にいたのは自分の娘だった。
映画『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』の作品情報
- タイトル
- 大人のためのグリム童話 手をなくした少女
- 原題
- La jeune fille sans mains
- 製作年
- 2016年
- 日本公開日
- 2018年8月18日(土)
- 上映時間
- 80分
- ジャンル
- ファンタジー
ヒューマンドラマ
アニメ - 監督
- セバスチャン・ローデンバック
- 脚本
- セバスチャン・ローデンバック
- 製作
- 不明
- 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- アナイス・ドゥムースティエ
ジェレミー・エルカイム
フィリップ・ロダンバッシュ
サッシャ・ブルド
オリビエ・ブロシュ
フランソワーズ・ルブラン
エリナ・レーベンソン - 製作国
- フランス
- 配給
- ニューディアー
映画『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』の作品概要
セバスチャン・ローデンバックが監督・脚本・編集・作画を担当した作品。上映時間80分もある中、1人で作画を担当した。「クリプトキノグラフィー」と呼ばれる作画技法を使い、躍動感溢れる絵に仕上がっている。本作品は『グリム童話』の初版に載っている、『手なしむすめ』を現代版にアレンジした作品になっている。初版に載っているお話のため、残虐な部分が残されており、大人向けのアニメ映画となっている。悪魔と取引を行った父により、命を狙われることになった少女の波乱な人生について描かれている。
映画『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』の予告動画
映画『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』の登場人物(キャスト)
- 少女(アナイス・ドゥムースティエ)
- 父が悪魔と取引を行ったことにより、命を狙われることになる。
- 王子(ジェレミー・エルカイム)
- 少女を見初め、城へと連れて帰る。だが、その直後に戦場に行かなければならなくなる。
- 悪魔(フィリップ・ロダンバッシュ)
- 少女をつけ狙う。残忍で卑怯な性格。
映画『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』のあらすじ(ネタバレなし)
生活に困っていた男の前に、悪魔が現れた。悪魔は「水車小屋の裏にあるもの」と引き換えに、黄金を渡すと取引を持ち掛けてきた。水車小屋の裏にあったのは、リンゴの木だった。男は取引に応じ、大金を得た。
だが、悪魔が求めていたのはリンゴの木ではなかった。取引を行っているとき、男の娘がリンゴの木を登っていたのだ。悪魔はその娘を手に入れようとしていた。男は黄金を手放すこともできず、娘を差し出すこともできず、悪魔に追い詰められてしまう。娘はそんな父を救うため、両腕を切り落とすことになった。
家を出た娘の前に、王子が現れる。王子は娘を城に迎え入れ、義手を贈った。2人は恋に落ちるが、王子が戦争に旅立ってしまう。その間に、娘は王子との間にできた子供を産んだ。幸せに暮らしていた娘だったが、悪魔はまだ諦めてはいなかった。
映画『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』の感想・評価
グリム童話
本作品はグリム兄弟が出版した『グリム童話』の初版に載っている、『手なしむすめ』をアニメとして現代に蘇らせた作品になっている。『グリム童話』には他にも有名な作品が載っており、「ラプンツェル」や「灰かぶり(シンデレラ)」など、ディズニー映画を通して知っている人も多いと思う。だが、それらは子供向けにアレンジ、改変されたものである。
『グリム童話』は主にドイツで古くから語り継がれてきた民話や物語を、グリム兄弟が手を加えながら纏めた作品である。そのため、初版版では子供には聞かせられないような、残酷な描写がそのまま収録されている。
近年では、初版版の残酷な描写などが削られていない作品が、大人の間で人気を集めている。『手なしむすめ』でも両腕を斬られるなど、胸が痛むほど残酷な場面もある。だからこそ、少女が悪魔から逃げながら、必死に生きようとしている姿に心を動かされる。
セバスチャン・ローデンバック
セバスチャン・ローデンバックは、フランスで有名なアニメーション監督である。本作品では監督・脚本・編集・作画を担当している。一番すごいのは、上映時間80分の長編でありながら、たった1人でアニメーションを描き上げたことだ。美しい絵に音楽が合わさることで、動きにリアリティが出ている。
本作品では「クリプトキノグラフィー」と呼ばれる作画技法が使われている。この言葉は監督の造語で、「暗号」と「映画」を組み合わせた言葉である。監督はこの言葉に、動きの美しさを際立たせるという意味を込めている。その言葉通り、少女の髪が風で揺れ動くところ、川が勢いよく流れるところなど、1人で描いたとは思えないほど流動的で美しい場面に仕上がっている。
少女の数奇な運命
貧しいながらも家族と幸せに暮らしていた少女だったが、父が悪魔と契約したことにより今までの生活が一変してしまう。初めは金に眩んでしまった父だったが、娘の両腕が切り落とされ、家を出ていったことで自分の過ちに気づき命を絶ってしまう。
少女は王子に助けられ結婚することになるが、今度は戦争によって愛する人と離れ離れになってしまう。少女は王子との間にできた子供を育てながら王子の帰りを待つが、悪魔が2人の仲を引き裂こうと動き出していた。
父が悪魔と契約してしまったことで、少女は愛する人と一緒に暮らすという、人にとって一番大切なことができなくなってしまう。自分の意思ではないにも関わらず、悪魔につけ狙われてしまうのだ。それでも、必死に生きようと頑張り、王子との間にできた我が子のために悪魔から逃げようとする姿はとても勇ましくカッコいいと思う。この少女が最後には幸せに暮らせるようになるのか、ぜひ劇場で確認して欲しい。
映画『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』の公開前に見ておきたい映画
シンデレラ
『グリム童話』にも載っているお話。ディズニーアニメの『シンデレラ』(1950)は、フランスの文学者のシャルル・ペローが纏めた童話がモチーフになっている。ペローはグリム兄弟にも影響を与えた人物として有名である。映画制作者のウォルト・ディズニーは、この映画に27年の歳月をかけ、構想を練り上げている。
昔々、シンデレラという名前の美しい少女がいた。母はシンデレラが幼い頃に亡くなってしまっていたが、父と共に幸せに暮らしていた。だが、父は幼い我が子にはまだ母が必要だと感じ、ある女性と結婚をすることを決める。再婚相手の連れ子と共に、シンデレラは暮らすことになった。穏やかな暮らしだったが、父が亡くなったことで状況は一変する。継母は実の子と共にシンデレラに辛く当たり、召使のように扱き使った。
詳細 シンデレラ
イントゥ・ザ・ウッズ
グリム童話を現代版にアレンジし、「シンデレラ」「ラプンツェル」「赤ずきん」など、幸せな結末を迎えた登場人物達の“その後”を描いた作品。1987年に公開された同名のミュージカルが元になっている。本作品もミュージカル映画となっており、登場人物達の美しい歌声を聞くことができる。
昔々、王国の近くにある森の外れに、パン屋を営む夫婦が暮らしていた。その夫妻は慎ましやかに幸せに暮らしていたが、子供ができないことが悩みだった。実は、それは魔女の呪いのせいだった。昔、パン屋の父が魔女の田畑から野菜を盗み、恨みを買ってしまったのだ。魔女は悩む夫婦の前に現れ、呪いを解くために必要なアイテムを教えた。パン屋の主人はそのアイテムを集めるため、森の中へと足を踏み入れた。
詳細 イントゥ・ザ・ウッズ
かぐや姫の物語
ファンタジー×ヒューマンドラマが組み合わさったアニメ映画。宮崎駿と共にアニメ業界を大きく変えた、高畑勲最後の監督作品である。高畑勲はセバスチャン・ローデンバックが敬愛している人物でもある。企画から8年の歳月を経て完成させた作品。作品に使われている絵はアニメーターの書いた線が生かされており、躍動感溢れる動きになっている。
昔々、翁と媼は竹を取りながら暮らしていた。ある日、翁は光り輝く竹を発見する。その中には小さな赤ちゃんが入っていた。翁はその赤ちゃんを自宅へと連れ帰り、媼と共に大切に育てた。その小さな赤ちゃんの成長はとても早く、約半年ほどで少女の姿へと変身した。少女は近所の子供達と遊び、明るく元気にすくすくと成長していった。その中で、少女は子供達が口遊む歌を、自分は前から知っていたことに気づく。
詳細 かぐや姫の物語
映画『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』の評判・口コミ・レビュー
昨日公開の『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』は「線」に対して輪郭にとどまらない、モデリングとしての機能も担わせる意欲作です。その肉感的な描線はバスティアン・ヴィヴェスも彷彿とさせながら、私たちのエモーションを掻き立てる。
https://t.co/Yf1yZbttQC— 塚田優 (@yasashiiseikatu) 2018年8月19日
「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」めちゃくちゃカッコよかった。線はなくなっちゃうし、色もハッキリついていないんだけど、でもわかるんだよ。すごい動いてるんだよ。躍動感。こんなこと、アニメーションじゃなきゃ出来ない。
— 餅山田 モチ世 (@nakanakamotsuco) 2018年8月19日
「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」観賞
荒々しい手描きによる斬新なアニメーション映画
その荒々しさが躍動感をキャラクターの心情を雄弁に語る作品でした美しさ、生々しさ、醜悪さ
グリム童話に潜む闇の姿までも表現した素晴らしい作品でした。— タルバイン@豺 (@talbain_3rd) 2018年8月19日
私たちが生きているこの世界は棘のように痛く残酷なものだ。私たちは絶えず傷つき苦しみながら生きねばならない。『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』はその荒々しい筆の感覚によって人間の心と体の「辛さ」「解放」といった絶えず揺れ動く「情」と「感じ」を見事に表現している。
— タカギ (@Takushu16) 2018年8月19日
『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』、昨日からユーロスペースで公開中。アニメ―ションがあまり得意でない人でも、大人でも感銘を受けること間違いなしの非常にビターな作品です。私は何よりも語りたいことと手法の合致に感心しました。https://t.co/Sfn2KQL4nM
— 夏目深雪 (@miyukinatsu) 2018年8月19日
映画『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』のまとめ
セバスチャン・ローデンバック監督が1人で作画を行ったとは思えないほど、素晴らしい絵に仕上がっている。悪魔に追いかけられるというファンタジー要素があるものの、子供向けの『グリム童話』とは違い、どこかリアリティを感じさせる物語になっている。少女が自分の命や我が子のために奮闘する姿が、それを感じさせるのだと思う。物語の最後は原作とは違い、監督のアレンジが加えられている。ぜひ、少女が辿り着いた物語の結末を確認して欲しい。
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