山奥に密かに存在する、男子禁制の集落。大麻の売買で成立していたその集落に、外部からの人間が足を踏み入れた。閉鎖的空間の中で進行する、禁断の物語から目が離せない。
映画『クシナ』の作品情報
- タイトル
- クシナ
- 原題
- なし
- 製作年
- 2018年
- 日本公開日
- 2020年7月24日(金)
- 上映時間
- 70分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- 速水萌巴
- 脚本
- 速水萌巴
- 製作
- 不明
- 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- 郁美カデール
廣田朋菜
稲本弥生
小沼傑
佐伯美波
藤原絵里
鏑木悠利
尾形美香 - 製作国
- 日本
- 配給
- アルミード
映画『クシナ』の作品概要
主人公を担当した郁美カデールは、本作が記念すべき初映画出演。そして、監督である速水萌巴も、本作が長編デビュー作。無名の監督、出演陣によって製作された本作。そんな本作が、あらゆる実力派を抑え、大阪アジアン映画祭2018でジャパンカッツアワードを受賞したのだ。まさに、全員の期待を良い意味で裏切ってくれたと言っていい本作。それだけ、作品としての質が高いことが窺える。好きなキャストがいないから、と食わず嫌いをしていては必ず損をする。
映画『クシナ』の予告動画
映画『クシナ』の登場人物(キャスト)
- 奇稲(郁美カデール)
- 山奥の集落で暮らす14歳の少女。母親である鹿宮と共に閉鎖的な空間の中で暮らしていた。
- 風野蒼子(稲本弥生)
- 人類学者として活動する女性。後輩の原田を連れ、集落を訪れた。
- 鬼熊(小野みゆき)
- クシナ達が暮らす集落の村長。彼女が人里に降りて、大麻を売った金で集落の女性達は生活している。
映画『クシナ』のあらすじ(ネタバレなし)
クシナは、とある山奥で密かに暮らしていた。彼女が暮らす集落は、世間一般からすると、かなり異端な場所であった。その集落で暮らすのは女性のみ。さらには、村長である鬼熊が山を降りて、大麻を売買して稼いだ金で生計を立てているという状況。そんな中、集落にとある人物がやってきた。人類学者の風野蒼子と後輩の原田恵太である。彼らは閉鎖的なコミュニティで生活を営んでいる人々に関する調査を行っており、その途中、この集落を見つけたのだ。なぜか、二人の短期間の滞在を許した鬼熊。自分たちの集落以外の世界を知らない女達。二人のイレギュラーの登場によって、女達の生活が一変する。そして、葛藤の末、女達は何を決断するのか。
映画『クシナ』の感想・評価
無名の監督が大躍進
大阪アジアン映画祭2018で、一つの奇跡が起きた。大阪アジアン映画祭とは、2005年から開催されている、主にアジアに関連する映画を上映する映画祭。その映画祭で、ジャパンカッツアワードを受賞したのが本作。正直、誰一人としてこの結果を予測してはいなかっただろう。なぜなら、その映画祭には、既に実力派で知られる宮崎大祐監督の『TOURISM』、他の映画祭で既に賞を獲得している竹内洋介監督の『種をまく人』など、実力派が集結していたからだ。一方で、本作の監督、速水萌巴は、本作が長編デビュー作となる。処女作にして、並いる実力者を抑えての受賞。一体、本作の何が審査員の心を動かしたのか。末恐ろしい才能を、是非スクリーンで確認しよう。
閉鎖的空間
本作の主人公達は、山奥で密かに暮らす女性達。閉鎖空間というものは、人々に恐怖を与える傾向にある。ソリッドシチュエーションなど、閉鎖空間を舞台としたホラー作品が数多くあることからも、同じことが言える。限定された空間、人員で構成された集団全体が、イレギュラーが起きることで、少しずつ狂気へと向かっていく。しかし、本作はホラー作品ではない。ソリッドシチュエーション特有の緊迫感で視聴者を飽きさせないだけではなく、これまで自分達の世界で生きてきた女性達の気付きや葛藤など、繊細な変化を捉えた、どこか儚く美しい作品に仕上がっている。ホラー作品が苦手という人でも楽しめる、美しいソリッドシチュエーション作品。
郁美カデールの存在感
本作の主役を務めたのは、郁美カデール。彼女の名前を耳にしたことがないという人も多いだろう。それもそのはず、彼女にとって、本作が映画初主演となるのである。さらに、彼女はまだ若干13歳。普段はモデルとして活動している彼女だが、まだデビューしてからも日が浅い。今回の主役起用はまさに大抜擢と言えるのだ。彼女のデビューのきっかけは、なんとあの土屋アンナにスカウトされたため。13歳にして、すでに170cmを超える身長に、ハーフらしい濃い顔立ち。10人中10人の目を惹くと言ってもいい魅力の持ち主。土屋アンナも認めるその存在感。まだ若いが、将来は彼女のように、カリスマ性の溢れた人物に成長するかもしれない。本作のヒットにより、シンデレラガールとなれるか。
映画『クシナ』の公開前に見ておきたい映画
The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ
最新作は、山奥にある男子禁制の集落が舞台。一方、こちらは女性しかいない、森深くにある女子学園が舞台。南北戦争が終わってから3年が経過した。ファーンズワース女子学園では、5人の女生徒と2人の女教師が生活を共にしていた。しかし、そのうちの一人、エミリーが負傷した北軍の伍長を連れ帰ってしまう。長らく男性と関わってこなかった彼女達。彼女達は男性である伍長に惹かれ、我先にとアピールを始める。そんな状況を楽しんでいた伍長だったが、少しずつ事態は狂気性を帯びていき…?女性だけの環境という点、彼女達の世界に外部者が入ってきたことによって、全てが変わっていくというストーリー展開が共通している一作。
ワンダーウーマン(2017)
自分が生まれ育った環境が、自分にとっての基準となる。側から見ればあまりに不可解な環境であっても、自分にとってはそれが当たり前なのである。最新作の主人公も、男性禁制の、大麻の売買で成立していると言う山奥で育った。本作のヒロイン、ダイアナもまた、男性禁制、戦士となることが当たり前の島で育つ。しかし、そんな島に、『外の世界』から、スティーブ・トレバーという一人の青年が迷い込んでくる。とある事情から彼と旅をすることになったダイアナ。広い世界を知ることで、彼女のそれまでの『当たり前』が大きく変わっていく。果たして、ダイアナは戦いの神アレスの魔の手から人間界を救うことができるのか。
カメラを止めるな!
大物俳優が出演していたり、有名監督がメガホンを取っていれば、作品に一定の注目が集まるのは当然。勿論、それら全てが面白いわけではないのだが、興行収入が伸びやすいこともまた事実。しかし、全く無名の監督、無名の俳優を起用していたとしても、爆発的ヒットとなる例も存在する。本作は、近年における例としては最も相応しいのではないだろうか。本作誕生のきっかけは、監督&俳優養成スクール「ENBUゼミナール」シネマプロジェクト。出演している俳優達も、まだ無名の人物ばかり。300万円という低予算でありながら、2018年の邦画興業収入第7位を獲得するなど、まさに天下を取ったと言っても過言ではない結果を残した。制作陣の豪華さはなくとも、映画としての質が高ければ観客の心を掴むことができる。果たして最新作は、この勢いに続けるか。
詳細 カメラを止めるな!
映画『クシナ』の評判・口コミ・レビュー
『#クシナ』
世界のどこかにあるかもしれない小さな閉ざされた村の話
でもそれは社会を強く意識しているようにも思えた
その世界観を長編初の #速水萌巴 監督が繊細にそして意欲的に作り上げた
見た目の美しさはわかる
それ以上に内的な美しさを感じた
キャスト陣も良かった#郁美カデール #廣田朋菜 pic.twitter.com/aHY1gM7D0q— さいちん (@taimaidayo) July 24, 2020
映画「#クシナ」初日舞台挨拶観終わった。
女性だけが暮らす集落の人々の話ですが、撮影が4年前との事で主演の #郁美カデール ちゃんが映画の中よりずっと大人っぽく成長しててビックリしました。
ストーリー的にもう少し足すか削ぎ落として短編にするかした方が良かったかも知れませんね。 pic.twitter.com/bZ4oFppjyR— tokaiteo (@tokaiteo) July 24, 2020
映画『クシナ』のまとめ
男子禁制の女性の園。人里離れた山深くに密かに存在し、大麻を売買し生計を成立させている。この設定を聞くだけで、興味がそそられないだろうか。設定が興味深くなければ、どれだけ豪華キャストでも中々手を出そうとは思わないだろう。その点において、本作は既に他作品よりも一歩リードしているといえる。どこか背徳的な雰囲気が醸し出されていることも、大きな魅力の一つ。人は、少し危険な物に不思議な魅力を感じる傾向にある。中々日常では味わうことができないスリルを、作品に求めているのかもしれない。この夏、スリルを感じたい大人に向けた一本。
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