領土を奪われた小国・沛(ペイ)は、強国の炎国と休戦同盟を結んだ。それから20年、いつ領土を奪われるか沛の心配がなくなることはなかった。沛の重臣・都督は王に判断を仰がず、勝手に炎国の楊蒼に対決を申し込んだ。その都督には、ある秘密があった。
映画『SHADOW 影武者』の作品情報
- タイトル
- SHADOW 影武者
- 原題
- 影 Shadow
- 製作年
- 2018年
- 日本公開日
- 2019年9月6日(金)
- 上映時間
- 116分
- ジャンル
- アクション
- 監督
- チャン・イーモウ
- 脚本
- チャン・イーモウ
リー・ウェイ - 製作
- エレン・エリアソフ
チャン・チャオ - 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- ダン・チャオ
スン・リー
チェン・カイ
ワン・チエンユエン - 製作国
- 中国
- 配給
- ショウゲート
映画『SHADOW 影武者』の作品概要
『三国志』の「荊州争奪戦」にインスパイアを受けて作られた作品。日本でも人気の映画『HERO』(02)や『LOVERS』(04)を手がけたチャン・イーモウが監督を務めた。小国・沛の家臣である都督が、自分の影武者を利用して領土を取り戻そうと画策する様子が描かれている。主演を務めたダン・チャオは都督と影武者の二役に挑戦し、激しい戦闘シーンを演じた。中国の水墨画から発想を得て撮影が行われており、光と影の描写は他の映画にはない美しさがある。
映画『SHADOW 影武者』の予告動画
映画『SHADOW 影武者』の登場人物(キャスト)
- 都督(ダン・チャオ)
- 読み方、トトク。沛の国の重臣。強国である炎国との開戦を望んでいる。琴の名手。
- 影武者(ダン・チャオ)
- 都督の影武者。通称、影。8歳の頃に母と行き別れになり、飢えていたところを都督の叔父に拾われる。
- 小艾(スン・リー)
- 読み方、シャオアイ。都督の妻。琴の名手。影武者に対して愛情を抱くようになり、夫との間で気持ちが揺れ動く。
- 沛の国の王(チェン・カイ)
- 読み方、ペイの国の王。強国である炎国との開戦を望んでいない。先王は早死にし、都督のお蔭で王に就くことができた。妹がいる。
映画『SHADOW 影武者』のあらすじ(ネタバレなし)
かつて、命を脅かされる危険に遭った王や貴族達は、密かに自分の身代わりを仕立てていた。その身代わりは「影」と呼ばれた。領土を奪われた小国・沛(ペイ)は、強国の炎国と休戦同盟を結んだ。20年後、沛の国民達は領土を奪われる不安に苛まれ続けていた。
沛の重臣で開戦派の都督は、王に判断を仰がず炎国の楊蒼将軍に対決を申し込んだ。開戦を望んでいなかった王は、都督と妻の小艾に琴の合奏を命じた。しかし、小艾は命令に従おうとはしなかった。実は、都督は影武者で、本物は1年前から病に侵されていた。都督の影武者は、自由と引き換えに楊蒼を倒すよう指示されていたのだった。
都督の影武者は楊蒼を倒すために訓練を続けた。小艾は影武者だと分かっていながらも、彼と接する内に愛情を抱き始める。果たして、影武者の運命は?
映画『SHADOW 影武者』の感想・評価
『三国志』の「荊州争奪戦」
本作品は『三国志』の「荊州争奪戦」にインスパイアを受けて作られた作品である。『三国志』とは魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく)の三国が覇権争いを繰り広げていた時代を書いた歴史書のことで、これを元に制作された小説が『三国志演義』である。「荊州争奪戦」では、三国が荊州を自分の支配下に置こうと、激しい争いを繰り広げる様子が描かれている。
本作の脚本を執筆したのは、監督を務めたチャン・イーモウと新進気鋭の脚本家リー・ウェイである。強国・炎国の支配に怯えながらも、策略を巡らせる小国の沛(ペイ)の家臣達の様子が描かれている。激しい戦闘シーンと共に、狡猾な王、野心に燃える家臣、自分を追い求める影武者など、登場人物達の関係性や心情にも注目して欲しい。
影武者
主演を務めたダン・チャオは、小国・沛(ペイ)の重臣である都督と影武者の二役を演じている。影武者では「傘」を使った激しい戦闘シーンと共に、自由を追い求めながらも自分とは一体何者なのか苦悩する男を演じた。そして、都督のときでは20kgの減量を行い、病に苦しみながらも野心に燃える人物を熱演した。
影武者を描いた作品だけあり、光と影の描写が美しい作品となっている。これは、チャン・イーモウ監督が中国の水墨画から発想を得て、撮影に取り込んでいるからである。撮影監督を務めたのはチャオ・シャオティン。映画『LOVERS』(04)で「第77回 アカデミー賞・撮影賞」と「2005年英国アカデミー賞・撮影賞」にノミネートされている。
中国で活躍する一流の役者達が出演
主演として都督と影武者の二役を演じたダン・チャオは、映画『ドラゴン・フォーシリーズ』や映画『人魚姫』(16)などに出演している。彼が出演した作品の中国での興行収入は、総額で100億元以上もある。中国で活躍する俳優の中でも、特に人気の高い人物である。
都督の妻でありながらも影武者に惹かれるヒロインの小艾を演じたのは、実生活でもダン・チャオの妻であるスン・リー。スン・リーは2004年に日本で放送されたサントリーウーロン茶のCMに出演していたことがある。テレビドラマ『宮廷の諍い女』で主人公の甄嬛を演じ、「国際エミー賞・女優部門」ノミネートされた。女優として高い演技力を持った人物である。
その他にも、ハリウッドスターのマット・デイモンが主演を務めたことでも話題になった映画『グレートウォール』(16)に出演していたチェン・カイや、「第23回東京国際映画祭・最優秀男優賞」を受賞したことがあるワン・チエンユエンなど、人気俳優が多数出演している。
映画『SHADOW 影武者』の公開前に見ておきたい映画
LOVERS
チャン・イーモウ監督の代表作。日本でも人気の台湾出身の俳優・金城武が主演を務め、中国出身の女優・チャン・ツィイーがヒロインのシャオメイを演じた。「第57回カンヌ国際映画祭」で特別上映され「第30回LA批評家協会賞・外国映画賞」を受賞するなど、世界中で話題になった作品。
唐王朝の時代。政治が腐敗し、反乱軍が乱立していた。捕吏(罪人を逮捕する)のジンとリウは、反乱軍の1つ「飛刀門」という組織を一網打尽にするため動いた。そして、前頭目の娘で盲目のシャオメイについての情報を得る。ジン達はシャオメイを捕らえるが、彼女は組織について何も話そうとはしなかった。そこで、ジンがシャオメイを逃がし、仲間の振りをして組織のアジトを突き止めることにした。果たして、作戦の行方は?
詳細 LOVERS
ドラゴン・フォー 秘密の特殊捜査官 隠密
ダン・チャオの代表作。中国で人気のウェン・ルイアン原作のベストセラー小説を元に制作された作品。『ドラゴン・フォーシリーズ』の第一弾目。2013年に第二弾目が、2014年に第三作目がそれぞれ制作されている。特殊能力を持つ四人の秘密捜査官を中心に描いたファンタジーアクション時代劇映画。
中国宋代末期。偽金事件が都を揺るがしていた。皇帝直属の特務機関「神侯府」の頭目である諸葛正我は、秘密捜査官を率いて捜査に乗り出した。しかし、事件の調査を行っていた首都警察の「六扇門」と対立してしまう。諸葛正我は秘密捜査官の鉄手、無情、新たに仲間に加わった冷血と追命と捜査を続けた。ついに首謀者を突き止めるが、巨大な謎と陰謀が立ちはだかる。
詳細 ドラゴン・フォー 秘密の特殊捜査官 隠密
レッドクリフ Part1
『三国志』を元に制作された作品。『三国志』の中でも前半のクライマックスの部分となる、「赤壁の戦い」が描かれている。2009年に続編の『レッドクリフ Part2 未来への最終決戦』が公開された。特別出演として中村獅童が出演している。2011年には日本で舞台化されており、劇団EXILEが公演を行った。
曹操は80万人の大軍を率い、君主として帝国を支配していた。天下統一を行おうとするが、劉備と孫権の存在が邪魔になっていた。そこで、曹操は軍を率い、劉備を襲撃した。劉備は民と共に何とか撤退するが、劣勢に立たされる。軍師の諸葛亮孔明は、孫権と手を組むよう劉備に進言した。劉備と孫権は曹操に打ち勝つことができるのだろうか?
詳細 レッドクリフ Part1
映画『SHADOW 影武者』の評判・口コミ・レビュー
『SHADOW/影武者』:チャン・イーモウ…70歳の天才児!死角ゼロの傑作。風と雨の武侠。『HERO』の華麗な色彩設計と対照的な、美術と衣装を全て黒と白で創り上げた圧倒的な”美の仕事”。凶悪な「傘」が襲来する斬新なアクション。そして愚王の皮を被った策士役チェン・カイの名演…あなた誰ですか!? pic.twitter.com/uFh9WWTT1G
— ゆか (@yuka) 2019年9月6日
『SHADOW 影武者』面白い!黒澤の「影武者」の色彩に対しこちらは水墨画の美。ラブ・シーンはレッドクリフ同様気恥ずかしいものがあるけど、雨の中の傘のアクションは独創的だし、何より見応えあるのはそこに描かれる策謀と、畳み掛ける展開の向かう先のエンディングの切れ味。ミステリ好きにもお勧め pic.twitter.com/EoRsW2JtU1
— 丙ウマ・サーマン (@hinoeumathurman) 2019年9月7日
チャン・イーモウの影武者 SHADOWスゲー良かった…刃を円状に重ねて傘に仕立てた超カッコいい武器と青龍偃月刀のぶつかり合いにより水墨画の静謐な世界観に血が滴っていく究極の映像美と爽快なバトルが交錯しながら目に襲いかかる最高な映画体験が出来るのでオススメでございます pic.twitter.com/cgkzLeJsdg
— スカ (@skaska96) 2019年9月7日
「SHADOW 影武者」
決して身を明かさず自分を捨てて影に徹する姿を、戦争戦略の中で復讐劇 愛憎劇をこれでもかと言わんばかりの映像美、影の立場を印象付ける雨雨雨、その中での内と外の攻防が活きている。ラストの畳み掛けはチャン・イーモウ監督の情念を重ね知らしめる。 pic.twitter.com/qqQ6b3TBDu— man ますだ (@M6358738810) 2019年9月7日
#イオンシネマ草津 で、チャン・イーモウ監督の『#SHADOW影武者 』鑑賞。水墨画の様な白と黒を基調とした美術や衣装の圧倒的な様式美に、影の立場を雨模様の天候が更に印象付ける中、白黒に赤い鮮血が滴るといった軽快なバトルと交錯しながら迫りくる耽美な映像美が見事!!後半の畳み掛ける演出に脱帽! pic.twitter.com/fxYCryLJ8s
— HALU6700 (@HALU7100) 2019年9月10日
映画『SHADOW 影武者』のまとめ
強国の炎国に支配された小国・沛(ペイ)を舞台に、野心に燃える家臣や運命に翻弄される影武者の姿を描いた作品。主人公が使う「傘」を模した特殊な武器は、迫力と美しさを兼ね備えている。特に、CGをほとんど使わず、肉体を極限まで使った戦闘シーンは圧巻である。チャン・イーモウ監督が「自分の本当に撮りたい映画に巡り合った」と述べているだけあり、街並み、人体の動き、表情など細部までこだわりを持って作られている。
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