数々の巨匠を生み出しているスペイン映画界。その中から選りすぐりの10作品をピックアップ。
スペイン映画のおすすめランキング10選
日本では馴染みの薄いスペイン映画。実はかなりの傑作揃いなのだが、それが知れ渡っていないのは非常に残念である。エロチック描写やグロ描写などの規制が緩いため、表現方法がかなり過激ではあるが、日本映画ともハリウッド映画とも違う魅力にハマる事間違いないだろう。美人女優が多いのも特徴である。今回はその中でも代表的なおすすめ作品を紹介します。
第1位 BIUTIFUL ビューティフル
注目ポイント&見所
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品。主演はハビエル・バルテム。末期ガンと診断された男の最後の日々を描く作品。黒澤明の「生きる」を元に作られているのだが、今作は考えられる限り最悪の結末を選んでいるのが特徴的。まったく救いがないように思えるのだが、ラストで死んだ父と再会するシーンは感動的だ。たとえ現世では幸せがつかめなくとも、希望はどこにでもあると思える素晴らしい作品。
第2位 パンズ・ラビリンス
注目ポイント&見所
ギレルモ・デルトロ監督作品。主演はイバナ・バケロ。スペイン内戦という暗い時期を描いたダークファンタジー。残酷の世界で生きる希望を持てない少女は、空想の世界に希望を見出していく。デルトロ監督が描く奇抜で残酷な空想世界は必見である。特にクリーチャーの造形が素晴らしく、子供なら悪夢にうなされる事は間違いないほどの出来栄えである。
詳細 パンズ・ラビリンス
第3位 永遠のこどもたち
注目ポイント&見所
J・A・バヨナ監督作品。主演はベレン・ルエダ。孤児院再建中に、謎の怪異事件に遭遇する女性の物語。とにかくホラー描写・ショッキング描写が抜群に上手く、何度も悲鳴を上げてしまうほど怖い。だがこの映画の根底にあるのは母性愛であり、こどもたちの正体が判明する終盤は感動的ですらある。ホラーとドラマが融合した稀有な存在として、この映画は必見の一作だと言える。
詳細 永遠のこどもたち
第4位 REC レック
注目ポイント&見所
ジャウマ・バラゲロ監督作品。出演はマヌエラ・ベラスコ。POV視点のゾンビ映画として数々の模倣作品を生み出した名作。シリーズはリメイク作品を含めると、計6作にも及ぶ。残虐描写も凄まじいが、徐々にオカルトへと移行していくシナリオの妙も見事である。終盤に登場する拒食症の女のモンスターは、ホラー映画史に残るほどの恐ろしさ。赤外線カメラなど、アイテムの使い方も素晴らしい。
詳細 REC レック
第5位 刺さった男
注目ポイント&見所
アレックス・デ・ラ・イグレシア監督作品。出演はホセ・モタ。頭に鉄筋が刺さった男を巡る、人生の悲喜劇を描いたブラックコメディ。どう考えても一発ネタでしかないような内容で94分引っ張った手腕は見事。欲望うずまく事故現場を舞台に、様々な人間模様を極めてドライな視点であぶり出して行く。大笑いしたいのだが、頭が痛くなる。そんな不思議な作品である。
詳細 刺さった男
第6位 インポッシブル
注目ポイント&見所
J・A・バヨナ監督作品。出演はナオミ・ワッツ。スマトラ島沖地震による津波被害を描いた感動大作。バラバラになった家族が再会するラストは、予想はついていても号泣する事は必至。しかし今作の凄さとは、R指定がつくほどの残酷描写。「永遠のこどもたち」のバヨナ監督は、今作では津波のシーンでホラー的演出を試みた。容赦ない人体破壊シーンは目をそむけたくなるが、これでも実際の事故の凄惨さには遥かに及ばないだろう。日本人としても必見の一作である。
詳細 インポッシブル
第7位 アレクサンドリア
注目ポイント&見所
アレハンドロ・アメナーバル監督作品。出演はレイチェル・ワイズ。4世紀のエジプトに実在した女性天文学者ヒュパティアを主人公にした歴史映画。排他的なキリスト教によって迫害される様をリアルに描いていく。アメナーバルは、今作において監督としてさらにもう一歩先のステップに到達したと言っても過言ではないだろう。宗教、男女の愛、対立する思想、人間同士の憎しみ。様々なテーマを内包している傑作中の傑作である。
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第8位 オープン・ユア・アイズ
注目ポイント&見所
アレハンドロ・アメナーバル監督作品。出演はエドゥアルド・ノリエガ。後にハリウッドで「バニラ・スカイ」としてもリメイクされた作品。夢オチといっては身も蓋もないが、語り口が見事なために最後まで観客は騙されてしまう。エドゥアルド・ノリエガの性悪なプレイボーイ役も見事だが、ペネロペ・クルスの透明感あふれるヒロイン像も魅力的だ。エロチックな隠喩に満ちた、SF映画の傑作である。
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第9位 デビルズ・バックボーン
注目ポイント&見所
ギレルモ・デル・トロ監督作品。制作はペドロ・アルモドバル。出演はエドゥアルド・ノリエガ。舞台は内戦時代のスペインのとある孤児院。子供達が夜な夜な起こる怪異事件に悩まされる幽霊譚である。ホラーというよりもしっかりとした人間ドラマに作り上げている所に好感が持てる。不発弾が残っているという奇抜な設定の中庭や、地下室の恐ろしくも美しいビジュアルなどは、さすがはデルトロ監督である。
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第10位 海を飛ぶ夢
注目ポイント&見所
アレハンドロ・アメナーバル監督作品。出演はハビエル・バルデム。事故により全身麻痺となった主人公が、尊厳死を求めて戦うという物語。日本ではなかなか正面切って描けないような内容を、見事な人間ドラマとして昇華させている。実在の人物を元にしただけあって、鑑賞後には色々と考えさせられてしまう。なぜ人は生きるのか? どうして人は死にたがるのか? どうして人は死んではいけないのか? 答えはなかなか出るものでない。だがこの男はその答えを出したのだ。スペイン映画の一つの到達点がここにはある。
詳細 海を飛ぶ夢
まとめ
感動作、ホラー映画、コメディ映画など、様々なジャンルに渡って傑作の多いスペイン映画。世界的な巨匠も多く、コアなファンも多い。今回のランキングには外れたものの、ペドロ・アルモドバル、ビガス・ルナ、フリオ・メデム、イザベル・コイシェなど、見逃せない監督も多数いる。同性愛を公言している監督も多く、倫理的な規制が少ないのも特徴的だ。これを機会にスペイン映画に触れてみるのも一興かもしれない。
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