世界の映画界で観るべき20人のうちの1人として賞賛を浴びているバリー・ジェンキンス監督が仕掛けるのは、愛よりももっと深く尊い運命で繋がった恋人たちの物語。『ムーンライト』をアカデミー賞へ導いた監督の、愛と希望に満ちた作品が幕を上げる。
映画『ビール・ストリートの恋人たち』の作品情報
- タイトル
- ビール・ストリートの恋人たち
- 原題
- If Beale Street Could Talk
- 製作年
- 2018年
- 日本公開日
- 2019年2月22日(金)
- 上映時間
- 119分
- ジャンル
- ラブストーリー
ヒューマンドラマ - 監督
- バリー・ジェンキンス
- 脚本
- バリー・ジェンキンス
- 製作
- アデル・ロマンスキー
サラ・マーフィ
バリー・ジェンキンス
デデ・ガードナー
ジェレミー・クレイマー - 製作総指揮
- ミーガン・エリソン
ブラッド・ピット
サラ・エスバーグ
チェルシー・バーナード
ジリアン・ロングネッカー
キャロライン・ヤーツコー - キャスト
- キキ・レイン
ステファン・ジェームス
コールマン・ドミンゴ
テヨナ・パリス
マイケル・ビーチ
デイブ・フランコ
ディエゴ・ルナ
ペドロ・パスカル - 製作国
- アメリカ
- 配給
- ロングライド
映画『ビール・ストリートの恋人たち』の作品概要
長編映画2作品目にして、第89回アカデミー賞ではライバルの『ラ・ラ・ランド』を抑えて作品賞に導いた名監督・バリー・ジェンキンス。彼がずっと映画化を夢見ていた、黒人作家・ジェイムズ・ボールドウィンの『ビール・ストリートの恋人たち』を原作に、ジェンキンス監督自ら脚本を担当する。そして、『ムーンライト』でアカデミー賞にノミネートされた撮影・音楽チームが再び集結し、運命で繋がれた恋人たちの強い絆を描き出す。主人公・ティッシュ役には映画初出演して初主演の期待の新人・キキ・レインが挑む。
映画『ビール・ストリートの恋人たち』の予告動画
映画『ビール・ストリートの恋人たち』の登場人物(キャスト)
- クレメンタイン・”ティシュ”・リヴァーズ(キキ・レイン)
- 19歳の黒人の女性で、ファニーと結婚の約束をしている。現在妊娠中。ファニーが無実の罪で捕まったため、彼の無罪放免のために証拠集めをする。
- アロンゾ・”ファニー”・ハント(ステファン・ジェームス)
- 22歳の黒人の青年。ティッシュとは幼馴染の関係で、婚約者でもある。無実の罪で拘置所に拘束されている。
映画『ビール・ストリートの恋人たち』のあらすじ(ネタバレなし)
19歳のティッシュは、地元ニューヨークの街で幼いころから一緒に過ごしてきたファニーと結婚の約束をする。ティッシュのお腹の中には、2人の愛を象徴する新しい命が宿っていた。「赤ちゃんができたの」とティッシュから告げられたファニーは、その嬉しい報告に歓喜し、これからの輝かしい未来をティッシュと共に語り合う。
しかしある日、ニューヨークの街を歩いていたファニーは、白人警官と小さな諍いを起こしてしまう。そして、それが元で警察官から謂れのない強姦罪を言い渡され逮捕されることに。裁判で有罪判決が出てしまえば、2度と幸せな時間は戻ってこない。
ティッシュは、ファニーが受けた屈辱を晴らすため、家族や友人らと協力して無罪の証拠を探して奔走する。だが、一度捕まった黒人が無実を立証するには、夥しい数の困難を乗り越えなければならなかった。休む間もなく降りかかる試練に耐え、2人は愛を勝ち取ることができるのか。魂の試練が、今始まろうとしていた。
映画『ビール・ストリートの恋人たち』の感想・評価
アカデミー賞監督が究極の愛の物語に挑む
『ビール・ストリートの恋人たち』の監督・脚本を担当したのは、2016年公開の『ムーンライト』でアカデミー賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督。彼は、2016年最も話題となった映画の1つである『ラ・ラ・ランド』を抑えて、アカデミー賞作品賞を受賞したことで知られている。その監督が次に手掛けるのは、1970年代、かの有名なキング牧師と活動を共にしていたと言われている黒人作家・ジェイムズ・ボールドウィンの作品。
ジェイムズ・ボールドウィンは、20世紀半ばのアメリカ合衆国における人種差別をテーマにした作品や活動に力を入れており、小説の他にも劇・詩・随筆なども手掛けていた。更に、同性愛者などの性的マイノリティや彼らのアイデンティティへの問題提起も積極的に行い、社会的コンプレックスをテーマにした作品を多く残している。
ジェンキンス監督は、監督活動の初期に、ジェイムズ・ボールドウィンの作品『ビール・ストリートに口あらば』の作品化を目指していたが、実現には至っていない。そうした経緯もあり、以前よりの夢であった『ビール・ストリートの恋人たち』の映像化には並々ならぬ意欲があった。
社会問題の裏で奔走する人々
黒人が無実の罪で逮捕・起訴され2度と日の目を浴びることのなくなった事件や、その場で銃殺されてしまうなど、アメリカでは黒人と白人の事件が絶えない。そのたびに社会問題になるが、根本の解決は難しい。疑い、殺すことは簡単だが、相手には必ず家族がいて悲しむ人がいるのだということ、この映画は教えてくれる。人は必ず誰かと愛で結ばれているのだと、実感しないではいられない。
主人公ティッシュは、19歳にして愛する人と結ばれ、愛する人の子を身ごもり、将来を夢見て幸せの絶頂にいた。しかし、恋人がちょっとした諍いを起こしたから疑いの目を向けられ、権力の元に逮捕され拘留されてしまう。
何の証拠もなしに、疑うだけで逮捕し交流してしまうなど、無罪となったら日本では大問題になるだろう。しかし、21世紀も4分の1が過ぎた現代でですらアメリカではそれが日常茶飯事の出来事。
こうした事件が1つ起きるたびに、その人の家族や友人や大切な人たちはどれだけ傷つき、屈辱の中を生きていることだろうか。そして、真実を歪めて報道されることで謂れのない中傷を浴び、生活することになる。
どうか自分自身に関係ないと思わないで、これは黒人と白人の問題だけでないのだと、少しでも分かってくれたらと願ってしまうような映画である。
新人女優とアカデミー賞期待の俳優人たちが勢揃い
この映画の主人公、19歳の幸せの絶頂にいる少女ティッシュを演じるのは、オーディションを勝ち取った新人女優のキキ・レイン。彼女は、以前からいくつかのオーディションに参加していたが、今作が映画初出演となる。
また、無実の罪で逮捕されたファニーを助けるために奔走するティッシュを支える母親役に、エミー賞女優のレジーナ・キングが抜擢される。既にゴールデン・グローブ賞の助演女優賞を受賞したレジーナは、アカデミー賞の助演女優賞有力候補でもある。
恋人のファニーは、アカデミー賞主題歌賞を受賞した2014年公開『グローリー / 明日変行進』に出演しているステファン・ジェームス。その他にも実力十分な黒人キャストが勢揃し、新人キキ・レインの脇を固める。
製作総指揮には、『ムーンライト』にもかかわっていたブラッド・ピットも名を連ね、そうそうたる面々が勢揃いする。
映画『ビール・ストリートの恋人たち』の公開前に見ておきたい映画
ムーンライト
2016年公開、第89回アカデミー賞作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督作品。主演のトレヴァンテ・ローズが一面に映っているポスターの色彩は印象的で、独特な雰囲気を醸し出している。黒人青年の幼少期から大人になるまでを描いた物語で、同性愛についても言及している。子供時代・ティーンエージャー時代・大人時代でそれぞれ違う俳優が主人公・シャロンを演じており、物語も3部構成となっている珍しいものである。
内気な性格から周りとなじめず、いじめを受けている少年シャロン。シャロンを取り巻く環境は劣悪で、母子家庭で育つシャロンは薬物中毒に陥っている母親を憎んでいる。唯一の友人であり理解者でもあるクラスメイトのケヴィンは、いじめられているシャロンを助けつつも、他のクラスメイトから脅され仕方なくシャロンを殴りつける。
自分をいじめていたクラスメイトを椅子で殴ったことで、逮捕され少年院に行ったシャロンだが、結局少年院を出て自分がやれることは、母親を貶めた薬物の売人になることだけ。恵まれなかった環境の中で、シャロン少年がもがき苦しむ姿は印象的で、数少ない人間に心を許したときのシャロン少年の姿は胸を打つ。
また、大人になり疎遠になっていたケヴィンとの再会シーンも、複雑な思いと長すぎる年月でぎくしゃくする様子がとてもリアルに描かれ、共感せずにはいられない。
詳細 ムーンライト
Ray/レイ
『ビール・ストリートの恋人たち』で母親シャロン・リヴァーズ役を演じ、ゴールデン・グローブ賞他数々の賞で助演女優賞を獲得したレジーナ・キングの出演作品。2004年に亡くなった、アメリカを代表するミュージシャン・レイ・チャールズの伝記映画である。
盲目というハンデを持ちながらも、天才的な音楽センスで人々の心を鷲掴みにしたピアニスト・レイ・チャールズ。R&B、ソウル、ゴスペルなど黒人音楽、所謂ブラックミュージックの第一人者でもある。
レジーナ・キングは、レイ・チャールズが1957年頃から恋人にしていたマージー・ヘンドリックスを演じている。レコード会社を移動したことで引っ越した先にもついてくる献身的な姿を見せ、レイ・チャールズとの間には1人の息子を設ける。だが、息子が3歳児になる頃にマーシーはヘロインで死亡してしまう。
レイ・チャールズ自身、17歳の頃に覚えたヘロインがずっと生活の中に入り込み、逮捕・勾留され禁断症状で苦しみながらも麻薬を断つ1965年頃まで麻薬を欠かすことはなかった。
テレビ映画やテレビシリーズに多く登場するレジーナ・キングの貴重な映画出演作品であり、サテライト賞で助演女優賞を受賞した作品でもあるので、ぜひ『ビール・ストリートの恋人たち』公開前に、押さえておきたい作品である。
詳細 Ray/レイ
それでもボクはやってない
冤罪をテーマにした映画は数多く制作されており、日本でも同様に、冤罪がテーマの映画は昔から作られてきた。2007年公開の加瀬亮主演で公開された映画、『それでもボクはやってない』は、監督が『Shall we ダンス?』の周防正行の10年ぶりになる映画と言うこともあって話題となった刑事裁判映画である。
実際にあった事件をモデルとしており、電車の中で女子中学生に痴漢に呼ばわりされ逮捕された男のその後を描いている。主人公の金子徹平を加瀬亮が演じ、役所広司・竹中直人・小日向文世・瀬戸朝香などの大御所俳優陣が脇を固める。
モデルとなった事件は、2005年に起き、2007年に懲役1年6か月の実刑判決が言い渡されている。控訴した男性の上告を裁判所は棄却し、男性は牢屋に入ることとなった。テレビでもドキュメンタリー番組が組まれるなどで話題となり、日本の司法の在り方や問題を突きつけることになる。
2007年の第80回アカデミー賞・外国語映画部門にも選ばれた作品で、日本アカデミー賞では優秀作品賞・監督賞・脚本賞他、主演の加瀬亮は主演男優賞を受賞した映画である。冤罪に苦しむ多くの人たちの希望となった作品でもあり、実際の事件がモデルとなっているのでリアリティ溢れる仕上がりが見ている人の心をグッと掴む作品でもある。
詳細 それでもボクはやってない
映画『ビール・ストリートの恋人たち』の評判・口コミ・レビュー
「ビールストリートの恋人たち」観てきた‼️
美しい音楽と独特のカラー、ジェンキンズ監督の映画を堪能しました😀
悲しいし重たい内容だけど、誇りを持ちながらお互いを信じる二人がすっごく輝いている✨
ラストのシーンはかなりグッときた💯#映画好きと繋がりたい #ビール・ストリートの恋人たち pic.twitter.com/9M0P3ruBeY
— piroshi (@piroshi1009) 2019年2月24日
『ビール・ストリートの恋人たち』
大好きです!愚かな理不尽に声を荒げ抗うのではなくそんな薄汚れた世界にそもそも侵される筈も無いことを確信している見つめ合う恋人たち。いくら隔てられようと二人の間にある愛の尊さは一層輝きを増す。美しい瞳が嘆くのは置かれた状況にではなく哀しく濁った世界 pic.twitter.com/YDz2Jzy7pB— コーディー (@_co_dy) 2019年2月23日
【映画】『ビールストリートの恋人たち』
黒人差別が色濃い時代。恋人を無実の罪で逮捕された19歳の少女は、既に妊娠していた…彼女と家族は、彼の解放のため奔走する。
観客の心を掴んだ上で過去と現在を順に綴るという巧みな構成で描かれるのは、冷たい世界で、暖色中心のカラーに彩られる美しい愛。 pic.twitter.com/mQv3nw0fSr— 狐木つくね[1Movie 1Tweet] (@tkn_kitsunegi) 2019年2月24日
“ビール・ストリートの恋人たち”
見終わって喫茶店。バリージェンキンス監督の揺らぎない一作!重いテーマなのに、静かに訥々と人物描写。ハーレム舞台なので、音楽も素敵。また、軽々しいが、70’sのレトロなスタイルがカッコいい。日頃の不満は大したことない、乗り越えなくちゃ!と。 pic.twitter.com/FGQOBEKTk0— ウォルターレモン (@lemonwalter0812) 2019年2月23日
「ビールストリートの恋人たち」観てきた。ジェームズ・ボールドウィンの小説を「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス監督が映画化。70年代ニューオリンズを舞台に若いカップルとその家族、友人に起きた悲劇を描く。レジーナ・キングの演技、音楽が特に良くて…最後原題出て意味を知って泣いた…。 pic.twitter.com/0yOOtdbWU4
— キャサリン/Catherine (@Hitomi_forward) 2019年2月24日
映画『ビール・ストリートの恋人たち』のまとめ
第91回アカデミー賞授賞式を直前に控えた2月、監督のジェンキンス氏の初来日が報道されている。日本での公開2月22日に合わせたスケジュールで、ジェンキンス監督は黒澤明監督や大島渚監督などの日本の監督から多くの影響を受けていると自身で語っているように、日本映画界に対してのリスペクトがとても強い監督である。多くの過酷な試練や困難にぶつかるティッシュとファニーだが、2人を取り巻く人たちの笑顔は温かみに溢れていて、決して悲劇だけの物語ではなく、ジェンキンス監督の卓越したセンスの光る作品の公開が待ち遠しい。
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