81歳のアンソニーは、ロンドンで独り暮らしをしていた。認知症の症状が進行しており、現実と記憶の境目が曖昧だった。娘のアンは新しい恋人とパリで新生活を送ろうとしていたが、父を放っておくことができなかった。
映画『ファーザー』の作品情報
- タイトル
- ファーザー
- 原題
- The Father
- 製作年
- 2020年
- 日本公開日
- 2021年5月14日(金)
- 上映時間
- 97分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- フロリアン・ゼレール
- 脚本
- クリストファー・ハンプトン
フロリアン・ゼレール - 製作
- デビッド・パーフィット
ジャン=ルイ・リビ
サイモン・フレンド - 製作総指揮
- オリー・マッデン
ダニエル・バトセック
ティム・ハスラム
ヒューゴ・グランバー - キャスト
- アンソニー・ホプキンス
オリビア・コールマン
マーク・ゲイティス
イモージェン・プーツ
ルーファス・シーウェル
オリビア・ウィリアムズ - 製作国
- イギリス・フランス合作
- 配給
- ショウゲート
映画『ファーザー』の作品概要
戯曲『Le Père 父』を元に制作された作品。戯曲を手掛けたフロリアン・ゼレール自身が、監督を務めている。実力派俳優アンソニー・ホプキンスが主演を務めており、オリヴィア・コールマン、マーク・ゲイティス、イモージェン・プーツなど高い演技力を誇るキャストが集結している。「第78回ゴールデン・グローブ賞」主要4部門にノミネートされているだけでなく、本年度のアカデミー賞最有力候補と言われている作品。認知症を患う父と娘の父娘の絆が描かれた物語。
映画『ファーザー』の予告動画
映画『ファーザー』の登場人物(キャスト)
- アンソニー(アンソニー・ホプキンス)
- 81歳。ロンドンで、独り暮らしをしている。認知症により、現実と記憶の境界が曖昧になる。
- アン(オリビア・コールマン)
- アンソニーの娘。独りで暮らす父のことを心配しており、介護人を手配する。
映画『ファーザー』のあらすじ(ネタバレなし)
アンソニーは1937年12月31日生まれの81歳。ロンドンで独り暮らしをしている。最近記憶が薄れ始めてきており、何が現実に起きていることなのか分からなくなっていた。娘のアンのことだけでなく、自分自身のことさえ記憶が曖昧になる。認知症の症状が進行していた。
アンは新しい恋人とパリで新しい生活を始めようとしていたが、父を独りにしておくことができなかった。介護人を雇おうとするが、アンソニーに拒否されてしまう。さらに、アンソニーは施設にも行く気がなく、自宅で暮らすことを切望していた。
アンはアンソニーを病院に連れて行った。そこで、アンソニーは娘のルーシーのことを思い出し、彼女のことを話した。ルーシーはどこに行ったのか、アンソニーは覚えていなかった。
映画『ファーザー』の感想・評価
戯曲『Le Père 父』
本作はフロリアン・ゼレールが手掛けた戯曲『Le Père 父』を元に制作された作品である。フランス演劇界の最高の賞と言われている「モリエール賞」で「最優秀脚本賞」を受賞しており、批評家から高い評価を受けた。戯曲『Le Père 父』はフランス国内に留まらず、世界各国で上演されている。日本でも俳優の橋爪功と女優の若村麻由美が共演し、2019年に上演された。
フロリアン・ゼレール自身が本作の監督を務めており、長編映画監督デビューを果たした。脚本を手掛けたのは、フロリアン・ゼレールとクリストファー・ハンプトン。クリストファー・ハンプトンは「第48回カンヌ国際映画祭・審査委員特別賞」と「脚本賞」を受賞した映画『キャリントン』(1995)を手掛けたことで有名な人物である。
実力派俳優の共演
認知症を患う父のアンソニー役を務めたのは、イギリス出身の俳優アンソニー・ホプキンス。映画『羊たちの沈黙』(1991)でハンニバル・レクター博士役を務め、世界的に有名になった。また、「第64回アカデミー賞・主演男優賞」を受賞し、高い演技力が評価された。最近は、映画『2人のローマ教皇』(19)で実在の人物、第265代ローマ教皇ベネディクト16世を演じて大きな話題を集めた。
アンソニーを支える娘のアン役を務めたのは、イギリス出身の女優オリビア・コールマン。テレビドラマ『ナイト・マネジャー』シリーズに出演し、「エミー賞・助演女優賞(リミテッドシリーズ・テレビ映画部門)」にノミネートされている。映画『女王陛下のお気に入り』(18)ではアン女王を演じ、「ゴールデン・グローブ賞 主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)」を受賞している。
認知症と父娘の切ないやり取り
「第93回アカデミー賞」で「作品賞、主演男優賞、助演女優賞、脚色賞、編集賞、美術賞」にノミネートされた作品。主人公のアンソニーは81歳で独り暮らしをしている。現実と記憶が混濁するときがあり、認知症の症状が見られた。娘のアンは介護人を手配して父の暮らしをサポートしようとするが、アンソニー自身に拒否されてしまう。アンソニー視点で物語が進んで行くため、現実と記憶の間で苦しんでいる彼の様子がはっきりと伝わってくる。
日本では2018年の時点で、約7人に1人が認知症を発症していると言われている。この物語は、決して他人事ではない。アンソニーとアン父娘の絆と、病によって翻弄される切ない二人のやり取りをぜひ目に焼き付けて欲しい。
映画『ファーザー』の公開前に見ておきたい映画
2人のローマ教皇
アンソニー・ホプキンスが第265代ローマ教皇のベネディクト16世を演じており、「第92回アカデミー賞・助演男優賞」にノミネートされている。ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿とベネディクト16世の対話を描いた作品。実話を元に制作されている。「2019年ハリウッド映画賞・ハリウッド脚本賞」を受賞している。
ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世が亡くなり、ベネディクト16世が次のローマ教皇に決まった。2012年、極秘の教会文書がリークされ、汚職や司祭の性的虐待事件などが明らかになった。ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿はこの件をきっかけに辞職することを決意し、ベネディクト16世と面会した。だが、ベネディクト16世に引き止められてしまう。
詳細 2人のローマ教皇
女王陛下のお気に入り
オリビア・コールマンが主演を務めた作品で、アン女王を演じている。「第91回アカデミー賞・主演女優賞」を始め様々な賞を受賞(またはノミネート)しており、高い評価を受けている作品。アン女王を取り合う二人の女性の姿が描かれている。映画『ロブスター』(15)を手掛けたヨルゴス・ランティモスがメガホンを取った。
18世紀グレートブリテン王国を支配していたのは、気まぐれなアン女王と強気なマールバラ公爵夫人のサラだった。アン女王は戦争が続いていることを知らず、優雅な生活を送っていた。サラはそんなアン女王の行いを諫め、公私共に支えていた。ある日、没落した貴族の娘・アビゲイルが宮廷にやって来る。アビゲイルはアン女王の気を引こうとし、サラと争うようになる。
詳細 女王陛下のお気に入り
長いお別れ
ジャンル:ヒューマンドラマ。認知症を患う父と家族の絆を描いた作品。中島京子原作の小説を元に制作されている。テレビ東京開局55周年記念作品。「第11回TAMA映画賞・最優秀映画賞」を受賞している。蒼井優、竹内結子、松原智恵子、山﨑努、北村有起哉など、豪華なキャストが集結した。
東家の長女・麻里は恋人の今村新と結婚し、カリフォルニアに移住した。海外での暮らしは不安が多く、慣れない生活に疲弊していた。次女の芙美は仕事も恋人との生活も上手くっておらず、悩みを抱えていた。ある日、父の昇平の誕生日に母に呼ばれ、麻里と芙美は実家に帰った。その時、昇平が認知症を患っていることを知る。母は一人で懸命に父のことを支えていた。麻里達は変貌してしまった父の姿にショックを受ける。
詳細 長いお別れ
映画『ファーザー』の評判・口コミ・レビュー
『ファーザー』新作映画59本目。
劇中は涙腺崩壊、終幕後は放心状態…アンソニー・ホプキンスとオリビア・コールマンのアカデミー賞コンビが織り成す演技のアンサンブル。
圧巻の演技は勿論、認知症の苦しみを擬似体験できる脚本には舌を巻く。ホプキンス主演男優賞に納得する他ない。 #EDDIE映画2021 pic.twitter.com/YVmwz49kWe— EDDIE@Kings31-40👑 (@eddie2yuji) May 15, 2021
『ファーザー』鑑賞。何て素晴らしい演技と技巧だろう。会話劇での役者の力を信じ、映画の時空ジャンプの特性を活かしサスペンス色豊かに難しいテーマを形にする。その純度と抑えた感傷面で高い完成度。アンソニーを拍手し抱きしめたくなる。他人事でなく辛かったが見なくてはいけない映画だった。 pic.twitter.com/e2r7jc83Gb
— Taul (@TaulNcCar) May 15, 2021
映画「#ファーザー」
ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは認知症により記憶が薄れ始めていた…🎥
恐いやら悲しいやら様々な感情に押し潰されそうになった
決して誰も悪くないが、それは家族を苦しめ、自分をも苦しめる
誰にでも訪れる可能性があるのだから、尚の事考えさせられる
これは傑作 pic.twitter.com/5biOb28pSf— ザキシマ@映画垢 (@zakishima_movie) May 15, 2021
No.467
「ファーザー」(2020年)
★★★★
名優A・ホプキンスが83歳にして主演男優賞に輝いたスリラー。その凄まじい狂気と悲哀はまさに圧巻だった。
認知症患者の主観で混迷を描く着想も実に素晴らしい。家の中に見知らぬ人物が出現し、時間や空間の概念すら崩壊してゆくストーリーに震える。傑作。 pic.twitter.com/n1yvHvRmEQ— たろう@20時コワい映画レビュー (@tm19880113) May 15, 2021
#ファーザー
大傑作。
素晴らしい脚本と美術、撮影が認知症を体感させてくれた。頭をどれだけ回転させても何が現実か分からないのは恐怖さえ感じた。
アンソニー・ホプキンスの演技は圧巻。症状や困惑は痛いほど伝わってくる一方で、人間味溢れる関わり方は魅力的。
映画館で観られて本当に良かった。 pic.twitter.com/077pekWfck— エーコ (@eiko_movie) May 15, 2021
映画『ファーザー』のまとめ
「ゴールデン・グローブ賞」に4部門ノミネートされ、本年度のアカデミー賞で最有力と言われている作品。映画の元になった戯曲『Le Père 父』を手掛けたフロリアン・ゼレール自身が監督を務め、クリストファー・ハンプトンと共に脚本を手掛けている。認知症を患った父と、父を支えようと苦悩する娘の姿が描かれている。記憶を失っていく中、父アンソニーは何を思うのか。そして、父娘の関係は一体どうなってしまうのか。物語の行方を見届けて欲しい。
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