アメリカ人気コミックの実写映画『キャプテン・マーベル』で主演を務めた人気女優・ブリー・ラーソンが、自身の出世作『ショート・ターム』でタッグを組んでいたデスティン・ダニエル・クレットン監督と再共演。関係を絶っていた父との再会が、彼女を変える。
映画『ガラスの城の約束』の作品情報
- タイトル
- ガラスの城の約束
- 原題
- The Glass Castle
- 製作年
- 2017年
- 日本公開日
- 2019年6月14日(金)
- 上映時間
- 133分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- デスティン・ダニエル・クレットン
- 脚本
- デスティン・ダニエル・クレットン
- 製作
- ギル・ネッターケン・カオ
- 製作総指揮
- マイク・ドレイク
- キャスト
- ブリー・ラーソン
ウッディ・ハレルソン
ナオミ・ワッツ
マックス・グリーンフィールド
サラ・スヌーク
ジョシュ・カラス
ブリジット・ランディ=ペイン - 製作国
- アメリカ
- 配給
- ファントム・フィルム
映画『ガラスの城の約束』の作品概要
『ルーム』で、長年に渡る監禁生活という地獄のような日々からの見事な脱出劇を演じ、アカデミー賞最優秀女優賞を獲得したブリー・ラーソン。デスティン・ダニエル・クレットン監督と2013年の『ショート・ターム』での共演以降、2度目となる今作では、ニューヨークで人気コラムニストとして活躍し、自立した大人の女性である反面、幼少期の「少女」頃の葛藤と揺れる人間模様を描き出す。全米の売り上げランキング1位に輝いた大ベストセラー『The Glass Castle』で綴られた家族の深い愛が、美しい映像になってスクリーンに登場。
映画『ガラスの城の約束』の予告動画
映画『ガラスの城の約束』の登場人物(キャスト)
- ジャネット・ウォールズ(ブリー・ラーソン)
- ニューヨーク・マガジンで人気のコラムニスト。美しく聡明で自立した芯のある女性だが、幼少期に壮絶な経験をしている。
- レックス・ウォールズ(ウディ・ハレルソン)
- ニューヨークのストリートで自由気ままに暮らすホームレス。ジャネットの父親。元はエンジニアとして働いていた。
- デヴィッド(マックス・グリーンフィールド)
- ジャネットの恋人で、ファイナンシャル・アドバイザーとして務めている。マンハッタンのパークアベニューのアパートメントにジャネットと同棲している。
- ローズマリー・ウォールズ(ナオミ・ワッツ)
- 売れない画家。ジャネットの母親。定職に就かず夫のレックスと共に自由奔放な生活を送っている。
映画『ガラスの城の約束』のあらすじ(ネタバレなし)
アメリカのニューヨークで、人気コラムニストとして働くジャネット。彼女は、「ニューヨーク・マガジン」で専用ページを持っており、やりがいを感じながら毎日忙しい日々を送っていた。
ジャネットには恋人のデヴィッドがおり、彼はファイナンシャル・アドバイザーとして働くエリート。マンハッタンのパークアベニューにある富裕層が暮らす洒落たアパートメントに、2人は同棲生活を送っていた。デヴィッドの顧客と、高級レストランで食事をしたときのこと。とある会話の中で、話題はジャネットの親のことになる。
「母はアーティスト、父は企業家のエンジニア」。これは、ジャネットが作り出しこれまで何度も吐いてきた嘘であった。レストランからの帰り道、ふと車窓から外を見ると薄暗い路地で誰かがゴミを漁っていた。
そのホームレスの男性は、まぎれもないジャネットの父親であった。自由気ままで奔放に暮らす父親と母親。ジャネットの脳裏には、拭い切れない痛くて苦しい家族の記憶が何度も甦る。
映画『ガラスの城の約束』の感想・評価
人気コラムニスト・ジャネットが語る自身の半生
ジャネット・ウォールズという人物は、名門女子大学バーナード・カレッジを卒業後、多くの雑誌経験を経て、現在はオンラインニュースサイトで有名人のゴシップ記事を担当している。コラムニストとして絶大な人気があり、彼女が執筆した自叙伝の「The Glass Castle」は、270万部を売り上げるという驚異の数字をたたき出した。
ジャネットが自叙伝を執筆するに当たり、自分がこれまで生きてきた人生の中で、家族は切っても切り離すことのできない大きな存在であることを再認識した。そして、子供にとって両親から与えられる愛情はすべからく素晴らしいものであり、その愛情がどんな形であれどの家族にも存在していることを理解するようになったという。全ての家族には、それぞれの家族の物語が存在しており、それは、人生を生きる中で良くも悪くも多くの意味をもたらしてくれる。
だからこそジャネットは、大切な兄弟たちと共有してきた大切な時間を、発表することを決めた。そして、そんなジャネットの思いが、世界中の人々の心に深く突き刺さったのだ。成功した人生を歩み、豪華なアパートメントに住むジャネット。そんな彼女からは想像もつかない壮絶な人生は、多くの人の共感を呼んだ。
子供の存在を脅かす「毒親」
最近の日本でも、親による子供への虐待で幼い子供の命が奪われるという痛ましい事件が後を絶たない。報道される事件は年々増え続け、それに伴い警察や児童相談所に集まってくる問い合わせも数が増える一方だという。
抵抗のできない小さな体を痛めつけ、沢山の未来に溢れた子供の命を奪う残酷な所業。日本では、全ての子供たちが平等に教育を受ける権利があり、平等に最低限の生活を保障されているはずである。しかし、実際には「毒親」と呼ばれる存在によって、子供たちの生活は制限され、SOSのあげ方を知らない子供たちの存在は、社会から切り離されていく。
ジャネットの両親は、子供が当たり前に受ける教育に対して無頓着であった。ジャネットの両親は、子供たちに自分たちなりの「人生の歩み方」を教え、夢を与え、星を贈る。しかし、一方で暴力的であり常に貧困で、社会から「逃げる」生活を送る。傍から見たら間違いなくジャネットの両親は「毒親」と分類される人間たちである。しかし、ジャネットが言うように「家族には愛が存在する」ため、そこには一つ一つのドラマが生まれ、解決しがたい問題が浮遊する。
日本で公開されるべき期待の映画
先述したとおり、日本では児童虐待の報道は後を絶たず増加の一途を辿る。未来ある子どもたちを守るためには、そうした子供たちがいることと、そうした「毒親」たちがいることをまず知らなくてはならない。
主演を務めるブリー・ラーソンは、2013年の『ショート・ターム』や2015年の『ルーム』で複雑かつ特異な幼少時代を送ることになり、後に自立していく女性を演じきっている。今作も、決して人には明かせない秘密を抱えていたが、それに向き合うことで本当の自分の生き方を見出していく女性の葛藤を描き出している。虐待を受けた子供たちが、将来大人になり、全員が全員ジャネットのように成功するとは限らない。子供たちの中には、相手が「毒親」であることや、世間一般的な親ではないことを理解しながらも、離れられない者もいる。
しかし、だからこそジャネットの経験はそうした子供たちはもちろんのこと、「普通」の家庭で育ってきた人たちは知るべきなのだ。ラーソンが演じるジャネットは、家族を突き放そうとしてもやはり寄り添ってしまい、恋人との関係も悪化し、過去が自分を苦しめる。人間には誰しもそういうときが必ずあるが、懸命に家族や愛する人のために奔走するラーソンを、きっと見ている人は応援したくなる。
映画『ガラスの城の約束』の公開前に見ておきたい映画
ルーム
第88回アカデミー賞で、主役を演じたブリー・ラーソンが最優秀主演女優賞に輝いた話題作品。ブリー・ラーソンが少年を抱きしめ、向き合って微笑み合う一見したらとても温かみのある作品である。だが、その作品の中身はそのイメージからは想像もつかないほど恐ろしい内容になっている。
この作品は、『部屋』という原作が元になっているが、原作者でもあり映画の脚本も担当したエマ・ドナヒューによれば、オーストラリアで実際に起きた凶悪な監禁事件がモデルになっている。事件は「フリッツル事件」と呼ばれており、被害者は実の父親に24年間自宅の地下室に閉じ込められていた42歳のエリーザベト。その間に、エリーザベトは父親から性的な虐待も受け、7人もの子供を産まされることとなった。そして、何も知らない妻は、いなくなった娘の子供たちを養子として迎え、育てていたという恐ろしい事件である。
この事件の概要を聞いただけで、胸が痛い話だが、『ルーム』が話題になったのは主演のブリー・ラーソンの白熱の演技だけではない。息子ジャックを演じたジェイコブ・トレンブレイ君の演技も迫真のものであり、多くの観客が涙を流した。衝撃的な事件を経験してなお、2人が現実の世界で懸命に生きる姿を目に焼き付けてほしい。
詳細 ルーム
ショート・ターム
デスティン・ダニエル・クレットン監督が2013年に制作したドラマ映画。クレットン監督自身が脚本も務め、今作でも主演を務めたブリー・ラーソンが主演を務めた。ラーソンは、多くの問題を抱える10代の若者たちが集まるグループホームのケアマネージャーを演じた。
この映画は、もともとクレットン監督が制作した「Short Term 12」が原作となっている。ティーンエイジャーの施設で、クレットン監督自身の体験も元にし、執筆・制作された。映画は2013年サウス・バイ・サウスウエスト映画祭で初上映され、好評化が寄せられた。ラーソンの高い演技力も相まって、クレットン監督には賞賛が集まり、多くの褒章が与えられた作品である。
この映画では、実に様々問題を抱えたティーンエイジャーたちが登場するが、彼らは皆同様に親の愛情に飢え、自分のアイデンティティーを確立できず、己の意思を伝える正しい術を身に着けていない。そうした少年少女たちに、ラーソン扮する施設のケアマネージャー・グレイスは、親身になり1人ずつ寄り添っていく。子供たちは少しずつ本来の笑顔を取り戻し、グレイスと心を通わせていく。悲劇を繰り返さないように、悲しい子供をこれ以上増やさないように、必死になってぶつかっていくグレイスの姿に、胸を打たれる。
詳細 ショート・ターム
ナチュラル・ボーン・キラーズ
1994年に製作され、ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞したバイオレンス映画である。オリバー・ストーンが監督を務め、映画の主人公であり大量の殺人鬼のミッキー・ノックスをウディ・ハレルソンが演じた。ウディ・ハレルソンといえば、1996年の『ラリー・フロント』でアカデミー賞とゴールデングローブ賞の主演男優賞にノミネートされており、そちらの作品の方が有名なはずである。
だが、今作『ガラスの城の約束』でホームレスの父親役を演じたウディ・ハレルソンの姿は、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のミッキーとどこかかぶるところがある。もちろん、ジャネットの父親であるレックス・ウォールズは殺人犯ではない。だが、愛する人と一緒に自由奔放に生き子供たちにも「自由」を強要するウォールズ夫妻と、大量の殺人を夫婦で繰り返すノックス夫妻には、通ずるものがある。ウォールズ夫妻も社会から「逃げ」ていたが、ノックス夫妻も自分たちを縛り痛めつける者たちから「逃げ」ている。
この「逃げ」というものは、人生においてとても重要な役を担っており、時には自分を守る盾にもなる。ノックス夫妻も壮絶な過去を歩んできた者同士で、寄り添い慰め合い励まし合う。一方からの判断では、悪と断定できない揺さぶられる映画である。
映画『ガラスの城の約束』の評判・口コミ・レビュー
『ガラスの城の約束』と『メモリーズ・オブ・サマー』。
どちらも親視点、子視点の双方で大いに考えさせられる毒親(と一概に切り捨てられない厄介な親)映画だった。
今この二本のハシゴが出来る恵比寿ガーデンシネマは素晴らしい。 pic.twitter.com/085gx5s8dW— エンバ (@enba_mitsuyoshi) 2019年6月15日
『ガラスの城の約束』鑑賞。ホームレスの両親に育てられた女性の半生を描いたデスティン・ダニエル・クレットン監督作品。屈折した親子愛、いわゆる「毒親」を題材にした映画に心惹かれてしまうのは何故。『はじまりへの旅』をヘビーにしたようなシナリオが好み。ブリー・ラーソンの力強い演技も最高。 pic.twitter.com/1kbCw45q7E
— だよしぃ (@purity_hair) 2019年6月15日
ガラスの城の約束。狂った親に洗脳される継承の物語。CaptainFantasticっぽい良さげな話に見せかけてHereditaryよねコレ笑。監督はかなり意図的に作ってると思う。曲者役者達の演技力で粉飾してはいるけど描いてるのは前作につながる家族という呪い。敢えてボカシを外したエンドロールが一番怖かった。 pic.twitter.com/7kKNygC8Bt
— シネマダイアリー (@susan6662) 2019年6月14日
『ガラスの城の約束』
あんなに綺麗な瞳でイケオジなハレルソンの演技力は、救いようがないクズなのに見限ることが出来ない父親に圧倒的説得力を持たせる。
父と娘、父と母、父と祖母。
1割の光があれば9割の闇にも目を瞑れてしまう親子、夫婦の絆と愛は果たして救いなのか呪いなのか。
感動作かつ怪作 pic.twitter.com/9qWFNw9Rv6— エンバ (@enba_mitsuyoshi) 2019年6月15日
『ガラスの城の約束』映画館にて88本目。
破天荒で滅茶苦茶でアル中な父親とそれに振り回される家族の物語。実話を元にしてるだけに変にツッコミは入れられないが、結末には少々不満も。ただブリー・ラーソンとウディ・ハレルソンの演技力あって、夢中で観てしまいました。 #EDDIE映画2019 pic.twitter.com/dpTOo6OkOh— EDDIE@来季こそKingsPlayoffいこう (@eddie2yuji) 2019年6月15日
映画『ガラスの城の約束』のまとめ
ジャネットたち兄弟を学校に通わせず、大自然から学べと豪語する父親のレックス。父は学がないわけではなく、子供たちに物理学や天文学を教え、語り合い人生について生き方を示してくれた尊敬できる存在であった。だが、その半面で酒を飲み暴言や暴力を振るい子供たちの心を傷つけていく。愛する家族、大切な家族のために「ガラスの城」を建てるという夢を持っていた父親。大人になって今なら、それがどれだけ馬鹿げたことで、夢物語なのか理解している。だが、幼く純粋だったあの頃は、夢の実現が待ち遠しく、家族みんなでお城に住めることを心待ちにしていた。誰もが共感できる家族の物語は、とても切なく本当に大切な心の核を思い出させてくれる。
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