アナトは夫を交通事故で亡くし、一人で息子を育てていかなければいけなくなる。悲しみに暮れる間もなく、休業していたカフェを再開した。ある日、ドイツからやって来た青年が店に現れ、ケーキ職人として雇って欲しいと頼まれる。
映画『彼が愛したケーキ職人』の作品情報
- タイトル
- 彼が愛したケーキ職人
- 原題
- The Cakemaker
- 製作年
- 2017年
- 日本公開日
- 2018年12月1日(土)
- 上映時間
- 109分
- ジャンル
- ラブストーリー
- 監督
- オフィル・ラウル・グレイツァ
- 脚本
- オフィル・ラウル・グレイツァ
- 製作
- イタイ・タミール
- 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- ティム・カルクオフ
サラ・アドラー
ロイ・ミラー
ゾハル・シュトラウス - 製作国
- イスラエル・ドイツ合作
- 配給
- エスパース・サロウ
映画『彼が愛したケーキ職人』の作品概要
イスラエルのアカデミー賞と言われている「オフィール賞」の作品賞や監督賞など、合計7部門を受賞した作品。その他にも「第52回 カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭、エキュメニカル審査員賞」や「第21回 マイアミ・ユダヤ映画祭、国際批評家連盟賞」など数々の賞を総ナメにしている話題作。カフェを経営するアナト、交通事故で亡くなったアナトの夫のオーレン、オーレンの恋人のトーマス、その3人の複雑な人間模様が描かれている。
映画『彼が愛したケーキ職人』の予告動画
映画『彼が愛したケーキ職人』の登場人物(キャスト)
- トーマス(ティム・カルクオフ)
- ベルリンのカフェでケーキ職人として働いていた。オーレンと恋人関係にあった。
- アナト(サラ・アドラー)
- オーレンと結婚しており、息子がいる。カフェを営んでいる。
- オーレン(ロイ・ミラー)
- アナトの夫。交通事故で亡くなる。
映画『彼が愛したケーキ職人』のあらすじ(ネタバレなし)
アナトは夫のオーレンと息子と共に幸せに暮らしていた。だが、ある日突然オーレンが交通事故で亡くなってしまう。アナトは悲しみの中にいたが、息子を育てるためにも休業していたカフェを再開しなければいけなくなる。そんな時、ドイツからやって来たトーマスが店に現れ、ケーキ職人として雇って欲しいと頼まれる。
トーマスが作るデザートは飛ぶように売れた。アナトは辛いときを支えてくれたトーマスに心惹かれるようになる。しかし、キスをしようとしたとき、顔を背けられ拒まれてしまう。アナトは深く傷ついた。
アナトはオーレンがクッキーを手土産に持って帰ってきてくれたことを思い出す。それは、トーマスが作ったクッキーとよく似ていた。実は、オーレンとトーマスは恋人関係にあった。トーマスはオーレンが亡くなったことを知り、カフェに来たのだった。
映画『彼が愛したケーキ職人』の感想・評価
複雑な三角関係
ヒロインのアナトは事故で突然夫を失い、1人で子供を育てなければならなくなる。辛いと気持ちを吐き出す時間もなく働く日々は、アナトにとってはとても辛いものだった。そんな時、トーマスという青年が現れ、カフェを手伝ってくれることになる。アナトが優しく真面目なトーマスに惹かれるのは必然だった。しかし、恋に落ちてからトーマスが夫と恋愛関係にあったことを知ってしまう。
トーマスは決してアナトを傷つけようとして彼女に近づいた訳ではなかった。トーマスもまた突然恋人を失ったことに深く傷つき、気持ちを持て余していた。アナトとトーマスは同じ痛みを抱える同志でもあった。全てを知ったアナトがトーマスに対してどのような感情を抱くのか、愛する人を失ったアナトとトーマスはどのように乗り越えていくのかが注目のポイントになっている。
無名俳優とイスラエルの人気女優の共演
トーマスを演じたティム・カルクオフは、まだ2010年にデビューしたばかりの無名の俳優である。しかし、2018年のヴァラエティ紙「観るべき10人のヨーロッパの俳優たち」に選出されており、素晴らしい才能を秘めている人物であるのは確かである。オフィル・ラウル・グレイツァ監督はインターネットで彼のことを知り、オーディションで選考した後彼の起用を決めた。
ヒロインのアナトを演じたのは、イスラエルで活躍しているサラ・アドラーである。サラはアメリカで女優デビューを果たした後、フランスに渡り、イスラエルで人気女優としての地位を確立した。アメリカ映画『マリー・アントワネット』(06)やフランス映画『アワーミュージック』(04)に出演している。
イスラエルのエルサレムが物語の舞台
イスラエルのエルサレムが物語の舞台になっている。イスラエルは科学研究に力を注いでおり、インターネットのセキュリティーの開発など世界でも重要な役割を担っている。その一方で、収入格差が激しく、深刻な貧困問題を抱えている。
総人口約800万人の内、約600万人がユダヤ人である。国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス党)が行ったユダヤ人大虐殺の記憶は薄れておらず、非ユダヤ人に対して反感を抱く人と、逆に傷つけられた記憶があるからこそ受け入れるべきだと言う人で意見が分かれている。
物語の中でも、アナトは「異邦人」であるトーマスを雇うことに忠告を受ける場面がある。「異邦人」を雇っていることで、客がカフェに来なくなる恐れもあるのだ。そんな危険を冒してまでも、アナトはトーマスを雇い続けているのである。それはアナトがトーマスに惹かれているのもあると思うが、辛いときだからこそ「異邦人」でもいいから傍にいて欲しいという思いもあったのかもしれない。
映画『彼が愛したケーキ職人』の公開前に見ておきたい映画
アワーミュージック
サラ・アドラーの代表作。1950年代から活躍しているフランス出身のジャン=リュック・ゴダールが、監督・脚本を務めている。物語は「王国1:地獄編」・「王国2:煉獄(浄罪界)編」・「王国3:天国編」の3部作で構成されている。「2004年カンヌ国際映画祭」や「2004年釜山国際映画祭」など、世界各国の映画祭で上映された。
ゴダール自身も作品内に登場している。「王国1:地獄編」では実際に起きた戦争や紛争の映像が使われており、ドキュメンタリー映像とフィクション映像をモンタージュして作られている。戦争を嘆く内容になっている。「王国2:煉獄(浄罪界)編」では、ナード・デュー演じる女学生とゴダールが出会い、「王国3:天国編」では女学生が亡くなったことをゴダールが知る内容になっている。
詳細 アワーミュージック
GF*BF
男性2人と女性1人の27年間の軌跡を描いたラブストーリー映画。台湾を舞台にしており、1980年代から2000年代の台湾の社会情勢も垣間見えるようになっている。ヒロインのグイ・ルンメイは方言をマスターして髪の毛を伸ばすなど、リン・メイバオという役に真摯に向き合って撮影に挑んだ。そして、ルンメイは「第49回台湾金馬奨・主演女優賞」を受賞している。
1985年戒厳令下の台湾。美宝・忠良・心仁の3人は、教官達に監視される息苦しさを感じながらも仲良く高校生活を送っていた。美宝は心優しい忠良に思いを寄せていたが、忠良は心仁に美宝のことをただの友達だと話していた。ショックを受けた美宝は、心仁からの告白を受け入れてしまう。2000年代久しぶりに3人で会うが、関係は修復できないところまできていた。
詳細 GF*BF
洋菓子店コアンドル
ケーキ屋が舞台の作品。蒼井優×江口洋介が共演している。深川栄洋が監督を務めている。深川は東野圭吾原作の小説を元に作られた『白夜行』(10)で監督を務めた人物である。映画を見ていると思わずケーキを買いに行きたくなるほど、美味しそうで綺麗なケーキが物語の中にたくさん登場している。
街角にある小さな洋菓子店「コアンドル」。臼場なつめは恋人の海千尋を追って、その「コアンドル」を訪れた。しかし、海は既に店を辞めていた。なつめは「コアンドル」のケーキに惚れ込み、パティシエとして雇って欲しいとオーナーに頼んだ。無事に雇われることになったが、なつめは失敗ばかりしていた。そんな時、元・天才パティシエで現在評論家として活躍している十村に出会う。
詳細 洋菓子店コアンドル
映画『彼が愛したケーキ職人』の評判・口コミ・レビュー
『彼が愛したケーキ職人』同じ男を愛した男女の喪失と再生の先で、国や宗教観が遮ろうとも、同化していく愛の行方。愛する実像を失った者達の悲喜を繊細に捉えるシーンの数々が抑えられているのに深く刺さる。甘酸っぱい黒い森を抜けて安らぎの日へ。 https://t.co/IaeIwA42kk
— Monsieur おむすび (@Pooh_kuru_san) 2018年12月3日
『彼が愛したケーキ職人』
カフェで働くケーキ職人の男は、出張でやってくる馴染みのお客と恋人関係となるが、彼には妻子がいた。ヒューマンドラマ作。〝彼〟を愛した2人の男女の物語は不思議な空気感があり、ケーキなどお菓子の素敵さもある内容。テンポがとても緩やか。#映画館 pic.twitter.com/Y1PUUrR4AU— 伊ト直 (@itonao70) 2018年12月4日
『彼が愛したケーキ職人』鑑賞。夫を亡くした妻がオープンさせたカフェにドイツ人青年がやって来る。彼を雇い入れ次第に想いを募らせてゆく妻。青年の生み出す焼菓子の優しい味に心の隙間を埋めるように彼を求めるも真実は残酷であった。森のケーキは同じ男を愛し失った男女の甘さと苦さが混じり合う… pic.twitter.com/ArtofzEhKY
— なえ (@78k_noopy) 2018年12月3日
彼が愛したケーキ職人③その思いを乗せた囁くようなピアノの調べが切なく、クレズマーっぽいジャズも聞こえてくる。ドイツ人とユダヤ人という大きな命題をさりげなく背景にしながら、逆に個々人の心の襞の細やかな感情を丁寧に掬い撮る監督の手腕は見事で、長編デビュー作ながら多くの賞に輝いている。 pic.twitter.com/IC3Wc4Y6kl
— アクツイッター (@pyonpikun) 2018年12月2日
『彼が愛したケーキ職人』
“同じ男を愛した女と男”
LGBTへの考慮とか関係なく、愛する対象に制限などない。
愛したならそれが全てだ。愛の深さと優しさを教えてくれる温かい映画
劇中に登場するケーキがどれも美味しそうでお腹が減ってしまう。
15時過ぎのおやつ映画に丁度良いビターな作品だった pic.twitter.com/6mAk86SMP0— AKIRA@映画垢 (@movielike77) 2018年12月1日
映画『彼が愛したケーキ職人』のまとめ
ただのラブストーリー映画ではなく、複雑な三角関係が描かれている。ヒロインのアナトは事故で突然夫を亡くし、女手一人で息子を育てなければいけなくなる。悲しい気持ちを癒してくれた青年・トーマスは、実は夫の恋人であった。きっと夫が生きている状態でトーマスに出会えば、アナトはトーマスを深く憎むことになったのだと思う。しかし、アナトが真実を知ったときには夫は既に亡くなっており、逆にトーマスに心の傷を癒してもらうことになる。アナトの思いはどのような結末を迎えるのか非常に気になる内容になっている。
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